IPO(新規株式公開)で最も多い売り方が「初値売り」だ。IPOを語る場合、多くが初値売りを前提としているといってもよいだろう。初値売りは高い確率で利益を確定できるのが魅力だが、果たしてそこに死角はないのだろうか。

目次

  1. 1,最もシンプルなIPOの売却方法「初値売り」とは?初値売りのメリット・デメリットは?
  2. 2,初値売りのメリット1.「初値売り」のパフォーマンスがよい理由——2019年は勝率約9割
  3. 3,初値売りのメリット2.初値で売らない場合のリスクを避けられる——セカンダリー市場を読むのは至難の業
  4. 4,IPOの初値売りで公募価格割れになる銘柄の傾向——初値売りも万能ではない
  5. 5,IPOで初値売りを行う場合の注意点
  6. IPOの売り方についてよくある5つのQ&A
  7. 実際に株式投資を始めてみる

1,最もシンプルなIPOの売却方法「初値売り」とは?初値売りのメリット・デメリットは?

IPO1.jpg
(画像=編集部作成)

IPOとは?

IPOとは新規株式公開「Initial Public Offering」の略称だ。未上場企業の株式を証券取引所に上場させることで、一般投資家は株式市場での売買が可能になり、企業側は株式市場からの資金調達が可能になる。

IPOで最も多い売り方が「初値売り」です。IPOを語る場合、多くが初値売りを前提としているといってもよいでしょう。

初値売りとは?

初値売りとは
その名の通り上場後に始めて付いた株価(初値)で売却することを指しており、IPOの募集価格と初値との差が損益となる。IPOでの騰落率を測る際も、原則は募集価格と初値の差がものさしとなる。

初値売りの方法

初値売りをするためには、IPOで当選した株式を上場日の寄付前に「成行」で売却注文する必要がある。

IPOの売り注文を出せるタイミングは証券会社によって異なる。

IPOを取り扱う主な証券会社10社の成行注文の発注時間

証券会社名 発注時間 IPO取り扱い件数
(2020年
主幹事数
(2020年)
詳細
SBI証券 上場日の前営業日翌日の
朝4時頃から
※複数市場への重複上場の場合は
上場日の朝8時頃から
85件 15件
みずほ証券 上場日の朝6時から 62件 21件 詳細
SMBC日興証券 上場日の朝5時から 52件 16件 詳細
マネックス証券 上場日の前営業日の
17時頃から
50件 0件
大和証券 上場日の朝6時から 43件 15件 詳細
野村證券 上場日の前営業日の
翌日の朝6時から
41件 22件
岡三オンライン証券 上場日前日の夜間
システム処理終了後から
39件 0件
楽天証券 上場日前営業日の
17時過ぎから
38件 0件
三菱UFJモルガン・
スタンレー証券
上場日の朝6時から 19件 2件 詳細
auカブコム証券 上場日前営業日の
16時以降
19件 0件


IPOの売り注文を出せるタイミングは証券会社のシステムによって違いますが、多くの場合、上場当日の早朝から注文を出すことができます。

一部証券会社では「上場日の前営業日の翌日」といったややこしい表現となっている。

樋口 壮一

上場日の前日が平日の場合、「上場日の前営業日の翌日」は上場日となりますが、上場日が月曜日の場合、「上場日の前営業日の翌日」は土曜日となります。

IPOで初値が決まるには、成行での注文が全て成立する必要がある。そのため、成行での注文を出しておくことで、初値売りが可能となる。

初値売りのメリットとデメリット

初値売りの2つのメリット
  • 勝率が高い
  • リスクの高いセカンダリー市場を避けられる
セカンダリー市場とは?
セカンダリー投資とは既に発行された株式が投資家間で売買される市場のことを指す。セカンダリー投資は流通市場とも呼ばれ、一般的な証券取引所での株式の売買である。新規発行された株式を投資家が取得する市場をプライマリー市場(発行市場)と呼び、IPOはプライマリー市場で取得した株式をセカンダリー市場で売買する。
初値売りのデメリット
  • 公募価格割れになるリスクがある
公募価格とは?
公募価格とは新規公開される株式を投資家が取得する際の価格を指す。IPOの場合、プライマリー市場での購入価格であり、公募価格とセカンダリー市場での価格差がIPO参加者の損益となる。

次からは初値売りのメリットやデメリットについて詳しく解説していこう。

SBI証券 楽天証券 マネックス証券
IPO取扱件数
(2020年)
85件 38件 50件
主幹事数
(2020年)
15件 0件 0件
IPO当選方法 完全当選70%
店頭分配あり
100%完全抽選 100%完全平等抽選
詳細

2,初値売りのメリット1.「初値売り」のパフォーマンスがよい理由——2019年は勝率約9割

IPO2.jpg
(画像=編集部作成)
IPOが「初値売り」とセットで語られる理由は、その勝率の高さにあります。

2019年には東証1部、2部、マザーズ、ジャスダックを合わせて86社のIPOがあった。

その内、IPOの初値が募集価格を上回った案件は76社に上る。

樋口 壮一

IPO投資で初値売りを行った場合の勝率は9割に迫ります。

2020年は新型コロナウイルスの影響で市況が乱高下していた時期のIPOのパフォーマンスが振るわなかったが、それでも93社のIPOの内、初値が募集価格を上回った案件は69社、勝率は7割5分だ。

過去の経験則によれば、IPOは初値売りを行うことで高い確率で利益確定できる。

その理由を主に2つの観点から説明していこう。

IPOの初値売りのパフォーマンスが良い理由
  • 需要と供給の不均衡が株価をつり上げる
  • IPO市場の活況にさらに投資家が集まる

需要と供給の不均衡が株価をつり上げる

株価は需要と供給のバランスで決まるという大原則がある。

IPOでは供給が新規公開株式数に限定されている一方、需要面では、その銘柄や業績への期待感を持つ投資家をIPO自体のプロモーション効果が引き寄せるという側面がある。

樋口 壮一

IPOの当選(発行市場)を逃した投資家は、市場(流通市場)で購入することになります。

IPOのプロモーション効果によって需要が喚起される一方、供給面では株式数が限定されているという需要と供給の不均衡が株価をつり上げるのです。

IPO市場の活況にさらに投資家が集まる

IPOでは、上場後の数日間は売買株式数が非常に多い状況になる。

上場前からの株主やIPOで当選した人が売却に走る一方、注目企業をセカンダリー市場(流通市場)で購入しようという投資家が積極的に取引を行うためだ。

活発なIPO売買が行われることで、1日の値幅も大きくなり、短期の利ざやを狙う個人投資家もIPOの市場に集まってきます。短期の利ざやを狙う個人投資家の需要も巻き込みながら、初値が形成されていきます。
SBI証券 楽天証券 マネックス証券
IPO取扱件数
(2020年)
85件 38件 50件
主幹事数
(2020年)
15件 0件 0件
IPO当選方法 完全当選70%
店頭分配あり
100%完全抽選 100%完全平等抽選
詳細

3,初値売りのメリット2.初値で売らない場合のリスクを避けられる——セカンダリー市場を読むのは至難の業

IPO3.jpg
(画像=VideoFlow/stock.adobe.com)

IPOにおいて初値売りが推奨される理由は、勝率の高さだけではない。

IPOで初値売りがおすすめされる理由のひとつに、IPO銘柄のセカンダリー市場を予想することは非常に難しいという事情があります。

IPO銘柄のセカンダリー市場では、多くの投資家の思惑が重なり合い、非常に複雑な値動きをする。

樋口 壮一

株価が思惑で動くため、極端な乱高下を繰り返す銘柄も多く、その値動きに理論的な説明を行うことは非常に困難です。

業績や投資指標による適正価格も参考にならず、セカンダリー市場はマネーゲームと化すケースが多い。中には、初値を天井に、その後は右肩下がりとなる銘柄もある。

2018年の巨大IPO「ソフトバンク <9434> 」の場合、公募価格1,500円に対し、初値は1,463円を付けた。初値売りを行った場合、2%超の損失となる。その後、株価は2019年8月にようやく1,500円を突破したが、その勢いも長くは続かず、2021年7月まで公募価格付近で弾き返されるような株価チャートを描いている。

また、2020年3月にジャスダックへ上場した調剤薬局運営を手掛ける「ミアヘルサ <7688> 」の場合、公募価格2,330円に対し、初値は1,748円を付けた。初値売りを行った場合、約25%の損失となる。その後も株価は軟調に推移しており、2021年7月21日終値は1,161円と公募価格の公募価格の半分となっている。
樋口 壮一

こうした銘柄ではIPO初値売りで損失を確定させた投資家が、今の所、一番の勝ち組だったといえるのです。

IPOセカンダリー市場が読めないというリスクを考慮すれば、勝率の高い初値売りで売却をしてしまうのが得策であるという考え方は、十分理に適っているといえるでしょう。

4,IPOの初値売りで公募価格割れになる銘柄の傾向——初値売りも万能ではない

IPO4.jpg
(画像=編集部作成)

2019年には勝率9割近くを誇った初値売りであるが、裏を返すと、残り1割の案件では、初値が募集価格を下回ったことになる。

2019年では、東証1部、2部、マザーズ、ジャスダックに上場した86社の内、9案件が公募割れになりました。2020年は新型コロナウイルスの影響もあり、93社のIPOの内、公募価格割れは23案件です。

IPOといえども株式投資であり、リスクが存在するという点を改めて認識しておきたい。

公募価格割れとなるIPOとは、初値形成時の需要と供給のバランスが供給側に偏ってしまっている銘柄を意味する。近年の傾向では、以下3つの銘柄には注意したい。

IPOで公募割れする銘柄の傾向
  • 新規公開株式数が多い銘柄
  • 事業内容に新鮮さがない、今後の成長が見込みづらい銘柄
  • 直近決算が赤字である銘柄

新規公開株式数が多い銘柄

新規公開株式数が多い銘柄は、純粋にIPO時点で供給数が多い案件で、東証1部へ直接上場する銘柄などに見られます。

プライマリー市場で購入できる投資家の数も多くなり、希少価値が付きづらく、初値の高騰は見込みにくい。

樋口 壮一

ベンチャーキャピタルが株式を大量保有しているなど、目に見える売り圧力が多い場合にも株価形成にはマイナスになります。

ベンチャーキャピタルとは?
ベンチャーキャピタルとは新興企業(ベンチャー企業)のアイデアや技術に着目し、将来性を独自に評価して資金提供を行う機関である。ベンチャーキャピタルは新興企業の株式を取得し、株式上場や転売による値上がり益を得ることを目的とする。ベンチャーキャピタルは新興企業の成長を資金面で支援するが、投資回収が最終目的であるため、IPO時には売り圧力となる。

事業内容に新鮮さがない、今後の成長が見込みづらい銘柄

将来展望を描きづらい銘柄であると、IPOをしても需要が集まらないケースもある。

樋口 壮一

事業内容に新鮮味がない銘柄や、今後の急成長が見込みづらい市場の銘柄等が該当します。

新規公開に夢を描く投資家は多く、それが描けないIPO銘柄には市場の評価も高まりません。

直近決算が赤字である銘柄

企業の本質はいかに利益を生み出すかである。

決算内容が悪い会社の需要は必然的に少なくなる。

樋口 壮一

IPO市場では、赤字決算で上場する企業もあります。

将来展望が見えており、黒字化のビジョンに投資家が納得しているIPO銘柄には需要が集まりますが、投資家を納得させるビジョンを描けない場合、市場の評価は厳しいものになります。
SBI証券 楽天証券 マネックス証券
IPO取扱件数
(2020年)
85件 38件 50件
主幹事数
(2020年)
15件 0件 0件
IPO当選方法 完全当選70%
店頭分配あり
100%完全抽選 100%完全平等抽選
詳細

5,IPOで初値売りを行う場合の注意点

IPO5.jpg
(画像=編集部作成)

IPOで初値売りをすると決めたらどんな状況でも初値売りを実行する

IPOで初値売りを行う場合、どんな状況であろうと迷いなく初値売りを行いましょう。

IPOのセカンダリー市場の値動きは非常に読みづらいため、初値売りから切り替えることで大きなリスクを抱えてしまうことになるからだ。

樋口 壮一

初値決定前の気配値の時点で、公募価格割れの可能性が高いと判断できる場合もあります。このような場合でも初値売りによって損失を確定させるのが無難でしょう。

IPOで公募割れとなる銘柄とは市場の期待値が公募価格に届いていない銘柄である。

初値決定後は将来性や割安性への評価で株価上昇可能性もあるが、初値売りを回避した人が公募価格付近で売却を行うため、短期的に上値が抑えられてしまうケースも多い。

樋口 壮一

値動きが不安定な銘柄をポートフォリオに入れておくよりは初値売りで損失を確定させ、他の銘柄に期待したほうが現実的かもしれません。

IPO上場初日に初値が付かなくても翌日に必ず初値売りを行う

IPOでは上場初日に初値が付かない場合も、翌日も成行での売却注文を行い、初値売りを確実に行うようにしたいところです。

初値が付かないケースとは、買いか売りのどちらかに多くの注文が入っている状況である。

IPOで買いが殺到している場合には初値売りで大きな利益が期待できる。

樋口 壮一

反対に売りが殺到している場合には初値は公募価格割れになりますが、上場初日に売りが殺到しているような銘柄はその後の値動きも不安定となるため、損失を確定させるべく初値売りを実行すべきでしょう。

投資は購入から売却までで1つのサイクルになる。IPOにおいても、銘柄選定から、その売り方まで、リスクを十分考慮しながら投資を行う姿勢が重要だ。

IPOの売り方についてよくある5つのQ&A

IPOとは何か?
IPOとは新規株式公開「Initial Public Offering」の略称だ。未上場企業の株式を証券取引所に上場させることで、一般投資家は株式市場での売買が可能になり、企業側は株式市場からの資金調達が可能になる。

IPOの売却方法「初値売り」とは何か?
その名の通り上場後に始めて付いた株価(初値)で売却することを指す。初値売りをするためには、IPOで当選した株式を上場日の寄付前に「成行」で売却注文する必要がある。

初値売りにはどのようなメリットがあるか?
勝率が高いこと、リスクの高いセカンダリー市場を避けられることが挙げられる。

初値売りが利益を得やすいのは何故か?
IPOのプロモーション効果によって需要が喚起される一方、供給面では株式数が限定されているという需要と供給の不均衡が株価をつり上げる。上場前からの株主やIPOで当選した人が売却に走る一方、注目企業をセカンダリー市場(流通市場)で購入しようという投資家が積極的に取引を行い、1日の値幅が大きくなるからだ。

IPOで初値売りを行う場合の注意点は何か?
IPOで初値売りをすると決めたらどんな状況でも初値売りを実行することと、上場初日に初値が付かなくても翌日に必ず初値売りを行うこと。

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樋口壮一
執筆・樋口壮一
新卒で証券会社に入社後、10年間リテール営業、ホールセール営業を経験。現在は事業会社の営業企画部門に努める傍ら、個人として投資を行い、マーケットに携わる。AFP
新卒で証券会社に入社後、10年間リテール営業、ホールセール営業を経験。現在は事業会社の営業企画部門に努める傍ら、個人として投資を行い、マーケットに携わる。AFP

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