FX取引には「相対取引」と「取引所取引」という2種類の取引がある。「相対取引」とは一般的なFX取引と顧客が直接取引を行うこと。「取引所取引」とは日本国内では唯一「くりっく365」が行っており、顧客と市場で直接やりとりをする形式のこと。両者の違いを見ながら、相対取引のメリットとデメリットも解説していこう。

目次
1,FXの相対取引とは?
2,相対取引と取引所取引の違い
3,相対取引の3つのメリット
4,相対取引の3つのデメリット
5,相対取引と取引所取引のどちらが向いている?

1,FXの相対取引とは?

相対取引(あいたいとりひき)とはFX取引のみの用語ではなく、一般的な取引においても使用される用語である。販売主と顧客のような取引相手同士が相対し、価格や数量を決めて取引を行うことを「相対取引」という。また、取引相手同士における直接的な取引となるため、「店頭取引」などとも呼ばれる。

ここでは、FX取引における相対取引がどういった取引かについて解説していく。

FXの相対取引の仕組み

FXの相対取引とは、顧客となる投資家が取引相手であるFX会社と取引を行い、金利や手数料を決めるという取引形態である。

ここでポイントとなるのは、FXの相対取引では株式取引などの際に取引相手同士の注文を突き合わせて取引を成立させる「取引所」のような存在がいないということだ。FX口座を開設して行う一般的なFX取引では、FX会社がレートやスプレッドなどの条件を提示し、それに同意した投資家が取引を行う。そのため第三者に仲介してもらう必要がなく、FX取引ではこの相対取引が一般的な取引システムとなっている。

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(画像=MONEY TIMES編集部制作)

取引所取引(市場取引)の仕組み

それに対して、取引所取引(市場取引)とは、販売者側の金額提示と購入者側の注文を全て取引所で行う取引である。取引所が一括で管理するため、販売者と購入者の数が多い取引などに向いている取引方法といえる。

現在、FXの取引所取引を行っている取引所は「くりっく365」のみである。「くりっく365」では「マーケットメイク方式」によって為替レートが決められている。「マーケットメイク方式」とは、銀行や証券会社などのマーケットメイカーが為替レートを提示し、取引所がその中から投資家にとって最も有利な取引を選んで投資家に提示するという形式である。

このように、取引所取引とは自然と価格競争が起きやすい取引システムであり、どこかのマーケットメイカーが相場にそぐわない条件を提示したとしても、投資家はより良い条件の取引を選ぶため、不自然な条件での取引が起こりにくくなっている。つまり、より公平な取引になりやすいといえるのだ。

その一方で、FX取引を専門に行っているFX会社に比べると、取引所取引ではスプレッドが大きく設定されており、コストが高くなる傾向があるため注意が必要である。

<取引所取引の仕組み>

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(画像=MONEY TIMES編集部制作)

2,相対取引と取引所取引の違い

相対取引と取引所取引では具体的に何が違うのだろうか。以下では、両者の特徴的な違いについて解説する。

違い1,為替レートの決定方法が違う

相対取引では取引相手であるFX会社が一方的に為替レートを提示するのみであるが、取引所取引では複数のマーケットメイカーが提示した為替レートの中で最も投資家にとって有利な条件となる為替レートが選ばれるようになっている。取引所取引の為替レートは価格競争の末に決められるものであるため、より公平性の高い為替レートであるといえる。

また、相対取引ではより好条件の為替レートを選ぶ際に、複数のFX会社を比較検討しなければならないので手間がかかる。一方、取引所取引の場合には、取引所が自動的に最適な為替レートを提示してくれるのでその手間が省けるのだ。

違い2,スリッページの発生しやすさが違う

スリッページとは、投資家が注文したときの為替レートと実際に注文が約定した為替レートとの差のことである。為替相場は常に変動しているため、相対取引では注文したときよりも多少有利になるか、あるいは不利なレートで取引が成立することもあるのだ。

しかし、取引所取引の場合には「くりっく365」という取引所内で取引が行われるため、為替相場の変動などに関係なく即座に約定することが多い。

違い3,証拠金の管理方法が違う

相対取引が行われる際の証拠金は信託銀行などに預けることになっており、取引の安全性が担保されている。

一方、取引所取引の証拠金は取引所が管理することになっており、「くりっく365」においては、東京金融取引所が証拠金を管理している。取引所取引では、顧客から預かった証拠金を取引所の財産と分別の上、全額を東京金融取引所に預託するため、相対取引同様に安心して取引に臨むことができる。

3,相対取引の3つのメリット

一般的なFX取引として知られる相対取引だが、この取引にはどういったメリットがあるのだろうか。相対取引では、取引所取引とは違って有利な為替レートなどを投資家自身が見つけなければならず少々手間がかかるが、メリットを知っておけば手間をいとわなくなるだろう。

メリット1,小さな単位で取引できる

取引所取引の「くりっく365」における通貨の取引単位は1万通貨である。また、「くりっく365ラージ」では、大口注文を行いたい顧客向けであるため10万通貨単位での取引となっている。それに対して、相対取引では1,000通貨あるいは1通貨からでも取引を行えるFX会社がある。

取引所取引よりも小さな単位での取引を望んでいる人にとって、相対取引の「小さな単位で取引できる」という点は大きなメリットといえるだろう。

メリット2,取引可能な通貨の種類が多い

「くりっく365」の取引所取引で取り扱っている通貨ペアは25種類のみである。一方で、相対取引では、その数倍の通貨ペアで取引できるFX会社もある。

なかには「数種類の通貨しか取り扱わないから25種類もあれば充分」と考える人もいるかもしれないが、「くりっく365」では25種類のうち円とペアとなっている通貨が14種類と限られている。さまざまな通貨の取引を行いたい人や、円以外の通貨同士で取引を行いたい人にとっては少ないと感じるかもしれない。

そういった取引通貨の種類に悩んだことがある人にとっては、通貨ペアの豊富な相対取引は大きなメリットとなり得るだろう。

メリット3,スプレッドによるコストが小さい

取引所取引のスプレッドに比べると、相対取引のスプレッドは非常に小さいといえる。というのも、「くりっく365」はスプレッドを大きく設定することで収益を上げているものだからだ。

また、取引所取引のスプレッドは常に不安定であり、その不安定さそのものがリスクだと考える人もいるだろう。そういう人にとっては、多くのFX会社で相対取引のスプレッドが固定となっている点はメリットといえるだろう。

4,相対取引の3つのデメリット

では反対に、相対取引にはどういったデメリットがあるのだろうか。相対取引は取引所取引よりも自分で決められることの多い取引であるだけに、この取引を進めようとするならばデメリットについてもしっかりと把握しておきたい。

デメリット1,FX会社の見極めが難しい

取引所取引では、マーケットメイカーが提示したものから取引所が最適な為替レートを選んでくれるため、自らレートを比較するといった手間がかからない。しかし、相対取引ではFX会社そのものを比較したり、為替レートの変動を自分で確認したりするなど、すべて自分で判断してどう取引するかを決めなければならない。

充分な知識がなければ不利な条件で取引を行ってしまったり、損失を被ったりすることもあるため、特に慣れていない人は細心の注意が必要である。

デメリット2,為替レートの透明性が低い

取引所取引の為替レートと違い、相対取引の為替レートは全てFX会社が定めたものであり、その為替レートが本当に正しいのかどうかはわからない。

FX取引では、投資家側が損失を被ると、その分だけFX会社側が利益を得る仕組みになっている。そのため、顧客に実際とは異なる為替レートを伝えるようなFX会社も存在するのだ。

為替レートの真偽を判別するのが苦手な人や、確実に信頼できる為替レートで取引を行いたいという人は取引所取引を利用するのがいいだろう。

デメリット3,取引成立までに時間がかかる

相対取引は、取引を行ってから直ぐにその取引が成立するとは限らない。取引所取引であれば、実際に取引を行っている取引所に注文を行った時点で取引成立となるが、相対取引の場合は取引者同士で条件の合意がなされてはじめて取引成立となるのだ。また、時間をかけて待った結果、取引不成立になるということもある。

さらにいえば、アメリカの情勢の変化などFX取引に影響がありそうな事態が起こると、一時的にFX会社が取引を受けてくれなくなることもある。そのため、相対取引を行っている人は常にFX会社の動向に目を向けていなければならないのもデメリットのひとつといえるだろう。

5,相対取引と取引所取引のどちらが向いているのかよく考えよう

相対取引は手数料が安い半面、自分でFX会社や取引条件を比較しなければならない。取引所取引は為替レートの公平性が高い一方で手数料などのコストが高いという一面もある。一般的なFX取引である相対取引と「くりっく365」の取引所取引のどちらが自分の取引スタイルに適しているのか、一度しっかりと検討してみるといいだろう。

近藤真理
監修者・近藤真理
証券会社の引受業務やビジネス系翻訳携わったのち、個人投資家として活動。現在は総合証券、ネット証券の両方を使いこなし、経済、金融、HR領域で多数の媒体で執筆中。2019年にフィナンシャルプランナーの資格取得。
証券会社の引受業務やビジネス系翻訳携わったのち、個人投資家として活動。現在は総合証券、ネット証券の両方を使いこなし、経済、金融、HR領域で多数の媒体で執筆中。2019年にフィナンシャルプランナーの資格取得。

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