どの投資信託に資金が集まっているのかを示すバロメーターがある。「純資産総額」と呼ばれるものだ。投資信託の安全性を見極めるときにはぜひ参考としたい数字である。今回は純資産総額に注目したファンドランキングと、判断基準とする場合の注意点について解説する。

目次
1.投資信託の純資産とは何か?
2.「国内株式型」投資信託の純資産総額ランキングTOP5
3.「海外株式型」投資信託の純資産総額ランキングTOP5
4.「バランス型」投資信託の純資産総額ランキングTOP5
5.純資産総額だけで投資信託を選ぶのは難しい
6.投資信託の純資産総額は投資信託選びの判断基準の1つに

1.投資信託の純資産とは何か?

投資信託を比較するときは「純資産」は重要な指標になる。純資産は「純資産額」や「純資産総額」とも表記される。純資産総額は、ファンドが保有している株式や債券の時価に配当金や利子を加え、費用等のコストを差し引いて算出される。

ファンドが保有している信託財産が多く時価が高いほど純資産総額は大きくなるので、純資産総額は投資信託の規模を表しているとよくいわれる。上場株式の時価総額のように、市場における存在感を示している数字である。

純資産総額が大きい投資信託を選ぶメリット

純資産総額は大きいほど良いのだろうか。基本的にはそう考えて問題ない。投資信託は投資家から資金を集めて株式や債券などの信託財産を購入するものである。資金の規模が大きいほど広く分散投資が可能になり、コストを抑えた安定的な運用へとつながる。

また運用が上手ければ保有している信託財産が値上がりして純資産総額も増加する。純資産が大きく、かつ増加しているファンドは信頼性が高いといえるだろう。

純資産総額が減少しているファンドは売るべき?

逆に純資産総額が少ない、または減少しているファンドは避けるべきなのだろうか。純資産総額の減少はそのファンドを売る投資家が増えているか、信託財産が値下がりしていることを示す。一時的な減少であれば様子を見るのも手だが、ほかの同カテゴリーのファンドに比べても見劣りが激しく、継続的に減少している場合は換金も視野に入れても良いだろう。

基準価額が大きく下げている場合は運用会社のホームページに臨時のレポートが掲載されるのでぜひ参考にしたい。なお、純資産総額は分配金を支払うことでも下落する。その場合はファンドそのものの価値に変化はないはずなので、ほかに不安要素がないか確認しよう。

2.「国内株式型」投資信託の純資産総額ランキングTOP5

現在市場に出回っている投資信託で純資産総額の高いファンドはどれだろうか。国内株式を対象とした投資信託の純資産総額ランキングは以下の通りだ。(※データはすべて2020年10月30日時点)

順位 ファンド名 会社名 カテゴリー 純資産額
1 TOPIX連動型
上場投資信託
野村 国内大型
ブレンド
12兆4,888億3,500万円
2 日経225連動型
上場投資信託
野村 国内大型
グロース
6,兆4,966億5,700万円
3 ダイワ
上場投信-トピックス
大和 国内大型
ブレンド
5兆8,327億9,700万円
4 上場インデックスファンドTOPIX
『愛称:上場TOPIX』
日興 国内大型
ブレンド
5兆8,007億9,000万円
5 上場インデックスファンド225
『愛称:上場225』
日興 国内大型
グロース
2兆9,722億1,800万円
※モーニングスター社のHPを基に筆者作成

 

国内株式型投資信託ではインデックス型ファンドがランキング上位を占める。いずれもTOPIXあるいは日経平均株価に連動するタイプで、コストが低めで安全志向な銘柄である。

なかでも野村アセットマネジメントが運用するETF(上場投資信託)シリーズ「NEXT FUNDS」のTOPIX連動型は人気が高く、純資産総額は2位の倍近くになっている。ちなみに2位も同シリーズの商品だ。

TOPIXと日経平均株価はいずれも日本株式全体の動きを表すので、この2種のパフォーマンスに大きな違いはない。TOPIXは構成銘柄が2000以上と多く時価総額の高い銘柄の影響を強く受けるのに対し、日経平均は構成銘柄が225と少なめで、株価の高い銘柄の影響を強く受ける。

3.「海外株式型」投資信託の純資産総額ランキング TOP5

海外株式を対象とした投資信託の純資産総額ランキングは以下の通りだ。

順位 ファンド名 会社名 カテゴリー 純資産額
1 ピクテ・グローバル・
インカム株式(毎月分配)
ピクテ グローバル・
含む日本
9,629億1,300万円
2 グローバルESG
ハイクオリティ成長株式(H無)
『愛称:未来の世界(ESG)』
アセマネOne グローバル・
含む日本
6,583億6,200万円
3 AB・米国成長株投信
Dコース(H無) 予想分配金
アライアンス 北米 6,001億5,000万円
4 G・ハイクオリティ
成長株式F(H無)
『愛称:未来の世界』
アセマネOne グローバル・
含む日本
5,983億2,800万円
5 グローバル・
プロスペクティブ・ファンド
『愛称:イノベーティブ・
フューチャー』
日興 北米 5,943億3,800万円
※モーニングスター社のHPを基に筆者作成

 

海外型ではアクティブ型投資信託が強い。日本を含む全世界の株式を積極的に運用するタイプのファンドが上位を占めた。

「ピクテ・グローバル・インカム株式(毎月分配)」は電気・ガス・水道といった、高配当の公益企業に投資することが大きな特徴である。信託報酬は1.21%とインデックス型投資信託と比べて高めだが、多くの販売会社を通じて買われ、高い純資産総額を保っている。なお、インデックス型投資信託は、はなかなかランキングには現れないようだ。

4.「バランス型」投資信託の純資産総額ランキング TOP5

株式や債券など複合資産を対象としたバランス型投資信託の純資産総額ランキングは以下の通りだ。

ファンド名 会社名 カテゴリー 純資産額
1 東京海上・
円資産バランスファンド(毎月)
『愛称:円奏会』
東京海上 安定成長 6,479億2,300万円
2 スマート・ファイブ(毎月決算型) 日興 安定成長 3,510億700万円
3 財産3分法F
(不動産・債券・株式)毎月分配型
『愛称:財産3分法ファンド』
日興 バランス 3,492億6,000万円
4 投資のソムリエ アセマネOne 安定成長 3,299億8,000万円
5 グローバル3倍3分法ファンド
(1年決算型)
日興 成長 3,201億9,900万円
※モーニングスター社のHPを基に筆者作成

 

バランス型は株式以外に債券やREITにも投資するため、株価下落局面でも比較的安定性が高いといわれている。逆にいえば株価上昇の恩恵を受けにくい。

コロナ下落後の株価回復に伴い、主な株式指数はここ1年で世界的には15%、米国は20%、国内でも10%の上昇を見せている。一方でバランス型純資産ランキング上位5位までのファンドはいずれも基準価額が1年前と同水準または下回っていた。純資産総額も大きな伸びは見られない。

気になるのは毎月分配型投資信託の多さだ。毎月分配型は分配金が受け取れる頻度が高い反面、手数料が高いことがデメリットになる。長期投資による複利の効果も得にくいが、人気は相変わらず高いようだ。

5.純資産総額だけで投資信託を選ぶのは難しい

今回、純資産総額の大きい投資信託を調べたところ、国内株式型ではインデックス型が、海外株式型はアクティブ型が、バランス型では毎月分配型が多いことが分かった。それならばこれらのファンドさえ選んでおけば安心かというと、話はそう単純ではない。

投資信託の現時点の残高だけでなく増減も確認

純資産総額が現時点で高いファンドでも、継続して減少傾向にある場合は注意が必要だ。投資信託が買われた金額と売られた金額の差分を「資金流出入額」という。マイナスが続いている場合は運用資金の減少により効率的な運用に支障をきたす場合がある。

ただ、もともと規模の大きいファンドであれば、信託期間の途中で運用を中止する「繰上償還」に至るケースは少ない。

急激な純資産総額の増加も逆に悪影響になることもある。増えた運用資金は何らかの信託財産に変える必要があり、厳選した銘柄選びができないまま運用される可能性もある。極端な増減はファンドにとってプラスには働きにくいようだ。

純資産総額の変動要因は基本的に以下の3つである。
(1)運用損益
(2)資金流出入
(3)分配金の支払い

いずれの要因によるものなのかしっかりと確認することが重要だ。

6.投資信託の純資産総額は投資信託選びの判断基準の1つに

純資産総額は投資信託選びの重要な判断材料であることは間違いない。だが、この1点のみを決め手とするのはおすすめしない。規模が大きくても値下がりをすることがあるのは、時価総額の高い株式市場を見ていれば分かる。

投資信託の選定条件は、投資対象となる資産や地域、トータルリターン、基準価額の推移、信託報酬をはじめとする手数料など、比較検討すべき項目は複数ある。自身のポートフォリオにおけるバランス、許容できるリスクなども照らし合わせ、満足のいくものを購入するようにしてほしい。

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篠田わかな
執筆・篠田わかな
外資系経営コンサルティング会社で製造・物流・小売部門のコンサルタント業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。
外資系経営コンサルティング会社で製造・物流・小売部門のコンサルタント業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。

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