税制優遇制度であるiDeCoと住宅ローン控除は、併用によって節税効果が薄れてしまうことがある。どちらの制度もうまく活用するにはどうすればいいのか。併用する際のポイントを解説する。

iDeCo(イデコ)は税制優遇を受けながら老後に備える私的年金制度

iDeCoとは個人型確定拠出年金の愛称であり、公的年金に上乗せする形で自助努力により老後資金を準備する「私的年金」のひとつ。毎月の掛金で定期的に商品を購入し、自ら運用していくものだ。

iDeCo(イデコ)の掛け金は全額が所得控除になる

iDeCoの掛け金は全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となり、所得税を計算する際の基準となる課税所得から控除される。

もともと課税所得のない国民年金の第3号被保険者(専業主婦や主夫など第2号被保険者の扶養配偶者)は、掛け金拠出による節税効果はない(収入があり掛け金拠出によって課税所得がゼロになる場合を除く)。

iDeCo拠出限度額と所得控除による節税効果の概算額をまとめると以下の表になる。第2号の被保険者には3種類あって、それぞれ※1は「会社に企業年金のない会社員」、※2は「企業型確定拠出年金に加入している会社員」、※3は「確定給付年金と企業型確定拠出年金に加入している会社員・確定給付年金のみに加入している会社員・公務員等」。課税所得金額の税率については、復興特別所得税を除く所得税と住民税の合計で、住民税は課税所得金額によらず一律10%だ。
 

iDeCo拠出限度額と所得控除による節税効果の概算額
国民年金種別
(職業)
第1号
被保険者
(自営業者等)
第2号
被保険者
(会社員・公務員等)
第3号
被保険者
(専業主婦/主夫)
※1 ※2 ※3
拠出限度額 月額 6万8,000円 2万3,000円 2万円 1万2,000円 2万3,000円
年額 81万6,000円 27万6,000円 24万円 14万4,000円 27万6,000円
課税所得金額 税率 節税効果の概算額
(拠出限度額まで拠出した場合・年額)
195万円以下 15% 12万2,400円 4万1,400 3万6,000円 2万1,600円 -
195万円超
330万円以下
20% 16万3,200 5万5,200円 4万8,000円 2万8,800円 -
330万円超
695万円以下
30% 24万4,800円 8万2,800円 7万2,000円 4万3,200円 -
695万円超
900万円以下
33% 26万9,280円 9万1,080円 7万9,200円 4万7,520円 -
900万円超
1,800万円以下
43% 35万880円 11万8,680円 10万3,200円 6万1,920円 -

※iDeCo公式サイトと国税庁ホームページを基に編集部が作成

住宅ローン控除は住宅取得の金利負担軽減を図る制度

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを利用し住宅を取得する者の金利負担軽減を図るための制度だ。

住宅ローン控除は税額控除になる

住宅ローン控除の適用を受けると、年末の住宅ローン残高と住宅取得対価のいずれか少ない金額(最大4,000万円、長期優良住宅等の場合は最大5,000万円)の1%相当額が、最長10年間に渡り所得税から控除される。

ただし居住開始時期が2014年4月~2021年12月のうち、消費税10%が適用される住宅を取得し、入居時期が2019年10月~2020年12月となる場合には、控除期間が13年に延長される。

その場合、控除期間の11~13年目の各年の控除額は、借入残高などの上限額は住宅ローン残高または住宅の取得対価のうちいずれか少ないほうの金額の1%。もしくは建物の取得価格の2%÷3のいずれか少ないほうの金額になる。

所得税から控除しきれない場合、一定額までは翌年度の住民税からも控除できる。

住宅ローン控除額をまとめると以下の表になる。借入残高などの上限額は住宅ローン残高または住宅の取得対価のうちいずれか少ないほうの金額になる。ここでいう中古住宅は、購入時に消費税が非課税になる個人売買の場合とする。
 

住宅ローン控除額
居住開始
時期
物件種別 控除期間 控除率 借入残高等
上限額
最大控除額
(所得税)
最大控除額
(住民税)
2014年4月

2021年12月
一般住宅 新築 10年間 1% 4,000万円 年40万円 年13.65万円
(前年度所得税課税所得の7%)
中古 2,000万円 年20万円 年9.75万円
(前年度所得税課税所得の5%)
長期優良住宅、低炭素住宅 新築 5,000万円 年50万円 年13.65万円
(前年度所得税課税所得の7%)
中古 3,000万円 年30万円 年9.75万円
(前年度所得税課税所得の5%)

※国土交通省「すまい給付金サイト」を基に編集部が作成

iDeCo(イデコ)と住宅ローン控除を併用した場合の影響


iDeCoと住宅ローン控除を併用する場合には、iDeCoの所得控除によって所得税(住民税)が減り、住宅ローン控除を引ききれなく可能性がある。

iDeCoとの併用によって住宅ローン控除が引ききれなくなる例

・自営業(国民年金第1号被保険者)
所得税課税所得金額(小規模企業共済等掛金控除以外の所得控除後):300万円
小規模企業共済等掛金控除額:60万円(iDeCo掛金5万円/月)
住宅ローン控除額:30万円(住宅ローン年末残高3,000万円)

・小規模企業共済等掛金控除前
=300万円×10%(住民税率)-9万7,500円
所得税額20万2,500円

・小規模企業共済等掛金控除後
=(300-60)万円×10%(住民税率)-9万7,500円
所得税額14万2,500円(iDeCoによる所得税の節税効果6万円)

・iDeCoによる住民税の節税効果
=60万円(iDeCoによる課税所得減少額)×10%(住民税率)
=6万円

このケースでは住宅ローン控除額(30万円)が所得税額(14万2,500円)と住民税からの控除限度額(13万6,500円)の合計(27万9,000円)を上回り控除しきれない。

iDeCo(イデコ)との併用で住宅ローン控除が引ききれなくなる4つのケース

以下のようなケースではiDeCoとの併用により住宅ローン控除が引ききれないことがある。

課税所得(課税額)が少ない

控除前の課税所得・課税額が少なければ、控除しきれない可能性は高くなる。収入自体が少ない人のほか、他の所得控除(配偶者控除、扶養控除、医療費控除、生命保険料控除等)が多い人は注意が必要だ。

ローン借入額が多い

ローン借入額が多ければ控除額が増え、控除しきれない可能性は高くなる。

iDeCoの掛金が多い

iDeCoの掛金が多いほど控除額は増えるため控除しきれない可能性は高くなる。会社員に比べ拠出限度額の大きい自営業者などは注意が必要だ。

ふるさと納税をしている

ふるさと納税は住宅ローン控除と同じ税額控除(寄付金控除)のひとつであり、ふるさと納税額から自己負担額2,000円を差し引いた金額が所得税、住民税から控除される。実質2,000円の負担でさまざまな返礼品が受け取れると人気の制度だが、控除できる税金が減ればふるさと納税のメリットも少なくなる。

無理に住宅ローン控除を使い切ろうとしない

住宅ローン控除をすべて使い切ることを目的にしてはいけない。iDeCoには掛金拠出時以外の税制優遇もある。

住宅ローン控除を使い切れなくなるからとiDeCoの掛け金を減らして運用中の非課税メリットを受けられなくなる、あるいは控除を受けるために掛け金を増やしすぎて家計を圧迫しまうようでは本末転倒だ。控除は余っても損をするわけではないため、うまく活用していきたい。

文・MONEY TIMES編集部
 

【関連記事】
40代からiDeCo(イデコ)を始めるのは遅いのか(PR)
SBI証券のiDeCo(イデコ)手数料は?(PR)
楽天証券でiDeCo(イデコ) 特徴や強みは?(PR)
iDeCo(イデコ)、NISA、つみたてNISAを比較
iDeCo(イデコ)の「8つのデメリット」