ニューヨークダウやナスダック、S&P500は、TVの経済情報番組や新聞などで、毎日目にする米国株式市場を代表する株価指数だ。これら米国3大株価指数の概要や違い、構成銘柄、見方などを理解して、米国株式市場の動向把握に活かしてみよう。

目次
1,ニューヨークダウ(NYダウ)とは?
2,ナスダック(NASDAQ)総合株価指数とは?
3,S&P500指数とは?
4,NYダウ、ナスダック総合、S&P500全体への投資は?
5,米国株式市場の動向は米国3大株価指数で把握

1,ニューヨークダウ(NYダウ)とは?

「ニューヨークダウ」は米国株式市場でもっとも歴史があり、世界的にも有名な株価指数である。テレビや新聞のマーケット情報に必ず登場する重要な指数でもある。

株式投資に欠かせないニューヨークダウの概要や見方、構成銘柄などについて、ここでしっかり確認しておこう。

ニューヨークダウ──30銘柄で構成される米国を代表する指数

「ニューヨークダウ」または「NYダウ」として広く知られているが、正式には「ダウ工業株30種平均株価」と称される。米国株式市場あるいはニューヨーク株式市場を代表する重要な株価指数の一つだ。

ニューヨークダウを算出・公表しているのはダウ・ジョーンズ社(「ウォールストリート・ジャーナル」を発行する世界最大級のメディア企業)傘下のS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社である。

ニューヨークダウが初めて算出されたのは1896年で、開始当初は12の構成銘柄で算出されていた。1916年には20銘柄、1928年には30銘柄に拡大し、その後は時代に合わせて銘柄を不定期に入れ替えながら、30銘柄のまま、現在に至っている。

ニューヨークダウの構成銘柄はサービス業やハイテク企業中心

ニューヨークダウは、30銘柄の株価を単純平均して算出される。構成銘柄は、米国のニューヨーク証券取引所やナスダック市場に上場している優良企業で、輸送および公共事業を除いた主要業種の中から選出される。かつては農業や製造業、鉱業を中心とした構成であったが、現在は、サービス業やハイテク企業を中心とした構成にシフトしている。

米国経済の中心的企業で構成されるニューヨークダウは、米国株式市場の動向を端的に示す指標として位置付けられており、世界中からもっとも注目される株価指数となっている。

ニューヨークダウに採用されている30銘柄の株価、時価総額、配当利回りランキング

2021年2月12日現在で、ニューヨークダウに採用されている30銘柄の終値、時価総額、実績配当利回りランキングは下表のとおりだ。

ニューヨークダウの配当利回りランキング

会社名
<ティッカー>
2021/2/12終値
(米ドル)
時価総額
(1米ドル=104円で換算)
実績配当利回り
1 シェブロン
<CVX>
92.55 1,781億5,969万米ドル
(18兆5,286億776万円)
5.58%
2 IBM
(インターナショナル)
<IBM>
120.8 1,076億3,970万米ドル
(11兆1,945億2,800万円)
5.33%
3 ダウ
<DOW>
58.15 432億5,863万米ドル
(4兆4,988億9,752万円)
4.86%
4 ベライゾン・
コミュニケーションズ
<VZ>
54.2 2,242億7,960万米ドル
(23兆5,250億7,840万円)
4.57%
5 ウォルグリーン・
ブーツ・アライアンス
<WBA>
50.38 435億3,041万米ドル
(4兆5,271億6,264万円)
3.62%
6 メルク
<MRK>
75 1,897億5,258万米ドル
(19兆7,342億6,832万円)
3.47%
7 コカ・コーラ
<KO>
50.69 2,178億3,696万米ドル
(22兆6,550億4,384万円)
3.31%
8 スリーエム
<MMM>
178.7 1,034億8,517万米ドル
(10兆7,624億5,768万円)
3.25%
9 シスコ・システムズ
<CSCO>
47.29 1,998億2,457万米ドル
(20兆7,817億5,528万円)
3.05%
10 アムジェン
<AMGN>
237.21 1,370億452万米ドル
(14兆2,484億7,008万円)
2.68%
11 JPモルガン・チェース・
アンド・カンパニー
<JPM>
141.25 4,307億2,775万米ドル
(44兆7,956億8,600万円) 
2.58%
12 プロクター&ギャンブル
<PG>
127.62 3,142億6,119万米ドル
(32兆6,831億6,376万円)
2.47%
13 ジョンソン&ジョンソン
<JNJ>
166.58 4,385億2,895万米ドル
(45兆6,070億1,080万円)
2.42%
14 マクドナルド
<MCD>
213.9 1,593億7,924万米ドル
(16兆5,754億4,096万円)
2.41%
15 インテル
<INTC>
61.81 2,511億3,403万米ドル
(26兆1,179億3,912万円)
2.36%
16 トラベラーズ
<TRV>
145.96 368億304万米ドル
(3兆8,313億9,120万円)
2.33%
17 ホーム・デポ<HD> 277.51 2,987億6,748万米ドル
(31兆718億1,792万円)
2.15%
18 キャタピラー
<CAT>
197.99 1,075億5,970万米ドル
(11兆1,862億880万円)
2.08%
19 ハネウェル・
インターナショナル
<HON>
203.57 1,428億4,217万米ドル
(14兆8,555億8,568万円)
1.84%
20 ゴールドマン・
サックス
<GS>
306.32 1,053億9,484千米ドル
(10兆9,610億6,336万円)
1.64%
21 ウォルマート 144.47 4,087億4,693万米ドル
(42兆5,096億8,072万円)
1.50%
22 ユナイテッドヘルス・
グループ
<UNH>
328.24 3,114億4,091万米ドル
(32兆9,898億5,464万円)
1.50%
23 アメリカン・
エキスプレス
<AXP>
129.62 1,043億7,027万米ドル
(10兆9,610億6,336万)
1.34%
24 マイクロソフト
<MSFT>
244.99 1兆8,477億6,744万米ドル
(192兆1,678億1,376万円)
0.92%
25 ナイキ
<NKE>
142.12 1,807億256万米ドル
(18兆7,930億6,624万円)
0.77%
26 ビザ
<V>
209.96 3,561億1,601万米ドル
(37兆360億6,504万円)
0.62%
27 アップル
<AAPL>
135.37 2兆2,2726億455万米ドル
(236兆3,508億7,320万円)
0.61%
28 ウォルト・
ディズニー
<DIS>
187.67 3,404億8,288万米ドル
(35兆4,102億1,952万円)
N/A
29 セールスフォース・
ドットコム
<CRM>
237.21 2,205億9,584万米ドル
(22兆9,419億6,736万円)
N/A
30 ボーイング
<BA>
210.98 1,230億67万米ドル
(12兆7,920億6,968万円)
N/A

ニューヨークダウは、直近で2020年8月に銘柄の入れ替えが行われた。ファイザー、エクソン・モービル、レイセオン・テクノロジーが除外され、新たに3銘柄が追加された。

追加されたのは、バイオ医薬品を開発するアムジェン、航空宇宙製品や半導体素材などを手掛ける大手総合テクノロジーメーカーのハネウェル・インターナショナル、そして顧客管理やマーケティングといったデータソリューションを提供するセールスフォース・ドットコムの3社。

3社はいずれも、現在もっとも勢いのある業種、または企業であるととらえてよいだろう。

なお、ニューヨークダウの構成銘柄のうち、配当利回りの高い10銘柄に投資する手法は「ダウの犬投資法」と呼ばれており、配当狙いの長期投資を目指す投資家の間で、根強い人気がある。

2,ナスダック(NASDAQ)総合株価指数とは?

ニューヨークダウと同様に有名な米国の株式指数といえばナスダック総合株価指数(ナスダック総合)だろう。経済ニュースに欠かせないナスダック総合株価指数の概要や見方、構成銘柄などについて説明しよう。

ナスダック総合株価指数──巨大IT企業を含むすべての上場銘柄で構成

NASDAQ市場は米国の新興企業向けの株式市場であり、アップル、アマゾン・ドットコム、マイクロソフト、アルファベット(グーグル)など、世界有数の巨大IT関連企業が名を連ねる市場である。

ナスダック総合株価指数とは、このNASDAQ市場に上場する全上場銘柄を構成銘柄とする、時価総額加重平均型の株価指数を指す。ニューヨークダウやS&P500と並んで、米国株式市場を代表する株価指数として世界中に認知されている。

ナスダック総合株価指数の算出基準日は1971年2月5日。この日のクローズ時の時価総額加重平均株価を100として、毎日指数化の上、公表されている。

ナスダック総合株価指数は成長企業の動向が強く反映される

ナスダック総合株価指数を構成する銘柄は、NASDAQ市場に上場する約3,890(2021年2月16日現在)銘柄にものぼる。

数多くの企業が上場するNASDAQ市場は、米国シリコンバレーのハイテク企業やIT関連企業の占める割合が高い。そのため、ナスダック総合株価指数は、成長力のある企業の業績動向を反映する株価指数としてとらえられている。

構成銘柄には、インターネットイニシアティブやキリンホールディングス、任天堂、三井物産といった、NASDAQに上場する日本のグローバル企業も含まれているため、NASDAQ総合株価指数の動向は日本の株価にも影響を及ぼすともいわれている。

ナスダック100指数は米国ハイテク市場の動向を知るのに最適

ナスダック総合株価指数と同じく、NASDAQ市場の上場銘柄を算出対象とするもう一つの株価指数がナスダック100指数である。

ナスダック100指数の構成銘柄は、NASDAQ市場に上場する銘柄のうち、金融セクターの銘柄を除く、時価総額の大きな上位100銘柄が対象となっている。

NASDAQ市場の時価総額上位100銘柄は、米国のハイテク企業やIT関連企業が大多数を占めているため、ナスダック100指数は米国のハイテク・IT関連企業の株価動向をより顕著に示す株価指数だといえる。

ナスダック総合株価指数の株価、時価総額、配当利回りランキングTOP10

ナスダック総合株価指数のうち、配当利回りの高い銘柄のランキングTOP10を紹介しよう。

まず、NASDAQ上場銘柄の中から、2021年2月12日終値基準の時価総額が大きい順に50銘柄を抽出した。次に、同日終値による配当利回りが高い順に10銘柄を並べ替えた。

この手順による配当利回りランキングの結果は以下のとおりである。

ナスダック総合株価指数の配当利回りランキングTOP10

会社名
<ティッカー>
2021/2/12終値 (米ドル) 時価総額
(1米ドル=104円で換算)
実績配当利回り
1 ギリアド・サイエンシズ
<GILD>
66.89 838億4,849万米ドル
(8兆7,202億4,296万円)
4.04%
2 ブロードコム
<AVGO>
486.32 1,977億9,272万米ドル
(20兆5,704億4,288万円)
3.06%
3 シスコ・システムズ
<CSCO>
47.29 1,998億2,457万米ドル
(20兆7,817億5,528万円)
3.05%
4 ペプシコ
<PEP>
133.87 1,850億251万米ドル
(19兆2,402億6,104万円)
2.97%
5 アムジェン
<AMGN>
237.21 1,370億452万米ドル
(14兆2,484億7,008万円)
2.68%
6 サノフィ
<SNY>
47.57 1,195億3,161万米ドル
(12兆4,312億8,744万円)
2.44%
7 インテル
<INTC>
61.81 2,511億3,403万米ドル
(26兆1,179億3,912万円)
2.36%
8 テキサス・
インスツルメンツ
<TXN>
179.64 1,653億1,176万米ドル
(17兆1,924億2,304万円)
2.34%
9 モンデレズ・
インターナショナル
<MDLZ>
55.19 789億3,068万米ドル
(8兆2,087億9,072万円)
2.28%
10 オートマティック・
データ・
プロセッシング
<ADP>
167.03 714億7,885万米ドル
(7兆4,338億40万円)
2.23%

このランキングを見ると、世界に名だたるIT関連企業が含まれていないことに気が付くだろう。

成長力のある米国のハイテク・IT関連企業は、企業活動で得られた利益を積極的に設備投資や研究開発に投入する傾向が見られ、無配である場合も少なくない。アマゾン、フェイスブック、アルファベットなどはその典型である。

この特徴を踏まえて、ナスダック総合株価指数銘柄への投資にあたっては、投資スタイルの使い分けも重要になる。例えば、中長期的にわたる安定的な配当確保が目的なら配当利回り上位銘柄を活用し、大幅な値上がり益の獲得だけを目的とするなら、配当にこだわらず、財務分析によって成長性の高さを確認できる企業に投資するといった戦略が考えられる。

3,S&P500指数とは?

米国株式市場の動向を示す株価指数として、ニューヨークダウとナスダック総合株価指数とともに重視されるのがS&P500指数である。S&P500指数の詳細も見ていこう。

S&P500指数──小型株を除く優良企業500社で構成

S&P500指数は、ニューヨークダウ(ダウ工業株30種平均株価)同様に、米国のS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社によって毎日算出・公表されている。

1923年からS&P500の前身となる指数が算出されるようになり、1957年には500銘柄で構成される株価指数を毎日算出する現在のスタイルが確立された。

指数算出のための構成銘柄は、小型株を除く、米国株式市場を代表する優良企業500銘柄である。

ニューヨーク証券取引所とNASDAQ市場に上場する全銘柄の中から、約40もの業種に属する、所定の採用基準を満たした銘柄が選定されており、適宜銘柄の入れ替えも行われている。

S&P500指数は、構成銘柄の日々の株価を浮動株調整後の時価総額比率で加重平均して算出される、時価総額加重平均型の指数である。ナスダック総合株価指数にも、同様の算出方法が採用されている。

S&P500指数は大型株のパフォーマンスを表す重要指標

S&P500指数を構成する500銘柄の時価総額だけで、米国株式市場全体の時価総額の約80%をカバーする。

さらに、指数の算出方法に時価総額加重平均法がとられているため、大型株の株価変動がS&P500指数の値動きに直接的に影響を及ぼす。そのため、S&P500は米国株式市場全体の大型株のパフォーマンスを示す最適な指標とされている。

運用実績を測定するベンチマークとして、S&P500指数が多くの機関投資家や投資運用会社に利用されていることからも、その重要性を確認できる。

S&P500における11種類の業種別分類と指数

S&P500指数を構成する500銘柄は、米国の約40もの業種に属していると同時に、全銘柄がGICS(ギックス)と呼ばれる世界産業分類基準に分類される。

GICSとは、米国の格付け機関であるS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)と、グローバル金融グループのモルガン・スタンレーが共同で開発した産業分類のことである。

このGICSに基づいて、S&P500指数構成銘柄は、以下のように11のセクターに分類され、セクターごとの指数が日々算出されている。

S&P500構成銘柄が分類されるセレクト・セクター指数

セクター 指数 代表的な銘柄
通信サービス コミュニケーションサービス・
セレクト・セクター指数
・フェイスブック<FB>
・AT&T<T>
・Netflix<NFLX>
一般消費財 一般消費財サービス・
セレクト・セクター指数
・アマゾン・ドットコム<AMZN>
・ホーム・デポ<HD>
・スターバックス<SBUX>
生活必需品 生活必需品セレクト・
セクター指数
・コカ・コーラ<KO>
・プロクター&ギャンブル<PG>
・ウォルマート<WMT>
エネルギー エネルギー・セレクト・
セクター指数
・シェブロン<CVX>
・エクソン・モービル<XOM>
・フィリップス66<PSX>
金融 金融セレクト・
セクター指数
・JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー<JPM>
・ブラックロック<BLK>
・アメリカン・エクスプレス<AXP>
ヘルスケア ヘルスケア・セレクト・
セクター指数
・ファイザー<PFE>
・ジョンソン&ジョンソン<JNJ>
・アムジェン<AMGN>
資本財 資本財サービス・
セレクト・セクター指数
・ハネウェル・インターナショナル<HON>
・スリーエム<MMM>
・ボーイング<BA>
素材 素材セレクト・
セクター指数
・ダウ<DOW>
・デュポン<DD>
・リンデグループ<LIN>
不動産 不動産セレクト・
セクター指数
・アメリカン・タワー<AMT>
・クラウン・キャッスル・インターナショナル<CCI>
情報技術 テクノロジー・セレクト・
セクター指数
・アップル<APPL>
・マイクロソフト<MSFT>
・VISA<V>
公共事業 公益事業セレクト・
セクター指数
・ネクステラ・エナジー<NEE>
・ドミニオン・エナジー<D>

S&P500指数構成銘柄の株価、時価総額、配当利回りランキングTOP10

ここでは、S&P500指数を構成する500銘柄のうち、配当利回りの高い銘柄のランキングTOP10を紹介する。

S&P500構成銘柄の中から、2021年2月12日終値を基準とした時価総額が大きい順に50銘柄を抽出し、同日終値による配当利回りが高い順に10銘柄を並べ替えた。その結果は以下のとおりである。

S&P500指数構成銘柄の配当利回りランキングTOP10

会社名
<ティッカー>
2021/2/12終値
(米ドル)
時価総額
(1米ドル=104円で換算)
実績配当利回り
1 AT&T
<T>
28.8 2,052億2,880万米ドル
(21兆3,437億9,520万円)
7.29%
2 エクソン・モービル
<XOM>
50.52 2,138億5,116万米ドル
(22兆2,405億2,064万円)
6.81%
3 シェブロン
<CVX>
92.55 1,781億5,969万米ドル
(18兆5,286億776万円)
5.58%
4 アッヴィ
<ABBV>
104.44 1,843億8,609万米ドル
(19兆1,761億5,336万円)
5%
5 ベライゾン・
コミュニケーションズ
<VX>
54.2 2,242億7,960万米ドル
(23兆3,250億7,840万円)
4.57%
6 ファイザー
<PFE>
34.72 1,929億8,753万米ドル
(20兆707億312万円)
4.49%
7 メルク
<MRK>
75 1,897億5,258万米ドル
(19兆7,342億6,832万円)
3.47%
8 コカ・コーラ
<KO>
50.69 2,178億3,696万米ドル
(22兆6,550億4,384万円)
3.31%
9 ブロードコム
<AVGO>
486.32 1,977億9,272万米ドル
(20兆7,784億4,288万円)
3.06%
10 シスコ・システムズ
<CSCO>
47.29 1,998億2,457万米ドル
(20兆7,817億5,528万円)
3.05%

S&P500指数を構成する銘柄には、エネルギーや通信サービスなどのセクターに属する、株価が割安で配当利回りが高い銘柄が多く含まれている。S&P500銘柄から好配当利回り銘柄を探して、中長期投資するのも良い戦略だろう。

4,NYダウ、ナスダック総合、S&P500全体への投資は、投信やETFが便利で簡単

米国3大株価指数を構成する銘柄数は、ニューヨークダウが30銘柄、ナスダック総合株価指数は3,800銘柄以上、S&P500指数は500銘柄にものぼる。

一般的な投資家が、これだけ多くの構成銘柄でポートフォリオを組んで実際に投資することは、膨大な手間と時間がかかるため現実的ではない。

こうした課題を一挙に解決できるのが、米国3大株価指数をベンチマークとする投資信託やETF(上場投資信託)である。どのファンドも、対象指標の日々の値動きに連動した投資効果を目指して、計算・運用されている。

投資家は、米国のブラックロックやバンガード、日本の野村アセットマネジメントをはじめとする投資運用会社が設定・運用するさまざまなファンドの中から、各自の投資方針に見合ったファンドを選び出して、簡単に投資することができる。

米国株価指数をベンチマークとする投資信託やETFは「インデックスファンド」(指数に連動するように運用される投資信託)の一種であるため、総じて信託報酬が低く設定されており、低コストで運用できるのも大きなメリットだ。

さらに、東証に上場するETFであれば、リアルタイムで購入できる利点もある。

以下で、ニューヨークダウ、ナスダック総合株価指数、S&P500をベンチマークとするファンドの中から、低コストで購入しやすい代表的なファンドを紹介する。

国内ETF、投資信託、米国ETFそれぞれにメリットとデメリットがある。ファンドの保有コストや取引可能時間なども考慮に入れて、もっとも自分の投資スタイルに合うファンドを選んでほしい。

ニューヨークダウを対象指標とする代表的なファンド

名称 信託報酬(税込) 特徴
NEXT FUNDS
ダウ・ジョーンズ工業株
30種平均株価
連動型上場投信<1546>
年率0.495% ・野村アセットマネジメントが運用するETFブランド、
「NEXT FUND」シリーズのETF
・東証上場であるため、時価で取引可能
・円換算されるため、為替手数料が不要
・マーケットメイク対象銘柄ではないので、
若干の流動性リスクあり
iFree NYダウ・
インデックス
年率0.2475% ・大和アセットマネジメントが
運用するインデックスファンド(投資信託)
・低コストブランドである
「iFree」シリーズの投資信託であるため、
信託報酬が低く設定されている
・円ベースでの取引なので、為替手数料が不要
・投資信託であるため、クローズ後に
決まる基準価格でしか取引できない
SPDR Dow Jones
Industrial Average
ETF
年率0.16% ・米国の投資運用会社であるステート・
ストリートが運用する、米国NYSE Arca上場ETF
・米国ETFを取り扱うネット証券
(SBI証券、マネックス証券、楽天証券、DMM株など)で購入可能
・経費率(信託報酬に相当)が安い
・米国籍のETFなので、同じNYダウを対象指標とする
国内ETFに比べて流動性が高い
・米ドル建てなので、往復分の為替手数料と為替損益が発生する

ニューヨークダウをベンチマークとするファンドは多くないが、国内ETFや投資信託、米国ETFにはそれぞれ数種類ずつ設定されている。

投資運用会社によって保有コストや流動性に違いがあるので、各ファンドの特徴を吟味して選ぶとよいだろう。

ナスダック指数100を対象指標とする代表的なファンド

名称 信託報酬(税込) 特徴
iNEXT FUND
NASDAQ-100®
連動型上場投信
<1545>
年率
0.495%
・野村アセットマネジメントが運用するETF
・東証に上場しているため、時価で取引できる
・NASDAQ上場銘柄のうち、時価総額上位
100銘柄で構成されるナスダック100指数に連動
・円換算ベースなので為替手数料が不要
・マーケットメイク対象銘柄であるため、
流動性リスクが軽減される
iMAXISナスダック
100上場投信
(為替ヘッジあり)
<2632>
年率
0.22%以内
・三菱UFJ国際投信が新規設定・
運用する、「MAXIS」ブランドのETF
・ナスダック100指数がベンチマーク
・2021年2月25日東証上場予定、
上場後は時価で取引できる
・円換算ベースで為替手数料不要
・米ドル建ての値をもとに、
為替変動リスク低減のため、対円で為替ヘッジ
・マーケットメイク対象銘柄ではないので、流動性リスクあり
Invesco QQQ
Trust, Series 1
年率
0.20%
・米国のインベスコが運用する、NASDAQ上場の低コストETF
・米国ETFを取り扱うネット証券のうち、
SBI証券、マネックス証券、楽天証券で購入可能
・ナスダック100指数の全構成銘柄を保有
・ナスダック100指数に連動する投資成果を目指す
・NASDAQに上場しているため流動性がある
・米ドル建てなので為替手数料や為替リスクが発生する

ナスダック総合株価指数そのものを対象指標とするETFや投資信託はほとんど存在しない。

実際に取引できるのは、上記のようにナスダック100指数を対象指標とするファンド、もしくはNASDAQ上場銘柄の中から特定の業種に属する銘柄でポートフォリオを組んだファンドになる。

S&P500指数を対象指標とする代表的なファンド

名称 信託報酬(税込) 特徴
iFree S&P500
インデックス
年率
0.0858%
程度
・三菱UFJ国際投信が運用する「MAXIS」ブランドのETF
・東証に上場しているため、時価で取引可能
・円換算したS&P500指数に連動する投資成果を目指す
・円換算ベースで為替手数料不要
・為替ヘッジなしなので、為替変動リスクがある
(円による為替ヘッジあり銘柄<2630>もある)
・一般投資家はマーケットメイク対象外
iFree NYダウ・
インデックス
年率
0.2475%
・大和アセットマネジメントが運用する低コストブランド
「iFree」のインデックスファンド(投資信託)
・取り扱う証券会社や銀行が多くて便利
・円ベースなので為替手数料不要
・投資信託であるため、クローズ後の基準価格でしか取引できない
Vanguard
S&P 500 ETF
年率
0.03%
・米国のバンガードが運用する、米国NYSE Arca上場のETF
・保有コストが世界的に見ても業界最安水準
・人気の高い米国ETFであり、流動性も高い
・米国ETFを取り扱うネット証券ならどこでも購入可能
・米ドル建てなので、為替手数料が発生し、為替変動リスクもある

S&P500指数そのものに連動するファンドや、GICSに基づくセクター別指数を対象指標とするファンドなど、国内外を問わず、S&P500指数連動型ファンドは種類が豊富である。

信託報酬(米国ETFでは経費率)が格安に設定されているETFもあり、投資家が取引しやすいファンドが多いのも特徴だ。

例えば、米国の投資運用会社であるバンガードが運用するVanguard S&P 500 ETFと、米国のブラックロックが運用するiShares Core S&P 500 ETFの経費率はともに年率0.03%で、世界的に見ても業界最安水準である。

米国市場上場ETFを取引する場合、窓口が米国株を取り扱う証券会社に限定される、あるいは為替手数料や為替変動リスクを考慮しなければならないといったデメリットもある。

しかしそれ以上に、米国籍のS&P500指数連動型ETFは選択肢が多く、低コストで長期保有にも適しているため、米国ETFは一考する価値がある。

5,米国株式市場の動向は米国3大株価指数で把握、全体に投資するならETFがおすすめ

ニューヨークダウ、ナスダック総合株価指数(ならびにナスダック100指数)、そしてS&P500指数は、構成銘柄こそ異なるが、米国株式市場のパフォーマンスを示す重要な株価指数である。

今後、米国株に投資する際には、投資判断や株式相場の動向を知るために、これらの米国3大株価指数を大いに活用するとよいだろう。

さらに、米国株式市場全体への投資を考えるならば、3大株価指数を対象指標とするファンドを選べば、効果的なリスク分散とコストの削減、手間と時間の節約を実現できる。

ファンドには投資信託や国内ETF、米国ETFがあるが、保有コストの低さや取引のしやすさから、国内ETFあるいは米国ETFを優先的に検討することをおすすめしたい。


近藤真理
執筆・近藤真理
証券会社の引受業務やビジネス系翻訳携わったのち、個人投資家として活動。現在は総合証券、ネット証券の両方を使いこなし、経済、金融、HR領域で多数の媒体で執筆中。2019年にフィナンシャルプランナーの資格取得。
証券会社の引受業務やビジネス系翻訳携わったのち、個人投資家として活動。現在は総合証券、ネット証券の両方を使いこなし、経済、金融、HR領域で多数の媒体で執筆中。2019年にフィナンシャルプランナーの資格取得。


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