iDeCo(イデコ)で節税できる仕組みをわかりやすく解説

2019.10.29
FINANCE
(写真=Doucefleur/Shutterstock.com)
(写真=Doucefleur/Shutterstock.com)
iDeCoの最大のメリットは、節税効果だろう。iDeCoは掛金の全額が「所得控除」の対象となり、その分の所得税及び住民税を節税できる。iDeCoがどのような仕組みで節税できるかを見ていこう(税制は2019年10月時点)。

iDeCo(イデコ)の3つの節税メリット

iDeCoは節税効果の高い制度であり、ポイントは以下の3つだ。

節税メリット1……掛金全額所得控除による所得税と住民税の軽減効果が高い

iDeCoの節税効果が高いと言われる一番の理由は、掛金を全額所得控除できるからだ。所得控除とは、簡単に言うと収入からiDeCoに積み立てた掛金の金額を差し引くことである。収入から掛金を控除するとその分だけ課税対象となる所得額が少なくなるため、支払うべき所得税と住民税も軽減されるのだ。

iDeCo以外に所得控除が使える代表的な金融制度としては生命保険料控除があるが、控除額の上限が決まっておりiDeCoのように掛金全額は控除できない。そのため所得控除による税軽減効果を比べれば、他の制度よりもはるかに節税効果が高いのだ。

節税メリット2……預金利息や投資信託の運用益が非課税になる

掛金の全額所得控除に加えて、有利にお金を増やしやすい仕組みがある。

iDeCoは自分でどの商品に積立をするか選べるが、その商品は大きく預金と投資信託に分かれる。預金では利息が発生し、投資信託では将来の運用益を期待できる。そして、利息にしても運用益にしても、増えたお金に対しては、換金した時点で約20%の税金を徴収されるのが通常だ。iDeCoではその課税がなく、同じ運用結果でも手取り金額は大きく異なる。

仮に運用益が100万円の場合、本来なら約20万円の税金を徴収され手元に残るのは80万円程度だ。しかしiDeCoで運用していた場合は、運用益に課税されることなくそのまま100万円として換金できる。同じ運用でもiDeCoを利用するのとしないのとでは、どちらの節税効果が高いかは明白だろう。

節税メリット3……年金または一時金での受取時にも控除がある

iDeCoは積立に対しても運用に対しても税金の優遇があるが、受取時にもメリットがある。

iDeCoの資産は原則として60歳以降に年金または一時金で受け取れる。人によっては何十年もの加入期間になるため、受取金額が数百万円や1,000万円以上になる可能性もある。そのような大きな金額を受け取ると収入とみなされ税金が発生することもあるが、iDeCoでは受取方法に応じた控除を利用でき、節税できる仕組みになっている。年金受取の場合は「公的年金等控除」、一時金受取の場合は「退職所得控除」を利用する。

公的年金等控除では、厚生年金などと合算した年金額が65歳未満は70万円まで、65歳以上は120万円までなら課税対象外だ(2020年以降はそれぞれ10万円引き下げ)。受取金額がそれ以上の場合は金額に応じて課税される。

退職所得控除では基本的にiDeCoの加入年数を一定の計算式に当てはめて所得控除額を算出する。例えばiDeCoに20年の加入で800万円、30年の加入で1,500万円となり、その金額を超えない限りは一時金で受け取っても税金がかからない。

年金と一時金でどちらが節税になるかは受取時の状況にもよるが、現状ではほとんどの人が一時金で受け取っているようだ。

所得控除によるiDeCoの節税メリットは自分でも計算できる

iDeCoの3つの節税メリットの中でも加入者にとりわけ恩恵が大きいのは、掛金の所得控除だ。運用益の非課税はある程度の金額に増えなければ大きな効果はないし、受取時の所得控除はかなり先の話になる人も多いだろう。

一方、掛金の所得控除は会社員など働く人にとって毎年の所得税と住民税を下げる効果があり、最も節税メリットを感じやすいはずだ。どのくらいの節税額になるかは自分でも比較的簡単に計算できるため、節税の仕組みを見ていこう。

iDeCo(イデコ)では所得税と住民税が節税できる

iDeCoの節税額は自分の所得税率や住民税率さえ把握すれば、すぐに計算できる。まずは所得税と住民税の節税の仕組みを確認していきたい。

iDeCo(イデコ)で所得税が節税できる仕組みを解説

所得税は収入が上がるごとに税率が高くなる累進税率であり、課税所得に応じて以下の税率が適用される。なお、日本は超過累進課税方式のため、課税所得全額にその税率がかかるわけではない。それを考慮し、下の表では控除額を表示した。
 
課税所得 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
330万円以下 10% 9万7,500円
695万円以下 20% 42万7,500円
900万円以下 23% 63万6,000円
1,800万円以下 33% 153万6,000円
4,000万円以下 40% 279万6,000円
4,000万円超 45% 479万6,000円
(※国税庁のホームページより筆者作成)

「課税所得×税率−控除額=所得税額」になる。

課税所得とは税金を算出するもとになる計算上の所得であり、一般的な会社員なら源泉徴収票から「給与所得控除後の金額−所得控除の額の合計額」で簡単に計算できる。自営業者なら確定申告書第一表の「課税される所得金額」だ。これらの課税所得に対応する税率が自分の所得税率というわけである。

iDeCoによる節税額を計算するには、上の表の所得税率をその年の1月から12月までの掛金の合計に乗じれば算出できる。例えばiDeCoの年間掛金が12万円で所得税率が10%なら、1万2,000円が所得税における節税額だ。

大抵はこの計算で問題ないが、iDeCoに加入することで課税所得が圧縮されるため、税率が1段下に下がる人がたまにいる。確認方法としては課税所得からiDeCoの年間掛金を引いた金額を税率表に当てはめてほしい。もし税率が下がるようなら、その数字を使って節税額を計算するのが正確だ。

iDeCo(イデコ)で住民税が節税できる仕組みを解説

個人の住民税は「所得割」と「均等割」に分けられるが、iDeCoの節税においては所得割のみを使える。所得割とは所得に対する課税であり、一律10%が徴収される。

iDeCoによる住民税の節税は所得税と同じく、掛金に税率を乗じれば計算できる。住民税の場合は一律10%であるため、iDeCoの年間掛金が12万円なら節税額は1万2,000円だ。所得税と合わせて1年間だけでも十分お得だが、iDeCoでは収入がある限り税金の軽減が毎年続いていくため大きな節税になる。

iDeCoで所得税と住民税がどのくらい節税できるのかシミュレーション

ここまでの節税の仕組みをもとに具体的なモデルケースでどのくらいの節税額になるのか計算してみたい。

会社員年収1,000万円のiDeCoの節税シミュレーション

iDeCoの節税額は掛金や所得状況によって全く異なるが、今回は以下の条件でシミュレーションを行う。
  • 会社員
  • 年収1,000万円
  • 月額掛金2万3,000円(年額27万6,000円)
iDeCoの節税額を計算するためには自分の所得税率を把握することが必要だと解説した。所得税率は課税所得から求められ、先ほども軽く触れたが、計算式は以下のようになる。

年収−給与所得控除−各種所得控除=課税所得

給与所得控除とは主に会社員に適用される仕組みで、収入に応じて以下のように控除額が決まっている(2019年現在。2020年以降は改定)。

表に当てはめると給与所得控除額は220万円だ。……(1)
 
源泉徴収票の支払金額 給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%か
65万円の高いほう
360万円以下 収入金額×30%+18万円
660万円以下 収入金額×20%+54万円
1,000万円以下 収入金額×10%+120万円
1,000万円超 220万円
(※国税庁のホームページより筆者作成)

各種所得控除とは給与所得控除以外に差し引ける14種類の控除である(2019年現在、2020年以降は改定)。今回は以下の表から共通して当てはまる基礎控除と社会保険料控除を使用する。社会保険料は概算で年収の15%としている。
  • 基礎控除38万円
  • 社会保険料150万円(概算)
合計すると各種所得控除額は188万円だ。……(2)
 
各種所得控除 所得税の控除額
基礎控除 38万円
配偶者控除(一般) 38万円
配偶者特別控除 最高38万円
扶養控除(一般) 38万円
障害者控除(一般) 27万円
寡婦・寡夫控除(一般) 27万円
勤労学生控除 27万円
雑損控除 災害損失額の一定額
医療費控除 最高200万円
社会保険料控除 支払った社会保険料の額
小規模企業共済等掛金控除 支払った掛金の額
生命保険料控除 最高12万円
地震保険料控除 最高5万円
寄附金控除 (年間所得金額×40%もしくは
寄附金合計額のどちらか低いほう)-2,000円
(※財務省のホームページより筆者作成)

給与所得控除額や各種所得控除額を課税所得算出の計算式に当てはめると以下になる。

年収1,000万円−(1)220万円−(2)188万円=課税所得592万円

課税所得と前述の所得税率の表から、税率20%で考えればよく、住民税を合わせて30%だ。iDeCoの掛金は年間27万6,000円のため、その30%である8万2,800円が1年間の節税額になる。もちろん掛金やその他の所得控除などの条件よってiDeCoの節税額は変わるが、メリットが大きいことに変わりはない。

簡易的な節税シミュレーションならiDeCo公式サイトや金融機関サイトなどでも提供されているため、利用してみてはいかがだろうか。

iDeCo(イデコ)の節税額早見表

シミュレーションでは特定の条件をモデルにしたが、各所得税率と掛金による節税額は早見表で確認するとわかりやすいだろう。
 
税率 iDeCoの月額掛金
所得税 住民税 1万2,000円 2万円 2万3,000円 6万8,000円
年間節税額
5% 10% 2万1,600円 3万6,000円 4万1,400円 12万2,400円
10% 2万8,800円 4万8,000円 5万5,200円 16万3,200円
20% 4万3,200円 7万2,000円 8万2,800円 24万4,800円
23% 4万7,520円 7万9,200円 9万1,080円 26万9,280円
33% 6万1,920円 10万3,200円 11万8,680円 35万880円
40% 7万2,000円 12万円 13万8,000円 40万8,000円
45% 7万9,200円 13万2,000円 15万1,800円 44万8,800円
(※筆者作成)

上の表の4種の掛金は、以下に示したように、その人の立場によって区分される上限額だ。社会保険区分や勤務先の企業年金制度の状況によりどれに当てはまるのかは異なり、正式には申込手続きの間にわかる。
 
社会保険加入区分 対象 掛金の上限額
第1号被保険者 自営業者、学生 月額6万8,000円
第2号被保険者 企業年金のない会社員 月額2万3,000円
企業型DCのみに加入中の会社員 月額2万円
その他の会社員、公務員 月額1万2,000円
第3号被保険者 専業主婦・主夫 月2万3,000円
(※iDeCo公式サイトより筆者作成)

iDeCo(イデコ)は会社員より自営業者のほうが節税効果が高い

シミュレーションでは年収1,000万円の会社員だと年間およそ8万円程度節税できた。しかし、会社員は退職金や厚生年金などで有利なため、掛金上限は自営業者の掛金上限6万8,000円に比べると半分以下に設定されており、iDeCoに限っては自営業者が有利だ。この掛金の差がどのくらいの節税効果の差になるのだろうか。

所得税率が20%、月額掛金は会社員が2万3,000円、自営業者は6万8,000円だとすると、期間が長くなるほど節税効果の差は開いていく。
 
  累積の節税額
1年 10年 20年 30年
会社員 8万2,800円 82万8,000円 165万6,000円 248万4,000円
自営業者 24万4,800円 244万8,000円 489万6,000円 734万4,000円
税軽減額の差 16万2,000円 162万円 324万円 486万円
(※筆者作成)

同じ税率でも掛金が違えばこれだけ節税効果に差が生まれる。所得控除できる掛け金が多いことがいかにメリットとなるかがわかるだろう。高年収だと所得税率がさらに上がるため、収入が高ければ高いほどiDeCoの節税効果は強力になっていくのだ。

iDeCoの節税効果によるメリットはデメリットを上回る

iDeCoには3つの節税メリットがあるが、デメリットもある。主なデメリットは60歳まで原則として引き出せないことと月々の口座管理手数料がかかることだ。

iDeCoの引き出し制限は強力で基本的には不可能と考えたほうがいい。iDeCoは途中で引き出せないため緊急時の資金としても使えないが、積立さえ続ければ将来のお金を確実に準備することにもつながる。引き出しができるとついつい使ってしまうことも考えられるため、人によってはメリットと言えるかもしれない。

iDeCoの口座管理手数料もデメリットであるが、収入があり所得控除できる人には税負担の軽減でカバーできることが多い。iDeCoの口座管理手数料は金融機関によって異なるため、あまり高いところは選ばないほうが賢明だ。iDeCoの手数料が安いのはネット証券系だが、対面型でも条件を満たせば安くなるところはあり比較したいポイントだ。

以上のようにiDeCoにはデメリットもあるが、ほとんどの人にとってiDeCoの節税効果はそれを上回るメリットになる。掛金の所得控除は期間が長いほど効果が高いため、可能な限りiDeCoを活用していきたい。

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文・國村功志(資産形成FP)
 

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