「外貨MMF(マネー・マーケット・ファンド)」とは外国為替を扱う商品。ゼロ金利政策が長期化して銀行預金に期待できない状況が続いている今、注目されている投資対象のひとつだ。同じ外国為替を扱う外貨定期預金などとの違い、どのようなメリットやデメリットがあるのか?
目次
1,外貨建MMFとは?4つのメリットを紹介 安定的運用や為替スプレッドなど
外貨建MMFには以下の4つのメリットがある。
- 安定的な運用が期待できる
- 為替スプレッドが安い
- 売買がしやすい
- 「特定口座」(源泉徴収あり)ならば確定申告不要・損益通算も可能
メリット1、安定的な運用に好利回りが魅力
MMFには為替変動リスクはあるが、比較的リスクが低い投資信託であるため、定期預金に預ける感覚で投資できる。
2021年7月21日現在、ネット証券最大手SBI証券の外貨建MMFの平均年換算利回りは、米ドル0.007~0.073%、トルコリラ15.82%、南アフリカランド2.991%となっている。
出典:SBI証券『外貨建MMF』
外貨建MMFでは運用実績に応じて支払われる分配金が毎月末に再投資されます。この複利効果で利回りがアップする点も外貨定期預金にはない大きな魅力です。
メリット2、外貨定期預金に比べて為替スプレッドが安い
三菱UFJ銀行の外貨預金の米ドル/円為替手数料(片道)は窓口で1円、インターネットバンキングでは25銭である(出典:三菱UFJ銀行『為替手数料』2021年7月26日現在)
主要ネット証券の中では、auカブコム証券と松井証券の米ドル建MMFの米ドル/円為替スプレッドは片道20銭と最安値だ。またSBI証券、楽天証券、マネックス証券の為替スプレッドも比較的安く設定されており、米ドル/円(片道)は25銭である。 出典:auカブコム証券『外貨建MMF 手数料』、松井証券『米ドルMMF 手数料』、SBI証券『為替取引』、楽天証券『外貨建MMF』、マネックス証券『債券の為替手数料一覧』
メリット3、購入・売却がしやすい
買付単位は証券会社によって異なるが、米ドルMMFを少額で買付できるマネックス証券では、米ドル決済なら1,000円相当、円決済なら1,000円から購入できる。
この程度の投資額であれば外貨建金融商品に対して不安がある人でもお試し感覚で投資を始められるでしょう。
メリット4、「特定口座」(源泉徴収あり)ならば確定申告不要で損益通算も
税金面での煩わしさがないのも大きなメリットだ。
売却時の譲渡益や為替差益は申告分離課税の対象であり、原則確定申告が必要になる。
譲渡損や為替差損が出た場合は、同じ特定口座内の上場株式の譲渡益や分配金などと自動的に損益通算されるので、税金の払い過ぎも避けられて手間もかかりません。
2,外貨建MMFの買い方を3ステップでやさしく解説
このようにさまざまなメリットがある「外貨建MMF」だが、実際にどうすれば購入できるのだろうか?外貨で運用される商品なので、購入するにあたっては、まず外国株取引口座が必要になる。取引までの流れは以下のとおりだ。
-
外国株取引口座を開設する
-
必要な資金を入金する
-
外貨建MMFの買付注文を出す
ステップ1、外国株取引口座を開設する
まだネット証券に口座を開設していない場合は、証券総合口座を開設してから、外国株取引口座を開設する。
ネット証券によっては、証券総合口座開設の申し込みの際に、外国株取引口座の開設を同時に申し込みできることもある ので、指示にしたがって手続きを進めよう。
すでに、ネット証券の証券総合口座を開設済みであれば、ネット証券のサイトにログインしてから、各社の手順にのっとって外国株取引口座を開設する。
ステップ2、必要な資金を入金する
外貨建MMFの資金の入金方法は以下の2つの方法がある。
・外貨のまま入金する「外貨入金」
円貨入金、外貨入金が可能なネット証券
・「円貨入金」の場合――証券口座の買付余力で購入する
円貨入金で外貨建MMFを購入する場合、ユーザーは証券総合口座に買付余力があれば、そのまま外貨建MMFを購入できる。
買付余力が十分でなければ、ログイン後に通常通りの手順で、即時入金などによって証券口座に日本円を入金するだけでよいので簡単だ。
買付注文が受け付けられると、ネット証券の適用為替レートで自動的に外貨に為替取引される。自分で為替取引を行わなくてよいのが円貨入金の特徴だ。
「外貨建MMF」を取り扱っているネット証券であれば、どこでも円貨入金で購入は可能です。
・「外貨入金」の場合――外貨を入金して、外貨で購入する
銀行に外貨預金がある場合は、外貨をそのままネット証券の外国株取引口座に入金して、外貨で外貨建MMFを購入することができる。
外貨をそのまま入金するので、為替レートに左右されずに取引できるのがメリットだ。
SBI証券、楽天証券、マネックス証券、auカブコム証券では、外貨建債券の償還などで外貨の預り金があれば、為替取引を行わずに、外貨預り金をそのまま使って外貨建MMFの購入が可能です。
ステップ3、外貨建MMFの買付注文を出す
まずネット証券サイトにログインして、外貨建MMFページの画面上で注文ボタンを押す。次のページに遷移したら、掲載されている目論見書を閲覧すると、注文ページに遷移する。
円貨決済と外貨決済のどちらも可能なSBI証券、楽天証券、マネックス証券、auカブコム証券では、決済方法として「円貨決済」あるいは「外貨決済」を選択して、購入金額を指定すれば買付注文は完了だ。
3,ネット証券各社の外貨建MMF手数料を比較 SBI、楽天、マネックスなど
ネット証券の主要通貨為替スプレッド(片道)比較
ネット証券名 | 米ドル/円 | 南アフリカ ランド/円 |
トルコリラ/円 |
---|---|---|---|
SBI証券 |
0.25円 | 0.30円 | 1.50円 |
楽天証券 | 0.25円 | 0.30円 | 1.50円 |
証券 |
0.25円 | 0.30円 | 1.00円 |
auカブコム 証券 |
0.20円 | ― | 2.00円 |
松井証券 | 0.20円 | ― | ― |
4,ネット証券で購入できる外貨建MMFを比較
ネット証券で購入できる外貨建MMFは、前述のとおり米ドル建て、南アフリカランド建て、トルコリラ建てのMMFである(2021年7月26日現在)。
それぞれの直近の利回りや取扱ネット証券などを、以下の表でチェックしておこう。
外貨建MMFの比較
通貨 | 銘柄名 | 利回り※1 | 買付単位(当初) | 取扱ネット証券 |
---|---|---|---|---|
米ドル | ブラックロック・ スーパー・ マネー・ マーケット・ ファンド |
0.044% | (外貨) 10米ドル以上 0.01米ドル単位 (円貨)※2 5,000円以上 1円単位 |
SBI証券 |
ノムラ・ グローバル・ セレクト・ トラスト |
0.065% | (外貨) 10米ドル以上 0.01米ドル単位 (円貨)※2 5,000円以上 1円単位 |
SBI証券 |
|
ゴールドマン・ サックス・ マネー・ マーケット・ ファンド |
0.007% | (外貨) 10米ドル以上 0.01米ドル単位 (円貨)※2 5,000円以上 1円単位 |
SBI証券 楽天証券 |
|
(円貨) 1万円以上 1円単位 |
松井証券 | |||
ニッコウ・ マネー・ マーケット・ ファンド (米ドル) |
0.073% | (外貨) 10米ドル以上 0.01米ドル単位 (円貨)※2 5,000円以上 1円単位 |
SBI証券 楽天証券 |
|
(外貨) 1,000円相当以上 (円貨) 1,000円以上 |
||||
南 アフリカ ランド |
ホライズン・ トラスト・ 南アフリカ ランド・ マネー・ マーケット・ ファンド |
2.991% | (外貨) 10南アフリカランド 以上 0.01南アフリカランド 単位 (円貨)※2 5,000円以上 1円単位 |
SBI証券 楽天証券 |
(外貨) 1,000円相当以上 (円貨) 1,000円以上 |
||||
トルコ リラ |
マルチ・ ストラテジーズ・ ファンド・ トルコリラ・ マネー・ マーケット・ ファンド |
15.82% | (外貨) 10トルコリラ以上 0.01トルコリラ単位 (円貨)※2 5,000円以上 1円単位 |
SBI証券 楽天証券 |
(外貨) 1,000円相当以上 (円貨) 1,000円以上 |
5,外貨建MMFのデメリットは為替変動・金利変動・信用力の低下リスク
これまでメリットや買い方、代表的なファンドなどを紹介してきたが、デメリットについても把握しておきたい。
ローリスクのMMFを利用した金融商品ではあるが、為替変動と金利変動、信用リスクには注意を払う必要があるだろう。
リスクを避けるには次の点に気をつけたい。
- 購入・売却を問わず相場環境が悪い時期の為替取引を避けて、相場の好転を待ってから取引をする
- 売却時期に円高水準にあれば外貨決済にして、外貨のまま他の外貨建金融商品を購入する
- 円安傾向になってから円に交換する
- 為替変動リスクを分散させるために外貨建MMFを月々の積立で購入する
6,資産保護の対象でもある「外貨建MMF」は安定的に着実に増やしたい人の選択肢
外貨普通預金や外貨定期預金は銀行の預金保険の対象外であり、銀行破綻時には保護されない。
一方、外貨建MMFは証券会社での分別管理が定められており、証券会社が破綻した場合には、上限1,000万円まで日本投資者保護基金によって補償される。万が一の場合でも資産が保全されるので安心して購入できるのだ。
将来的な資産形成の大きな転機になるかもしれないので、ぜひ投資対象のひとつとして、一度検討してみましょう。
外貨建MMFについてよくある5つのQ&A
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