投資信託は少額の資金で、株や債券、商品(コモディティ)、不動産などさまざまな金融商品に分散投資できる比較的リスクの低い金融商品だ。しかし、投資信託の運用に失敗して大きな損失をだしてしまう投資家も少なくない。投資信託で失敗してしまう原因と、対処法を見ていこう。

目次
1.3人に1人は投資信託で失敗している
2.投資信託で失敗している人の7つの特徴
3.投資信託で失敗しないための7つの対処法
4.投資信託の失敗の原因を追求することが重要

1.3人に1人は投資信託で失敗している

投資信託での失敗とは多くの場合、損失を出してしまうことだろう。金融庁は顧客本位の業務運営の一環として、金融機関に顧客の運用損益率分布の開示を求めている。

2020年3月末時点で投資信託を保有する投資家のうち、運用損益が0%未満になっている投資家は66%とあり、2人に1人は損失を出している状況だ(金融庁の「顧客本位の業務運営」の取組成果の公表状況より)。新型コロナウイルスの影響で相場変動も大きかったので、損失の比率はさらに高まる可能性がある。

2.投資信託で失敗している人の7つの特徴

3人に1人が投資信託で失敗しているのはなぜだろうか。投資信託で失敗をしてしまう人の特徴として、主に7つの原因があると考えられる。

失敗の原因1……コストの高い投資信託を運用している

投資で資金を増やすときは、できるだけコストを抑えることが重要だ。投資信託には主に以下の3つのコストがかかる。

  • 購入時の手数料
  • 売却時の手数料(信託財産留保額など)
  • 信託報酬(運用期間中に発生する運用管理費)

投資信託での失敗を避けるためには、購入時の手数料と信託報酬に気を付けたい。特に信託報酬は運用期間中、仮に資産が値下がりしてもずっと発生するコストだ。資産が値下がりすると売却しにくく、信託報酬の高い投資信託は高いコストを払い続けなければならなくなる。

失敗の原因2……分配金を重視した投資信託を運用している

投資信託で失敗してしまう人の特徴として、毎月分配型などの分配金を重視した商品を選択してしまっているケースもある。低金利の時代、定期的に分配金がもらえる投資信託の人気は高い。

リタイア世代が年金の代わりに受け取ったり、若い世代でも毎月小遣いのようにもらえたりする点が人気を集めている理由だろう。しかし毎月分配型には3つの問題点がある。

・損益計算が複雑で分かり辛い

投資信託の損益計算は投資資産の増減と受け取った分配金を合算する必要がある。投資信託の毎月分配型も同じなのだが、計算をややこしくしてしまうのが特別分配金である。

特別分配金とは毎月の分配金を一定にすることを重視して、利益が出ていない時には元本を取り崩して支払う分配金のことだ。特別分配金は投資元本の払い戻しに当たるため利益にはならないが、受け取った分配金の全てが利益であると勘違いする人が多い。

また損益計算も特別分配金が出た分だけ投資元本が取り崩されるので通常より複雑であり、知らないうちに損失が広がってしまうことも多い。

・毎月分配型という仕組み自体が高コストにつながってしまう

毎月分配型の投資信託は毎月決算を行う必要があり、その分コストが余計にかかる。また毎月の分配金を担保するために、ハイリスクハイリターンの商品への投資や複雑な仕組みを組み入れた投資を行っている商品もある。

毎月分配型という仕組み自体が高コスト、ハイリスクハイリターンな投資を前提としており、それによって失敗の可能性を高めてしまっているのだ。

・分配金を受け取ると複利効果が活かせない

複利効果とは運用益を再投資に回すことで、投資元本と運用益の双方に運用利回りが計算され、資産が雪だるま式に増えていくという効果である。

投資信託の複利効果の例として、100万円を年率5%で10年間運用した場合のシミュレーションが下表だ。

※筆者作成

複利と単利の差は5年間では2万6,282円に過ぎないものの、10年では12万8,895円もの差になる。単利の計算は足し算だが、複利の計算は掛け算なので、投資信託の投資期間が長ければ長くなるほど大きな差が生まれるのだ。

失敗の原因3……一つの投資信託だけに投資をしている

一つの商品だけに投資をしている人も、失敗の可能性を高めている。「卵は一つのカゴに盛るな」という投資格言があるように、投資の基本は分散投資だ。一つのカゴに盛った卵はそのカゴを落としたときに全て割れてしまうが、複数のカゴに分けて卵を盛れば一つのカゴを落としても、ほかのカゴの卵は無事である。

一つの投資信託の商品に投資するということは、その商品の値動きに自分の資産を委ねているということだ。こうした投資を行っている人はギャンブルに近い投資ともいえ、投資信託で失敗をしてしまう可能性が高くなる。

失敗の原因4……短期での利益を目的にした値上がり重視の投資を行っている

投資信託で失敗してしまう人の中には、短期での利益を目的とした投資を行っているというケースも挙げられる。少し荒い表現であるが、多くの投資信託は商品の性質上、短期では儲かりにくい仕組みになっている。

投資信託は複数の銘柄や資産に投資を行っており、一つの商品である程度の分散投資が行われている。そのため個別株を購入する場合などと比べれば、値動きは多少緩やかになる。例えば、日経平均株価に連動する投資信託は、基本的に日経平均株価を構成する225銘柄全てに投資を行う。そのなかの一つの銘柄が大きく上昇しても、投資信託全体に与える影響は限られる。

投資信託はこのような特徴を持つ商品であり、短期での利益を目的にすると、短期での値上がりを重視するために過度なリスクを取ってしまうだろう。これでは投資信託で失敗することになりかねない。

失敗の原因5……相場が上昇したときに資金を全額投入してしまっている

投資の大原則は安い値段で購入し、高い値段で売却することである。投資信託で失敗する人の特徴として、高い値段でまとめて投資をしてしまうことが原因の場合がある。

もちろん投資の世界は予測が難しいので、安い値段を狙って資金を投入するのは至難の業だ。しかし購入時期を分散させることにより、購入価格を平準化させるという対処が取れる。

投資信託で失敗してしまう人は、相場が上昇したことで慌てて資金を全額投入してしまい、結果的に高値掴みになってしまっているのだ。

失敗の原因6……新規設定の投資信託ばかりを購入している

2020年末時点での一般的な公募株式投資信託の数は約5,913本である。一方で2015年から2019年までの5年間で新規設定された株式型投資信託は2,500本強であり、約4割の投資信託が運用開始から5年以内の投資信託だ。

そういった新しい投資信託を買う資金を作るために、これまで保有して利益がでている投資信託を売却する人もいる。旬のテーマは継続することもあるが、短命に終わることも多い。

また短期での乗り換えを繰り返していると販売手数料など無駄なコストがかかり、運用成績は悪化してしまうことも起こる。

失敗の原因7……よく理解しないまま投資信託に投資をしている

「金融機関の担当者におすすめされた」「ネットで人気だった」などの理由で、よく調べないまま商品を購入したという人もいるだろう。よく分からない投資信託に投資を行うということは、その商品のリスクも分からず、適切な売却タイミングの判断もできないということである。

よく分からないまま投資信託を保有し続けた結果、失敗してしまうという人も多いので注意したい。

3.投資信託で失敗しないための7つの対処法

投資信託で失敗しないために、それぞれの対処法を見ていこう。

対処法1……コスト意識を持った投資信託の商品選択を行う

投資信託での失敗を避けるためには、コスト意識を持つことが重要だ。短期では「購入時手数料」、長期では「信託報酬」を重視する必要がある。

ネット証券では投資信託の購入時の手数料と売却時の手数料(信託財産留保額など)を無料としている商品が多いので、なるべくそういう商品を選択しよう。

信託報酬は投資する資産クラスや商品の種類によって異なるが、インデックスファンドでは0.5%(海外資産を対象とする場合は0.75%)、アクティブファンドでは1.0%(海外資産を対象とする場合は1.5%)以内が一つの目安だ。

対処法2……分配金を重視した投資信託の商品を選択しない

投資信託を選択するときは毎月分配型などの分配金を重視した商品は避けよう。分配金が出る場合には、分配金を再投資に回すことで複利効果に期待する投資を行いたい。

対処法3……分散投資を意識した投資信託のポートフォリオを組む

分散投資を意識することで、投資信託の失敗を避けることができる。日本株だけに投資を行っていれば、日本株の下落局面では保有資産の全てが影響を受けてしまう。一方で日本株だけでなく、米国株や欧州株にも投資を行なっていれば、保有資産が受ける影響は軽減される可能性がある。

株式だけでなく、債券やREITといった資産の分散も行っていれば、特定資産の下落が保有資産に与える影響もさらに小さくなる。投資信託自体が分散投資を行う仕組みではあるが、ポートフォリオの資産配分のバランスを意識するようにしたい。

対処法4……長期投資を前提にした目標設定をする

投資信託へ投資を行う場合には、長期投資を視野に入れた目標設定が重要である。短期的な目標設定をしてしまうと、失敗する可能性が高くなってしまう。投資信託という商品の特徴に合わせて、目標設定も長期的なスパンで計画しよう。

対処法5……投資信託の購入時期を分散させて高値掴みを避ける

投資信託で高値掴みによる失敗を避けるため、購入時期を分散させることも重要だ。いわゆるドルコスト平均法という手法であり、定期的かつ継続的に一定金額の購入を行うことで、購入価格の平準化を図ることができる。

このような買い方を実践することで価格が高いときには少ない口数、低い時には多くの口数を購入でき、購入価格は平準化される。焦らず分散して購入を行っていくように心がければ、投資信託での失敗を回避できるはずだ。

対処法6……新規設定された投資信託は慎重に判断を

新規設定された投資信託は大きな宣伝がされており、一見すると魅力的な商品に感じられることも多い。しかし新規設定された投資信託は運用の実績が不透明であり、賞味期限の短いテーマであることも多い。

安易に新しい投資信託の商品へ乗り換えず、自身のポートフォリオのなかに本当に必要な商品であるかを見極めて慎重に判断しよう。

対処法7……自分で納得した投資信託にのみ投資をする

投資信託で失敗しないためには、投資する商品のことを理解しておくことも重要だ。おすすめされるままに、よく分からない商品へ投資を行なっていても、運用成績は伴ってこないだろう。

投資信託の商品を購入するときに商品の全てを知る必要はないが、目論見書などを読み、その商品がインデックスファンドかアクティブファンドか、投資対象資産は何か、コストはどの程度かなどは最低限知っておきたい。また為替ヘッジの有無、デリバティブなどの複雑な仕組みが組み込まれていないかといった点も理解して購入を検討するとよいだろう。

4.投資信託の失敗を認め原因を追究することが重要

投資信託での失敗は誰もが避けたいものだ。しかし投資には必ず不確実性がついてくるので、失敗を完全にゼロにすることは困難である。重要なのは失敗を認め、失敗の原因を追究する姿勢だろう。

投資では値段が下がっていても、いつかは戻るだろうと考えて失敗と向き合わない人も多い。しかし含み損の原因を追究せずに放置してしまったことにより、取り返しのつかない損失となってしまうというケースもある。

含み損の状況と向き合い、その原因を追究し修正することで、次からの失敗の確率を低く抑えることができるのである。投資信託への投資でも、この姿勢を意識して自分の資産と向き合ってほしい。

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樋口壮一
執筆・樋口壮一
新卒で証券会社に入社後、10年間リテール営業、ホールセール営業を経験。現在は事業会社の営業企画部門に努める傍ら、個人として投資を行い、マーケットに携わる。AFP
新卒で証券会社に入社後、10年間リテール営業、ホールセール営業を経験。現在は事業会社の営業企画部門に努める傍ら、個人として投資を行い、マーケットに携わる。AFP

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