NISAを始めたものの買いたい金融商品の取り扱いがなく、他の金融機関の取扱商品やツールに魅力を感じるなら金融機関の変更を考えてもいい。NISA口座の金融機関変更の手続きで気を付けるべきポイントやNISAの種類変更について知っておきたい。
目次
1.一般NISA口座の金融機関変更を検討すべきポイント
2.NISA口座変更のポイントをネット証券5社で比較
3.つみたてNISA口座の金融機関変更を検討すべきポイント
4.NISA口座の金融機関を変更する4つのステップ
5.NISA口座の種類のみを変更するケースと手続き
6.金融機関とNISA種類の両方を変更する場合の手続き
7.金融機関やNISA種類を変更するときのデメリット
8.2024年に新NISAが始まると口座変更はどうなる
9.NISA口座変更の際は証券口座の開設も忘れずに
10.NISA口座の金融機関やNISA種類が自分に適しているか確認を
NISA口座は1人1口座しか開設できないが、金融機関の変更は1年単位でできる。対象商品が多い一般NISA(通常のNISA)の金融機関の変更を検討する際のポイントは3つある。
一般NISAで取引できる金融商品は、利用する金融機関で異なる。銀行の一般NISA口座では株式を取引できない。また銀行は、投資信託の取扱本数が証券会社よりも少ない傾向がある。証券会社も、投資信託の取扱本数や海外株式・ETFの対象国や取扱数は大きく異なる。
NISA口座を利用している金融機関の取扱商品が少ない場合は、NISA口座を別の金融機関へ変更することで解決できる。
一般NISAの金融商品の取引手数料も金融機関によって変わる。近年は取引手数料無料化の流れがあり、割安な手数料を打ち出すネット証券が増えている。
ネット証券の多くは、NISAに限らず投資信託の購入手数料を無料にしており、一般NISAでの株式取引も手数料を無料にしているところが多い。
同じ商品を取引するなら、手数料が安い金融機関を利用するほうがよいだろう。
WEBサイトやアプリなどのツールの使いやすさも大切だ。管理画面が見にくいことや取引操作しにくいと感じるなら別の金融機関へ変更することで不満を解消できる可能性がある。
スマホアプリへの対応も金融機関により差がある。NISAをスマホアプリで管理したいなら各社のアプリを比較して自分が望むものを探したい。
NISA口座を変更する際に注目したいポイントを紹介したところで、ここからはネット証券5社(SBI証券・楽天証券・マネックス証券・松井証券・岡三オンライン証券」の取扱商品・取引手数料・ツールを比較してみよう。
ネット証券 | 一般NISA取扱商品 | NISA 国内株式 手数料 |
|
投資信託 本数 |
海外株式 対象国数 |
||
SBI証券 |
2,600本弱 | 9ヵ国 | 無料 |
約2,600本 | 6ヵ国 | 無料 | |
証券 |
約1,100本 | 2ヵ国 | 無料 |
松井証券 |
約1,200本 | なし | 無料 |
岡三 オンライン 証券 |
約500本 | なし | 無料 (※) |
取扱商品で特に差が大きいのは、投資信託の本数と海外株式の対象国数だ。取引したい海外株式があれば、その国への対応とその銘柄の取引が可能かどうかを確認したい。
一般NISAの金融機関としては、ネット証券の取引手数料は最安レベルだ。上記のネット証券5社の投資信託の購入時手数料は無料で、国内株式の取引手数料もほぼ無料だ。
ネット証券各社は、パソコンでの一般NISA取引に対応している。今回紹介したネット証券5社は、スマホアプリでも一般NISAの取引ができる。
参考までに、5社のツール名とその特徴を紹介しよう。
ネット証券 | NISA対応 スマホアプリ |
特徴 |
SBI証券 |
SBI証券 株アプリ |
情報収集から 注文まで アプリで完結 |
iSPEED | AppleWatch でも使える |
|
マネックス 証券アプリ |
見やすい 画面デザイン |
|
松井証券 |
株touch | 自動更新の 株価ボード |
投信アプリ | 「NISA優先」での 取引可能 |
|
岡三 オンライン 証券 |
岡三ネット トレーダー スマホ |
シンプルな 操作画面 |
ネット証券 | つみたてNISA取扱商品数 |
1位 楽天証券 | 170本(国内金融機関で最多水準) |
2位 SBI証券 |
169本(国内金融機関で最多水準) |
3位 松井証券 | 155本 |
151本 | |
5位 au カブコム証券 |
151本 |
つみたてNISAでは、購入時手数料を考慮する必要はない。つみたてNISAの投資信託(ETFを除く)はノーロード(購入時手数料が無料)だからだ。
つみたてNISAのツールについては、あまり気にする必要はないだろう。つみたてNISAは長期積立投資であり、頻繁に設定を変更したり短期的な値動きを追ったりすることはないからだ。
NISA口座の金融機関を変更する場合は最短でも2~3週間程度かかるため、余裕をもって申し込みたい。
NISA口座の金融機関を変更する際のおおまかな流れは、以下のとおりだ。
⑴変更前の金融機関に「金融商品取引業者変更届出書」を提出する
⑵変更前の金融機関から「勘定廃止通知書」が届く
⑶変更後の金融機関に「勘定廃止通知書」と「非課税口座開設届出書」を提出する
⑷変更後の金融機関が税務署へ申請し、承認後にNISA口座が開設される
提出する書類の名称や請求方法は、金融機関によって異なる場合がある。変更前と変更後の金融機関で、NISA口座の金融機関を変更する手順を確認してほしい。
なお、2019年に開始されたNISA口座簡易開設(「非課税口座簡易開設届出書」を利用)は、金融機関の変更では利用できない。
NISA口座には「一般NISA」と積立投資用の「つみたてNISA」、未成年者用の「ジュニアNISA」がある。ジュニアNISAは金融機関の変更ができない。
金融機関を変更せず、NISAの種類を変更(一般NISAからつみたてNISA、つみたてNISAから一般にNISA)するケースを考えてみよう。
NISAの種類のみを変更する際の手続きは、NISA口座の金融機関の変更に比べると簡単だ。
一般NISAとつみたてNISAを変更するには、NISA口座がある金融機関から書類を取り寄せる。書類の返送後、金融機関にてNISAの種類が変更される。
例えばSBI証券でNISAの種類変更を申し込む場合は、SBI証券のサイトにログインし以下のボタンを押すことで、書類を取り寄せるためのページに移動できる。
NISAの種類変更に要する期間は、金融機関により異なる。SBI証券の場合は、書類が到着してから1~2営業日程度で変更される。
NISAの種類を変更しても、変更前に買い付けた資産は非課税期間中はそのまま保有できる。NISAの種類変更後の資産の選択肢は、そのまま保有する、売却する、非課税期間終了時に課税口座(特定口座や一般口座)に移管する、のどれかだ。
変更後のNISA口座に、変更前に買い付けた資産を移管することははできない。一般NISAで買い付けた資産は一般NISAのまま、つみたてNISAで買い付けた資産はつみたてNISAのまま保有することになる。
NISAの種類を変更しても、非課税での投資可能期間は一般NISA、つみたてNISAのどちらで買い付けたかで決まる。
例えば、2018年から2020年まで一般NISAを3年間利用して、2021年からつみたてNISAに変更するケースで考えてみよう。
変更前の2020年に一般NISAで買い付けた資産の非課税期間は5年間であり、2024年までは一般NISAの口座で非課税で保有できる。
変更後の2021年につみたてNISAで買い付けた資産の非課税期間は、つみたてNISAの非課税期間が20年であるため、2040年まで非課税で保有できる。
NISAの種類を変更しても、非課税で投資できる期間には影響しないということだ。
NISAの金融機関やNISAの種類(一般NISA、つみたてNISA)を変更できる期間は決まっている。
年内に変更したい場合は、申請を受けた金融機関が9月30日までに手続きを完了する必要がある。年内の変更を希望するなら、余裕をもって申請したほうがいいだろう。10月から12月までに申請した場合は、申請の翌年からの変更になる。
一般NISAでは、5年の非課税期間が満了した株式や投資信託などは課税口座(特定口座や一般口座)へ移管するか、翌年のNISA非課税投資枠へ移管することになる。
翌年のNISA非課税投資枠へ移すことを「ロールオーバー」と呼ぶ。ロールオーバーすることで、さらに5年間非課税で商品を保有できるのだ。
例えば一般NISAで2018年に買い付けた金融商品は、2022年12月末で非課税期間が満了する。これをロールオーバーすれば、2027年12月末まで非課税で保有できる。
ただし金融機関を変更している場合は、2018年以前に買い付けた金融商品であってもロールオーバーできない。ロールオーバーが可能なのは同一の金融機関に限られる。
気をつけたいのが、2024年からのNISA制度改正だ。改正前は、一般NISAの投資可能期間は2023年までだった。
一般NISAで2019年に買い付けた金融商品は、2023年12月末で非課税期間が満了になる。2024年の非課税投資枠へのロールオーバーは、新制度(新NISA)に従うことになる。
新NISAでは一般NISAの投資枠が変更されるため、ロールオーバーの仕組みは少々複雑になりそうだ。新NISAへのロールオーバーについては、今後発信される情報を参照したい。
なお、つみたてNISAは非課税期間が20年と長期であるためか、もともとロールオーバーはできない。
NISAの制度は2024年に変更されて、新NISAになる。新NISAでの口座変更はどうなるのだろうか。
新NISAは、令和2年度税制改正により見直されたNISA制度だ。主な改正ポイントは、以下の3点である。
NISAの5年延長では、一般NISAは2023年から2028年に、つみたてNISAは2037年から2042年に延長される。
一般NISAの投資枠(年間120万円)は、2024年から2階建てに変更される。1階部分の投資枠は年間20万円で、つみたてNISAと同様の商品が対象。2階部分の投資枠は年間102万円で、現在の一般NISAと同様の商品が対象だ。
一般NISAの5年間の投資期間終了後は、1階部分のみをつみたてNISAに移行できる。
一般NISAの投資枠の2階建て化には、1階部分でつみたてNISAと同様に長期・分散・積立投資を促進したいという思惑があると考えられる。
一般NISAの利用者が金融機関を変更することなく、そのまま2024年以降の新NISAを利用する場合の手続きは不要と予想される。2020年11月時点では新NISAへの移行に関する公式発表はないため、情報を待ちたい。
一般NISAで積立投資をしている人は、2階建て化による積立設定の変更が必要になるかもしれない。
つみたてNISAの利用者が金融機関を変更することなく、そのまま2024年以降の新NISAを利用する場合も手続きは不要と予想される。
新NISAでのつみたてNISAの変更点は、買付可能期間が5年延長(「2037年まで」から「2042年まで」)されることだけだ。つみたてNISAの利用者は、買付可能期間の延長以外は新NISAを意識する必要はないだろう。
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