初心者が失敗しない証券会社の選び方
自分に合った証券会社を選ぶには、まずネット証券か総合証券かを決める。次に、希望するサービスを受けられるか、投資したい商品を取り扱っているかで候補を絞っていこう。その上で条件を比較し、より有利な会社を選ぶとよい。
証券会社ごとに強みと弱みがあるため、1社に決めきれないこともあるだろう。そのような場合は複数の証券会社に口座を開設して、用途にあわせて使い分けるのも手だ。ほとんどの証券会社で証券口座の開設や保有(維持・管理)に費用はかからない。
手順1,ネット証券か総合証券かを選ぶ
ネット証券と総合証券ではサービス内容の違いもあるため、まずは自分が求めるサービスを受けられる証券会社を選ぼう。どちらか迷うようであればネット証券がおすすめだ。
証券会社には本記事のランキングで紹介したようなネット証券のほか、野村證券や大和証券のように対面営業がメインの総合証券がある。
それぞれに向いている人の特徴は、たとえば以下のようなものだ。該当する項目の多いほうがより自分に合った証券会社のタイプといえる。
- なるべく手数料を抑えたい
- 自分で情報を集めて投資する銘柄を決められる
- 自分のペースで投資したい(営業を受けたくない)
- 少額から投資を始めたい
- PCやスマホを使った取引に抵抗がない
- ポイント還元などの特典・サービスを受けたい
- 担当者から情報提供や相談などのサポートを受けたい
- ある程度の手数料負担は許容できる(投資信託を10万円購入するときに3,000円程度の手数料を払ってもいい)
- まとまった投資資金がある(3,000万円以上)
- 最終的には自分で考えて判断できる
- IPOも狙いたい
- PCやスマホを使って取引するのが難しい
ネット証券では口座開設から取引まで基本的にすべて自分で行わなければならないが、自身のペースで投資したい人や営業を受けたくない人にはむしろ好都合だ。
担当者から情報提供などは受けられないが、大手ネット証券であれば投資や銘柄選びに役立つコンテンツが充実しており、自分で学びながら投資できる。手続きやPC・スマホの操作に不安がある場合も、電話などによるサポートが用意されているので安心だ。
電話で専門の相談員が投資相談に応じてくれる松井証券の「株の取引相談窓口」のようなサービスもある。なるべく手数料を抑えながら投資相談もしたい人には、このようなネット証券が候補になるだろう。
総合証券の場合、まとまった投資資金がある人や取引が多い人は、優良顧客としてIPO株などを優先的に案内してもらえるケースもある。
ただし、総合証券の手数料はネット証券よりも割高だ。
たとえば投資信託の場合、ネット証券では手数料のかからない商品でも、総合証券で購入すると購入代金の3%程度の手数料がかかったりする。
また、営業担当者が勧めた商品を買ったからといって儲かる保証はない。相談はできても投資するかどうかの最終的な判断を行うのは自分であり、損失が出ても自己責任だ。
押しに弱く、人に勧められると断れない人は証券会社の担当者が売りたい商品を買わされやすいでしょう。担当者の言いなりになってしまい、自分で考えて判断できない人に総合証券はおすすめできません。
竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)
手順2,投資したい商品に強い証券会社を選ぶ
ネット証券か総合証券のどちらにするかを選んだら、次は投資したい商品を取り扱っているかどうかで候補を絞り込んでいこう。
取り扱いのある証券会社の中でも強みは異なるため、自分の投資したい商品や、投資スタイルに強い会社を選ぶのがポイントだ。
ネット証券の場合、商品や投資スタイルごとに強みのある証券会社をあげると以下のようになる。
- 国内株式(現物取引)に投資したいなら……SBI証券
- 国内株式(信用取引)に投資したいなら……SBIネオトレード証券、松井証券
- 少額から国内株式に投資したいなら……SBI証券(S株:単元未満株取引)、SMBC日興証券(キンカブ:株数・金額指定取引)
- IPO投資にチャレンジしたいなら……SBI証券、SMBC日興証券
- クレジットカードで投資信託の積立投資をしたいなら……マネックス証券、auカブコム証券、SBI証券、楽天証券
- 新NISAでつみたて投資がしたいなら……SBI証券、楽天証券、マネックス証券
- 米国株に投資したいなら……SBI証券、楽天証券、マネックス証券
- 高性能な取引ツールで取引したいなら……SBI証券、楽天証券、auカブコム証券、GMOクリック証券
- 高性能な銘柄スクリーニングツールが使いたいなら……マネックス証券、SBI証券
- 電話で投資相談がしたいなら……松井証券
主に投資する商品に強い証券会社をメイン口座にして、商品によって複数の会社を併用してもよいだろう。
初心者向け!ネット証券の始め方
どの証券会社を利用するか決まったら、口座を開設して投資を始めよう。口座開設から商品の購入までは、次の5つのステップで進めていく。
ここではSBI証券を例に、実際の流れをみていこう。
1,口座開設の申し込み
まずは証券会社に口座開設を申し込む。
SBI証券の場合、ネットまたは郵送による方法が選べる。いずれの方法も、まずはSBI証券のサイトからメールアドレスを登録し、住所、氏名、生年月日など申込者の情報を入力して申し込む。
申込完了時には、マイページにログインするためのユーザーネームとログインパスワードが発行される。
同時に「口座種別(特定口座・一般口座)」の選択や「NISA口座」「iDeCo」「住信SBIネット銀行/SBI新生銀行口座」「SBI証券ポイントサービス」の申し込みも可能だ。
口座種別は、特段の事情がなければ「特定口座(源泉徴収あり)」を選ぶとよい。
源泉徴収ありの特定口座なら、証券会社が損益を計算し、利益から税金を差し引いて納税までしてくれるため、確定申告は原則不要になる。
他社口座との損益通算や損失の繰越控除をする場合など、必要なときだけ任意で確定申告をすることも可能だ。
NISA口座は1人1口座しか開設できないため、重複して申し込まないように注意しよう。
他社ですでにNISA口座が開設されている場合、その後の申し込みは無効だ。
同時期に口座開設を申し込んだ場合には、最初に税務署の審査で承認された金融機関に口座が開設される。
申し込み後の金融機関の変更はできますが、余計な手間がかかってしまいます。
竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)
2,必要書類の提出
証券口座の開設には、マイナンバー確認書類と本人確認書類が必要だ。これらの書類を、証券会社の指定する方法で提出する。
SBI証券の場合、書類の提出方法によって必要な書類の組み合わせが異なる。
・通知カード+運転免許証
・通知カード(またはマイナンバー記載の住民票)+本人確認書類2種類
<本人確認書類>
運転免許証、運転経歴証明書、住民基本台帳カード(写真付き)、日本国パスポート(所持人記入欄のない2020年2月以降発行のものは不可)、住民票の写し、各種健康保険証、印鑑証明書
3,口座開設完了通知を受け取る
必要書類をすべて提出し、証券会社の審査が完了すると口座開設完了通知が届く。口座開設までには、ネット完結の申込方法であれば最短申込当日、郵送が必要になる方法では数日〜1週間程度かかる。
証券会社 | 所要日数の目安 | 公式サイト | |
---|---|---|---|
オンライン | 郵送 | ||
SBI証券 | 最短1〜3営業日 | 10日程度 | 公式サイト |
楽天証券 | 最短翌営業日〜(スマホ) | 約5営業日後 | 公式サイト |
マネックス証券 | 2〜3営業日程度 | 1週間〜10日程度 | 公式サイト |
auカブコム証券 | 最短翌営業日〜(スマホ) | 約4営業日〜 | 公式サイト |
松井証券 | 最短当日(eKYC) 最短3日(画像アップロード) |
最短1週間 | 公式サイト |
SBI証券の場合、ネット申込であればメールまたは郵送で、郵送申込であれば郵送で通知が届く。
4,初期設定をして資金を入金する
口座開設完了後、初期設定(取引にあたり必要な情報の登録)を行う。
SBI証券の初期設定では、口座開設申込完了時に発行されたユーザーネームとログインパスワードでマイページにログイン後、以下のような情報を登録する。
・職業・勤務先について
・世帯主について
・振込先金融機関口座
・手数料プラン
・投資に関する質問
初期設定完了後から取引が可能になる。投資に必要な資金を証券会社所定の方法で証券口座に入金しよう。
SBI証券の場合、次の5つの入金方法がある。
・SBIハイブリッド預金……住信SBIネット銀行のSBIハイブリッド預金残高をSBI証券での買付代金に充当する方法
・リアルタイム入金……提携金融機関から即時にオンライン入金する方法
・銀行振込……口座を持っている銀行の窓口やATMなどから専用振込口座へ入金する方法
・振替入金(ゆうちょ銀行)……インターネット上で自分のゆうちょ銀行口座からSBI証券の証券総合口座へ入金する方法
証券会社によっては投資信託の積立投資にクレジットカード決済を利用でき、カードのポイントが付く。SBI証券では、投信積立に三井住友カードが利用可能だ。このほか、TポイントやPontaポイントなど、ポイントを使って投資できる証券会社もある。
証券会社 | クレカ投信積立 | ポイント投資 | 公式サイト |
---|---|---|---|
SBI証券 | ◯ 三井住友カード |
◯ Tポイント・Vポイント・Pontaポイント (投資信託・国内株式 ※1) |
公式サイト |
楽天証券 | ◯ 楽天カード |
◯ 楽天ポイント (投資信託・国内株式・米国株式・バイナリーオプション) |
公式サイト |
マネックス証券 | ◯ マネックスカード |
◯ マネックスポイント (投資信託・暗号資産) |
公式サイト |
auカブコム証券 | ◯ au PAYカード |
◯ Pontaポイント (投資信託・単元未満株) |
公式サイト |
松井証券 | × | ◯ 松井証券ポイント (投資信託3銘柄) |
公式サイト |
5,商品を選んで注文する
投資資金を入金したら、投資したい商品、銘柄を選んで発注しよう。
個別株式の注文方法
個別株式の発注は、検索画面などから購入したい銘柄を選択し、市場、株数、価格(指値・成行・逆指値など)、注文期間、預かり区分(特定/一般/NISA)を指定して行う。
国内現物株式の注文画面(SBI証券の例)
・成行(なりゆき)注文… …価格を指定せず発注する方法
・逆指値(ぎゃくさしね)注文……「指定した価格以上になったら買い」、あるいは「指定した価格以下になったら売り」とする注文方法
投資信託の注文方法
投資信託を発注するには、まず検索画面などから購入したい銘柄を選択し、その銘柄の目論見書を確認、同意する必要がある。
目論見書の内容に同意したら、預かり区分(特定/一般/NISA)と、購入金額または購入口数を指定して発注する。SBI証券ではポイントを利用した買付も可能だ。
投資信託の注文画面(SBI証券の例)
ネット証券でよくあるQ&A
<ネット証券口座開設数上位3社(2023年9月末現在)>
・SBI証券……1,106.3万口座
(SBIグループ(SBI証券、SBIネオモバイル証券、SBIネオトレード証券、FOLIO)の合計)
・楽天証券……968.0万口座
・マネックス証券……223.6万口座
<ネット証券預かり資産額上位3社(2023年9月末)>
・SBI証券……32.0兆円(SBIハイブリッド預金残高3.1兆円を含む)
・楽天証券……23.2兆円
・マネックス証券……7.0兆円
①フォームへの必要事項入力
②本人確認書類のアップロード
③証券会社から送付されたIDとパスワードでログイン
また、「源泉徴収あり」の特定口座を選ぶと、証券会社が代わりに税金を納めてくれるので、投資家本人が確定申告をする必要がない。
そのため、証券口座開設が初めての人は「特定口座(源泉徴収あり)」を選ぶのが無難だろう。
総合証券会社では基本的に店舗や電話での注文になるのに対して、ネット証券では24時間いつでもインターネット経由で注文を行える違いがある。取引の手数料も圧倒的に安いので、株式取引がはじめての人にはネット証券が向いている。
ただし、貸株サービスを利用して預けている株など、分別管理の対象でない資産は、SBI証券が潰れると戻ってこない可能性がある。投資者保護基金の補償も受けられない。このリスクがあることはよく理解しておこう。
コメントいただいた専門家
竹国弘樹
CFP®、ファイナンシャル・プランナー
名古屋大学工学部機械航空工学科卒業。証券会社、保険代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。より多くの方がお金について自ら考え行動できるよう、家計改善や住宅購入、資産形成、相続など、お金に関するコンサルティング、大手金融機関や各種メディアでの執筆・監修を行う。RAPPORT Consulting Office 代表。
■保有資格
1級ファイナンシャルプランニング技能士
CFP®
一種証券外務員
サウナ・スパプロフェッショナル
公式サイト https://www.rapportco.com