投資信託における本当の「利回り」とは 儲かる度合いの正確な調べ方

2020.3.12
投資
(写真=gopixa/Shutterstock.com)
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投資した額からどのくらいの儲けが出たのかを「利回り」というが、投資信託において利回りを表す指標は何だろうか。投資信託のパフォーマンスを表す指標は騰落率や分配金利回りなどがあるが、本当の運用成績を表すものは「トータルリターン」だ。投信の利回りの考え方と、トータルリターンの計算方法を押さえておこう。

投資信託での「利回り」と「利率」の違い

「利回り」とよく混同しやすい言葉に「利率」がある。投資信託では投資金額に対する収益のことを、年単位に換算した「利回り」として扱われる。一方の「利率」は額面金額に対し1年間に受け取る利子の割合のことである。預金や債券ではあらかじめ利率が設定されているが、投資信託では一般的に約束された利率は存在しない。


例えば、年利率4%の債券を100万円分購入し、4年後に104万円で売却するとする。
  • 利子は16万円(4万円×4年)
  • 譲渡益は4万円
  • 4年間の収益合計は20万円

この場合は1年あたり5万円なので、100万円に対し利回りは5%である。

年利率4%の債券を100万円分購入し、4年後に96万円で売却した場合、

  • 利子は16万円(4万円×4年)
  • 譲渡益はマイナス4万円
  • 4年間の収益合計は12万円

この場合は1年あたり3万円なので、100万円に対し利回りは3%だ。つまり利率は4%で変わらなくても、運用次第で5%にも3%にもなるのが利回りというものである。

投資信託における利回りとは

利回りの計算は「(1)いくら投資して」と「(2)いくら儲かったのか」を運用年数で割ってパーセンテージに換算する。投下した資金に対して、どのくらいリターンがあったのかを示す。

利回りの具体的な計算式は、「(2)/(1)÷運用年数×100」。

一見単純だが、(2)をいかに正確に表せるかが重要だ。この(2)にあたる投資信託の儲けは2種類ある。

投資信託の価格を表す「基準価額」の差額利益(売買価格差)と、決算後に支払われる「分配金」だ。この両方を(2)に含める必要がある。また手数料や税金を差し引く必要がある。

投資信託の騰落率や分配金利回りは、正確には利回りではない

投資信託における利回りを表す指標として、「騰落率」を思い浮かべる人もいるかもしれない。たしかにパーセンテージで表記されており、利回りのように思ってしまうが、実は騰落率は儲けのうち基準価額しか考慮しておらず、もう一つのリターンである分配金が含まれていないのだ。つまり騰落率は投資信託の時価がどのように変動したのかを見るのに適しているもので、本当の利回りとは異なる。

それでは「分配金利回り」はどうか。今度は逆に、基準価額の値動きが考慮されていない。利回りという言葉が使われているため、投資信託の利回りと誤解されがちだが、分配金利回りは、配当金がどのくらい受け取れるかという情報でしかないのだ。

なお、分配金には「見せかけの利回り」が含まれるので注意したい。毎月分配型の投資信託には、運用益から支払われる「普通分配金」と、運用益が足りないために元本を切り崩して支払われる「特別分配金」がある。特別分配金の比率が高いファンドは、実質的にはマイナスリターンであっても分配金利回りがプラスに見えるようになっている。

投資信託の利回りはトータルリターンで見る

どれだけの利回りが見込めるのかを調べるには、どの指標を参考にしたらいいのか。そこで重視したいのは、トータルリターンだ。これは、基準価額の値動きと分配金の両方が考慮され、手数料を利益から差し引いて算出されるため、投資金額に対する儲けを正確に知ることができる。

トータルリターンは証券会社や投資信託の評価会社でもよく使用されているが、機関によって算出方法に微妙な違いがある。トータルリターンを見る時は、以下の3つの条件を満たしているか確認するようにしたい。

⑴基準価額の値動きと分配金を考慮している
⑵手数料を利益から差し引いている
⑶分配金を再投資することを前提としている

中でも重要なのは⑵だ。10万円の利益があっても2万円の手数料が発生している場合、本当の儲けは8万円。利回りは、コストを差し引いた利益で計算することで実質的な儲けを把握できる。⑶は複利の効果を加味して利回りを計算していることを意味する。長期投資では複利の効果を最大化するため、分配金は払い出しをせず次の元本に加える。なお、⑶は毎月分配型には当てはまらない。

投資信託の正しい利回りはモーニングスターの情報を活用

調べ方が難しい場合は、投資信託の格付け機関であるモーニングスター社のサイトを利用するといいだろう。同サイトでは、ファンドの一定期間ごとのトータルリターンが掲載されている。

主要ファンドのトータルリターン

下の表は1年間のトータルリターンの実績および3年、5年といった複数年のトータルリターンを年率で換算したものだ。純資産高の高いファンドをいくつかピックアップしている。

トータルリターンの表示例(モーニングスター、2020年1月9日時点)
ファンド名 1年 3年
(年率)
5年
(年率)
10年
(年率)
TOPIX連動型上場投資信託 野村 4.38% 7.23% 5.95% 9.49%
日経225連動型上場投資信託 野村 6.23% 10.27% 7.75% 11.41%
フィデリティ・USハイ・イールドF 4.67% 4.66% 2.83% 8.87%
フィデリティ・USリートB(H無) 14.00% 8.04% 5.58% 14.81%
ピクテ・グローバル・インカム株式(毎月分配)  12.93% 8.60% 2.00% 6.56%
ひふみプラス 4.62% 12.64% 12.33%

トータルリターンはタイミングによって数字が大きく異なる。2018年末には市場全体が大きく下げたこともあり、たとえばひふみプラスは当時の1年利回りはマイナス4.94%であった。しかし2020年1月時点だとプラスに転じている。

利回りは期間を変えて見ることも重要だ。一番上のファンド(TOPIX 連動型上場投資信託 野村)は1年だけだと4.38%だが、10年経つと9.49%にも及ぶ。特定の時期や期間のリターンだけを見てそのファンドが好調かどうかを判断するのは、実に材料不足であることが分かる。

アセットクラス(資産クラス)ごとの平均利回り

決められた指標(インデックス)と同じ値動きを目指すインデックス型投資信託なら、ある程度のリターンとリスクを予測することができる。下の表はアセットクラス(資産クラス)ごとに算出された年数ごとのトータルリターンである。

主要インデックスのリターン(myINDEX、2020年1月9日時点)
ファンド名   1年 3年
(年率)
5年
(年率)
10年
(年率)
日本株式 TOPIX トピックス(配当込み)  4.50% 7.40% 6.10% 9.60%
日本株式 日経平均株価 3.50% 8.10% 5.80% 9.50%
外国株式 MSCI オール・カントリー・
ワールド・インデックス
(ACWI)  
10.10% 10.80% 6.10% 11.80%
外国株式 MSCI コクサイ・インデックス
(KOKUSAI) 
11.40% 11.60% 6.70% 12.90%
外国株式 MSCI エマージング・
マーケット・インデックス
3.70% 7.70% 1.80% 6.20%
外国株式 S&P 500(配当込み) 11.80% 13.10% 9.20% 16.10%
日本債券 NOMURA-BPI 総合 2.60% 0.80% 1.60% 2.00%
日本債券 新発10年国債 -0.10% 0% 0.10% 0.50%
外国債券 FTSE 世界国債インデックス
(除く日本)
4.40% 2.90% -0.30% 4.40%
日本不動産 東証REIT指数(配当込み)  27.00% 11.60% 7.90% 15.10%
外国不動産 S&P 先進国REIT指数
(除く日本)
12.90% 9.10% 5.20% 13.80%

必ずというわけではないが、利回りは債券よりは株式、国内よりは海外のほうがより高い傾向にある。ただし値幅が大きくリスクと隣り合わせであることは注意しておきたい。

新興国市場(エマージングマーケット)のほうが先進国市場よりもハイリスク・ハイリターンというイメージがあるが、近年に限って言うとそうとも言い切れない。不動産投資信託(REIT)はここ1~2年が非常に好調だったこともあり、高い利回りとなっている。

上の図では新発10年国債(1年)とFTSE 世界国債インデックス(5年)を除きすべてプラスリターンとなっているが、いつでもこの利回りが保証されるわけではない。

投資信託の正確な利回り(トータルリターン)の3つの注意点

トータルリターンを使用するにあたっては、注意点もある。そのうち3つを挙げると以下のようになる。

投資信託のトータルリターンはあくまでの過去実績

トータルリターンは過去の運用実績を基に算出したもので、将来の利回りを保証するものではない。過去の実績では5%のプラスでも、次期は10%のマイナスになることもあり得る。投資で最も重要なのは「売買のタイミング」であり、それによって利回りが大きく異なることを覚えておきたい。

投資信託の売買の際の手数料が引かれていない

トータルリターンは基準価額を利用して算出されるため、販売手数料(購入時手数料)と換金手数料(信託財産留保額)が利益から差し引かれていない。売買時に手数料が発生する投資信託の場合、利回りがわずかに低下する。しかし、保有期間中発生し続ける信託報酬や売買委託手数料に比べると軽微なものだ。なお、信託報酬など純資産から控除される手数料は、差し引いて計算されている。

税金が考慮されていない

投資信託では、売却益と普通分配金にそれぞれ20.315%の所得税がかかる(所得税+住民税+復興特別所得税)が、トータルリターンでは税金は考慮されていない。NISAやiDeCoのような非課税口座の場合はそのままで問題ないが、一般の口座の場合は利回りから税コストも差し引く必要がある。

利回りの高い投資信託の注意点

投資をするからには利回りは最重要視したいところではあるが、トータルリターンの高さだけで投資判断をおこなうことは絶対に避けたい。それは競馬でオッズだけを頼りに馬券を買うようなものだからだ。

使い古された投資の基本原則であるが、リターンには必ずリスクが伴う。筆者が金融商品の相談を受ける時も「元本が保証されて儲かる方法はありますか」と聞いてくる人は定期的に現れるが、「ありません」と答えるほかない。

モーニングスターのファンドランキングを見ても、上位にランクインするのは株式ブル型4.3倍、株式ベア型3倍、エマージング(新興国)株式、小型成長株といった値動きの激しいものが多数を占める。これらのファンドは大きく値上がりすることもあるが、値を下げることもあるので注意したい。

投資信託で高い利回りの商品でも自身がリスクを受け入れられるかどうか

ハイリスクで利回りの高い商品が悪いということではない。たとえばレバレッジ投資信託なら少ない金額で何倍もの投資成果を狙えるが、同様の損失を被る恐れもある。ベンチマークとなるインデックスは変わらないのに下落することもある。

投資信託は利回りだけでなく、基準価額の推移、資産クラス、資産規模、信託報酬、流動性などの要素も併せて比較するようにしたい。自身がリスクや不確定要素を考慮したうえで、利回りの高い商品を選ぶことに何ら問題はないだろう。

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篠田わかな
執筆・篠田わかな
外資系経営コンサルティング会社で製造・物流・小売部門のコンサルタント業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。
外資系経営コンサルティング会社で製造・物流・小売部門のコンサルタント業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。

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