積立投資は専門的な投資スキルを必要とせず、初心者でも始めやすい投資方法だ。積立投資を始めるための制度やサービスも充実しつつあり、色々な選択肢が増えてきた。初心者が積立投資を始めるに当たり、その方法や気をつけるべきことを見ていこう。

1,積立投資が初心者におすすめな理由 特徴やメリットは?

積立投資は初心者におすすめだが、どのような特徴やメリットがあるのだろうか。

積立投資は手間がかからないので忙しい投資ビギナーに最適

積立投資は定期的に一定の金額を積み立てていく投資方法であり、「投資の基本」でもある。

積立投資の対象は投資信託や株式が多いが、初心者は手軽に分散投資ができる投資信託がおすすめだ。積立投資は一度設定すると決まった日に積立が行われ、引落で自動的に入金してくれる証券会社や銀行も多い。そのため運用の手間がほとんどかからず、忙しい人でも投資に時間を取られることはない。初心者にとっても積立投資のメリットは大きい。

積立投資のメリット1……少額から投資できる

積立投資は大きな金額を一度に投資せず少額を積み立てるため、手元資金が少ないうちでも無理のない範囲で始められる。一般的に投資は運用期間が長くなるほど積み上がった収益によって損をしにくくなる。たとえ少額でも早いうちから投資に回すことで、時間が経てば収益が膨らんでいき、一度に大金を投じなくても資産形成を行える。

積立投資のメリット2……分散投資でリスクを軽減できる

積立投資はリスクを軽減しやすい投資手法だ。積立投資は購入時期と投資資金を分散する方法であり、価格が高い時は少なく買い、価格が低い時は多く買うことになる。これによって購入単価が平均化され、非常に安い価格で保有することもなくなるが、高値づかみの状態になることも避けられる。そのため値下がりした時に損失の程度を軽減できるメリットがある。

積立投資のメリット3……短期的な値動きに惑わされない

積立投資は一括投資と比べて投資タイミングを気にする必要がない。例えば120万円を一括投資する場合と10年間で積立投資する場合、一括投資は値下がりすれば回復まで長期間待たなければならないこともある。対して積立投資は少しずつ継続して投資するため、値下がり中は安く買える期間とも言える。そのため市場の短期的な値動きに惑わされることなく、誰でも投資を続けやすい方法だ。

2,積立投資にはどんなものがある?初心者におすすめの積立投資5選

積立投資を始める場合、初心者におすすめできる制度やサービスを紹介しよう。

NISA……目的に合わせて選べる非課税投資制度

NISA(少額投資非課税制度)は毎年一定金額の投資に対する利益が非課税になる制度だ。一般NISAとつみたてNISAがあり、投資したいものや目的に合わせてどちらか片方を利用できる。積立投資は両方の制度で可能だ。

一般NISAは株式や投資信託など様々な金融商品に投資でき、年間120万円を5年間非課税で運用できる。つみたてNISAは投資信託の積立専用制度であり、非課税投資枠は年間40万円までだが、20年間利益に対する課税がない。両方の制度で同時に投資することはできないが、年単位での切り替えなら可能だ。しかし切り替えるには手続き上の条件があり、よく検討してからどちらかを利用するのがいいだろう。

・NISAのメリット

NISAの最大のメリットは、投資の利益が非課税になることだ。通常は利益に対する税金は20.315%もかかるので、100万円の利益を出しても手元に残るのは80万円程度になる。この税金がなくなるだけでも運用パフォーマンスの向上につながる。非課税投資枠は一般NISAで最大600万円、つみたてNISAで最大800万円あり、利益の金額が大きくなるほど非課税メリットを感じるだろう。

・NISAのデメリット

積立投資を前提にすれば、一般NISAとつみたてNISAのデメリットは異なる。例えば月5万円積み立てたい場合、月額上限が約3万3,000円のつみたてNISAでは枠が足りない。一般NISAだと積立可能だが、非課税期間は運用期間が延長されるロールオーバーをしても最大10年だ。非課税投資枠の最大金額の違いもあり、いくらぐらいの金額をいつまで積み立てるのかによっても選択肢は変わってくる。

また、一般NISAとつみたてNISAは非課税期間終了後も商品を保有し続ける場合、終了時の時価で課税口座に払い出されデメリットが発生する可能性がある。具体的には保有商品が値下がりしていると、非課税期間終了時の時価が取得価格となり、元本より下がっていても課税対象になる。こうしたデメリットやNISA間の細かい違いはよく比較しておきたい。

・NISAはどんな人におすすめ?

NISAはデメリットもあるものの、非課税メリットが大きく換金も自由な使いやすい制度だ。そのためこれから投資を始めたい初心者に向いている。特につみたてNISAは金融庁の一定の基準をもとに各金融機関が商品を選ぶため、同じカテゴリーなら商品間で大きな違いが出にくい。商品数は金融機関ごとに異なるが、初めて投資をする人でも商品選びに失敗しにくいだろう。

iDeCo(イデコ)……所得控除がお得な積立投資制度

iDeCo(個人型確定拠出年金)はNISAと同じく投資に対する利益が非課税になることに加え、積み立てたお金が所得控除の対象になる。そのため節税効果もあり、お得な積立制度と言える。iDeCoはNISA以上に税制面でのメリットがあるが、自由度はNISAに劣るため、デメリットもよく確認して利用したい。

・iDeCo(イデコ)のメリット

iDeCoのメリットは投資で得た利益が非課税になることに加え、所得控除によって所得税と住民税を節税できる効果が大きい。収入によって所得税率が異なるため節税効果は人によるが、仮に所得税率と住民税率の合計が30%で年間24万円を積み立てた場合、7万2,000円の節税効果だ。収入がありiDeCoに加入していれば毎年節税が可能であるため、これだけでも利用するメリットは高い。

ただしiDeCoは積み立てられる金額に上限がある。自営業者は月額6万8,000円、専業主婦(夫)は月額2万3,000円、会社員と公務員は勤め先の年金制度により、月額1万2,000円、2万円、2万3,000円に分かれる。

・iDeCo(イデコ)のデメリット

iDeCoのデメリットは、手数料と引き出し制限の2つだ。

iDeCoの手数料はいくつか種類があるが、主に比較すべきは「口座管理手数料」だ。iDeCoは口座があるだけで毎月手数料がかかり、安い金融機関は171円、高い金融機関は600円以上かかる。節税効果があるため手数料がかかっても十分お得ではあるが、長年利用する制度であることからもよく比較して金融機関を選ぼう。

もう1つの引き出し制限にも気をつけたい。iDeCoは自由に資金の出し入れができず、一度積み立てたお金は60歳まで引き出しできない。いくらお得だと言っても必要以上のお金を入れてしまうと、いざという時にそのお金が使えない事態に陥ってしまうため、老後用など引き出さなくても問題のないお金を積み立てるようにしよう。

・iDeCo(イデコ)はどんな人におすすめ?

iDeCoは節税効果の高いお得な積立制度だが、NISAと比べればおすすめできる人は限られる。

まず60歳まで資金を引き出せないため、老後資金の貯蓄として若い人ほどおすすめできる。毎年の節税効果と長期投資による利益を考えれば、少額からでも早く始めるといいだろう。もちろん定期的な収入のある会社員や公務員にもメリットはあり、私的年金として積み立てる価値がある。一方、収入のない専業主婦(夫)は所得控除ができず手数料もかかるため、あまりおすすめはできない。

投信積立サービス……好きな投資信託に積み立てられる

投信積立サービスは、好きな投資信託を銀行や証券会社で積み立てるものだ。金融機関独自のサービスであるため、最低積立金額や手数料は銀行や証券会社ごとに異なる。投信積立サービスを始める場合、積み立てたい投資信託をその金融機関が取り扱っているかの確認も必要だ。

・投信積立サービスのメリット

投信積立サービスのメリットは、自分の好きな投資信託に好きな金額で積み立てられることだ。つみたてNISAやiDeCoの場合、対象商品が限定的で、積み立てたい投資信託がないこともある。投信積立サービスはその金融機関で取り扱っている投資信託であれば原則どれでも積み立てられるため、商品ラインアップに縛られることなく積立投資ができる。

積立金額を好きに決められるのもメリットだ。より少ない金額から積み立てたい人は主にネット証券を選べば最低100円から積立でき、NISAやiDeCoの上限金額を超えて積み立てたい人は自由に金額を設定できる。積立金額や商品を自分の都合に合わせて決められるので、積立サービスの中では最も柔軟性があるだろう。

・投信積立サービスのデメリット

投信積立サービスのデメリットは、金融機関ごとに手数料やサービス内容が異なり比較が面倒なことだ。つみたてNISAやiDeCoでも比較は必要だが、制度としての概要が共通していることもあり比べるポイントは多くない。投信積立サービスの場合、同じ投資信託でも手数料が違ったり独自に提供するサービスが異なったりするため、初心者にとってそれらの比較が手間になるかもしれない。

・投信積立サービスはどんな人におすすめ?

投信積立サービスがおすすめなのは、NISAやiDeCoでは取扱のない商品を買いたかったり、それ以上の金額を積み立てたかったりする人だ。投信積立サービスには税制面でのメリットがないため、積立投資をするならNISAやiDeCoが第一の選択肢となるが、商品数や投資金額など必ずしも自分のニーズを満たせるとは限らない。その場合、投信積立サービスで自由に投資しよう。

ロボアドバイザー……知識不要でお手軽に積立投資ができる

ロボアドバイザーは設定した条件をもとに運用プランが提示され、投資を始めるところから実際の運用までインターネット上で完結するサービスだ。積立投資ができるかはロボアドバイザーにより異なるが、難しいことを考える必要はなく初心者でもお手軽に始められる。

・ロボアドバイザーのメリット

ロボアドバイザーのメリットは、誰でも簡単に積立投資ができることだ。投資はリスクを軽減するために分散投資が重要と言われるが、ロボアドバイザーは年齢やリスク許容度などに関するいくつかの質問に答えるだけで、その人に応じた資産配分が提案される。自分で資産配分を考える必要がなく、初心者にとって便利なサービスだ。

運用を開始した後もメンテナンスを自動でやってくれるロボアドバイザーもあり、最初から最後までほとんど何もしなくていい投資サービスでもある。

・ロボアドバイザーのデメリット

ロボアドバイザーのデメリットは、自分で投資信託の運用をするのに比べて運用中の手数料が高いことだ。ロボアドバイザーの手数料は1%程度が多く、それより安くても投資信託を直接購入するよりは高くなることが多い。これはロボアドバイザーが運用のサポートをするサービス料も含まれているからだ。コストを抑えたい人は、自分で積立投資をすることも併せて考えよう。

・ロボアドバイザーはどんな人におすすめ?

ロボアドバイザーがおすすめなのは、商品選びから運用中のメンテナンスまですべてお任せしたい人だ。自分で投資する場合と比べて手数料は高くなるが、積立さえ継続していれば投資にほとんど時間をかけずに済む。多少手数料が高くても、投資に割く時間を最小限にしたい人には便利な積立サービスではないだろうか。

るいとう(株式累積投資)……個別株式に積立投資をする

積立投資は投資信託で行うのが一般的だが、るいとう(株式累積投資)なら個別株式に積み立てられる。るいとうは証券会社で申し込め、1万円から積み立てられるところが多い。

・るいとう(株式累積投資)のメリット

るいとうのメリットは、まとまった資金が必要になる個別株式に積立投資できることだ。個別株式の場合、最低単位でも数万円から高くて数百万円かかるが、るいとうなら少額で好きな銘柄に投資でき、個別銘柄でポートフォリオを組むことも可能だ。購入する株式は単元未満株だが、配当金を受け取ることもでき、積立を継続すればいずれ単元株として保有できるようにもなる。

・るいとう(株式累積投資)のデメリット

るいとうのデメリットは、取扱が限られていることと手数料が割高になりやすいことだ。

取扱とは、るいとう自体と銘柄についてだ。ネット証券ではるいとうで積立できるところは少なく、主に大手証券で取引できる。また、すべての銘柄が対象ではなく、その証券会社で取扱がなければならない。そのためるいとうを申し込む時は、買いたい銘柄があるか確認が必要だ。通常の株式取引と比べて手数料が割高になりやすい点も注意しておこう。

・るいとう(株式累積投資)はどんな人におすすめ?

るいとうがおすすめなのは、自分の好きな銘柄に積立投資をしたい人や個別株式でポートフォリオを組みたい人だ。投資信託の場合、中身の銘柄までは選べず優良銘柄のみで運用されているとも限らない。自分で企業分析し有望と思える銘柄のみに投資したいなら、るいとうを使った積立投資も1つの選択肢になる。

3,積立投資で初心者がやりがちな5つの失敗と失敗しないための方法

積立投資において、特に初心者は以下の5つの失敗に気をつけよう。

損になると積立投資をやめてしまう

積立投資は投資期間が中長期になるため、途中で相場が下落すれば含み損を抱えることもある。損になると不安になり売りたくなることもあるが、換金の必要性がなければ積立を継続しよう。むしろ、下落中は「安い時に多く買う」という積立投資のメリットが発揮される。安い時期に買うほど平均単価の引き下げ効果も高くなるため、相場環境が悪い時でも積立投資を続けていこう。

分散投資が不十分でリスクとリターンに偏りがある

投資の基本は「分散」であり積立投資は購入時期の分散でリスクを軽減しているが、投資資産や地域の分散にも目を向けよう。例えば株式のみだと高いリターンを期待できる代わりにもしもの時の下落幅も大きくなる。債券のみだと期待するリターンに届かない可能性もある。適度な分散投資はそのバランスが取れ、リスクとリターンの改善が見込めるため、守りながら増やす運用が可能になる。

投資信託の内容を理解せず購入する

よく理解していない投資信託を購入すると、思った以上に変動が激しかったり保守的すぎて期待と違ったりすることがある。購入前に目論見書や金融機関の商品ページで内容を確認しよう。例えば目論見書の「ファンドの特色」を見れば、どんな運用方針かがわかる。「参考情報」には他の資産との騰落率の比較も掲載されている。商品ページでも基準価額の推移などを確認できるため、リスクの大小などを比較して自分の運用イメージに合う商品を購入しよう。

信託報酬が高い商品を選ぶ

積立投資では信託報酬にも注意を払いたい。信託報酬は運用中に残高に対してかかる手数料だが、積立投資は保有期間が長期になるため、信託報酬が高いと利益も圧縮される。仮に利回り3%の投資信託に毎月3万円を20年間積み立てると、信託報酬が0.3%と1%では収益に約69万円もの差が出る。信託報酬だけで投資信託の良し悪しが決まるわけではないが、長期投資では重要な要素だ。

無理をして積み立てる

積立投資はまとまった資金が必要ないとはいえ、積立金額は家計のバランスを考えて過大にならないようにしよう。無理をして積み立てれば他に必要な資金が足りなくなるケースもある。つみたてNISAのように60歳まで資金を引き出せない制度もある。積立投資は長期で行う投資だからこそ、家計に極端な負荷がかからない程度の積立金額を設定しよう。

4,積立投資のデメリットや注意点

積立投資はリスクの軽減にもなり初心者に向いた方法だが、万能な投資ではない。投資タイミングや投資資産によっては一括投資のほうが利益が大きくなる可能性も十分ある。

また積立投資は1回の投資金額が小さいため、時間をかけなければ大きな運用成果は得られない。積極的な投資もしたい人は、積立投資と平行して個別株式やまとまった資金での運用に挑戦してみるのもいいだろう。

5,積立投資は初心者の初めての投資に最適

積立投資は気をつけるべきこともあるが、初心者が初めて投資するには最適の方法だ。投資資金を貯める必要もなく、投資タイミングを気にする必要もないからだ。積立投資は放ったらかしでもほとんど問題のない方法でもあるため、その間に少しずつ投資に慣れたり勉強していったりしながら視野を広げていくのもいいのではないだろうか。

國村功志
執筆・國村功志
大手証券会社で株式・債券・投資信託などの金融商品販売に携わる。その後、ファイナンシャルプランナーの養成団体やFP事務所を経て、現在は資産形成FPとして活動。個人の資産運用経験も活かし、金融機関や一般の人向けに毎月セミナーも開催。CFP®、証券外務員一種保有。
大手証券会社で株式・債券・投資信託などの金融商品販売に携わる。その後、ファイナンシャルプランナーの養成団体やFP事務所を経て、現在は資産形成FPとして活動。個人の資産運用経験も活かし、金融機関や一般の人向けに毎月セミナーも行っている。CFP®、証券外務員一種保有。
 
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