3月は、1年の中で最も株主優待の話題でにぎわう月だ。人気商品が自宅に届く、割引価格で買い物ができる、金券や買物券をもらえるといった多彩な優待内容は、投資未経験の人でも興味があるだろう。ここでは、3月権利確定の高配当で優待内容が豪華な「優待王道銘柄」を紹介する。

目次
1.3月は株主優待銘柄数が最多
2.高配当で株価好調、優待品が豪華!3月権利確定の銘柄5選
3.株主優待狙いの投資で注意すべきこと

1.3月は株主優待銘柄数が最多

日本には、企業が配当とは別に株主へ利益を還元する「株主還元制度」がある。お金ではなく製品・サービスの提供や割引などで、株主の出資に対する感謝の意を表すものだ。企業にとっては、自社の製品・サービスの宣伝活動でもある。

株主が優待をいつ受けられるかは、銘柄によって異なる。株主優待の権利確定日が最も多いのは3月末日で、次に9月、12月が多い。月別の株主優待銘柄数は以下のとおり。他の月に比べて、3月が圧倒的に多いことがわかるだろう。

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
36 145 815 34 38 116 35 114 419 37 41 183
(※筆者作成、2021/1/13時点)

 

3月に株主優待を狙うべき理由は、銘柄数だけではない。最低投資金額が10万円以下の銘柄が100以上と豊富で(1月は9銘柄)、初心者でも買いやすいからだ。

また3月を決算月とする企業には、日本を代表する大企業が多い。日経平均を構成する225銘柄のうち、トヨタやソフトバンクグループをはじめとする187銘柄の株主優待月が3月だ。なじみのある企業の優待であれば、利用しやすいだろう。

株主優待を実施している企業の株式を権利確定日に保有していれば、保有株数に応じた優待を受けられる。株主優待を受ける権利を得られる最終取引日(権利付き最終売買日)の直前は株価が高くなりやすいので、少し早めに買うとよいだろう。

2.高配当で株価好調、優待が豪華!3月権利確定の銘柄5選

では、どのような銘柄を買えばよいのだろうか。すべての企業が株主優待を実施しているわけではないので、証券会社のホームページで、株主優待銘柄を検索して選ぶとよいだろう。

自分の好みで選んでも構わないが、利回りが高く、株価も好調であることに越したことはない。以下の5銘柄は3月権利確定で、高配当もしくは優待内容が豪華で業績も期待できる、株主優待で有名な銘柄だ。なお、割引券など換金できない優待の利回りは記載していない。

銘柄名 優待
利回り
配当
利回り
最低
投資金額
権利
確定日
優待内容
エイベックス
(7860)
-- 10.01% 12万900円 3月末 チケット割引、
自社の音楽および
映像コンテンツ配信
RIZAPグループ
(2928)
14.28% -- 1万4,100円 3月末 優待品
交換ポイント
オリックス
(8591)
-- 4.11% 18万1,700円 3月末
9月末
カタログギフト
株主カード
ANA
ホールディングス
(9202)
-- -- 22万5,500円 3月末
9月末
株主優待割引運賃、
ホテル・ツアー・
食事等優待券
日清食品
ホールディングス
(2897)
0.33% 1.21% 90万6,000円 3月末
9月末
社グループ
製品詰合せ
※筆者作成

 

それぞれの企業の特徴を紹介しよう。

エイベックス(7860)……増配決定、音楽ファンにおすすめの銘柄

音楽ソフト大手エイベックスは、2020年12月24日に年間配当額を「1株あたり121円」とすると発表した。前期比71円の増配で、配当利回りは10%を超えている。

株価も好調だ。2021年3月期の連結最終損益が150億円の黒字になるとの予想から、一時前日比8.9%高まで上昇した。

株主優待は、音楽ファンなら見逃せない内容だ。大人気野外ライブの「a-nation」の優先予約や割引、限定動画コンテンツの贈呈や株主総会後のミニライブの参加など。ただし新型コロナウイルスの影響で、音楽イベントが軒並み中止となっていることに注意したい。

RIZAPグループ(2928)……M&Aに積極的な株主優待の定番銘柄

スポーツジム経営や美容・健康器具の通販を手掛けるRIZAPグループは、株主優待に積極的な企業としても知られている。

優待はポイントとして付与され、自社グループの約150種類の商品と交換できる。ポイントは最大3年間積み立てられるので、長期保有者に有利な仕組みといえるだろう。優待利回りは14%超と突出している。

コロナ禍でフィットネスジム事業は苦戦を強いられているが、固定費削減やアンティローザをはじめとする関連子会社の増収などで健闘している。株価は年末から年明けにかけて20%近く上昇している。

オリックス(8591)……多角的に事業を展開する優良グローバル企業

オリックスの事業はリース、レンタカー、不動産、事業投資、環境エネルギー、保険、銀行、クレジットなど多岐にわたる。海外展開にも積極的だ。

そのような企業文化であるためか、株主優待もバラエティー豊かだ。オリックスグループの各種サービス(ホテル・旅館・レストラン・野球観戦・水族館・人間ドックなど)を割引価格・優待価格で利用できる株主カードが贈呈される。

オリックスは設立初年度を除く55年間、毎期黒字を計上する優良企業なので、安心して株式を保有できるだろう。

ANAホールディングス(9202)…旅行やゴルフ好きにおすすめの交通系優待銘柄

ANAホールディングスは国内線、国際線で首位の航空会社だ。傘下にはLCCのPeach(ピーチ)がある。サービス力の高さに定評があり、貨物など企業物流にも強みがあるため収益が安定している。

2020年はコロナ禍で業績が悪化したが、コスト削減が進んだためアフターコロナの業績回復が期待される。株価は低迷しているが、今が買いのチャンスと見ることもできるだろう。

優待は航空運賃割引のほか、提携ホテルや旅行ツアー、空港内売店、ゴルフ場などで使える優待券が進呈される。

日清食品ホールディングス(2897)…自社製品の詰合せがうれしい食品系銘柄

食料品がもらえる優待銘柄の代表が日清ホールディングスだ。カップ麺の国内シェア1位で、袋麺も強い。

2020年の5月中旬から新型コロナウイルス感染症対策による巣ごもり需要が拡大したことで、即席めんや菓子・飲料事業が増収増益となった。現在株価はピーク時よりも低い水準だが、2021年も好業績が期待できる。

優待利回りは高くないが、商品に魅力があるため投資家に人気だ。100株以上の保有者には年1回、300株以上の保有者には年2回、即席めんなどの自社グループ製品詰合せが贈呈される。

3.株主優待狙いの投資で注意すべきこと

株主優待狙いの投資は楽しみながら実益も得られるが、投資するにあたっては気をつけたいこともある。

よくある失敗が、優待の豪華さに目を奪われて、ファンダメンタルズ(企業の業績や財務状況)をよく見ないで株式を取得してしまうことだ。配当利回りや優待利回りが高くても、株価が下がればトータルでは損失になる。

また優待だけに注目して銘柄を選ぶと、ポートフォリオが偏りやすい。株主優待は日本特有の制度なので、ポートフォリオが日本株ばかりになってしまうのだ。

資産運用は分散投資が基本なので、株主優待銘柄はポートフォリオ全体のバランスを考慮した上で購入するようにしたい。

 

篠田わかな
執筆・篠田わかな
外資系経営コンサルティング会社で製造・物流・小売部門のコンサルタント業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。
外資系経営コンサルティング会社で製造・物流・小売部門のコンサルタント業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。

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