ETF(上場投資信託)は東京証券取引所などの金融商品取引所に上場している投資信託だ。ETFは実質的な分散投資が可能で、株式に比べて少額で取引できる銘柄が多い。ETFの基本を抑えながら、銘柄の選び方やおすすめ銘柄を紹介しよう。

目次
1.ETFのインデックスごとの種類
2.ETFの銘柄を選ぶ4つのポイント
3.初心者でも取引しやすいETFのおすすめ銘柄
4.ETFとインデックス型投資信託の特徴を比較
5.ETFは投資初心者でも利用しやすい金融商品

1.ETFのインデックスごとの種類を解説

ETFとはExchange Traded Fundの略で上場投資信託ともいう。ETFはインデックス(指数)の動きに連動する運用成果をめざす金融商品だ。

日本で取引可能なETFは国内で組成されて国内の金融商品取引所に上場しているものと、海外で組成されて海外の金融商品取引所に上場しているものに分けられる。

海外で組成されたETFは一般的に海外ETF取引に対応する証券会社で売買する。そのうちの一部は国内の金融商品取引所にも上場しており、国内ETFと同様に売買が可能だ。

ETFへの投資は、対象にするインデックスに含まれる資産への実質的な分散投資になる。今回は国内や海外で組成されて東京証券取引所に上場しているETFを対象にする。東京証券取引所に上場するETFは200銘柄以上ある。

主なインデックスごとにETFの種類を確認する。(※データは2020年6月時点)

⑴国内株式をインデックスにするETF銘柄……種類が豊富

国内株式をインデックスにするETFは、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)、JPX日経インデックス400などへの連動をめざす銘柄が多数ある。

国内株式で人気のETFは売買代金が多い日経レバレッジ指数ETF(日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信)<1570>だ。

日経レバレッジ指数ETFは日経平均レバレッジ・インデックスを指数として日経平均株価の約2倍の動きをするハイリスク・ハイリターンな銘柄であり、短期取引での人気が高い。

⑵海外株式をインデックスにするETF銘柄……先進国や新興国で多数

海外株式をインデックスにするETFは主に先進国と新興国の2つに分けられる。先進国株式をインデックスにするETFは米国S&P500やダウ平均株価、NASDAQ、欧州の各種株価指数などへの連動をめざす銘柄がある。

新興国株式をインデックスにするETFは上海50指数、韓国200種株価指数、インド株価指数、ブラジル・ボベスパ指数などへの連動をめざす銘柄が多数ある。

⑶国内債券をインデックスにするETF……2銘柄のみ

国内債券をインデックスにするETFは2銘柄だ。iシェアーズ・コア 日本国債 ETF<2561>とNEXT FUNDS 国内債券・NOMURA‐BPI総合連動型上場投信<2510>である。

どちらのETFも活発には取引されていない状況だ。

⑷海外債券をインデックスとするETF……米国や新興国など13銘柄

海外債券をインデックスとするETFは米国や新興国、世界主要国の債券などへの連動をめざす約13銘柄がある。

米国債券は5銘柄、新興国債券は3銘柄、そのほかは5銘柄だ。

⑸REITをインデックスとするETF……全18銘柄

REIT(不動産投資信託)指数をインデックスとするETFは東証REIT指数が10銘柄、東証REIT Core指数が3銘柄、そのほか5銘柄の全18銘柄だ。

東証REIT指数とは、東京証券取引所に上場しているREIT全銘柄が対象の指数だ。東証REIT Core指数とは東証REIT指数の対象銘柄のうち時価総額や売買代金の大きな銘柄が対象の指数である。

⑹商品(コモディティ)をインデックスとするETF……金と原油が代表的

商品をインデックスとするETFは金、銀、プラチナなどの金属、原油などのエネルギー、大豆、小麦、とうもろこしなどの穀物とさまざまな指数への連動をめざす銘柄がある。

商品ETFで代表的なものは金(ゴールド)と原油であり、売買高が高く人気のETF銘柄もある。ただし原油の先物に連動するETFは値動き(ボラティリティ)が大きくなることがあるので気を付けたい。

2.ETFの銘柄を選ぶときの4つのポイント 低コストや高い流動性など

東京証券取引所に上場する200銘柄以上のETFのなかから取引するETFをどのように選ぶべきか。ETF選択の4つのポイントを確認しよう。

ETF銘柄を選ぶポイント1……信託報酬が低いものを選ぶ

信託報酬とは、ETFを含む投資信託の保有中に負担し続ける手数料(コスト)だ。年率何%と銘柄ごとに決まっている。この信託報酬コストが低いETF銘柄を選ぼう。ちなみに信託報酬の目安は一般的な株価指数などをインデックスにするETFでは0.5%程度以下が望ましい。

なお指数の2倍などの連動をめざすレバレッジ型や指数の逆の動きをめざすインバース型は信託報酬が高めの傾向だ。これらのETF銘柄は信託報酬のコスト負担が増えないように短期取引に限定して利用するほうがよい。

ETF銘柄を選ぶポイント2……流動性が高いものを選ぶ

ETFの流動性とは取引のしやすさを表す。売買が活発に行われていて、買いたいときに板(売買注文の一覧表)に十分な売り注文があったり、売りたいときに十分な買い注文があったりすることが望ましい。

逆にETFの売買高が少なく、板に注文が少ない銘柄は流動性が低いという。流動性が低ければ、売買したいときに希望より高い価格での購入や低い価格での売却をせざるを得ないことがある。

流動性が高いETF銘柄であれば売買しやすい。流動性が高い銘柄を選ぶひとつの方法は売買高の確認だ。ETFの売買は「口」という単位で行われ、売買高の口数の多いほうが高い流動性の銘柄になる。

ETFは売買高が少ない銘柄でも流動性確保のために、金融機関により板に多くの注文が出される銘柄がある。売買高が少なくても、気になる銘柄があれば板の注文を確認してみよう。

ETF銘柄を選ぶポイント3……チャートで売買に適したタイミングを確認する

ETFはインデックスへの連動をめざして値動きをする。ETF銘柄を選ぶ場合にはチャートを確認して値動きの傾向を把握しておきたい。

たとえば短期では上昇傾向なのか下落傾向なのか横ばいなのか、長期ではどうなのかなどだ。自分がETFを売買をするタイミングに適しているか、チャートが判断材料のひとつになる。

ETF銘柄を選ぶポイント4……月次レポートや目論見書でETFの内容を確認する

ETFの月次レポートには目的や概要、運用実績などが、目論見書(投資信託説明書)には特色や方針、リスクなどさまざまな情報が掲載されている。特に月次レポートにはETFの情報が簡潔にまとまっている。

ETFのなかには価格下落が継続する銘柄もある。月次レポートを確認しておけば過去の運用実績を簡単に確認できる。少なくとも月次レポートの運用実績で、目当てのETFの過去の騰落率をチェックしたい。

3.投資初心者でも取引しやすいETFのインデックス別おすすめ銘柄5選

主に信託報酬と流動性を重視したETFのおすすめ銘柄を紹介する。投資初心者でも取引しやすい銘柄だ。国内債券のETFは流動性が低いため省略する。

なお投資は自己責任で行うものである。投資するタイミングなどは自分の判断で行ってほしい。(※数字は2020年8月1日時点)

国内株式ETFおすすめ銘柄1……日経225上場投信<1321>は純資産総額が6兆円を超える

銘柄:日経225上場投信<1321>(正式名称:日経225連動型上場投資信託)
信託報酬:0.242%(税込)

日経225上場投信は日経平均株価との連動をめざすETFで、純資産総額は6兆円を超える。

このETFへの投資は日経平均株価を構成する225銘柄の株式への実質的な分散投資になる。組入上位銘柄はファーストリテイリング、ソフトバンクグループ、東京エレクトロン、ファナック、KDDIなどだ。

海外株式ETFおすすめ銘柄2……SPDR S&P500 ETF<1557>は純資産総額が米国ETFでNo.1

銘柄:SPDR S&P500 ETF<1557>
信託報酬:0.0945%

SPDR S&P500 ETFは米国ETFであり東京証券取引所にも2011年に上場した。純資産総額は6月末時点で約2,745億米ドル(約29.6兆円)であり、米国ETFの1位だ。

S&P500は米国の大型株500社の動向を表すインデックスである。組入上位銘柄はマイクロソフト、アップル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック クラスA、バークシャー・ハサウェイ クラスBなどだ。

海外債券ETFおすすめ銘柄3……iシェアーズ・コア 米国債7-10年 ETF<1656>

銘柄:iシェアーズ・コア 米国債7-10年 ETF<1656>
信託報酬:0.154%(税込)

iシェアーズ・コア 米国債7-10年 ETFは、FTSE米国債7-10年セレクト・インデックス(国内投信用 円ベース)の動きに連動する投資成果をめざし、米国国債を投資対象にする。

コロナショック後に取引所価格が上昇し、2020年6月30日時点で1年前に比べてトータル・リターン(税引前分配金を再投資したとして算出)は12.77%上昇した。

REIT ETFおすすめ銘柄4……東証REIT指数ETF<1343>は配当利回りが高い

銘柄:東証REIT指数ETF<1343>(正式名称:NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信)
信託報酬:0.1705%(税込)

東証REIT指数ETFは、東証REIT指数への連動をめざすことにより、日本の不動産投信市場全体の動きを反映する。

コロナショックにより大きな影響を受けたが、配当利回り(年率)が4.5%と高いのが特徴だ。今後もこの配当利回りが維持されるかに注目したい。

商品(コモディティ)ETFおすすめ銘柄5……純金上場信託(現物国内保管型)<1540>

銘柄:純金上場信託(現物国内保管型)<1540>(愛称:金の果実)
信託報酬:0.44%(税込)

純金上場信託(現物国内保管型)は金(純度99.99%)を投資対象にするETFだ。一定の受益権口数と引き換えに貴金属地金の現物を受け取れる。

金ETFへの投資は短期から中期までがおすすめだ。金への長期投資なら、購入手数料がかかるものの「純金積立」のほうが長期でのコストは一般的に低く抑えられるからだ。

4.ETFとインデックス型投資信託の特徴を比較

ETFとインデックス型投資信託はどちらもインデックスへの連動をめざす投資信託だ。この2つをどう使い分けるべきか。売買手数料、信託報酬、メリットを比較しよう。

ETFとインデックス型投資信託のどちらもネット証券で売買手数料の無料化が進む

ネット証券ではETFの取引手数料やインデックス型投資信託(インデックス・ファンド)の買付手数料の無料化が進む。

証券会社によっては手数料無料で取引できるETF銘柄がある。たとえばSBI証券では
国内ETF104銘柄(2020年4月20日時点)が、楽天証券では国内ETF103銘柄(2020年2月26日時点)が取引手数料無料だ。

ETFの信用取引では楽天証券は2019年12月16日から、SBI証券は 2020年4月20日から国内ETFの取引手数料は無料である。

ETF現物取引の場合でも、1日の約定代金合計額に対して手数料がかかるプランでは、SBI証券のアクティブプランと楽天証券のいちにち定額コースにて約定代金合計50万円まで手数料無料だ。

インデックス型投資信託の買付手数料はネット証券の多くで無料(ノーロード)

インデックス型投資信託を売却するときは信託財産留保額の負担があるが、これが0%の銘柄を選べば売却時の手数料は無料だ。なお金融機関によっては一部の銘柄で信託財産留保額とは別に「解約手数料」がかかる。

これらの売買手数料をSBI証券と楽天証券でまとめた表は以下だ。買付と売却の手数料にてETFとインデックス型投資信託では大きな差はない。

分類 SBI証券 楽天証券
国内ETF 売買手数料無料
対象銘柄数
104銘柄 103銘柄
現物取引
手数料
1日の約定代金
合計50万円まで無料
(アクティブプラン)
1日の約定代金
合計50万円まで無料
(いちにち定額コース)
信用取引
手数料
無料 無料
インデックス・
ファンド
買付手数料 無料 無料
売却手数料 信託財産留保額や
解約手数料0%の
投資信託は無料
信託財産留保額や
解約手数料0%の
投資信託は無料
※筆者作成

信託報酬はETFとインデックス型投資信託の違いよりも銘柄による違いを確認する

今まではETFのほうが投資信託より信託報酬が低いといわれていた。しかし最近は信託報酬が低いインデックス型投資信託が多く登場している。

信託報酬は銘柄によりばらつきが大きいが、信託報酬が最低レベルの銘柄をETFとインデックス型投資信託で比較すると、その差はあまりないといえる。

たとえば国内ETFで最も信託報酬が低い銘柄は「iシェアーズ・コア TOPIX ETF<1475>」の信託報酬0.066%(税込)である。ただし「その他の費用・手数料」として最高0.0495%(税込)が加算されることがある。

インデックス型投資信託で信託報酬が低い銘柄には、つみたてNISA専用などの限定された銘柄を除くと「SBI・バンガード・S&P500」の0.0638%程度(税込)がある。

このように信託報酬はETFとインデックス・ファンドのどちらも0.1%以下の銘柄がある。信託報酬を考える場合にはETFかインデックス・ファンドかを区別する必要はなく、信託報酬が低い銘柄を選択したい。

ETFとインデックス型投資信託の銘柄はそれぞれのメリットで使い分ける

ETFのメリットは金融商品取引所が開いているときはいつでも取引可能なことだ。ETFなら長期投資からデイトレードまでさまざまな投資を行える。

インデックス型投資信託のメリットは少額からのスタートが可能なことだ。ネット証券の多くは100円から投資信託を購入できる。

コスト面ではETFとインデックス・ファンドの差はなくなってきている今、ETFとインデックス型投資信託のそれぞれのメリットを活かして投資で使い分けよう。

5.ETFは投資初心者でも利用しやすい金融商品

ETFはインデックス型投資信託と同じく投資初心者でも利用しやすい金融商品だ。どちらもインデックスに含まれる複数の資産に分散投資できる。

株式は単元未満株を除いて一般的に100株単位での取引が必要になるが、ETFは1口や10口単位で取引可能な銘柄が多く、株式よりも少額で取引できる銘柄がほとんどである。

ただしETFでもハイリスク・ハイリターンな銘柄もある。レバレッジやダブルインバース、VIX(恐怖)指数連動の商品などがそれらに該当する。

ネット証券をうまく利用すれば、国内ETFの取引手数料はほぼ無料になる。ETFの仕組みを理解したうえで活用を検討したい。

 
執筆・松本雄一(セキュリティ・金融アドバイザー)

外資系コンピューター会社にてカスタマーサポート・開発・セキュリティ対策などを経験後に独立。自らの投資経験をもとに株式や投資信託などの投資情報を発信している。興味のある分野はフィンテックや新しい金融商品など。

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