iDeCoの商品選びは、投資初心者でなくとも難しい。日常の生活が忙しいならなおさらだ。忙しいビジネスパーソンが、iDeCoの商品選びで失敗しないためにはどうしたらよいか。iDeCoの商品の選び方のコツと、プロがおすすめする銘柄5本を紹介する。

この記事で分かること
  • iDeCo口座解説におすすめのネット証券は楽天証券、SBI証券など
  • iDeCoのおすすめ銘柄は、全世界にインデックス投資ができるもの、信託報酬が安いもの、トータルリターンが高いもの
  • 近年人気のターゲットイヤーファンドとは、ターゲットとなる年に向けて少しずつ安定資産に切り替えていく金融商品のこと
  • iDeCoは節税しながら資産運用できるのがメリット
  • iDeCoのデメリットは、掛金に上限があることと引き出しに制限があること

目次

  1. 1.iDeCo(イデコ)のおすすめ金融機関
  2. 2.プロが選ぶ!iDeCo(イデコ)でおすすめの銘柄ランキングTOP5
  3. 3.iDeCo(イデコ)の商品の選び方
  4. 4.iDeCo(イデコ)で話題の「ターゲットイヤーファンド」とは
  5. 5,iDeCo(イデコ)とは?メリットやデメリット
  6. 6.iDeCo(イデコ)ではある程度リターンが見込める商品がふさわしい
  7. 7.iDeCoに関するQ&A
  8. 実際にiDeCoを始めてみる

1.iDeCo(イデコ)のおすすめ金融機関

まずはiDeCo(イデコ)でおすすめ金融機関を紹介しよう。既にiDeCo口座を持っているという人でも、iDeCo口座は変更することが可能なため、この機会に他の金融機関と自分の口座を比較してみてほしい。

iDeCo口座おすすめランキング
証券会社 開設・管理
手数料
投資
信託
おすすめ
ポイント
1 無料 32本 サポートが充実
iDeCoアプリも◎
2 無料 75本 加入者数No.1!
ロボアドが便利
3 無料 27本 iDeCo専門スタッフ
によるサポート
4 無料 12本 厳選された
ラインナップ

iDeCoを始めるならネット証券がおすすめだ。

Q
A
なぜiDeCoを始めるのにネット証券がおすすめなのか?
上記4社をはじめとするネット証券は、金融機関に支払う運営・管理手数料が無料のうえ、運用中にかかる手数料が低いのが特徴。取扱投資信託の本数も多く手数料が安い銘柄も豊富で、iDeCo制度をフルに活用することができる。

iDeCoで負担しなくてはならないのは金融機関に支払う手数料だけではない。制度特有の手数料として、以下を支払う必要がある。

・加入・移換時に国民年金基金連合会に2,829円(初回1回のみ)
・毎月掛け金を納付するごとに国民年金基金連合会に105円、事務委託先金融機関に66円(計171円)
・給付ごとに事務委託先金融機関に440円
・還付がある場合は国民年金基金連合会に1,048円
・事務委託先金融機関440円/回

2.プロが選ぶ!iDeCo(イデコ)でおすすめの銘柄ランキングTOP5

(画像=MONEY TIMES編集部制作)
iDeCoのおすすめ銘柄の条件
  • 1地域ではなく全世界にインデックス投資ができる
  • 信託報酬が0.2%未満
  • 過去1年のトータルリターンが30%以上
iDeCoは売却益が非課税になることも重要なメリットの一つなので、利益を上げることはメリットの最大化につながります。

iDeCo対象商品の投資信託のうち、過去1年間のトータルリターンが高く、グローバルにインデックス投資ができる5銘柄を選出した。

信託報酬は0.2%未満、米国など1地域を対象としない、ネット証券でも買えることを条件とした(データは2021年9月15日時点)。

以下の銘柄であれば投資初心者でも扱いやすく、ある程度のリターンも見込めるでしょう。

銘柄名 信託報酬 トータルリターン
(1年)
純資産総額
(百万円)
投資先 購入できる
証券会社
1位 eMAXIS Slim
先進国株式インデックス
0.1023% 36.41% 246,391 先進国株式
(日本除く)
SBI証券
松井証券
マネックス証券
2位 たわらノーロード
先進国株式
0.10989% 36.40% 139,612 先進国株式
(日本除く)
楽天証券
3位 <購入・換金手数料なし>
ニッセイ外国株式
インデックスファンド
0.1023 36.37% 324,950 先進国株式
(日本除く)
SBI証券
4位 SBI・全世界株式
インデックス・ファンド
(愛称:雪だるま(全世界株式))
0.1102% 34.64% 34,256 全世界株式
(日本・中小含む)
SBI証券
5位 eMAXIS Slim
全世界株式(除く日本)
0.1144% 34.28% 83,864 全世界株式
(日本除く・新興国含む)
SBI証券
松井証券
モーニングスター社、各交付目論見書をもとに筆者作成(2021年9月15日時点)


過去1年は、世界的な株式市場の好調を受けて、株式中心の銘柄のリターンが良好であった。

今回は、低コストインデックスファンドに注目してランキング化しました。ただし、信託報酬が高くても十分なリターンが得られるファンドも存在します。慣れてきたらそういった銘柄に挑戦してみても良いでしょう。

1位, eMAXIS Slim 先進国株式インデックス……人気インデックスシリーズ主要銘柄、つみたてNISAでも定番

eMAXIS Slim 先進国株式インデックス
先進国(日本を除く)の株式市場の値動きに連動する投資成果を目指すファンド。「MSCIコクサイ・インデックス」と連動するように運用されている

出典:三菱UFJ国際投信『eMAXIS Slim先進国株式インデックス』

「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」は組み入れ比率の70%が米国株式です。この1年の米国優良企業の株価好調に支えられて、先進国向けファンドは軒並み好成績を収めています。

米国株式の好調がどこまで続くかは未知数だが、米国のみを対象とするファンドよりも分散効果が見込める。

eMAXIS Slim(イーマクシススリム)

三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim(イーマクシススリム)」は、2021年9月に純資産総額合計1.5兆円突破した、最大規模のインデックスファンドシリーズ。販売会社が多く純資産総額が高いことから、安定的な運用が期待できる。

出典:三菱UFJ国際投信『eMAXIS Slim』

eMAXIS Slimシリーズは一定の純資産総額を超過した銘柄の信託報酬を下げる「受益者還元型信託報酬率」を採用しており、eMAXIS Slim 先進国株式インデックスファンドもその対象に入っている。

MSCIコクサイ・インデックス

MSCIコクサイ・インデックスは、モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル社が提供している株価指標で、日本を除く先進国22ヵ国に上場する大・中型株を構成銘柄の対象としている。先進国のみが対象だが、時価総額では市場の約85%をカバーする規模。

「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」は、先進国の優良銘柄に低コストで分散投資できます。投資家にとってグローバル投資の定番中の定番であるMSCIコクサイ・インデックス銘柄は、1本持っておいて間違いないでしょう。

<購入できる金融機関>
• SBI証券
• 松井証券
• マネックス証券

2位, たわらノーロード 先進国株式……楽天証券で先進国株式に投資するならこれ1本

たわらノーロード 先進国株式
たわらノーロード 先進国株式の投資対象は日本を除く先進国株式。アセットマネジメントOneが設定・運用しているファンドシリーズ「たわらノーロード」の全34本中で、最も純資産総額が大きい。1位の「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」と同じMSCIコクサイ・インデックスに連動する。

出典:アセットマネジメントOne『たわらノーロード 先進国株式』

ベンチマークが同じならそれに連動するインデックスファンドは、基本的に同程度のパフォーマンスとなる。

ベンチマークとは?
投資信託が運用する際に目標とする基準のこと。たとえば日経225がベンチマークなら日経225と同じ値動きをするように銘柄や配分を調整する。インデックスファンドはベンチマークと同等、アクティブファンドはベンチマークを超えるパフォーマンスを目指す。

「たわらノーロード 先進国株式」と「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」の信託報酬は、どちらも遜色がないほど低い設定となっている。

「たわらノーロード 先進国株式」は、純資産総額では「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」にやや劣るが、それでも1,400億を超えるファンドは十分に規模が大きい。

ただし、「たわらノーロード 先進国株式」は、iDeCoでの取り扱いはネット証券では楽天証券のみだ。
出典:アセットマネジメントOne『たわらノーロード 先進国株式』

iDeCo口座を楽天証券に保有していて、先進国株式に分散投資をしたいなら「たわらノーロード 先進国株式」が有力です。

<購入できる金融機関>
楽天証券

3位, <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド…先進国株式に投資するインデックスファンドの中で最大規模

<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド
<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドは、ニッセイアセットマネジメントのインデックスファンド「<購入・換金手数料なし>」シリーズの1つ。MSCIコクサイ・インデックスに連動する銘柄の中でも純資産総額が最大で、設定が2013年12月と実績も長い。

出典:ニッセイアセットマネジメント『<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド』

信託報酬は1位の「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」とまったく同じで、お互いに意識しているのが分かる。

1年トータルリターンは、「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」が「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」よりも0.04%劣る。

投資額が100万円なら、1年で400円分だけ「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」のほうが効率的に運用できていた計算だ。

1位から3位のファンドは、米国経済の好調もあっていずれも好成績をおさめている。

強いて違いを述べるとすると取扱販売会社だ。

「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」をiDeCoで購入できるのはSBI証券に限られる。

先進国株式に分散投資できるファンドの中で、「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」や「たわらノーロード 先進国株式」より規模や運用期間に優れている銘柄を選ぶなら「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」です。

<購入できる金融機関>
SBI証券

4位, SBI・全世界株式インデックス・ファンド (愛称:雪だるま(全世界株式))……小型株を含めた全世界に投資

SBI・全世界株式インデックス・ファンド (愛称:雪だるま(全世界株式))
SBI・全世界株式インデックス・ファンド (愛称:雪だるま(全世界株式))は、SBIアセットマネジメントが運用するインデックスファンド「雪だるま」シリーズの1つ。ベンチマークはFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスで、日本や新興国を含む全世界を投資対象とする。

出典:SBIアセットマネジメント『SBI・全世界株式インデックス・ファンド (愛称:雪だるま(全世界株式))』

FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス

英国のFTSE社が発表している指標で、全世界の大型・中型・小型株市場の動きを反映している。同じく全世界株式の指標としてはMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスが有名だが、こちらには小型株は含まれていない。

「雪だるま(全世界株式)」は、あらゆる地域、あらゆる業種や規模の株式を対象とすることから、究極の分散投資を実現できます。1年トータルリターンは35%と、新興国や小型株が含まれていても十分な利益が見込める点が評価できます。

「雪だるま(全世界株式)」は、今のところiDeCoでの取り扱いがSBI証券に限られるのが残念だ。

小型株を含む全世界株式に投資するファンドは希少です。「雪だるま(全世界株式)」は、「1本で国内外にまんべんなく分散投資したい」と考えるなら価値のある商品です。SBI証券にiDeCo口座がある人なら検討してみても良いでしょう。

<購入できる金融機関>
SBI証券

5位, eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)……低コストで先進国・新興国に投資できる人気商品

eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)
eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)は、日本を除く先進国および新興国の株式市場に連動する投資成果を目指す「全世界株式」だ。MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(除く日本)をベンチマークとしている。三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim(イーマクシススリム)」シリーズ。
MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス

米MSCI社が提供する外国株式インデックス。グローバル投資の際に参考にされる最も代表的な指標で、連動する投資信託やETFも数多く存在する。先進国24か国、新興国21か国、中東やアフリカを中心としたフロンティア国25か国を対象とする。

これだけ広範囲に投資するファンドでも、主な組み入れ銘柄は米国株式で62%を占めます。米国が好調なうちはグローバル投資銘柄も恩恵を受けそうです。

5%にも満たないフロンティア株式の組み入れがどのように貢献するのかは未知数。

すでに日本株を保有していてグローバルに投資したいと考えている人には「eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)」がおすすめ。純資産総額が増えてくると、信託報酬が下がることも期待できます。

<購入できる金融機関>
SBI証券
松井証券

3.iDeCo(イデコ)の商品の選び方

(画像=MONEY TIMES編集部制作)

iDeCoは2018年5月に規定が変更され、各証券会社の取り扱い商品数は35本になった。
出典:国民年金基金連合会『iDeCo(イデコ)の沿革』

ただしSBI証券の場合、商品本数を絞るための経過措置として、「セレクトプラン」と「オリジナルプラン」それぞれで35本以下になるよう調整されている。

2023年までに削除・入れ替えを完了させる予定だ。

iDeCo(イデコ)の商品は3種類 メリット・デメリットは?

iDeCoの対象商品には大きく分けて3つの種類がある。

iDeCoの対象商品
  • ⑴定期預金
  • ⑵保険
  • ⑶投資信託

このうち、定期預金と保険は元本保証商品で、投資信託は価格変動商品です。

・⑴定期預金

定期預金とは?
定期預金とは、満期までの期間と金利があらかじめ決められており、満期まで預けておくと所定の利息が受け取れる商品。

定期預金は、元本割れのリスクがない点は安心ですが、超低金利政策のために利率は高くても0.01%程度と、積極的に資産形成を考えている人には向いていません。

一般的な証券会社であればiDeCoの定期預金のラインナップは1つあればいいほうだ。

iDeCoで購入できる定期預金の商品は銀行ではやや多めで、ゆうちょ銀行や三菱UFJ銀行では7~8本の取り扱いがある。
出典:ゆうちょ銀行『ゆうちょAプランの運用商品』三菱UFJ銀行『運用商品一覧』

・⑵保険

保険会社が販売している個人年金保険もiDeCoの元本保証商品として認められている。

保険は、定期預金同様、大きく増える見込みのない商品で、途中で解約すると元本割れをするリスクが伴う。

現在iDeCoで保険商品を取り扱っている金融機関は非常に限られ、証券会社ではほぼ扱われておらず、一部の銀行や保険会社で扱われるのみだ。

なお、定期預金や保険といった元本保証商品を選ぶと、利益がほぼゼロでもiDeCo特有の管理手数料・事務手数料が発生するため、トータルではiDeCoの利益がマイナスになる可能性があります。

・⑶投資信託

投資信託とは?
投資信託とは、投資家から集めた資金で「ファンド」を作り、プロが株式や債券などに投資して利益を投資家に還元する商品。

各金融機関が扱う商品の大多数は、価格変動商品である投資信託だ。

iDeCoにおける商品選びとは、投資信託選びだと考えてよい。

投資信託は運用側からすると多くの資金が集まることで積極的な運用ができ、投資家側からすると個人では難しい分散投資を少額で行えるメリットがある。

投資信託にはインデックス型、アクティブ型、バランス型、ターゲットイヤー型など様々な種類があり、誰にとっても確実に優れているといった商品はない。

投資信託はそれぞれの特性を踏まえ、今資金を投下すべき商品はどれなのかを見極める必要がある。

iDeCoは金融機関によって取扱数が少ないことがメリットでもありデメリットでもあります。一時は商品数が60本を超える金融機関もありましたが、選択肢が広すぎると運用商品を指定せず放置する利用者の多いことが問題視されたようです。

iDeCoでの運用上限数がもうけられたことで選択肢がかなり絞られたが、初心者がここから数本に絞るのは簡単ではない。

ではiDeCoの商品をどのように選べばよいのかコツをお伝えしよう。

iDeCo(イデコ)の商品選びの前に——投資界のカリスマが示す『投資の大原則』とは

世界を代表する資産運用の思想家であるバートン・マルキールとチャールズ・エリスは、共著『投資の大原則』で、個人投資家が投資に成功するのに必要な要素は以下だと書いている。

  • (1)再投資(複利)の効果を認識すること
  • (2)市場の値動きに左右されず一定額をこつこつと投資すること
  • (3)資産タイプの分散をできるだけ図ること
  • (4)市場全体に投資するインデックスファンドを選ぶこと
  • (5)コストの低い商品を選ぶこと

このうち(1)と(2)はiDeCoを利用する時点で満たしています。

残りの3つについて解説していこう。

iDeCo(イデコ)の商品選びの原則1……資産タイプの分散をできるだけ図ること

iDeCoで投資を始める初心者がよくおすすめされるのはバランス型だ。バランス型投資信託が採用する資産の種類や配分比率はファンドにより異なる。

バランス型とは?
投資信託には国内株式、海外株式、国内債券、海外債券、国内REIT(不動産投資信託)、海外REIT(不動産投資信託)、コモディティ(金など)に投資するものがある。バランス型の投資信託はそれらに複合的に資金を配分する。
Q
A
バランス型は初心者に向いているのか?
バランス型投資信託なら、1つの銘柄で複数の資産に分散投資でき、自動的に「リバランス」される点から、初心者にすすめられることが多い。ただし値動きの要因が分かりにくいこともあり、投資経験の有無よりは好みの問題に近い。
リバランスとは?
市場の状況に合わせて、最も利益を期待できる資産配分に組み直すこと。

iDeCoでバランス型ファンドを選ぶならば、必ず資産配分を確認しましょう。銘柄によって株式偏重であったり債券偏重であったりするためです。

債券比率の高いバランスファンドは安全性が高いが、iDeCoの節税効果の一つである運用益の非課税効果を活かしにくい。

Q
A
バランス型を選ぶにあたっての注意点は
バランス型ファンドをいくつも保有するのは得策ではありません。バランス型は1つで複数資産に投資できるのが利点ですが、複数保有していると結局どの資産にいくら投資しているのか分からなくなります。

バランスファンドは運用に手間がかかるため、一般的に手数料(信託報酬)が高めであることにも注意が必要だ。

40代の投資初心者がiDeCoでバランスファンドを運用する場合、どのような資産配分が適切なのだろうか。年齢的には収入に増加の余地があり、老後までまだ20年程度の時間があるが、住宅ローンや教育費などの出費がかさむ時期でもある。

40代ならリスク資産である株式の組み入れ比率は50%前後が良いでしょう。あまり比率が高すぎると株式市場が激変したときに資産残高が大きく増減してしまいます。積極的な投資に関心があるなら、バランス型にこだわる必要はありません。

iDeCo対象商品のバランスファンドで、株式組入比率が40%~50%、信託報酬が1%を下回る商品をピックアップした。

株式組入比率が低すぎるとせっかくの節税効果が薄れるため一定以上を想定しています。また、信託報酬は初心者が長期間保有することを考慮し、1%以下を目安にしました。

なお、ターゲットイヤー型商品は時期とともに資産配分が変わるため、以下の表からは除外している。

・iDeCo(イデコ)対象のバランスファンド(株式組み入れ比率40%~50%、信託報酬1%以下)

銘柄 信託報酬
(年率)
取扱証券会社 株式組み入れ比率
SBIグローバル・バランス・ファンド 0.2799% SBI証券 株式40%
(海外35% 国内5%)
セゾン・バンガード・
グローバルバランスファンド
0.59% SBI証券
楽天証券
株式50%
(海外47% 国内3%)
iFree 年金バランス 0.1749% SBI証券 株式50%
(海外25% 国内25%)
三菱UFJ DCバランス・
イノベーション(KAKUSHIN)
0.66% 楽天証券 株式0-44%
(国内0-22%、先進国0-22%)
eMAXIS Slim
バランス(8資産均等型)
0.154% SBI証券
マネックス証券
松井証券
株式37.5%
(先進国12.5% 新興国12.5%
国内12.5%)
マネックス資産設計
ファンド<育成型>
0.55% マネックス証券 対象は情勢により変動
※調査時は株式56%
(海外29% 国内27%)
SBI証券楽天証券マネックス証券松井証券のHPより筆者作成(2021年9月14日現在)

ここに挙げた銘柄であれば、極端なリスクをおさえた上である程度のリターンが期待できます。株式市場が好調な時には上昇の恩恵が受けられ、不調な時には株式100%の銘柄に比べてリスクが軽減されます。

iDeCo対象のバランス型商品にはターゲットイヤー型が多く、次にリスク許容度で分類したシリーズ型が主流のようだ。

iDeCoの取扱商品数を見ると、バランス型は銀行が多め、ネット証券はやや少なめな傾向がある。

資産配分を固定しているファンドで株式比率が60%を超える銘柄は見当たらないが、情勢に応じて変動するタイプは最新のレポートなどで確認が必要だ。

信託報酬が年率0.5%を切るようなバランスファンドは、原則として資産配分が固定、もしくは±5~10%であることが多いです。一方、信託報酬が高めのバランスファンドは、資産配分を投資環境に応じて動的に入れ替えるタイプが主流です。

どちらが良いかは意見が分かれるところです。わかりやすさとコストの低さを重視するなら固定タイプ、市場の動きに合わせてプロに判断してほしいと考えるなら変動タイプが良いでしょう。

iDeCo(イデコ)の商品選びの原則2……市場全体に投資するインデックスファンドを選ぶこと

投資信託には市場の指数と連動するインデックス型と、市場平均を上回るリターンを目指すアクティブ型がある。

インデックスファンドとは?
インデックスファンドとは、基準価額が特定の指標に連動するよう設計された投資信託のことだ。パッシブファンドとも呼ばれる。指数に組み入れられている銘柄と全く同じ構成にすることで、同じような値動きをする特性がある。機械的な運用が可能であるため手数料が低く、市場とかけ離れた値動きをすることもない。

1つの企業や分野に投資するのではなく、日本やアメリカ、先進国、グローバルといった市場全体に投資できるインデックス型は初心者や長期投資に適している。

アクティブファンドとは?
アクティブファンドとは、運用会社が独自の銘柄選択や資産配分をすることにより、市場平均よりも高いパフォーマンスを目指す投資信託のこと。経済情勢の調査や企業分析にコストがかかる反面、大きなリターンが期待できる点が魅力だ。
一般的に債券より株式、国内より海外、インデックス型よりもアクティブ型のほうがリスクとコストが高く、その代わり期待できるリターンも大きいです。

投資初心者は、できるだけリスクとコストを抑えるべきなのでインデックス型が向いていると言われている。新興国やコモディティは値動きが激しいので、投資に慣れてからチャレンジしたい。

iDeCoの投資タイプや投資対象は、各証券会社のホームページや投資信託の目論見書に詳しく記載されています。キーワードを拾えば、どういった種類のファンドなのかがわかるでしょう。

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iDeCo(イデコ)の商品選びの原則3……手数料が低いファンドを選ぶ

信託報酬は投資信託を保有している限り発生する。長期間保有することが前提のiDeCoでは、信託報酬は厳しくチェックすべきポイントだ。

信託報酬とは?
投資信託はプロに運用・管理を代行してもらう金融商品なので、投資家は保有期間中ずっと手数料を払い続ける必要がある。それが信託報酬と呼ばれる運用管理手数料だ。

信託報酬はタイプによって水準が異なる。

  • 安全性の高い国内外株式・債券のインデックス型……0.15~0.18%程度
  • バランス型……0.17~1.20%
  • ターゲットイヤー型……0.7~0.9%

ターゲットイヤーについては後述する。

信託報酬は年々値下げ傾向にあり、特にインデックス型はコスト安競争が激しい。新興国・成長株・アクティブ型には2%を超える銘柄もある。

iDeCoでも最安だと思っていたファンドが相対的にコスト高になっていることがあるため、定期的にチェックしましょう。

信託報酬はパーセンテージで見ると小さい数字に思えるかもしれませんが、iDeCoのような長期投資においては1%の違いは大きいです。

例)iDeCoで毎月3万円を10年積み立て、年率2%運用した場合
信託報酬1.0%…17万円
信託報酬1.9%…32万円

支払わなくてはならない信託報酬は、パーセンテージで見たときの数字の小ささに反して金額は大きい。純資産総額が大きくなるほど信託報酬も高くつくので、わずかな違いも長期的には影響が大きいことを覚えておきたい。

iDeCoを始めてリスク管理に自信がついてきたら、大きなリターンが見込めるファンドに挑戦してみるのもいいでしょう。

参考に、大手ネット証券であるSBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券のiDeCo採用銘柄から、信託報酬の安い銘柄上位10商品をランキング化した(2021年5月13日時点)。

信託報酬の安いiDeCo(イデコ)商品ランキング

順位 銘柄 信託報酬 取扱証券会社
1位 eMAXIS Slim
米国株式
(S&P500
0.0968%以内 SBI証券(セレクトプラン)
マネックス証券
松井証券
2位 <購入・換金手数料なし>
ニッセイ外国株式
インデックスファンド
0.1023%以内 SBI証券(セレクトプラン)
3位 eMAXIS Slim
先進国株式
インデックス
0.1023%以内 SBI証券(セレクトプラン)
マネックス証券
松井証券
4位 たわらノーロード
先進国株式
0.10989% 楽天証券
5位 SBI・全世界株式
インデックス・ファンド
(愛称:雪だるま
(全世界株式))
0.1102%程度 SBI証券
(セレクトプラン)
6位 eMAXIS Slim
全世界株式(除く日本)
0.1144%以内 SBI証券(セレクトプラン)
松井証券
7位 eMAXIS Slim
全世界株式
(オール・カントリー)
0.1144% マネックス証券
松井証券
8位 eMAXIS Slim
全世界株式
(3地域均等型)
0.1144% 松井証券
9位 eMAXIS Slim
国内債券インデックス
0.132%以内 SBI証券(オリジナルプラン)
松井証券
10位 三菱UFJ 国内債券
インデックスファンド
(確定拠出年金)
0.132% SBI証券(オリジナルプラン)
マネックス証券
松井証券
※筆者作成
※SBI証券のオリジナルプランは新規受付停止、既にオリジナルプランで運用している人のみが購入可能

手数料(信託報酬)の低さでは、三菱UFJ国際投信のインデックスファンドシリーズ「eMAXIS Slim」の銘柄が多数上位入りしている。 「eMAXIS Slim」シリーズは常に信託報酬の業界最低水準を目指すと銘打っており、各カテゴリーにおける低信託報酬ファンドも同シリーズのものが多い。

インデックスファンドシリーズ以外では、債券を主な投資先とする商品がランクインした。低コスト商品を多く扱うiDeCoの証券会社として存在感があるのは、SBI証券(セレクトプラン)だ。

SBI証券の2つのシリーズのうちもう一方であるオリジナルプランは2021年1月4日をもって新規受付を終了している。

4.iDeCo(イデコ)で話題の「ターゲットイヤーファンド」とは

(画像=MONEY TIMES編集部制作)

上述したバランスファンドの一つに「ターゲットイヤーファンド」と呼ばれるものがある。

ターゲットイヤーファンドとは?
ターゲットとなる年を2030年、2050年のように決め、始めは株式を中心に積極的な投資を行い、ターゲットイヤーに向けて徐々に安定資産に切り替えていく商品。

老後資金形成を目的として60歳まで運用を続けるiDeCo向きの商品と言えるでしょう。

米国で成長してきたターゲットイヤーファンドは、近年日本でも普及しつつある。

ターゲットイヤーファンドは、かつては手数料が高かったが、最近は低コスト商品も開発され、現在の手数料はインデックスファンドとアクティブファンドの中間あたりです。

参考に、ネット証券で展開しているターゲットイヤーファンドを以下にまとめた。

銘柄 信託報酬 取扱証券会社
SBI-セレブライフ・ストーリー2025 0.6604% SBI証券
松井証券
SBI-セレブライフ・ストーリー2035 0.659% SBI証券
松井証券
SBI-セレブライフ・ストーリー2045 0.6599% SBI証券
松井証券
SBI-セレブライフ・ストーリー2055 0.6448% SBI証券
松井証券
楽天ターゲットイヤー2030 0.8575% 楽天証券
楽天ターゲットイヤー2040 0.8675% 楽天証券
楽天ターゲットイヤー2050 0.8675% 楽天証券
※筆者作成


主要ネット証券のうち、SBI証券(オリジナルプラン、セレクトプラン)と楽天証券、松井証券ならターゲットイヤーファンドの取り扱いがある。

ターゲットイヤーファンドの運用は名称を見ればわかりやすい。 たとえば「セレブライフ・ストーリー2045」なら2025年まで株式比率高めの積極運用を行い、徐々にリスク資産を減らして2045年には債券を中心とした安全運用に切り替える。楽天の「ターゲットイヤー」シリーズも同様だ。

40代であれば2035年をターゲットとするファンドを選ぶのがちょうど良いでしょう。信託報酬は1%を切る水準でおさめられています。

気をつけたいのが「ターゲットイヤー」の後だ。主に安定資産に投資しているため、あまり利益は期待できないが信託報酬は発生する。 ターゲットイヤー後はそのままにせず、定期預金や他の運用資産に振り替えるなどの対策をしたい。

5,iDeCo(イデコ)とは?メリットやデメリット

iDeCoのメリットやデメリットなど、iDeCoを始める場合に知っておきたい基礎知識について紹介していこう。

iDeCo(イデコ)とは?

iDeCo(イデコ)とは?
iDeCoとは、私的年金を作る個人を税制面で優遇する制度だ。日本在住の20歳以上60歳未満の人であれば、原則誰でも始めることが可能だ。2021年5月時点の加入者総数は201万4,505人で、徐々に認知度を上げてきている(※モーニングスター社『iDeCoニュース』より)。

iDeCoは保険の個人年金とは異なり、自分で金融機関を選び、自分で商品を選定して運用しなければならないのが特徴だ。

iDeCoの運用次第では投資した額よりも多い年金原資を得ることも可能だが、逆に元本を割り込むリスクもある。

iDeCoではiDeCoを運用する金融機関や投資信託の選び方がとても重要になってきます。

iDeCo(イデコ)のメリット

iDeCo(イデコ)のメリット
  • 節税しながら資産運用ができる
  • 半強制的に積み立てができる

以下に挙げる3つの節税はiDeCo最大のメリットだ。

・掛金はすべて「所得控除」の対象
・運用で得た利息や配当、売却益が「非課税」扱い
・受け取りの際も「公的年金等控除」「退職所得控除」の対象

iDeCo積立のための掛金はすべて「所得控除」の対象となり、所得税や住民税が節約できる。iDeCoの運用で得た利息や配当、売却益も「非課税」扱いだ。

さらに、60歳を過ぎたら受け取れる年金または一時金は「公的年金等控除」「退職所得控除」の対象となり、通常の所得よりも税金が安い。

iDeCoは毎月自分が決めた一定額を自動的に積み立てる仕組みなので、「余ったお金を運用」のケースより強制力があります。NISAのように口座から引き出すのも原則として不可です。継続して資産形成しやすい環境が整っています。

iDeCo(イデコ)のデメリット

iDeCo(イデコ)のデメリット
  • 掛金には上限がある
  • 60歳まで引き出せない

iDeCoは月額5,000円から始められるが、掛金は加入している年金の種類ごとに上限が決められている。

たとえば公務員や企業年金のある会社員は月額1万2,000円、企業年金のない会社員や専業主婦(夫)は2万3,000円、自営業が6万8,000円となっている。

iDeCoの高い節税効果を期待してより多くの投資をと考えても、上限を超える掛金を拠出することはできない。

iDeCo口座にある資金や金融商品は60歳になるまで原則引き出しできません。半強制的に年金を貯められるのは良いですが、しばらくは自由にできない資産であることは認識しておきましょう。

出典:iDeCo公式サイト『iDeCoってなに?』

6.iDeCo(イデコ)ではある程度リターンが見込める商品がふさわしい

(画像=tamayura39/stock.adobe.com)

iDeCoのメリットやデメリットなど、iDeCoを始める場合に知っておきたい基礎知識について紹介していこう。

Q
A
なぜiDeCoでは定期預金ではなく投資商品のほうがいい?
iDeCoでは口座管理手数料が発生するから。iDeCoの加入時に2,829円の手数料がかかるほか、運用期間中には安くて171円、高くて611円の口座管理手数料が発生する。

iDeCoの掛け金を拠出しているだけで年間2,052円~7,548円の負担だ。定期預金の利息でこれらを補うことはできない。つまり元本割れということになる。

iDeCoのメリットとして、所得税・住民税の控除の対象となるだけでなく、運用益が非課税になることも大きい。このメリットを最大化するためには、iDeCoで選ぶ銘柄はある程度リターンが見込める金融商品がふさわしいと言えそうだ。

7.iDeCoに関するQ&A

iDeCo(イデコ)のおすすめ金融機関は?
SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券がおすすめだ。運営・管理手数料が無料なのに加えて、運用中の手数料が低いのが特徴。SBI証券は商品ラインアップ数が豊富、楽天証券はiDeCO専用アプリがありサポート体制が充実しているという特徴がある。
iDeCo(イデコ)の商品の選び方は?
資産タイプを分散すること、インデックスファンドを選ぶこと、手数料(信託報酬)が低いことがiDeCoの商品選びのポイント。アクティブ型はインデックス型よりもリスクとコストが高い反面、リターンも大きいという傾向があるので、投資にある程度慣れてから検討したい。
iDeCo(イデコ)でおすすめの商品の特徴は?
①過去1年のトータルリターンが高い、②「グローバル」「国際」「バランス」ファンド、③信託報酬が安い(インデックス型なら0.2%未満、アクティブ型なら0.9%未満)という特徴も持つ商品が初心者にはおすすめだ。
iDeCo(イデコ)でおすすめの商品は?
グローバルなら「EXE-i グローバル中小型株式ファンド」、米国なら「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」、「楽天・全米株式インデックス・ファンド」、新興国なら「インデックスファンド海外新興国(エマージング)株式」、「eMAXIS Slim新興国株式インデックス」に注目したい。
なぜiDeCoでは定期預金ではなく投資商品のほうがいい?
iDecoでは加入時に2,829円、運用中は最高で171円〜611円の手数料が発生し、年間最高7,548円負担することになるが、定期預金利息では口座手数料をまかなえず、元本割れになってしまう。加えて運用益が非課税になるため、ある程度リターンが見込める投資商品のほうがマッチしている。

実際にiDeCoを始めてみる

圧倒的な商品数と無料ロボアドバイザーの利用で自分に合った商品が選べる
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運用コストを抑えた商品ラインナップと無料のウェブセミナーが充実
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創業100年の歴史と実績がある老舗、厳選ラインナップで商品が選びやすい
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厳選された27商品、専用ロボアドバイザーなど充実したサポートが魅力
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執筆・篠田わかな
外資系経営コンサルティング会社にて、製造・物流・小売部門のコンサルタントとして、業務改革・システム改革プロジェクトに参画。個人としての投資歴は20年以上。
3人の子育てのかたわら、個人事業主として独立。マネー・ビジネス分野の執筆活動、社会人研修の企画立案・業務請負等を手がける。
■保有資格 2級ファイナンシャル・プランニング技能士
外資系経営コンサルティング会社にて、製造・物流・小売部門のコンサルタントとして、業務改革・システム改革プロジェクトに参画。個人としての投資歴は20年以上。
3人の子育てのかたわら、個人事業主として独立。マネー・ビジネス分野の執筆活動、社会人研修の企画立案・業務請負等を手がける。
■保有資格 2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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