iDeCo(イデコ)とつみたてNISA(ニーサ)は「どっちがトクか」だけで選んではいけない

2020.2.17
運用・家計
(写真=Billion Photos/Shutterstock.com)
(写真=Billion Photos/Shutterstock.com)
iDeCoとつみたてNISAは似ている点も多いため、どちらを選ぶべきか議論されることが多い。しかし、それぞれの効果は年齢や年収によって異なる。非課税効果の大きさだけでなく、現金化のしやすさなど使い勝手についても知る必要がある。

iDeCo(イデコ)とつみたてNISA(ニーサ)は似ているようで違う

iDeCoとつみたてNISAは、どちらも税金の優遇が受けられる積立式の投資制度だ。この2つの制度は「毎月一定額を積立てていく」「運用益が非課税になる」「長期投資向き」という点は同じだが、比べてみると意外と違う点も多い。

  iDeCo つみたてNISA
非課税期間 加入から60歳まで 最長20年
投資限度額 公的年金の加入状況により
年間14万4,000~81万6,000円
毎年40万円(最大800万円)
非課税対象 所得税・住民税
(掛け金を全額所得控除)、
運用益にかかる税金、年金受給の際、
一括受取は退職所得控除、
分割受取は公的年金等の控除の対象
売買益・配当金・分配金などの
運用益にかかる税金
対象商品 定期預金・保険・投資信託 金融庁の基準を満たす
投資信託・ETF
資産の
引き出し
原則60歳まで不可 いつでも可能
※筆者作成

まとめると上の表になる。それぞれ詳しくみていこう。

iDeCo(イデコ)とつみたてNISA(ニーサ)の非課税期間と投資額を比較

iDeCoとつみたてNISAは無制限に非課税となるわけではない。最長期間と投資できる上限が設定されている。

つみたてNISAは年間40万円まで運用益が非課税になり、最長20年間適用される。1年目に40万円投資し、2年目にさらに40万円合計で80万円といった投資を続けると、20年目には最大で800万円(年間40万円×20年)の投資枠を得ることができる。もちろん途中で売却してもかまわない。

iDeCoは年金の被保険者の種別や企業年金の有無によって年間14万4,000~81万6,000円まで積み立てられる。自営業など公的年金が手薄い職業の人は拠出限度額が月額6万8,000円と高めで、公務員や大企業など年金が手厚い職業の人は月額1万2,000円にとどまる。節税メリットを最大限に享受するためにはなるべく投資額は大きいほうが良い。非課税期間は60歳までの拠出終了まで続く。

iDeCo(イデコ)とつみたてNISA(ニーサ)の投資対象商品を比較

それぞれの制度では購入できる商品が限定されている。つみたてNISAは一般のNISAに比べて対象商品が少なく、iDeCoにいたってはさらに限定される。一方で初心者にも選びやすく、極端な銘柄が含まれないという安心感がある。

iDeCoはつみたてNISAに比べて商品数は少ないものの種類は多い。対象は元本確保型の定期預金や保険から国内外株式、新興市場向けやREIT、コモディティの投資信託などのリスク商品と幅広い。ただし各金融機関が提供できる運用商品数に上限が設けられており、2018年6月からは35本が上限である。

つみたてNISAの対象銘柄は金融庁の基準を満たしたもので構成されている。特徴は手数料が一定以下でリスクの比較的低い商品が揃っている点である。許可されている商品はインデックス投資信託・アクティブ運用投資信託・上場株式投資信託(ETF)併せて173本だ(2019年10月1日時点)。

iDeCo(イデコ)とつみたてNISA(ニーサ)の手数料を比較

両者の手数料の違いは大きい。iDeCoは加入時に税込2,829円を国民年金基金連合会に徴収される。加えて運用期間中には年額2,052円~7,548円の国民年金基金連合会手数料、事務委託先金融機関(信託銀行)手数料、口座管理手数料が発生する。

つみたてNISAは、口座の開設や管理に手数料はかからない。投資信託の信託報酬は発生するが、低コストの商品に限られるので、それほど大きな負担になることはないだろう。

手数料が発生するということは、それを超える運用益を出さない限りは元本割れするということだ。商品選びの際にはその点について十分留意するようにしよう。

iDeCo(イデコ)とつみたてNISA(ニーサ)の現金化しやすさを比較

表にある資産の引き出しとは、保有していた商品を売却して口座からお金を換金することだ。つみたてNISAは通常の株の運用と同様にいつでも好きな時に換金が可能だが、iDeCoは60歳になるまで売買はできても換金はできない。

またiDeCoは10年の通算加入者期間が必要なので、54歳から加入した場合は受給開始が63歳からにずれ込む。つまりNISAに比べて自由にお金を動かしにくいのだ。

 

節税効果だけを比較すればおトクなのは「iDeCo(イデコ)」

どちらが金銭的に有利かという観点では、断然iDeCoのほうがおトクだ。iDeCoはNISAと同じく運用益に対する税金が非課税になるのに加え、掛け金が所得控除の対象になる。年間24万円積み立てたとしたら、その分が所得から差し引かれるため、支払わなくてはならない税金が少なくなるのだ。

シミュレーションで比較してみよう。年収800万円の人が毎月2万円を利回り1%で20年間投資した場合、つみたてNISA とiDeCoで節税効果がどれくらい違うか試算してみる。

・iDeCo(イデコ)の節税効果
所得税・住民税の軽減効果:144万円
運用益の非課税効果:10万4,244円

・つみたてNISAの節税効果
運用益の非課税効果:10万4,244円

運用益の利回りの想定が同じなので、非課税効果は同じだ。違うのは所得税・住民税の軽減効果である。これはiDeCoにしかない特典だ。

所得税の節税効果は、所得税をたくさん払っている人ほど恩恵が大きい。収入が高い人や、扶養家族が少なく社会保険料控除の少ない人は所得税が高くなりがちなので検討してみるといいだろう。

逆に収入のない専業主婦は、つみたてNISAとiDeCoで節税効果は変わらないことになる。iDeCoは収入の少ない専業主婦も入れると話題になったが、メリットも少ないことを覚えておこう。

現金化のしやすさと安全性なら「つみたてNISA(ニーサ)」

iDeCoに軍配が上がったように見えるが、節税効果だけで決めるのは早計だ。お金は流動性によっても価値が変わるので、「必要な時にいつでも引き出せるか」という観点も重要である。

iDeCo(イデコ)は60歳まで換金不可

iDeCoはあくまでも年金資金の積み立てが目的なので、他のライフイベントへの転用ができない。原則60歳になるまで現金化することはできず、最低10年の加入期間が必要になる。つまり流動性が非常に低い。一方、つみたてNISAは保有資産をいつでも売却し引き出すことができる。教育資金が必要になった時などでも、すぐに対応可能だ。

 

初心者にも選びやすい商品が多いのは「つみたてNISA(ニーサ)」

商品の選びやすさにも着目したい。つみたてNISAの対象商品は、金融庁によって厳格に基準が設けられている。手数料や総資産残高など、安全性の高い商品に必要な要素が求められ、基準はかなり厳しい。そのため安全で長期の積立投資に適したインデックスファンドとETFが中心である。これならば初心者でも銘柄選びで戸惑うことが少なくて済むだろう。

しかし一般のNISAには外国株式やコモディティ商品といったハイリスクな投資対象も含まれる。iDeCoは総商品数に上限はあるものの基本的に商品の選定は各金融機関にゆだねられているため、中には高コスト高リスク商品が含まれている場合もある。

iDeCo(イデコ)とつみたてNISA(ニーサ)の優先度は「年齢」と「収入」次第

長期投資をするにあたって、iDeCoとつみたてNISAのどちらを選ぶかは、年齢と収入を参考基準にするといいだろう。

iDeCo(イデコ)に向いている人

iDeCoは、教育費や住居費などの確保ができていて、十分な収入がある人に向いている。所得税・住民税の節税効果が高いうえ、自由にならない資金を持つ余裕があるからだ。単純計算で「投資額×所得税率」が節税できるのだから、十分な収入がある人はまずはiDeCoを優先するのが良いだろう。

ただし加入年齢には注意が必要だ。60歳までなら加入できるが、拠出期間が10年必要なので、60歳から受け取りたければ50歳までに始める必要がある。

つみたてNISA(ニーサ)に向いている人

つみたてNISAは、先の見通しが立たずお金を何十年も動かせないことに不安を持つ人に向いている。若い世代は収入が安定しないうえ、ライフイベントにも変動が起きやすいため、資金を流動的に動かせる投資方法を選ぶのがいいだろう。

投資初心者もしくは銘柄選びにあまり時間をかけたくない場合も、つみたてNISAなら手数料が安く安全性の高い商品がそろっている。自身の収入がない専業主婦はiDeCoの所得控除のメリットがないため、より投資可能額の大きいつみたてNISAを優先するのが良い。

iDeCo(イデコ)とつみたてNISA(ニーサ)は併用できる

前述した通り、iDeCoとつみたてNISAが向いている人の特徴をまとめると以下である。

  • 所得が十分にあり、老後資金の形成が目的なら「iDeCo」
  • 専業主婦や将来の不確定要素が大きい人は「つみたてNISA」

iDeCoとつみたてNISAは別の制度のため併用ができるし、それぞれの限度枠もそのまま使える。どちらもめいっぱい活用して非課税効果を最大化するのもよいだろう。しかし振り分けられる資金に限りがあるなら、特徴をもとにどちらを優先するか決めてみよう。

 

iDeCo(イデコ)と一般NISA(ニーサ)の併用も可能

一般のNISAとつみたてNISAは併用できないが、iDeCoと一般NISAの併用はできる。つみたてNISAを併用した時との違いを押さえよう。

まず投資スパンが一般NISAとつみたてNISAで異なる。つみたてNISAは投資期間が20年と長期を想定しているが、一般NISAは5年と短期もしくは中期の投資を想定している。iDeCoで老後資金を形成しながら、一般NISAで積極的な投資をおこなうというスタイルが可能だ。年間120万円まで積み立てでなくても投資できるので、まとまった資金をすぐに運用したい時に向いている。

一般NISAはつみたてNISAと異なり商品ラインアップも豊富だ。それだけにハイリスク・高コスト商品も含まれていることには注意したい。あくまでも自己責任で、長期の積立投資以外の投資方法を非課税で行いたい場合に活用したい制度だ。

なお一般NISAとつみたてNISAは将来的に一本化が検討されている。その理由は、両者を併用できないため長期の資金形成と長期に資金形成が両立できないとの指摘があったからだ。一本化されると対象商品や非課税期間、投資可能額などに大幅な変更が予想される。今後の動きにも注目したい。

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執筆・

外資系経営コンサルティング会社にて製造・物流・小売部門のコンサルタントとして業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。
 

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