つみたてNISAで運用するならインデックスファンドといったイメージがあるが、アクティブファンドにもメリットはある。リスクを抑えつつ市場を上回るパフォーマンスを狙うことも可能だ。つみたてNISA対象のアクティブファンドで、長期投資するのにおすすめの5銘柄を紹介しよう。
目次
1,アクティブファンドとは?インデックスファンドとの違い
アクティブファンドとインデックスファンドの概要と、費用・収益・リスクにおける違いについてまとめた。
アクティブファンドは市場平均以上を目指し、インデックスファンドは指数に連動する
アクティブファンドとは、運用会社が独自の銘柄選択や資産配分を行い、市場平均を上回る投資成果をめざす運用方法だ。世界情勢や金融市場に関する調査や、個別企業への訪問も含めた銘柄分析など、運用担当者(ファンドマネージャー)の手腕が問われる。
一方インデックスファンドとは、目標とする指数(ベンチマーク)に連動するように組み入れ銘柄を構成する運用方法のこと。調査や分析を行う必要がなく、機械的に運用される。
アクティブファンドはインデックスファンドより信託報酬が高い
一般的に、アクティブファンドはインデックスファンドよりも手数料(信託報酬)が高い。アクティブファンドの純資産総額上位10銘柄の平均信託報酬は1.73%、インデックスファンドは0.40%だ(※格付け会社モーニングスター社、2021年4月9日時点のデータをもとに筆者試算)。これはアクティブファンドには調査や分析、資産配分に手間と時間がかかることに起因する。
アクティブファンドのほうがインデックスファンドより高収益というわけではない
では、手数料の高いアクティブファンドは高い収益が望めるのか。前述のモーニングスター社の情報によると、3年リターンは、アクティブファンド純資産総額上位10銘柄では年率16.09%、インデックスファンドで年率12.80%であった(2021年4月9日基準)。この条件ではアクティブファンドのほうが高いリターンが望めそうだが、切り取る期間や純資産総額といった条件を変えることでリターンは変わってくることには留意したい。
アクティブファンドはハイリスク・ハイリターンの傾向あり
リスク面ではどうだろうか。リスクの大きさを表す標準偏差はアクティブファンドがインデックスファンドよりも高い。アクティブファンドでは標準偏差ランキングの上位には80を超える銘柄が並ぶが、インデックスファンドでは50がせいぜいだ。数字が大きいほど値動きのブレが激しいことを意味する。
特性は個別銘柄によって差はあるものの、アクティブファンドはハイリスクハイリターンの傾向があるのは事実のようだ。
2,つみたてNISA(積立NISA)で買えるアクティブファンドとは
つみたてNISAは国内に長期分散投資を浸透させるために金融庁が推進している制度だ。投機的な運用ではなく、安定的な資産形成を目的としている。そのため対象商品は金融庁の基準をクリアしたものに限られ、全部で193本(ETF含む)、うち19本がアクティブ銘柄となっている(※金融庁のデータ、2021年4月9日時点)。
アクティブファンドがつみたてNISAの対象商品となるには以下のような条件を満たす必要がある(※平成29年4月発表、金融庁『積立NISAについて』より)
・ 純資産額が50億円以上
・ 信託設定以降、5年以上経過
・ 信託の計算期間のうち、資金流入超の回数が2/3以上であること
・ 主たる投資の対象資産に株式を含むこと
・ 販売手数料無料(ノーロード)
・ 受益者ごとの信託報酬等の概算値が通知されること
・ 金融庁へ届出がされていること
・ 信託報酬が一定以下(国内資産税抜1%以下、海外資産1.5%以下)
・ 分配頻度が毎月ではないこと
・ 信託契約期間が無期限又は20年以上
・ デリバティブ取引をおこなっていない(為替ヘッジ目的を除く)
アクティブファンドには短期的な積極投資といったイメージがあるが、現存するファンドは多種多様で、コツコツ積立投資をするのにも適していると評価されているものもある。つみたてNISA対象のアクティブファンドはその点においては条件を満たしていると言えるだろう。
3,つみたてNISA(積立NISA)で買えるアクティブファンドのリターンランキングTOP10
つみたてNISAで買い付け可能なアクティブファンド19銘柄のうち、直近3年で売却益と分配金、手数料や税金を考慮した総合収益であるトータルリターンが優れていたアクティブファンドの上位10本を抽出した。
<トータルリターンランキングTOP10>
商品名 | 運用会社 | トータル リターン (3年) |
純資産総額 (百万円) |
信託報酬 (年率税込) |
|
1 | フィデリティ・ 米国優良株・ファンド |
フィデリティ投信 | 16.43% | 37,672 | 1.64% |
2 | フィデリティ・ 欧州株・ファンド |
フィデリティ投信 | 14.32% | 26,364 | 1.65% |
3 | eMAXIS NYダウインデックス |
三菱UFJ国際投信 | 14.11% | 21,196 | 0.66% |
4 | セゾン資産形成の 達人ファンド |
セゾン投信 | 12.89% | 148,217 | 1.35% |
5 | EXE-i グローバル 中小型株式ファンド |
SBIアセット マネジメント |
11.31% | 9,860 | 0.33% |
6 | 年金積立 Jグロース |
日興アセット マネジメント |
9.45% | 42,237 | 0.90% |
7 | のむラップ・ ファンド(積極型) |
野村アセット マネジメント |
9.45% | 43,732 | 1.52% |
8 | コモンズ30ファンド | コモンズ投信 | 8.72% | 26,666 | 1.08% |
9 | セゾン・バンガード・ グローバルバランスファンド |
セゾン投信 | 8.70% | 255,556 | 0.57% |
10 | 大和住銀DC 国内株式ファンド |
三井住友DS アセットマネジメント |
7.56% | 21,031 | 1.05% |
1位、2位ともにフィデリティ投信の商品だ。フィデリティ投信は独自の調査分析により銘柄を選定するアクティブ運用で知られており、リサーチ力に自信を持つ企業である。
3位の「eMAXIS NYダウインデックス」はインデックスファンドだが、ベンチマークであるNYダウはつみたてNISAの指定指標ではないためアクティブ型に分類されている。表にあるように信託報酬がアクティブファンドにしては低い。
5位の「EXE-i グローバル中小型株式ファンド」も、実質的にはETF(上場投資信託)に投資することで特定のベンチマークに連動するインデックスファンドである。9位の「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」も同様だ。
4,つみたてNISA(積立NISA)でのアクティブファンドの選び方
つみたてNISAではインデックスファンドが王道とされているが、アクティブファンドを選ぶことによってインデックスファンドを超えるリターンが期待できる。信託報酬はやや高くなるが、それに見合う収益が得られれば問題はない。アクティブファンドはコンセプトやリスクの度合いを測るのが非常に難しいが、つみたてNISAの場合は長期投資に向いた条件を満たす銘柄のみが対象であるため、初心者でも安心だろう。
つみたてNISA対象銘柄のアクティブファンドの中で何を選ぶべきか。インデックスファンドであれば、リターンは指標ごとにおおむね同じになるためコストの見極めが非常に重要になる。それに対し、アクティブファンドはコストよりも長期リターンの実績に注目したい。優れたアクティブファンドであれば、一過性のブームではなく長期での安定的な運用ができているはずである。
先ほどの3年リターンと合わせて、5年10年のスパンでもプラス運用ができているファンドであれば、多少のコストを払ってでも投資する価値はある。つみたてNISAの対象商品では5年以上の運用実績のあるアクティブファンドしかないが、できれば10年のリターンデータがあるファンドを選びたい。そこに十分な純資産総額があればなおさらだ。
・純資産総額 1,482.17億円 セゾン投信が運用する「セゾン資産形成の達人ファンド」は、5年で年率13.55%、10年で年率14.64%のトータルリターンを記録している。投資形態としては各種投資信託を通じて投資を行うファンド・オブ・ファンズだ。 海外および日本の株式に広く分散投資し、必要なら債券も対象に入れる。業種も10%~20%ずつ分散されているため、一過性のブームに左右されない。信託報酬は年率1.35%と低くはないが、これほどの収益を長期で上げていれば十分元が取れるのではないだろうか。
ひふみ投信……ひふみブランド全体で7,000億円以上の資金を運用
・信託報酬 年率1.08%(税込)
・純資産総額 1,480.77億円
レオス・キャピタルワークスの「ひふみ投信」は2008年10月1日設定のロングセラー商品だ。主に東証一部上場の日本株を対象とするアクティブファンドだが、情勢によっては海外株式や現金の保有比率を上げるなど柔軟な運用が特徴である。
ひふみ投信は値動きも順調で、トータルリターンは5年で年率13.17%、10年で年率17.21%と高い。2021年には「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2020」で第5位を受賞している。ひふみ投信は直販型だが、同じコンセプトで運用されている「ひふみプラス」なら販売会社経由で購入できる。純資産総額は利益確定の動きから流出が続いているが、それでもひふみプラスが4,660.97億円、ひふみ投信が1,480.77億円と高水準を維持している。
フィデリティ・米国優良株・ファンド……徹底した個別企業分析で好成績
・信託報酬 年率1.64%(税込)
・純資産総額 376.72億円
フィデリティ・米国優良株・ファンドは、フィデリティ投信が運用する米国株式に特化したアクティブファンドだ。現地のファンドマネージャーの企業調査結果を活かし、国際的に優良だと思われる米国企業株式に投資を行う。コロナショックの影響も最低限で、トータルリターンは5年で年率13.52%、10年で年率14.13%と順調な運用を続けている。
信託報酬は1.64%と比較的高く感じられるが、同カテゴリーの平均くらいである。むしろ綿密な個別株調査を行っている割には低いくらいかもしれない。
年金積立Jグロース……設定来20年、国内成長企業を独自の基準で選定
・信託報酬 年率0.90%(税込)
・純資産総額 422.37億円
日興アセットマネジメントの「年金積立Jグロース」は2001年10月31日設定と20年の実績がある投資信託だ。愛称は「つみたてJグロース」である。成長性が見込める日本株を投資対象としている。トータルリターンは5年で年率12.88%、10年で年率13.98%だ。
コロナショック後は今後の回復期待から基準価額が高値更新を続けている。組み入れ比率の高い業種は現在のところ電気機器と情報・通信業だが、情勢によって柔軟に入れ替える。個別株の運用で信託報酬が年率1%を切っているのは良心的ではないだろうか。
コモンズ30ファンド……「30年目線」「30銘柄」「対話」がコンセプト
・信託報酬 年率1.08%(税込)
・純資産総額 266.66億円
コモンズ投信は長期投資をコンセプトとした独立系の資産運用会社。「コモンズ30ファンド」と「ザ・2020ビジョン」の2本を展開している。コモンズ30ファンドは投資期間30年を軸とし、投資対象は国内30社に絞って運用されている。
コモンズ30ファンドは投資先企業と投資家との交流を促す取り組みが多いのも特徴だ。投資家から集めた信託報酬の1%相当の収入を毎年一人の社会起業家に寄付をするというユニークな取り組みもしている。単に印象が良いというだけでなく、5年トータルリターン年率12.87%、10年年率11.87%と収益性も十分。投資対象を限定しているおかげで信託報酬もそれほど高くない。
6,アクティブファンドは定期的なチェックを
以上のように、アクティブファンドでもつみたてNISAに適した銘柄があることを解説した。投資信託は元本割れのリスクがある点は留意しておこう。アクティブファンドは市場とは異なる値動きをすることがあるので、「ほったらかし投資」には適さず定期的なチェックを心がけるようにしたい。
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