投資した額からどのくらいの儲けが出たのかを表す言葉を「利回り」という。投資信託において利回りを表す指標は何を指すのだろうか。投資信託のパフォーマンスを表す指標は騰落率や分配金利回りなどがあるが、本当の運用成績を表すものは「トータルリターン」だ。投資信託で覚えておきたい利益に関する用語を解説し、トータルリターンの高いファンドを最新の情報から紹介する。

目次

  1. 1.投資信託における利回りとは?利率との違いは?
  2. 2.代表的な投資信託の利回り(トータルリターン)と主要インデックスの平均利回り
  3. 3,投資信託の利回り(トータルリターン)の計算方法
  4. 4.投資信託の正確な利回り(トータルリターン)の3つの注意点
  5. 5.投資信託の利回り(トータルリターン)ランキングTOP5
  6. 6.投資信託にはどんなコストがかかる?手数料や税金など
  7. 7.投資信託の選び方
  8. 8.利回り(トータルリターン)の高い投資信託の注意点
  9. 9.投資信託は利回りだけで判断しない
  10. 投資信託の「利回り(トータルリターン)」に関する3つのQ&A
  11. 実際に投資信託を始めてみる

1.投資信託における利回りとは?利率との違いは?

(画像=Hyejin Kang/stock.adobe.com)

「トータルリターン」「利率」「騰落率」「分配金利回り」「パフォーマンス」「表面利回り」「実質利回り」―――。

これらのキーワードを正確に説明できるだろうか。

投資信託の情報は新聞や雑誌の記事、販売会社や運用会社のホームページ、モーニングスターなどの評価会社からネットでもアクセスしやすくなっている。

用語の意味をしっかりおさえておくことは、最適な銘柄選びと投資の成功につながる。

投資信託における「利回り」の意味と「トータルリターン(総収益率)」の違い

投資信託でどれだけ得または損をしているのか明瞭に把握できる数字は「トータルリターン」です。投資信託における利回りとは、トータルリターンのことを指します。
トータルリターンとは?
トータルリターンは「現在の評価金額(いまの価値)」に「累計受取分配金額(もらった分配金合計)」と「累計解約金額(信託報酬差し引き後の売却益合計)」を足して「累計買付金額(手数料含む)」を差し引いたもの。投資信託の買い付けから算出日までの全期間を通じた損益金額を表す。

自身が持つ投資信託の正確なトータルリターンは、口座を保有する証券会社などの販売会社で確認できる。

販売会社は投資家にトータルリターンを年1回以上開示することが義務付けられているので、投資信託を保有している人なら誰でも閲覧可能です。

・「トータルリターン通知制度」とは?

2014年12月1日以降、日本証券業協会の規則により販売会社には顧客ごと・銘柄ごとのトータルリターンの年1回以上の通知が義務化されている。
出典:日本証券業協会『トータルリターンの通知制度』

これにより、月報や運用報告書では把握できない顧客個人の損益を知ることができる。

一方、運用会社や評価会社などで公表されているトータルリターンは、指定する期間に投資信託を保有していると仮定して年率換算した概算値である。

利回りと利率の違い

「利回り」とよく混同しやすい言葉に「利率」がある。

利回りとは?
投資信託では投資金額に対する収益のことを、年単位に換算した「利回り」として扱われる。
利率とは?
「利率」は額面金額に対して、1年間に受け取る利子の割合のことである。預金や債券ではあらかじめ利率が設定されているが、投資信託では一般的に約束された利率は存在しない。
たとえば、年利率4%の債券を100万円分購入し、4年後に104万円で売却したとする。

• 利子は16万円(4万円×4年)
• 譲渡益は4万円
• 4年間の収益合計は20万円

この場合は1年あたり5万円なので、100万円に対して、利回りは5%である。

年利率4%の債券を100万円分購入し、4年後に96万円で売却した場合、

• 利子は16万円(4万円×4年)
• 譲渡益はマイナス4万円
• 4年間の収益合計は12万円

この場合は1年あたり3万円なので、100万円に対して、利回りは3%だ。

つまり、利率は4%で変わらなくても、運用次第で5%にも3%にもなるのが利回りというものである。

利回りと騰落率の違い

投資信託における利回りを表す指標として、「騰落率」を思い浮かべる人もいるかもしれない。

騰落率とは?
「騰落率」は投資信託の基準価額が一定期間内にどれだけ値上がり/値下がりしたかを表すもの。たとえば月間騰落率(%)なら「(月末の価格(分配金含む)-月初の価格)÷月初の価格×100」のように計算する。

分配金が支払われると基準価額が下落するため、分配金は再投資したものとして算出される。

手数料や税金を考慮していないので実際の利回りとは異なる点には注意が必要です。

月報や目論見書に記載されているのは騰落率です。騰落率は投資信託の値動きを知りたいときの参考になります。

利回りと分配金利回りの違い

「分配金利回り」は投資信託の利回りと言えるのだろうか。

分配金利回りとは?
「分配金利回り」は投資額に対する分配金がどれくらいあるのかを予想する利回りのこと。過去1年間の分配金の累計額を直近の基準価格で割って計算する。たとえば1万円当たり毎月40円の分配金を出している投資信託を100万円分保有している場合、年間の分配金は4万8,000円、分配金利回りは4.8%となる。

基準価額の値動きが考慮されていない利回りなので、分配金が多く支払われても基準価額が値下がりしていればトータルではマイナスになる。

なお、分配金には「見せかけの利回り」が含まれるので注意したい。

毎月分配型の投資信託には、運用益から支払われる「普通分配金」と、運用益が足りないために元本を切り崩して支払われる「特別分配金」があります。特別分配金の比率が高いファンドは、実質的にはマイナスリターンであっても分配金利回りがプラスに見えるようになっています。

利回りとパフォーマンスの違い

パフォーマンスとは?
投資の世界においてパフォーマンスとは、運用成果や運用実績、また過去の価格の動きを指している。

トータルリターンもパフォーマンスだが、その利回りを得るのに見合ったリスクだったのか、投資環境と比較して十分な収益だったのかなど、総合的に評価する観点を持つ。

投資信託の場合、日経平均株価やTOPIXなどのベンチマークとする指標よりも収益率が上回っている場合を「アウトパフォーム」、下回っている場合を「アンダーパフォーム」といいます。

2.代表的な投資信託の利回り(トータルリターン)と主要インデックスの平均利回り

(画像=photoopus/stock.adobe.com)

保有していない投資信託のトータルリターンを知りたい場合は、投資信託の格付け機関であるモーニングスター社のサイトや運用会社のホームページを利用するといいだろう。

同サイトでは、ファンドの一定期間ごとのトータルリターンが掲載されている。

代表的な投資信託のトータルリターン

下の表は1年間のトータルリターンの実績および3年、5年といった複数年のトータルリターンを年率で換算したものだ。

たとえば、モーニングスターの2020年ファンドオブザイヤーに選ばれた代表的な投資信託のトータルリターンはどのように公表されているのだろうか。

トータルリターンの表示例(モーニングスター、2021年10月19日時点)

ファンド名 部門 1年 3年
(年率)
5年
(年率)
10年
(年率)
情報エレクトロ
ニクスファンド
国内株式 48.52% 22.73% 22.00% 22.90%
ベイリー・ギフォード
世界長期成長株ファンド
『愛称:ロイヤル・マイル』
国際株式
(グローバル)
31.14% -- -- --
グローバルAIファンド
(為替ヘッジあり)
国際株式
(特定地域)
43.72% 31.60% -- --
投資のソムリエ バランス型
(債券・安定型)
1.78% 3.72% 2.68% --
ピクテ・マルチアセット・
アロケーション・ファンド
『愛称:クアトロ』
バランス型
(成長型)
4.05% 4.03% 3.10% --
モーニングスターのHPをもとに筆者作成
※運用年数が満たないものはブランク「--」としている

表を見て分かるように、トータルリターンは対象とする期間によって数字が大きく異なる。

2021年10月19日時点から1年さかのぼった年率と、3年さかのぼって年率換算したものでは、倍以上の開きがあることも珍しくない。

1年だとその年の経済情勢によってリターンが極端に増えたり減ったりしますが、5年以上となると落ち着いてきます。ファンドの長期での将来性をはかりたいのであれば、5年10年といった長期のトータルリターンを参照するのが良いでしょう。

ただし、新しく設定されたファンドは運用年数が短いため長期のトータルリターンが算出できないことがある。

新しいファンドは時勢に沿ったテーマで作られ、コストも低く抑えられたものが多いなどのメリットがありますが、実績の短さと照らし合わせて検討する必要があります。

主要インデックスの平均利回り

決められた指標(インデックス)と同じ値動きを目指すインデックス型投資信託なら、ある程度のリターンとリスクを予測することができる。

下の表はアセットクラス(資産クラス)ごとに算出された年数ごとのトータルリターンである。

主要インデックスのリターン(MyINDEX、2021年10月20日時点)

ファンド名 インデックス 1年 3年
(年率)
5年
(年率)
10年
(年率)
日本株式 TOPIX トピックス(配当込み) +27.5% +6.2% +11.4% +12.7%
日本株式 日経平均株価 +27% +6.9% +12.4% +13%
外国株式 MSCI オール・カントリー・
ワールド・インデックス
(ACWI)
+35.5% +12.7% +16.1% +16.8%
外国株式 MSCI コクサイ・インデックス
(KOKUSAI)
+37.6% +13.8% +17.1% +18.1%
外国株式 MSCI エマージング・
マーケット・インデックス
+25.5% +8.5% +11.9% +10.5%
外国株式 S&P 500(配当込み) +37.6% +15.5% +19.3% +21.1%
日本債券 NOMURA-BPI 総合 0% +0.7% +0.1% +1.4%
日本債券 新発10年国債 +0.1% 0% 0% +0.3%
外国債券 FTSE 世界国債インデックス
(除く日本)
+2.9% +3.8% +4.3% +6.2%
日本不動産 東証REIT指数(配当込み) +24.5% +9.4% +6.7% +12.7%
外国不動産 S&P 先進国REIT指数
(除く日本)
+40.5% +7.9% +8% +14.1%
myINDEXのHPをもとに筆者作成

株式市場は内外含めおおむね好調だが、2020年のコロナショックの影響から3年トータルリターンについてはやや年率が落ちる。

だがそれでも10%を超える。

特に米国ハイテク株の好調さを反映したS&P 500は高いリターンをマークしています。

一方で国内債券に関してはほぼリターンは見込めないと言って良い。

不動産のほうはこの1年かなり好調でした。2020年1月末より大きく値崩れしたため3年5年の期間ではやや低調ですが、10年トータルの期間でみると12%から14%に収束します。

このように、利回りはどのような資産に投資するかによって大きく異なるのである。

3,投資信託の利回り(トータルリターン)の計算方法

(画像=Andrey Popov/stock.adobe.com)

投資信託の利回りであるトータルリターンはどのようにして計算するのだろうか。

計算は販売会社や評価会社が毎日行っているが、計算方法の概要はおさえておくと良い。

投資信託の利回りの計算方法

1年リターンも5年リターンも、トータルリターンはすべて年率に換算される。

5年で10%資産価値が増加した投資信託の1年の利回りは2%だ。

保有している投資信託のトータルリターンは、証券会社などの販売会社が顧客の保有銘柄・保有数・保有期間に応じて個別に計算しています。。

モーニングスターのような評価会社が公表しているトータルリターンは計算時点における概算で、投資家個人の利回りを表すものではなく、投資信託を比較する際に使われます。

投資信託の「収益」を計算する

投資信託のもうけにあたる収益は、投資信託の価格を表す「基準価額」の差額利益(売買価格差)と、決算後に支払われる「分配金」から成る。

手数料や税金といったコストは差し引いて計算する。

収益(円)=分配金+売却損益
分配金は対象期間における累計、売却損益は累計売却金額から累計買付金額を差し引いたものです。保有中の場合は現在の評価金額から累計買付金額を差し引きます。

投資金額に対する「利回り(トータルリターン)」を計算する

先ほど算出した収益を運用年数で割ることで、投資した金額に対して年間何%の利回りが得られたかというトータルリターンを算出することができる。

利回り(%)=収益÷運用年数÷投資金額×100
たとえば売却益が10万円、累計分配金が2万円、運用年数が3年、投資金額が100万円と仮定すると、このようになる。

利回り(%)=(100,000円+20,000円)÷3年÷1,000,000円×100=4%

投資信託の利回りは預金の利息のように分かりやすいものではないので、最終的に利益や損失がいくらになったのか一目でわかるトータルリターンは定期的にチェックするようにしましょう。

4.投資信託の正確な利回り(トータルリターン)の3つの注意点

(画像=MONEY TIMES編集部制作)

トータルリターンを使用するにあたっては、注意点もある。そのうち3つを挙げると以下のようになる。

投資信託のトータルリターンはあくまでの過去実績

トータルリターンは過去の運用実績を基に算出したもので、将来の利回りを保証するものではありません。

過去の実績では5%のプラスでも、次期は10%のマイナスになることもあり得える。

投資で最も重要なのは「売買のタイミング」であり、それによって利回りが大きく異なることを覚えておきましょう。

投資信託の売買の際の手数料が引かれていない

トータルリターンは投資信託の基準価額を利用して算出されるため、販売手数料(購入時手数料)と換金手数料(信託財産留保額)が利益から差し引かれていません。

売買時に手数料が発生する投資信託の場合、利回りがわずかに低下する。

利回りは低下しますが、保有期間中発生し続ける信託報酬や売買委託手数料に比べると軽微なものです。なお、信託報酬など純資産から控除される手数料は、トータルリターンから差し引いて計算されています。

税金が考慮されていない

投資信託では、売却益と普通分配金にそれぞれ20.315%の所得税がかかります(所得税+住民税+復興特別所得税)。トータルリターンではこれらの税金は考慮されていません。

NISAやiDeCoのような非課税口座の場合はそのままで問題ないですが、一般の口座の場合は利回りから税コストも差し引く必要があります。

5.投資信託の利回り(トータルリターン)ランキングTOP5

(画像=MONEY TIMES編集部制作)

投資信託の利回りであるトータルリターンの高いファンドをピックアップした。

極端にリスクが高いもの、コストが高いものを避けるため、純資産総額が100億以上、購入時手数料が無料のファンドに限定した。

トータルリターンは3年リターンを基準としている。

5年や10年だと最近新規追加された投資信託が対象外となり、1年だと直近の経済情勢による影響が強すぎるためだ。

3年トータルリターンが高い投資信託ランキング

ファンド名 運用会社 トータル
リターン
(3年)
純資産総額
(百万円)
信託報酬
(年率)
1位 iFreeNEXT
FANG+インデックス
大和アセット
マネジメント
33.40% 20,563 0.78%
2位 iFreeNEXT
NASDAQ100インデックス
大和アセット
マネジメント
24.09% 39,902 0.50%
3位 キャピタル
世界株式ファンドF
キャピタル・
インターナショナル
17.58% 10,941 0.70%
4位 楽天・全米株式
インデックス・ファンド
『愛称:楽天・バンガード・
ファンド(全米株式)』
楽天投信
投資顧問
15.48% 390,683 0.16%
5位 eMAXIS Slim
米国株式(S&P500)
三菱UFJ
国際投信
15.45% 721,935 0.10%
※2021年10月15日現在のモーニングスター社のHPをもとに筆者作成

1位,iFreeNEXT FANG+インデックス……GAFAなど知名度の高い米国上場企業に集中投資

• 利回り……(3年) 33.40%
• 純資産総額……205億6,300万円
• 信託報酬……0.78%

出典:モーニングスター『iFreeNEXT FANG+インデックス』

iFreeNEXT FANG+インデックス
iFreeNEXT FANG+インデックスは米国上場の注目テクノロジー企業を集めた「NYSE FANG+指数」に連動する。銘柄はフェイスブック、アップル、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグル、アリババ、バイドゥ、エヌビディア、テスラ、およびツィッター。
NASDAQやS&P500よりも、さらに対象を厳選したGAFA狙いの投資信託と言えます。

トータルリターンは直近1年で38.02%、3年を年率換算すると33.40%と好調。

純資産総額は2020年夏頃から急激に伸び始め、2021年夏頃からは横ばいとなっている。

iFreeNEXT FANG+インデックスの信託報酬はインデックス銘柄にしてはやや高めです。今後も値上がりするかは対象銘柄の業績によります。

2位, iFreeNEXT NASDAQ100インデックス……世界最大のベンチャー企業向け株式市場に丸ごと投資

• 利回り……(3年) 24.09%
• 純資産総額……399億200万円
• 信託報酬……0.50%

出典:モーニングスター『iFreeNEXT NASDAQ100インデックス』

iFreeNEXT NASDAQ100インデックス
iFreeNEXT NASDAQ100インデックスは米国ナスダック市場に上場する100銘柄を対象とするものファンド。IT、バイオテクノロジー、医療などの最先端技術やサービスにおいて期待値の高い企業で構成されている。米国以外の企業も含む。
iFreeNEXTシリーズ

大和アセットマネジメントのiFreeNEXTシリーズは、話題性のあるセクターや特定分野に焦点を絞った投資信託シリーズ。分類はインデックス型だが、内容はアグレッシブ。

トータルリターンは直近1年で37.94%、3年では年率24.09%。純資産総額は2020年の初めから右肩上がりです。

iFreeNEXT NASDAQ100インデックスは、運用効率から株式直接ではなくETFを購入する場合もあるそうですが、信託報酬は0.50%と同カテゴリ内では平均的です。

3位, キャピタル 世界株式ファンドF……世界中の株式に投資する低コストなアクティブ型投資信託

• 利回り……(3年) 17.58%
• 純資産総額……109億4,100万円
• 信託報酬……0.70%

出典:モーニングスター『キャピタル 世界株式ファンドF』

キャピタル 世界株式ファンドF
キャピタル 世界株式ファンドFは米国最大の投資グループで、グローバル投資の歴史が長いキャピタル・インターナショナルの投資信託。世界各国の株式を主要対象とし、グループの調査力・分析力を駆使して運用を行うアクティブ型の投資スタイルを持つ。2021年6月30日時点の主な構成銘柄はテスラ、マイクロソフト、フェイスブック、アマゾン、それに台湾半導体のTSMCなど。
トータルリターンは直近1年で37.68%、3年では年率17.58%。純資産総額は設定来上昇を続け、2021年7月から基準価額とともに一段高となっています。

キャピタル 世界株式ファンドFの信託報酬はアクティブファンドとしては信じられない低さです。キャピタル・インターナショナルは新規ファンド作成より既存ファンドの改善に注力するので、長期投資にも向いています。

4位, 楽天・全米株式インデックス・ファンド……米国株式市場の大型株から小型株までカバーする大型ファンド

• 利回り……(3年) 15.46%
• 純資産総額……3,906億8,300万円
• 信託報酬……0.16%

出典:モーニングスター『楽天・全米株式インデックス・ファンド』

楽天・全米株式インデックス・ファンド
楽天・全米株式インデックス・ファンドは愛称の「楽天・バンガード・ファンド(全米株式)」からも分かるように、米国運用会社バンガード社のETFを実質的な投資対象とする。ベンチマークとなる「CRSP USトータル・マーケット・インデックス」は米国株式市場の大型株から小型株までを対象としており、S&P500などと比べてカバー範囲が広い。
トータルリターンは3年では年率17.58%、直近1年だと41.90%という好成績。

楽天・全米株式インデックス・ファンドの純資産総額は2017年9月設定ですでに3,000億を超えています。信託報酬は米国株式市場を対象とする投資信託の中では最安とまではいきませんが、十分低い水準です。

5位, eMAXIS Slim米国株式(S&P500)……低コストで規模の大きい米国株式投資信託の代表格

• 利回り……(3年) 15.45%
• 純資産総額……7,219億3,500万円
• 信託報酬……0.10%

出典:モーニングスター『eMAXIS Slim米国株式(S&P500)』

eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)は低コストで有名な三菱UFJ国際投信のインデックスファンドシリーズ「eMAXIS Slimシリーズ」で最も資産規模が大きいファンド。S&P500をベンチマークとする投資信託は数多く存在するが、中でも人気のある銘柄となっている。
トータルリターンは3年では年率15.45%、直近1年だと39.94%。米国株式市場の好調が目立ちます。

eMAXIS Slim米国株式(S&P500)の信託報酬は年率0.0968%と業界最安。もともと0.17%からスタートしましたが、一定の資産規模を達成すると信託報酬が引き下げられる「受益者還元型信託報酬率」の基準により、段階的に引き下げられています。

6.投資信託にはどんなコストがかかる?手数料や税金など

(画像=MONEY TIMES編集部制作)

投資信託は運用をプロに任せる金融商品である。

そのため株式などと異なり、委託手数料のようなものがかかる。

コストは、下記3つの「手数料」と「税金」の合計4つだ。

  • 購入時手数料
  • 信託報酬
  • 信託財産留保額
どの程度のコストになるのかはファンドによって異なります。リターンが安定しない初心者は特に収益を圧迫するコストを、いかに低く抑えるかが重要です。

投資信託のコスト1,購入時手数料

購入時手数料とは?
購入時手数料は投資信託を購入する際に販売会社(口座のある金融機関)に支払う手数料。「販売時手数料」とも呼ばれる。
同じ商品でも販売会社によって購入時手数料は異なることがあります。運用会社の発行する目論見書ではなく、販売会社のホームページを参照すると良いでしょう。

最近では購入時手数料がかからない「ノーロード」と呼ばれる投資信託が、インデックス型を中心に増えてきています。

投資信託のコスト2,信託報酬

信託報酬とは?
信託報酬は投資信託保有中にかかるコスト。「運用管理費用」とも呼ばれる。保有額に所定の料率をかけた金額が運用資金から徴収される。
購入時手数料や信託財産留保額のように購入者が直接納める手数料ではないので見えにくい。しかも1回のみではなく保有期間中毎日発生するので、長期になるとわずかな率の違いが大きな金額になります。

銘柄選びの際は、最も注意して比較したい。

信託報酬は投資信託によって異なりますが、年0.5~2.0%程度が一般的。インデックス型よりアクティブ型のほうが高い傾向にあります。

投資信託のコスト3,信託財産留保額

信託財産留保額とは?
信託財産留保額は投資信託を解約する際に支払う手数料。販売会社や運用会社に支払う費用ではなく、解約した投資家に解約代金を支払うためには資産を売却する必要があり、そのための手数料に充てるためのコストだ。基準価額に対して所定の料率をかけた金額が解約代金から差し引かれる。

一般的には0.3%程度だが、無料となっているファンドも多い。

投資信託のコスト4,税金

投資信託から発生する利益には20.315%の所得税が発生します。

利益には分配金によるものと譲渡益によるものの2種類がある。

源泉徴収ありの特定口座なら販売会社が計算・納税を行います。源泉徴収なしの特定口座あるいは一般口座の場合、投資家自らが確定申告を行います。

NISA(少額投資非課税制度)やつみたてNISAでの取引であれば、投資信託の利益に対する税金は非課税となります。

7.投資信託の選び方

(画像=MONEY TIMES編集部制作)

投資信託を選ぶ際、利回り以外で注目したいポイントを以下に4つ挙げる。

投資信託選びのポイント
  • 同カテゴリ内で低コストかどうか
  • 騰落率があがっているかどうか
  • 純資産総額が大きいかどうか
  • 分配金があるかどうか

投資信託選びのポイント1,同カテゴリ内で低コストかどうか

できれば購入時手数料は無料のノーロードを選びたい。

信託報酬は投資信託のタイプによって水準が異なるため、同カテゴリ内で低めかどうかを見極めるようにしましょう。

インデックス型ならベンチマークとする指標が同じ銘柄を比較すると良い。

たとえばTOPIXに連動する投資信託をいくつかピックアップすると、信託報酬は0.15%から0.88%まである。
出典:モーニングスター

アクティブ型はインデックス型より信託報酬が高くなりがちですが、投資対象が似ている銘柄をピックアップし、コストとリターンを見比べてみると良いでしょう。

投資信託選びのポイント2,騰落率があがっているかどうか

騰落率とは?
騰落率は一定期間にどれくらい投資信託の資産価値が上がったのかを示す指標だ。

株式の株価に該当するのが、投資信託の騰落率です。

基準価額は分配金を支払うと下落するので、分配金は再投資されたと仮定して算出される。

値上がり益は投資信託のメインの利益なので、値動きは必ずチェックしておきたいところ。

ただし株価と同様、騰落率は該当機関の変化率を示すもので、現在上がっている銘柄が今後も上がることを意味しない。

投資信託選びのポイント3,純資産総額が大きいかどうか

純資産総額が大きい投資信託はコストが低く安定的な運用が期待できる。

純資産総額は投資信託の資産(株式や債券)から負債を引いた時価総額で、ファンドの規模を表す。

規模が大きいと投資信託を運用するためのコストが相対的に下がり、利益を上げやすく信託報酬が低くて済みます。また、十分な規模があれば繰上償還のリスクも下がります。
繰上償還とは?
繰上償還とは投資信託の運用を停止して、投資家に資金を返金すること。

繰り上げ償還のリスクは純資産総額が10億円を切ると高まると言われています。純資産総額を徐々にかつ着実に伸ばしているファンドが望ましいでしょう。

投資信託選びのポイント4,分配金があるかどうか

投資目的に沿って、分配金の有無も確認したい。

長期の資産形成が目的なら、分配せず再投資する投資信託のほうが複利の効果により効率的に資産を増やせます。定期的に利益を確保したい場合は、分配がある投資信託が良いでしょう。

その際、元本を取り崩す特別分配金があるかどうかは必ず確認しておきたい。

8.利回り(トータルリターン)の高い投資信託の注意点

(画像=kelly marken/stock.adobe.com)

投資をするからには利回りは最重要視したいところではあるが、トータルリターンの高さだけで投資判断を行うことは絶対に避けたい。

それは競馬でオッズだけを頼りに馬券を買うようなものだからだ。

使い古された投資の基本原則であるが、リターンには必ずリスクが伴います。

筆者が金融商品の相談を受ける時も「元本が保証されて儲かる方法はありますか」と聞いてくる人は定期的に現れますが、「ありません」と答えるほかないです。

モーニングスターのファンドランキングを見ても、上位にランクインするのは株式ブル型4.3倍、株式ベア型3倍、エマージング(新興国)株式、小型成長株といった値動きの激しいものが多数を占める。

これらのファンドは大きく値上がりすることもあるが、値を下げることもあるので注意したい。

9.投資信託は利回りだけで判断しない

(画像=beeboys/stock.adobe.com)

ハイリスクで利回りの高い商品が悪いということではない。

たとえばレバレッジ型投資信託なら少ない金額で何倍もの投資成果を狙えるが、同様の損失を被る恐れもある。

ベンチマークとなるインデックスは変わらないのに下落することもある。

投資信託は利回りだけでなく、基準価額の推移、資産クラス、資産規模、信託報酬、流動性などの要素も併せて比較しましょう。自身がリスクや不確定要素を考慮したうえで、利回りの高い商品を選ぶことに何ら問題はないでしょう。

投資信託の「利回り(トータルリターン)」に関する3つのQ&A

トータルリターンと利回りの違いは何?
投資信託における利回りとは、トータルリターンのことを指す。トータルリターンなら、投資信託でどれだけ得または損をしているのか明瞭に把握できる。
トータルリターンの計算式は?
トータルリターン(%)=収益÷運用年数÷投資金額×100
なお、収益は以下のように計算される。 収益(円)=分配金+売却損益
トータルリターンの注意点は?
トータルリターンは過去の運用実績を基に算出したもので、将来の利回りを保証するものではない。また、トータルリターンは投資信託の基準価額を利用して算出されるため、購入時手数料と信託財産留保額が利益から差し引かれていない。税金も考慮されていないため、利回りから税コストを差し引く必要がある。

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執筆・篠田わかな
外資系経営コンサルティング会社で製造・物流・小売部門のコンサルタント業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。
外資系経営コンサルティング会社で製造・物流・小売部門のコンサルタント業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。

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