配当や株主優待を受けるには、「権利付き最終日」までに株を買い、「権利確定日」に株主となっている必要がある。いつまでに株を買えば権利が得られるのか、権利確定日に関する注意点とあわせ、実際の例で確認してみよう。
目次
1,配当・株主優待とは?株主の主な3つの権利
2,権利確定日・権利付き最終日・権利落ち日の違い
3,2021年の権利確定日・権利落ち日・権利付き最終日一覧
4,権利確定日に関する注意点
5,リスク管理と計画的な取引が大切
1,配当・株主優待とは?株主の主な3つの権利
企業の株を購入すると「株主」になり、保有している株数(出資額)に応じた権利が得られる。主な3つの権利と、株式投資の基本である「配当」「株主優待」について解説しよう。
株主の主な権利は3つ
株主の権利には、主に次の3つがある。
・議決権……株主総会で会社の重要事案の決議に参加し、投票する権利。1単元につき1つの議決権が与えられる
・利益配当請求権……会社の利益から配当金などの分配を受ける権利
・残余財産分配請求権……会社が解散した際に、会社に残った資産の分配を受ける権利
配当とは企業が株主に利益を分配すること
配当とは、利益配当請求権に基づき、企業が株主に利益を分配することをいう。配当の有無や、1株あたりの配当額は、企業の業績や方針によって決まり、株主が保有する株数に比例して支払われる。その動向は株価にも影響する。
株主優待とは企業が株主に自社製品やサービスなどを提供する制度
株主優待とは、企業が株主に対し、自社の製品やサービスなどを提供する制度だ。安定的な株主となってくれる個人株主の増加や、自社の宣伝などを目的に行われる。各企業が任意で行う制度ではあるが、2021年1月時点で1,500社以上が実施しており、株式投資の魅力のひとつになっている。
配当や株主優待は「権利確定日」に株主である人に与えられる
配当や株主優待を受けるには、それぞれの会社が定める「権利確定日」に、株主として株主名簿に記載されていることが条件だ。株を買えばすぐに権利が得られるわけではないので注意したい。さらに、株主優待を受けるには、銘柄によって保有株数や保有期間の条件が課されることもある。
2,権利確定日・権利付き最終日・権利落ち日の違い
権利確定日時点(下表の例では31日)で株主であるには、権利確定日の2営業日前までに株を買わなければならない(同29日)。購入した株の受渡し(代金支払いと受け取り)が、買付日(約定日)の2営業日後に行われ、その日に株主として株主名簿に記載されるからだ。このような仕組みから、「権利確定日」「権利付き最終日」「権利落ち日」という3つの「日」が登場する。
権利確定日……株主としての権利が確定する日
権利確定日(割当基準日)とは、「株主としての権利が確定する日」として、それぞれの企業が定める日をいう。一般的には決算期末や月末(の最終営業日)に設定されることが多いが、15日や20日に設定している企業もある。
権利付き最終日……この日までに株を買えば株主の権利が得られる日
権利付き最終日とは、この日までに株を保有していれば株主の権利を得られる最終の取引日をいう。受渡日が権利確定日となる日、つまり「権利確定日の2営業日前」が権利付き最終日にあたる。
権利付き最終日当日、「大引け(後場取引終了)」までの買付けが対象であり、東京証券取引所に上場する銘柄は15時まで、それ以外の名古屋証券取引所、札幌証券取引所、福岡証券取引所に上場する銘柄は15時30分までに株を購入する必要がある。
証券会社によっては私設取引所(PTS)で夜間にも株を売買できるが、夜間取引での買付分は翌営業日扱いとなる。そのため、権利付き最終日の夜間取引で株を買っても、直後の権利確定日に株主の権利は得られない。
権利落ち日……権利付き最終日の翌営業日
権利落ち日とは、権利付き最終日の翌営業日をいう。この日に株を買っても、権利確定日までに受渡しが完了しないため、直後の権利確定日に株主の権利は得られない。一方、権利付き最終日まで保有していた株は、権利落ち日に売っても受渡日が権利確定日後となるため、株主の権利を得られる。
権利付き最終日に株を買い、権利落ち日に株を売れば、配当や株主優待など株主の権利は得られる。しかし、権利落ち日は配当や優待が受け取れない分、株価が下がりやすい傾向がある。特に高配当株や人気優待株は注意が必要だ。
3,2021年の権利確定日・権利落ち日・権利付き最終日一覧
月末が権利確定日となる銘柄について、2021年の権利確定日、権利落ち日、権利付き最終日をまとめたのが次の表だ。
<2021年の権利確定日・権利落ち日・権利付き最終日一覧>
権利付き最終日 | 権利落ち日 | 権利確定日 | |
2021年1月 | 27日(水) | 28日(木) | 29日(金) |
2021年2月 | 24日(水) | 25日(木) | 26日(金) |
2021年3月 | 29日(月) | 30日(火) | 31日(水) |
2021年4月 | 27日(火) | 28日(水) | 30日(金) |
2021年5月 | 27日(木) | 28日(金) | 31日(月) |
2021年6月 | 28日(月) | 29日(火) | 30日(水) |
2021年7月 | 28日(水) | 29日(木) | 30日(金) |
2021年8月 | 27日(金) | 30日(月) | 31日(火) |
2021年9月 | 28日(火) | 29日(水) | 30日(木) |
2021年10月 | 27日(水) | 28日(木) | 29日(金) |
2021年11月 | 26日(金) | 29日(月) | 30日(火) |
2021年12月 | 28日(火) | 29日(水) | 30日(木) |
株式市場は土日祝日と年末年始が休場となるため、権利付き最終日が休業日にあたるときや、権利確定日との間に休業日をはさむときは、日付が変わるので要注意だ。
月末が休業日の場合
本来権利確定日となるはずの日が休業日にあたるときは、その直前の営業日が権利確定日となる。
例えば2021年1月31日は日曜日であるため、1月末日を権利確定日とする銘柄は、31日の直前の営業日である金曜日、29日が権利確定日となる。これに伴い、権利付き最終日と権利落ち日も、それぞれ27日、28日に前倒しになる。
<2021年1月の権利確定日・権利落ち日・権利付き最終日(例)>
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | 土曜日 | 日曜日 |
25日 営業日 |
26日 営業日 |
27日 営業日 |
28日 営業日 |
29日 営業日 |
30日 休業日 |
31日 休業日 |
権利付き 最終日 |
権利 落ち日 |
権利 確定日 |
権利確定日と権利付き最終日の間に休業日をはさむ場合
権利付き最終日は、権利確定日の2「営業日」前であるため、間にある休業日はカウントしない。
例えば2021年5月は、31日(月曜日)が権利確定日となっている。この場合、休業日にあたる土日(29日、30日)はカウントせず、2営業日前にあたる木曜日、27日が権利付き最終日となる。
<2021年5月の権利確定日・権利落ち日・権利付き最終日(例)>
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | 土曜日 | 日曜日 |
24日 営業日 |
25日 営業日 |
26日 営業日 |
27日 営業日 |
28日 営業日 |
29日 休業日 |
30日 休業日 |
権利付き 最終日 |
権利 落ち日 |
|||||
31日 営業日 |
||||||
権利 確定日 |
年内の最終営業日は原則12月30日
株式市場は、原則12月30日が年内の最終営業日(「大納会」)となり、31日は平日であっても休場となる。30日が土日にあたるときは、最終営業日がその直前の営業日に前倒しとなる。いずれの場合も、12月末日を権利確定日とする銘柄の権利確定日が31日となることはないので注意しよう。
<2021年12月の権利確定日・権利落ち日・権利付き最終日(例)>
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | 土曜日 | 日曜日 |
27日 営業日 |
28日 営業日 |
29日 営業日 |
30日 営業日 |
31日 休業日 |
1月1日 休業日 |
2日 休業日 |
権利付き 最終日 |
権利 落ち日 |
権利 確定日 |
4,権利確定日に関する3つの注意点
権利確定日については、次のような点にも注意しておきたい。
権利確定日と株主優待の割当基準日が異なる場合がある
株主優待を受けるには、「株主優待の割当基準日」までに、各企業が定めている株数を保有している必要がある。銘柄によっては、「株主の権利確定日」と「株主優待の割当基準日」が異なる場合もあるので注意が必要だ。
権利確定日が月末以外の銘柄もある
権利確定日は月末に設定している企業がほとんどだが、一部15日や20日の企業もある。保有する銘柄の権利確定日は確認しておこう。
<15日が権利確定日の銘柄の例>
・カワチ薬品(2664)
・ 銚子丸(3075)
・ツルハホールディングス(3391)
・サツドラホールディングス(3544)
<20日が権利確定日の銘柄の例>
・ダイドーグループホールディングス(2590)
・タカショー(7590)
・あさひ(3333)
・西松屋チェーン(7545)
・しまむら(8227)
・ニトリホールディングス(9843)
・マルサンアイ(2551)
・アスクル(2678)
・クスリのアオキホールディングス(3549)
・Genky DrugStores(9267)
信用買いや貸株をしている株には配当や株主優待を受ける権利がない
権利確定日に信用買いで株を保有していても、配当や株主優待を受けることはできない。信用買いをしている株は担保となっており、名義は証券会社にあるからだ。ただし、配当については「配当落調整金」として、証券会社から配当金に相当する金額を受け取れる(権利確定日に「信用売り」をしている場合は、証券会社に配当金調整金を支払わなければならない)。
<配当落調整金の額>
信用買い(買建) | 信用売り(売建) | |
制度信用取引 | 配当金額−所得税源泉徴収相当額 | 配当金額−所得税源泉徴収相当額 |
一般信用取引 | 配当金額 |
「貸株」をしている株も、貸株中は名義が証券会社に移っているため、貸株状態のまま権利付き最終日の大引けを迎えると配当や株主優待を受け取れない。配当や株主優待は受け取るには、権利付き最終日までに貸株の解除が必要だ。
5,リスク管理と計画的な取引が大切
配当や株主優待を狙うのであれば、購入する銘柄の権利確定日、権利付き最終日を把握し、権利が得られるように株を買うことが必要だ。ただし、権利付き最終日に近づくにつれて株価は上昇する傾向があり、直前での購入は、権利落ち後の株価下落で損失が出るリスクが高まる。実際に株価がどう動くかはわからないが、そのような傾向があることは知っておきたい。
権利落ち後の株価の下落を想定して、同じ銘柄・数量で現物買いと信用売りを組み合わせる方法や、権利落ち後に株価が下落したタイミングで株を購入し、次の権利獲得を狙う方法もある。リスク管理をしっかりと行い、計画的に取引することが大切だ。
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