株主優待の中でも人気があるのが、「食品」の優待だ。食品といっても、お食事券や特産品カタログギフトなど内容はさまざまだが、今回は特に自社製品を受け取れる食品メーカーの銘柄に注目した。株主優待の選び方と注意点について見ていこう。

【目次】
1.食品メーカーの8割が株主優待を実施
2.株主優待の2つの選び方
3.食品がもらえる株主優待は種類が豊富
4.自社商品の食品がもらえる株主優待のおすすめ銘柄10選
5.食品がもらえる株主優待投資の注意点

1.食品メーカーの8割が株主優待を実施

まず、株主優待の現状について確認しておこう。

株主優待目当てで株を買う個人投資家は多い

株式を購入する理由として36.2%の人が「株主優待を受けられる」ことを挙げており、「短期の値上がり益を期待して」といった理由よりも割合が高い(『平成30年度 証券投資に関する全国調査』による)。株主優待に関する本が多く出版されており、インターネット上にも株主優待を扱った記事は多く、個人投資家の株主優待への関心の高さがうかがえる。

ただしこれは個人投資家特有の傾向で、機関投資家などは銘柄の選定にあたって株主優待の有無や内容を考慮することはない。

株主優待が多い業種は「食品」「小売」

業種別に見ると、「食品」「水産」「農林」に該当する企業の株主優待実施率が高い。同ジャンルの上場企業のうち83.9%が何らかの株主優待を実施している(大和インベスター・リレーションズの調査による)。消費者に身近な製品がある企業は、販促・宣伝目的で優待制度を活用する傾向がある。割引券や食事券を配りやすい外食などの小売業も実施率が高めだ。

一方、金属製品、機械、電気機器、輸送用機器、精密機器などの企業間取引を主体とする企業は、プリペイドカードや金券といった優待が多い。

2.株主優待の2つの選び方

優待銘柄は種類、件数ともに増加傾向にあるが、どのようにして選べばよいのだろうか。

優待利回りと配当利回りで株主優待銘柄を選ぶ

優待銘柄を選ぶにあたって、「優待利回り」は一つの指標になる。優待利回りとは株の購入金額に対して株主優待の価値がどのくらいあるかを示したもので、投資額に対して優待の額が大きいと利回りが高くなる。投資額に対して配当金がどのくらいあるかを表す「配当利回り」とは別のものだが、両者を合わせた利回りを「総合利回り」と呼ぶこともある。

株主優待の満足度は利回りだけでは計れない

「優待利回りが高い銘柄を買えばよい」と思うかもしれないが、そうとは限らない。優待は金銭ではなく商品やサービスなので、金銭的価値が高くても自分にとって必要でなければ無用の長物となってしまう。

例えば2,500円分の自社商品を受け取った場合、それがお気に入りの商品であれば5,000円分の価値にもなり得るが、興味がない人にとって価値はゼロだ。したがって、株主優待銘柄は利回りのみに注目するのではなく、「欲しいもの」「うれしいもの」といった主観的な理由で選ぶのもよいだろう。

3.食品がもらえる株主優待は種類が豊富

食品関係の株主優待は、主に以下の4種類に分けられる。

(1)自社製品詰合せ

株主優待と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、自社製品詰合せだろう。お気に入りのメーカーやブランドがあるなら、ぜひ検討したい。あらかじめ品物が決まっている優待品や、お楽しみの詰め合わせセットなどがあり、お歳暮のような感覚で受け取れる。

(2)自社店舗で使えるお食事券

外食産業によく見られるのが、自社店舗で使えるお食事券や割引券だ。ファミリーレストラン、居酒屋、牛丼屋、ファストフォード、コーヒー店など、いつも利用している店がある場合はメリットが大きい。コロナ禍で外食自粛が続いているため、有効期限の延長や代替品との交換などの措置を取る企業もある。

(3)お米や飲料水など自社製品以外の食品

お米は優待品の定番だ。実際にお米を作っている企業ではなく、地方銀行や地方に展開する企業、飲食チェーンなどが地元のお米を優待品とするケースが多い。「全国共通おこめ券」を贈呈している企業もあり、こちらは食品というより金券としての色合いが強い。お米以外にもミネラルウォーターや地域特産品など、自社製品ではない食品の優待品は珍しくない。

(4)食品中心のカタログギフト

好きな商品を選べるカタログギフトも人気がある。株主優待でカタログギフトは人気だが、食品が中心のカタログギフトなら、株主優待の人気商品2つのいいとこ取りができると言える。カタログギフトを優待とする企業は金融、不動産、卸売、学習サービス、システム開発、自動車部品などさまざまだ。

4.自社商品の食品がもらえる株主優待のおすすめ銘柄10選

自社製品を優待品とするおすすめ銘柄をピックアップした(情報は2021年2月25日時点)。

銘柄(コード) 優待品 ※1 最低投資金額 権利確定月 優待利回り ※2
JT
(2914 )
2,500円相当の
パックご飯、カップ麺など
19万3,756円 12月
シダックス
(4837)
2,500円相当の
「中伊豆ワイナリー」のワイン
3万455円 3月 8.11%
キリンホールディングス
(2503)
缶ビール4本、
清涼飲料7本詰合せ
21万3,648円 12月 0.47%
味の素
(2802)
1,500円相当の
調味料、インスタント飲料など
22万1,898円 3月
日清食品
(2897)
2,000円相当の
インスタント食品、
オリジナルグッズ
82万4,374円 3月 0.36%
カゴメ
(2811)
2,000円相当の
野菜飲料
32万8,198円 6月
マルハニチロ
(1333)
水産缶詰、瓶詰、海苔詰合せ、
ソーセージなどから1品
25万2,298円 3月
明治ホールディングス
(2269)
お菓子など2,000円相当 69万3,374円 3月 0.28%
理研ビタミン
(4526)
1,000円相当
(年間 2,000円相当)の
乾物、調味料など
13万5,906円 3月・9月 1.47%
伊藤ハム米久ホールディングス
(2296)
5,000円相当の
自社製品
74万4,374円 3月 0.67%
※1最低単位保有の場合。優待内容は保有株数による
※2 金額換算不可能な優待商品の場合は「-」

上記の表にある企業名はいずれも、一度は耳にしたことがあるのないだろうか。カゴメ、日清食品、キリンホールディングスは優待銘柄としておなじみである。

何円分の優待品がもらえるのかが気になるところだが、最低投資額との兼ね合いで検討したい。優待品の金額が同じなら、投資額が少ないほど利回りは高くなる。

上記の表は、最低単位(100株または1,000株)を保有している場合の優待内容で、保有株数が多くなるほど優待内容は充実する。また1年以上、3年以上など、保有期間が長くなるほど優遇される銘柄もある。

最低投資金額は「株価×単元株数」で決まるが、人気優待銘柄は高額になりがちなので注意したい。例えば日清食品を選ぶと、それだけで80万円の資金を振り分けることになり、他の選択肢を狭める。優待銘柄以外でも運用も行いたい場合は上限額を決めるなどして、投資計画を立てておきたい。

権利確定月は、3月もしくは12月に集中している。権利確定月が年に2回ある場合は、優待も2回受けられる。優待利回りは高いに越したことはないが、優待の価値は受け取る人によって変わり、金銭に換算できない部分もあるので、優先度は個人の価値観によるだろう。

5.食品がもらえる株主優待投資の注意点

見ているだけで楽しくなる株主優待だが、投資にあたっては注意したい点もある。

権利確定日のスケジュール

株主優待を受けるためには、「権利確定日」に株主名簿に名前が載っている必要がある。株式は買付が確定してから2営業日後に受け渡されるため、権利確定日の2営業日前である「権利付最終日」の取引時間の終了までに取引が成立しなければならない。これは食品に限らず、株主優待投資の基本だ。

優待内容の変更

食品の場合は、優待内容の変更が頻繁にあるため気をつけたい。特に最近増えているのが、「自社製品の詰合せ」と「寄付」の選択制だ。社会貢献としての意味合いの他、優待品の受け取りが不要な機関投資家の要望に応えた取り組みである。

また、保有株数や保有年数に応じて、優待品の内容を変えるところも増えている。企業としては、自社株をできるだけ長く、多く保有してくれる投資家を増やし、株価を安定させたいからだ。

ファンダメンタルズ分析は必須

優待内容ばかりに目を奪われて、肝心の業績や財務状況の分析をおろそかにするのは避けたい。株主優待はあくまでも付加価値であり、株式投資をするにあたっては適切なリスク分析が不可欠だ。人気優待銘柄にありがちな、権利確定日前の値上がり、権利確定後の値下がりといった特徴にも注意したい。

ポートフォリオに偏りが出すぎないように

食品の株主優待投資は実利を伴うため、いつの間にか投資先のほとんどが食品の優待銘柄になっているということもあり得る。しかし、ポートフォリオが日本株式の1業種に偏っているのは、株主優待投資における投資額に上限を設けるなどして、ポートフォリオ全体のバランスを取るようにしたい。

篠田わかな
執筆・篠田わかな
外資系経営コンサルティング会社で製造・物流・小売部門のコンサルタント業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。
外資系経営コンサルティング会社で製造・物流・小売部門のコンサルタント業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。

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