これから投資を始めようとする人が、最初に手を出すのにふさわしいのは投資信託とETFのどちらだろうか。「投資信託は非上場」で「ETFは上場」と言ってもイメージがわかないかもしれない。それぞれの特徴を踏まえ、ケースごとにふさわしい商品を解説していく。

目次

目次

  1. 1.投資信託とは?投資信託の特徴と種類
  2. 2.ETF(上場投資信託)とは?ETFの特徴と最近の動向
  3. 3.投資信託とETFの5つの違い
  4. 4.投資信託とETFのメリット・デメリットを徹底比較
  5. 5.投資信託による運用が向いている人
  6. 6.ETFによる運用が向いている人
  7. 7.投資信託とETFの違いを理解したうえで使い分けを
  8. 実際に株式投資を始めてみる

1.投資信託とは?投資信託の特徴と種類

まずは投資信託の基本と種類についておさえておこう。

投資信託とは

投資信託とは、投資家から集めた資金を運用のプロが株式や債券などに投資し、その運用成果を投資家に還元する金融商品である。個人には難しい金融商品の選別、売買のタイミングの判断などをファンドマネージャーに託す。

その投資信託が何に投資をするのかは運用方針に明記されている。国内株式・海外株式・国内債券・海外債券・REIT(不動産投資信託)・デリバティブのいずれを重視するか、あるいはどのようなバランスで資金を配分するかは「目論見書」や「運用報告書」を見れば一目瞭然だ。

投資信託の種類……インデックス型とアクティブ型

投資信託には大きく分けて「インデックス型」と「アクティブ型」の2種類がある。インデックス型は市場平均並みの投資収益を目標にしたパッシブ運用を旨とする投資信託だ。たとえば日経平均をベンチマークとする投資信託なら、日経平均が3%上昇したら基準価額も同程度上昇するように設計されている。

アクティブ型は調査や分析により投資銘柄を個別に選別する投資手法を採用しており、運用成績はファンドマネージャーの腕に左右される。

2.ETF(上場投資信託)とは?ETFの特徴と最近の動向

次にETFとは何か、どのような商品があるかについてみていく。

ETFとは

ETF(上場投資信託)は性質としてはインデックス型投資信託とほぼ同じだが、東京証券取引所などの金融商品取引所に上場しているため株式のように取引できるという特性がある。特定の指標に連動し市場平均並みの運用成績を目指すのはインデックス型投資信託と同じだ。

ETFの種類……最近はレバレッジ型やインバース型が人気

ETFは連動対象カテゴリーによって分類が可能だ。日本株式なら、TOPIXや日経平均株価など市場別、TOPIXコア30あるいはJPX日経中小型株指数など企業規模別、業種別などがある。また、高配当や設備投資といった特定のテーマに注目したものもある。

外国株式ETFはグローバル、特定地域または特定国、先進国/新興国の株価動向を示す指数に連動するタイプが中心だが、ロボティクスに注目したテーマ型ETFもある。それ以外には国内外債券、REIT、通貨、コモディティ(商品)など、ひととおりのカテゴリーがそろっている。

ETFは典型的なパッシブ運用だが、パッシブ運用は値動きが分かりやすく安全性が高いというメリットがあるものの、投資の醍醐味と言える躍動感には乏しい。その不満を受けてか、最近ではアグレッシブな動きをするETFが好まれる傾向にある。

たとえば「レバレッジ型」「インバース型」と呼ばれるETFだ。売買代金では常に上位にランクインし、2021年2月末時点でも上位5銘柄のうち3本が含まれていた。

レバレッジ型は対象とする指標に一定の倍率を掛けた値動きをする。「TOPIXブル2倍上場投信」ならTOPIXが2%上昇するとETFは4%上昇するよう設計されている。「ブル」とはレバレッジのことだ。

インバース(ベア)型は一定の負の倍数を掛けた値動きをする。「TOPIXベア2倍上場投信」ならTOPIXが2%上昇するとETFは4%下落する。動きはアクティブだが、アクティブ型投資信託のように組み入れ銘柄の調査分析などはおこなわず、1つの指標に連動することは変わらない。

3.投資信託とETFの5つの違い

特定の指標に連動するという似た性質を持つ投資信託とETFだが、どのような違いがあるのだろうか。

⑴売買する場所が違う

ETFは取引市場に上場されているので、上場株式を扱う証券会社なら原則どこでも買うことができる。一方、投資信託は取り扱う金融機関によって商品が限定されている。そのため買いたい投資信託がある場合は、取り扱っている証券会社や銀行の口座を保有している必要がある。

⑵価格や注文方法が違う

売買の際の価格は、ETFはリアルタイムで変動する市場価格が適用される。投資信託は1日1回算出される基準価額が適用される。そのため、購入する場合は前日の基準価額が、売却する時点では売却価格が分からない。リアルタイムの市場価格で取引できるETFは指値や逆指値といった注文方法が可能だが、投資信託の場合は口数か金額を指定するのみにとどまる。

⑶売買手数料が違う

ETFの場合、基本的に売買手数料は株取引と同じ扱いになっている。証券会社ごとに約定代金の大きさによって設定されている。ネット証券を中心に条件によって無料にしているところも多い。

投資信託は運用会社が設けた上限以下の販売時手数料を各金融機関が設定する。インデックス型であれば無料(ノーロード)も多く見られる。売却時には信託財産留保額や換金手数料がかかることもある。

⑷運用手数料(信託報酬)が違う

運用期間中に発生する手数料は、一般的には投資信託よりもETFのほうが低いとされている。投資信託の純資産総額上位10銘柄の平均信託報酬率は1.73%、インデックス型に限れば0.45%だ。ETFの純資産総額上位10銘柄の平均信託報酬率は0.16%と、投資信託より低い(格付け機関モーニングスターによる)。ただし、インデックス型投資信託の信託報酬は低下傾向にあるので、個々の銘柄ごとに判断したい。

⑸分配金の扱いが違う

投資信託は運用により得た利益を投資家にどのように還元するかは商品によって方針が異なる。分配金として直接還元する場合もあれば、次の投資原資にする再投資にまわることもある。ETFは税法により全額を直接分配することが決まっており、再投資にまわすことはできない。

4.投資信託とETFのメリット・デメリットを徹底比較

投資信託とETFには共通点もある一方で、以下のようにそれぞれにメリット・デメリットがある。

投資信託 ETF
メリット ・少額から分散投資ができる
・運用をプロに任せられる
・倒産などの信用リスクが少ない
・種類やテーマが豊富
・積立投資ができる
・分配金の再投資が可能
・手数料が安い
・リアルタイム取引可能
・信用取引が可能
デメリット ・元本割れのリスクがある
・売買価格が分からない
・信託報酬が高額な銘柄も
・手数料など諸経費がかかる
・ 複利効果が得られない
・積立投資ができない
・リバランスできない
※筆者作成

投資信託のメリット…少額から積み立てられ分散投資が可能

個人が個別株に投資するよりも幅広い分散投資が可能で、投資額も1万円といった少額からまとまった金額まで自由に選べる。ETFに比べて商品の本数や種類が豊富で、長期投資に適したインデックス型から、短期積極運用に向いたアクティブ型までそろっている。複数の資産を組み合わせたバランス型であれば1本で分散投資が可能だ。投資信託なら定期的に同じ商品を買い付ける積立投資ができるのも特徴である。分配金を再投資にまわせば複利の効果も得られる。

投資信託のデメリット…銘柄によっては高い手数料がかかる

投資信託は銘柄によっては手数料が高額になるケースがあるので注意したい。指数に連動するインデックス型は信託報酬が低く販売手数料無料の場合が多いが、アクティブ型やバランス型は保有額に対し2%以上の手数料が発生することもある。信託財産留保額など投資信託特有の手数料もある。

ただし信託報酬が高くても優れたリターンを出している投資信託もあり、一概に手数料が安いのが良いとは言えないのが難しいところだ。投資信託でも銘柄によっては株式投資よりもハイリスクハイリターンになる点にも注意したい。

ETFのメリット…リアルタイムで取引可能で値動きが比較的少ない

株式のようにリアルタイム取引が可能で、特定の指数に連動するという分かりやすさがETFの最大の特徴だ。すべての商品がインデックス構成通りの運用をおこなっているため、予想外の値動きは比較的少ない。信託報酬は総じて低めで、高いものでも1.05%程度である。株取引のように信用取引も可能だ。

ETFのデメリット…分配金の再投資ができない

ETFは利益の再投資ができないため、長期投資の恩恵ともいえる複利の効果が得られない。利益はすべて分配されるため、複利の効果を得るには自身で再投資する必要がある。

また投資信託のように毎月少額ずつ積み立てる買い付け方法は一部証券会社のサービスを除いては利用できない。株式・債券・REITといった複数の資産を組み入れることがないため、ポートフォリオのバランスは自分で管理する必要がある。

5.投資信託による運用が向いている人

投資信託とETFの特徴をふまえ、投資対象として投資信託が望ましいケースは次のような場合だ。

初心者でこれから投資を始めたい

投資初心者はまず「何を買うべきか」で壁に当たることが多い。そんな場合はインデックス型投資信託がおすすめだ。「浅く広く」投資することで自動的にリスク分散が図れ、値動きも比較的おだやかなので安心して運用できる。

情報量もETFより豊富だ。基本的にプロに任せる投資信託には信託報酬などの手数料が発生するが、インデックス型の場合は個別銘柄に対する調査や分析の手間がかからないため手数料が低めに抑えられている。どのくらいのリターンが見込めるか分からないうちは、利益を目減りさせるコストをいかに少なくするかが重要だ。

長期でコツコツ資産形成したい

ゆったり長期で資産形成したい場合も投資信託が向いている。ETFでも中長期向きの商品は多く存在するが、次の2つの観点から投資信託のほうがより長期投資向きと考えられる。

1つは「複利の効果」の観点だ。複利の効果は運用により得られた利益を次の元本に加えることで単利よりも効率よく資産を増やせる効果だ。投資信託の収益は分配金なしのタイプであれば自動的に再投資にまわされる。一方ETFは原則として分配金が支払われる仕組みなので、複利の効果が得にくい。

2つめはETFでは積立投資ができない点にある。積立投資は時間的リスク分散に有効で、地域分散、資産分散と合わせると強力な分散効果が得られる。自動積立に対応しているETFは非常に少なく、少額ずつコツコツ投資したいと考えるなら投資信託が適当と考えられる。

つみたてNISA、iDeCo(イデコ)などの制度を利用したい

つみたてNISAやiDeCoといった非課税制度では、投資信託とETFのどちらが有利なのだろうか。

つみたてNISAは金融庁の方針により対象となる銘柄に基準が設けられている。基準をクリアした商品は2021年2月16日時点で193本、そのうちETFは7本だけとなっている。

iDeCo(個人型確定拠出年金)は各金融機関で3~35商品から選択できるが、対象は定期預金、投資信託、保険のみとなっており、ETFは買うことができない。

つみたてNISAでのETFの取り扱い本数は少なく、iDeCoではETFの取り扱いがないため、これらの非課税制度を活用したい場合は必然的に投資信託を利用することになる。

6.ETFによる運用が向いている人

では、投資対象としてETFが望ましいのはどのような場合だろうか。

投資に慣れてきたので自分で売買したい

投資に慣れてきたのでそろそろ自分で売買もやってみたいが、個別株に挑戦するほどはまだ経験がないといった投資家にはETFがちょうど良い。投資信託よりも自主性があり、個別株よりも分かりやすい。

全世界を対象とするETFで中長期的な投資をしてもいいし、地域や業種を絞って自分なりのポートフォリオを組んでみるのでもいい。自分のタイミングで積極投資をしてみたくなったらレバレッジ・インバースやテーマ型等のETFに挑戦してみる手もある。株式投資のように板の見方や、成行、指値といった注文方式に慣れる良い機会となるだろう。ただし自身のリスク許容度の範囲内に収めたい。

一般NISAを使って非課税で運用したい

つみたてNISAとは異なり、一般NISAでは多くのETFが運用可能だ。年間120万円まで新規投資可能で、買い付けから5年間は非課税で運用できる。投資信託ほどには長期向きではないETFは、5年の期限がある一般NISAに適している。支払われる分配金や値上がり益には税金がかからない。つみたてNISAやiDeCoより一般NISAに興味がある人に向いている。

低コストで海外市場に投資したい

先に述べたように、一般的にETFは投資信託よりも手数料が安いとされている。特に海外市場においては顕著である。海外ETFを購入するには外国株式口座が必要になるが、投資信託を経由した場合に比べてコストが非常に安い。

たとえばバンガード社のETFである「VTI(バンガード・トータル・ストック・マーケットETF)」を直接購入した場合の信託報酬率は0.03%だが、VTIに連動する「楽天・全米株式インデックス・ファンド」の信託報酬は0.162%となっている。

ただ、すべての銘柄においてETFのコストが安いわけではない点はおさえておこう。最近ではインデックス型投資信託の手数料値下げ競争が激しく、信託報酬も低下傾向にある。

たとえばTOPIXに連動するETF「ダイワ上場投信−トピックス」と投資信託「<購入・換金手数料なし>ニッセイTOPIXインデックスファンド」を比べると、信託報酬は0.121%と0.154%でほとんど差がない。このように、コストや手間を総合的に見比べて個別に判断する必要がありそうだ。

7.投資信託とETFの違いを理解したうえで使い分けを

投資信託とETFの違いはよく寄せられる疑問だ。上場と非上場の違い、投資信託は証券会社や銀行で買えるがETFは証券会社だけでしか扱っていないなどと言われるが、これだけでは分かりにくい。情報量が多くプロに運用を任せる投資信託、低コストで自分の投資スキルを試せるETFという基本を踏まえ、その時の投資スタイルに合ったものを個別に選ぶようにしたい。

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篠田わかな
執筆・篠田わかな
外資系経営コンサルティング会社で製造・物流・小売部門のコンサルタント業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。
外資系経営コンサルティング会社で製造・物流・小売部門のコンサルタント業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。

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