FXは大きな利益を狙えるため、資産運用の手段として多くの投資家の注目を浴びている。ただし、ハイリスク・ハイリターンなので、初心者はFXを正しく理解しておく必要がある。本稿では、FXの魅力や仕組み、特徴、リスクなどをわかりやすく解説する。

目次

  1. 1,FXとはどんな投資?2国間の通貨を交換して利益を出す取引
  2. 2,FXの取引時間は?
  3. 3,FX取引で初心者が知っておきたい5つの基本用語
  4. 4,FXはいくらから始められる?必要最低金額を紹介
  5. 5,FXの利益はどうやって決まるのか?為替差益とスワップポイント
  6. 6,FXの5つのメリット レバレッジ、手数料の安さ、24時間取引可能など
  7. 7,FXの3つのデメリット 損失拡大リスク、変動しやすい相場、確定申告
  8. 8,FX初心者に見られる代表的な5つの失敗例
  9. 9,FX投資家の資産を守る仕組みとリスクを遠ざける3つのシステム
  10. 10,FX初心者が知っておきたい2つのこと――FX 相場の格言から
  11. 11,FX初心者の心構え メリット以上にデメリットや失敗事例に注意を

1,FXとはどんな投資?2国間の通貨を交換して利益を出す取引

FXとは?
FXとは外国為替証拠金取引のことで、直訳すると「Foreign Exchange=外国為替」だ。しかし現在では、一般的に2つの異なる国の通貨を交換(外国為替取引)する際に、証拠金をFX業者に差し入れて、その何倍もの金額の取引(証拠金取引)を行うことを「FX」と呼んでいる。

FXとは為替レートの差で利益を狙う取引のこと

FXの基本は、2国間の通貨の交換です。FXは、2つの通貨の交換価値を表す為替レートの先行きを予想して、売買することにより利益を狙います。
たとえば、手持ちの日本円を売って米ドルを買い、その後に米ドル/日本円の為替レートが上昇したら、今度はその米ドルを売って日本円を買い戻して利益を確保する。

1米ドル=100円のときに日本円で米ドルを買い、1米ドル=110円(ドル高円安)になったら、その米ドルを売って日本円を買い戻すのだ。

レバレッジを活用すれば少ない資金でも大きな取引ができる

FXの最大の特徴は、レバレッジを利用して元手より大きな取引が可能なことです。
レバレッジとは?
レバレッジとは、「てこの原理」のこと。FXでは、証拠金を預けることで、その何倍もの取引が可能となる。日本国内での最大レバレッジは25倍。

FXではレバレッジを使うことにより、効率的な資金運用が可能になる。

長谷川保

FXでレバレッジが利用可能な理由は、「現物決済」ではなく「差金決済」を採用しているからです。

差金決済とは?
差金決済とは、売買のたびにその代金を受け渡す「現物決済」に対して、決済時に売買によって生じた差額のみを受け渡す決済方法だ。

たとえば、1米ドル=100円の時に1,000米ドルを購入し、1米ドル101円に変動した後に売却するケースで、「(1)通常の外国為替取引」と「(2)FXによる取引」の違いを考えてみよう。

(1)通常の外国為替取引
まず1,000米ドルを購入した時に、10万円を払い込む(1,000米ドル×100円=10万円)。その後、1,000米ドルを売却した時に、10万1,000円を受け取る(1,000米ドル×101円=10万1,000円)。差額の1,000円が利益だ。
(2)FXによる取引
まず1,000米ドルを購入し、その後に1,000米ドルを売却した時に得た差額の1,000円(10万1,000円-10万円)の支払いを受ける。

このようにFX取引では、持ち高を解消した時に生じた差額のみを受け渡す。

このケースでは利益であったので支払いを受けたが、取引が損失に終わった場合には差額を支払わなければならない。

そのために用意しておくのが「証拠金」である。

証拠金とは?
証拠金とは、取引終了後に損失が発生しても決済ができるように、投資家がFX会社に預けておく資金のこと。FX取引で損失が発生した時は証拠金から差し引かれ、逆に利益が発生した場合は証拠金に加算される。
国内のFXでは最高25倍までレバレッジが認められているので、上記のケースでは証拠金として最低4,000円をFX会社に預けておく必要がある(10万円÷25(倍)=4,000円)。
長谷川保

このように、FXでは通常の外国為替取引で必要な資金である10万円よりかなり少ない4,000円を証拠金として用意すれば取引ができます。FXは「少ない元手でより大きな取引ができる」=レバレッジを利用した効率的な資産運用なのです。

2,FXの取引時間は?

(画像=beeboys /stock.adobe.com)

FXは取引可能な時間が長い。

平日ならほぼ24時間FX取引ができるので、日中は多忙でFX取引ができない投資家でも、夜や早朝に取引が可能だ。

FXの取引時間

(画像=著者作成)

FX市場は24時間、上図にある通り世界中のどこかでオープンしている。

現代の金融・資本市場はグローバルにリンクしている。

日本で我々が寝ている間に起きたイベントにより、あらゆる金融商品が影響を受ける。

たとえば、日本株は、基本的に取引所が開いている時間(9:00~11:30及び12:30~15:00)にしか取引ができない。
出典:日本取引所グループ『内国株の売買制度』

この時間外で重要イベントが発生して金融市場が変動しても、保有している日本株を取引きすることはできないのだ。

一方で、FXは24時間取引可能なので、主に海外で起こった重要イベントに対応できます。これはFX取引の大きなメリットです。

3,FX取引で初心者が知っておきたい5つの基本用語

FX取引で初心者が知っておきたい5つの基本用語
(画像=MONEY TIMES編集部制作)

FXでは耳慣れない用語が多いが、無理に覚えなくてもFX取引を続けて行くうちに自然に身につくので、敬遠しないでほしい。

ここでは、基本的5つの用語を解説する。

通貨ペアとは?
通貨ペアとは、2つの国の通貨の組み合わせのこと。ある通貨を買うには、別の通貨を売らなければならない。従って、通貨レートは米ドル/円、米ドル/ユーロのように2つの通貨の組み合わせで表示される。
スプレッドとは?
スプレッドとは、FX会社が提示する為替レートの買値と売値の差のこと。FX取引では、多くの業者が取引手数料を無料にしている。その代わりにスプレッドがあり、それが取引コストになる。
ポジションとは?
ポジションとは、通貨ペアの持ち高のこと。米ドルを買い、円を売った場合「米ドル/円のロングポジションを保有」、逆に米ドルを売り、円を買った場合「米ドル/円のショートポジションを保有」といった使い方をする。
pips(ピップス)とは?
pips(ピップス)とは、通貨レートの値動きの最小単位のこと。米ドル/円のレートが111.55だったら、日本円の最小単位は1銭なので5pips。異なる通貨でも同じように使えることがメリット。
Bid(ビッド)とAsk(アスク)とは?
Bidは投資家が売るときの価格で、Askは投資家が買うときの価格を表している。Bid=買値、Ask=売値と説明される場合があるが、これはFX会社が提示する買いたい価格と売りたい価格を表している。投資家は提示されている「Bidで売り、Askで売る」と覚えておくといい。

4,FXはいくらから始められる?必要最低金額を紹介

(画像=tkyszk /stock.adobe.com)

FXは、どのくらいの資金があれば始められるのだろうか?

FX会社によって最小取引単位が異なるので、確認が必要だ。

FXに必要な最低金額は通貨ペアで決まる 米ドル/日本円なら5万円以下でも

FXの取引単位は、FX業者や通貨ペアによって異なる。

取引単位は、「米ドル/日本円」のように表記され、1単位=1万通貨が一般的だ。

長谷川保

FX業者によっては、「南アフリカランド/円」「トルコリラ/円」「メキシコペソ/円」が、1単位=10万通貨の場合もあります。

米ドル円 (USD/JPY)を取引するために必要な最低資金を比較

FX会社 取引単位 最低必要資金 おすすめポイント
MATSUI FX 1通貨単位 4円 取扱全通貨ペアについて
1通貨単位から取引可能
SBI FX トレード 1通貨単位 4円 最大3倍までレバレッジでコツコツ外貨を
積み立てる「積立FX」が人気
外貨ex by GMO 1,000通貨単位 4,440円 スマホ取引アプリ「Cymo」が使いやすい
DMM FX 10,000通貨単位 4万4,400円 24時間の電話・メール・LINEでの
顧客対応を実施する充実のサポート
MATSUI FXSBI FXトレード外貨ex by GMODMM FXのホームページより筆者作成

通常、「米ドル/円」の取引単位は、1万米ドルだ。

たとえば、1米ドル=110円(為替スプレッドを考慮しない)の場合、レバレッジをきかせなければ必要証拠金が110万円あれば1単位(1万米ドル)を購入できる。

この場合の、レバレッジ倍率別の必要証拠金と証拠金割合を見てみよう。  
「米ドル/円」1単位の取引額に必要証拠金額

レバレッジ倍率 必要証拠金 取引額の証拠金割合
1倍 110万円 100%
3倍 36万6,666円 33.33%
5倍 22万円 20%
25倍 4万4,000円 4%
長谷川保

「米ドル/円」1単位(1米ドル=110円の場合)のFX取引を行う際には、レバレッジ倍率に応じて、4万4,000円~110万円の資金が必要になることがわかります。

取引額が10分の1のミニ取引も

SBI証券の「SBI FXα」ではミニ取引ができる。

具体的には「米ドル/円」「ユーロ/円」「ポンド/円」「豪ドル/円」「NZドル/円」「南アフリカランド/円」の6通貨ペアについては、一般的な取引の10分の1の単位で取引ができる。
出典:SBI証券『外国為替保証金取引(SBI FXα)』

「米ドル/円」ミニ取引に必要証拠金額

レバレッジ倍率 必要証拠金 取引額の証拠金割合
1倍 11万円 100%
3倍 3万6,666円 33.33%
5倍 2万2,000円 20%
25倍 4,400円 4%
たとえば、1米ドル=110円のときの米ドル/円のミニ取引では、レバレッジ25倍で4,400円、レバレッジ1倍なら11万円の証拠金を差し入れれば取引できる。

マネックス証券の「FX PLUS」では、どの通貨ペアも1,000通貨から取引できる。

上記と同条件の「米ドル/円」の取引なら、同様に4,400円~11万円の証拠金が必要になる。
出典:マネックス証券『FX PLUS』

長谷川保

大きな損失が心配な人は、SBI証券の「SBI FXα」やマネックス証券の「FX PLUS」を利用して、通常の10分の1の取引単位で取引すれば、利益は少なくなりますが、その分損失額も抑えられます。

さらに少額の1ドル単位での積立もできる

SBI証券の「積立FX」は、通常の取引単位の10分の1であるミニ取引より少額の、1通貨単位(米ドル/円なら1米ドル単位)から外貨を購入できるサービスだ。
出典:SBI証券『積立FX』

購入頻度を毎日、毎週、毎月のいずれかに設定できるので、1米ドルを毎日購入して積み立てることもできる。

少額ながら、スワップポイントも毎日受け取れる。

長谷川保

SBI証券の積立FXでは、レバレッジが最大3倍に抑えられています。1米ドル=110円のときに、レバレッジ3倍で1回につき1通貨購入する場合、1回ごとの証拠金は36円になります。

FX初心者はまずは少額取引がおすすめ

FX取引では、少額から取引を始めることが大切です。
通貨の動向を的確に予想することは極めて難しい。各国の経済やインフレの動向、政治リスクなどが複雑に絡み合い通貨価値が決まっていくので、FX取引で利益を得るのは簡単ではありません。

FXではレバレッジを利用して大きなポジションが持てるので、思惑どおりにマーケットが動けば利益が大きくなるが、思惑とは逆の方向にマーケットが動けば、大きな損失を被ってしまう。

小さくトレードすれば、思惑が外れても損失額を小さく抑えられるので、失敗が続いても動揺することなくFX取引を続けることができるだろう。

そして、経験を積んでから取引を徐々に大きくしていくのがよい。

長谷川保

初心者のうちは、少額取引が可能なMATSUI FXやSBI FXトレードなどを利用するのがおすすめです。

レバレッジ倍率と必要証拠金額を理解し、適切なポジション量(保有通貨量)を知ろう

FX取引において、ポジション量が適切かどうか(十分に小さいか)を知る手段として重要な指標がレバレッジ倍率だ。

計算式
レバレッジ倍率=保有通貨量(為替レート×取引単位)÷証拠金
たとえば、1米ドル=100円、保有通貨量=3,000(通貨)、拠出できる証拠金の金額=10万円の場合、レバレッジ倍率は3倍になる。

(100円×3,000(通貨))÷10万円=3(倍)

証拠金の金額に対して、3倍の通貨量を保有していることを意味する。

FX取引において、どの程度のリスクを負っているかは、保有通貨量と証拠金の規模によって決まります。それを示してくれる便利な指標がレバレッジ倍率です。この数値が低いほどリスクが小さい。
保有通貨量を少なくしてリスクを抑えたと思っても、証拠金の金額が少なければリスクを抑えたことになりません。逆に、拠出する証拠金を多くしても、保有通貨量を多くしてしまえばリスクは大きいままです。

FX取引を始める時に、「どのくらいのポション量(保有通貨量)にすべきか」と迷ったら、レバレッジ倍率を使えばよい。

保有通貨量
レバレッジ倍率×証拠金=保有通貨量(為替レート×取引単位)
たとえば、拠出できる証拠金が10万円で「まだ初心者なのでレバレッジは3倍程度に抑えておこう」と考えたとする。

この場合、上記の式に当てはめると、以下のようになる。

レバレッジ倍率3(倍)×証拠金10万円=保有通貨量30万円

30万円分のリスクを負っていいことになるので、1米ドル=100円なら、30万円÷100円=3,000(通貨)が適切なポジションだ。
長谷川保

FX取引で適切なポジション量(保有通貨量)を知るには、レバレッジ倍率(負うべきリスク量)と証拠金の関係を理解することが大切です。

5,FXの利益はどうやって決まるのか?為替差益とスワップポイント

(画像=MONEY TIMES編集部制作)

FXの人気が高いのは、他の金融商品と違って、利益の出し方が2通りあるからだろう。

どちらの方法も利益の出し方がシンプルなので、初心者でも理解しやすい。

FXの利益
  • 為替差益
  • スワップポイント

為替差益は「通貨間の価値の差を利用する」

FXでは、為替レートの変動によって利益を得ることができる。

「買ってから売る」しかできない外貨預金と違って、FXは「売ってから買い戻す」ことでも利益を出すことができるのが大きな特徴だ。

為替差益による利益の出し方を、簡単な例で確認してみよう。

為替相場が円安に動くと予想する場合→外貨を買って、円安になったら売却する
1米ドル=100円のときに、100万円で1万米ドル(1取引単位)を購入する。その後円安に動いて1米ドル=110円になったときに1万米ドルを売却すれば110万円になり、差額の10万円が利益になる。
為替相場が円高に動くと予想する場合→外貨を売って、円高になったら買い戻す
1米ドル=100円のときに、1万米ドル(1取引単位)を100万円で売却する。その後1米ドル=90円になったときに1万米ドル全額を90万円で買い戻すと、差額の10万円が利益になる。

スワップポイントは「政策金利の差を利用する」

スワップポイントとは?
スワップポイントとは、通貨間の金利差から生じる金利収入のこと。
金利の高い国の通貨を買い、金利の低い国の通貨を売ると金利差が利益になります。逆に、金利の低い国の通貨を買って、金利の高い国の通貨を売ると金利差が損失になります。
たとえば、日本円のように金利の低い通貨を売却して、南アフリカランドやトルコリラをはじめとする高金利通貨を購入すれば、金利差(スワップポイント)が利益になる。
金利差がプラスである限りは、原則的に毎日スワップポイントを受け取ることができますが、金利差がマイナスになると、逆にスワップポイントを支払わなくてはなりません。

スワップポイントは、各FX業者のサイトで確認できる。

保有(買ポジション)していることで付与されるスワップポイント

みんなのFX 外貨ex by Gmo SBI FXトレード GMOクリック証券 DMM FX
米ドル/円 15円 8円 8円 7円 7円
ユーロ/円 -7円 -27円 -17円 -12円 -17円
英ポンド/円 4円 7円 6円 1円 8円
豪ドル/円 0円 1円 1円 1円 1円
メキシコペソ/円 7.1円 7円 7円 8円 6円
南アフリカランド/円 8.1円 8円 7円 8円 8円
トルコリラ/円 42円 44円 40円 40円 -
※2021年10月5日時点のみんなのFX外貨ex by GMOSBI FXトレードGMOクリック証券DMM FXのホームページをもとに筆者作成

表は1日当たりに付与されるスワップポイントを示しているので少なく思うかもしれないが、長期間保有すると利益に対する寄与は意外と大きい。

長谷川保

スワップポイントを強みとしているFX会社も多いので、ホームページで各社のスワップポイントの動向を調べて、取引をするFX会社を選ぶのも1つの方法です。

以下に、スワップポイントでどのくらい利益が出るかをシミレーションしてみよう。

スワップポイントを狙った利益の出し方の例(南アフリカランド/円)
① 10万(1取引単位)南アフリカランドを買う(日本円を売って南アフリカランドを買う)
② 10万通貨につき、1日あたりのスワップポイントは80円とする
③ スワップポイントがその後1年間(365日)変動しなかったと仮定
④ 1年間(365日)、買いポジションのまま保有

この場合、1年間で2万9,200円ものスワップポイントを受け取ることができる。

実際は、各国金利や為替相場の動きによってスワップポイントは日々変動します。公表されるスワップポイントはあくまでも実績であり、将来の受取額を保証するものではないことに注意しましょう。

6,FXの5つのメリット レバレッジ、手数料の安さ、24時間取引可能など

(画像=MONEY TIMES編集部制作)

ここまで、FXの仕組みや投資必要額、利益の出し方などの基本を解説してきた。

FX初心者だけでなく、ベテランの投資家をも魅了するFXには、多くのメリットがある。

ここでは、とりわけ初心者がFXを始めるきっかけになるであろう5つのメリットを整理して、確認しよう。

FXの5つのメリット
  • 利益の出し方が2通りある
  • 少ない資金で大きな金額の取引ができる
  • 手数料が圧倒的に安い
  • 円高、円安のどちらでも利益を狙える
  • 24時間いつでも取引できる

FXのメリット1――利益の出し方が2通りある

FX最大のメリットは、前述のとおり「為替差益」と「スワップポイント」という2通りの利益の出し方があることだ。

これは、他の金融商品にはない大きな魅力だ。

長谷川保

FX取引を行う際は、「為替差益」か「スワップポイント」のどちらかを目的にしてもいいですし、両方を狙って取引することもできます。

FXのメリット2――少ない資金で大きな金額の取引ができる

FXは証拠金取引の一種なので、証拠金の1~25倍のレバレッジ倍率を掛けた金額の取引ができる。

長谷川保

手元資金があまり多くなくても、損失リスクに注意すれば、レバレッジ効果で大きな利益を狙うこともできます。

FXのメリット3――手数料が圧倒的に安い

FX取引にかかる手数料は、他の金融商品に比べると格段に安い。

どのFX業者を利用しても、取引手数料は無料です。さらにFXの為替スプレッド(手数料)も格安であり、2021年10月8日現在では、「米ドル/円」なら片道0.2銭が標準的です。

たとえば、外国株の手数料は国内株に比べて高いのが一般的で、大手ネット証券でも、米国株取引だと約定代金の0.45%(税抜、下限0米ドル~上限20米ドル)の手数料がかかる。

さらに、米国株投資における、ネット証券の片道為替スプレッドは一律25銭だ。

長谷川保

FXは、取引手数料、スプレッドともに、外国株取引に比べて破格の安さです。

FXのメリット4――円高、円安のどちらでも利益を狙える

外貨預金では円高のときに外貨を買って、円安になったら外貨を売って利益を出すパターンしかない。

FXなら円安のときに外貨を売って、円高になったら外貨を買い戻すことでも利益を出せる。

長谷川保

円高、円安のどちらに為替相場が変動しても、対応次第で利益を狙えるのはFXならではです。

FXのメリット5――24時間いつでも取引できる

FXは、時間帯の異なる世界各国の通貨を売買する取引なので、各国の市場の休場日以外なら基本的に24時間いつでも取引できます。

FXが活発に取引されるのは、米国と英国の為替市場が開いている18時から24時(日本時間)までの時間帯。

長谷川保

日中仕事で取引できない日本の会社員でも、帰宅後に落ち着いて取引できるのもFXの大きな魅力です。

7,FXの3つのデメリット 損失拡大リスク、変動しやすい相場、確定申告

FXの3つのデメリット
(画像=MONEY TIMES編集部制作)

取引がシンプルで大きな利益が狙えるFXだが、その一方でデメリットがあることも忘れてはならない。

FX初心者が投資を始める前に、必ず押さえておきたいFXのデメリットを3つ紹介する。

FXの3つのデメリット
  • レバレッジ効果による損失拡大リスク
  • 為替相場に大きな影響を及ぼす要因が多い
  • 一定以上の利益が出たら確定申告が必要

FXのデメリット1――レバレッジ効果による損失拡大リスク

レバレッジ効果は大きな利益を生む可能性があるが、大きな損失が生じるリスクもある。

FXでは、為替相場が想定外に大きく変動した場合、ロスカットが発動されるまでに大きな損失が発生することもあります。
ロスカットとは?
ロスカットとは、FX取引で含み損が発生した場合にさらなる損失の拡大を防ぐために、FX会社が、投資家が保有する通貨ペアを強制的に決済し、損失を確定させること。
長谷川保

FXでは、証拠金維持率を割り込むことがないよう、逆指値注文を出しておいたり、レバレッジ率を低めに設定したりするなど、事前の対策で損失額を抑える工夫も重要になります。

FXのデメリット2――為替相場に大きな影響を及ぼす要因が多い

為替相場は、以下のようなさまざまな要因に大きく左右される。

● 世界中で発生する大災害やテロ
● 米国の雇用統計
● 各国のGDPや貿易収支といった世界の主要経済指標の発表
● 世界各国の政策金利の調整をはじめとする金融政策

欧米の主要経済指標や米国の雇用統計などは、日本の夜間に発表されるため、場合によっては朝になると為替レートが大きく変動していることもある。

FXで利益を出す、あるいは大きな損失を回避するためには、日頃から世界の重要経済指標の発表スケジュールやその内容をチェックして、為替相場の変動を見越した対応が重要になります。

FXのデメリット3――一定以上の利益が出たら確定申告が必要

1月1日から12月31日までの1年間にFX投資で得た利益は、「雑所得」として扱われる。

FXで得た利益については、原則確定申告の必要があり、申告分離課税で一律約20%が課税されます。ただし経費を差し引いて、1年間のFXの利益を含む雑所得合計額が20万円以下の場合は、確定申告は不要です。

出典:国税庁 『外国為替証拠金取引(FX)の課税関係』

長谷川保

株式や投資信託、債券などは証券会社の「特定口座(源泉徴収あり)」を利用できるので、自分で確定申告不要をしなくて済むことを考えると、FXはひと手間かかってしまう印象です。

なおFX、CFD、eワラントなどの店頭デリバティブ取引商品と、先物オプションや上場カバードワラントなどの市場デリバティブ取引商品は損益通算が認められている。

FXで損失が出た場合は、翌年から3年間繰越控除をすることもできる。

8,FX初心者に見られる代表的な5つの失敗例

(画像=k_yu/stock.adobe.com)

初心者はFXの特性を十分に理解していないため、間違った認識をもっていることがある。

初心者が犯しやすい失敗例を5つ紹介するので、気をつけてほしい。

FXの失敗例1――為替スプレッドが手数料であることを忘れている

FXの初心者は、「FXは他の金融商品に比べて取引コストが非常に安い」「取引手数料が無料」と聞いて、為替スプレッドという手数料の存在を忘れてしまうことがある。

ネット証券のFXは為替スプレッドが格安だが、取引金額が大きくなれば相応に手数料は増えるし、新規と決済のどちらにも為替スプレッドがかかる。

FX業者や通貨ペアによって、為替スプレッドに差があることも覚えておきたい。

長谷川保

為替スプレッドはコストであることを忘れないで、複数の通貨ペアやFX業者を比較することを習慣にしましょう。

FXの失敗例2――ロスカットがあることで安心して、大きな損失を出してしまう

レバレッジ効果のある金融商品に慣れていないと、ロスカットに関する失敗を犯しがちだ。

為替相場の急落にロスカットの発動が間に合わず、ロスカット水準を下回って発動されて証拠金を失う、あるいは借金を負ってしまう場合もあります。

このような事態を避けるためには、そもそもロスカット水準(ロスカットが発動する証拠金維持率)ギリギリの取引にならないように、常に注意を払う必要がある。

FX業者によっては、証拠金維持率が100%もしくは50%など、あらかじめロスカット水準を設定しているところもある。

自分の経験に合った水準を設定している業者を選ぶか、自分でしかるべき水準に設定するべきだろう。

長谷川保

ロスカットは資産を守る万能薬でないことを肝に銘じて、預け入れた証拠金を失わないように資金管理を徹底しましょう。

FXの失敗例3――レバレッジ倍率を最大にして、損失を出してしまう

レバレッジ倍率が高いほうが、少ない投資額で大きな利益を出せる。

しかし初心者がレバレッジ25倍で取引すると、早々にロスカットが発動してしまったり、瞬時に証拠金を失ってしまったりすることがある。

長谷川保

FX初心者のうちは、レバレッジ1倍もしくは3倍など低レバレッジで取引経験を積み、為替相場の分析力や相場観がついてきたら、徐々にレバレッジ倍率を上げるといいでしょう。

FXの失敗例4――スワップポイントがマイナスになり、逆に支払いが発生してしまう

原則的に、低金利通貨を売って高金利通貨を買えば、毎日スワップポイントを受け取ることができる。

しかし、買い取引当初はスワップポイントがプラスであっても、スワップポイントは日々変動する。

あまりないケースではあるが、ある日を境にスワップポイントのマイナスが続いて、逆にスワップポイントの支払いがかさんでしまうケースも考えられる。

長谷川保

スワップポイントは貯まるものと思い込まず、定期的に付与されるスワップポイントを確認しましょう。

FXの失敗例5――予想が外れて損失が出ても、損切りできない

予想が外れて損失が出ても、いずれ回復すると信じてポジションを維持してしまう、あるいは損失が拡大してしまって「塩漬け」にしてしまうという失敗も多い。

初心者にありがちなパターンではあるが、損切りをできなければ損失額は増えるばかりだ。

損切りとは?
損切りとは、FX取引で含み損が発生した場合に、さらなる損失の拡大を防ぐために保有している通貨ペアを決済し、損失を確定させること。

少額で投資している初心者のうちに、下記の点を習得・実践しよう。

  • 事前に逆指値注文を出す習慣をつける
  • 自動売買を試してみる
  • 自分で定額または定率の損切りルールを設ける
長谷川保

自分に合った損切り方法を見つけて、実践を繰り返すのが大切です。FXの初心者にとって最も大切なことは、早めに損失を確定させる訓練かもしれません。

9,FX投資家の資産を守る仕組みとリスクを遠ざける3つのシステム

(画像=siro46/stock.adobe.com)

FXは大きな利益を狙える反面、相場環境が悪化すると大きな損失が生じることもあるハイリスク商品だ。

そのため、FXには損失額を拡大させないための仕組みや、FX業者が倒産しても投資家の資産を保全する仕組みがある。

為替変動による損失額を限定するシステム

FXで大きな損失が発生してしまうのは、為替変動が原因の場合が多い。

この影響を限定的にするためのシステムは、主に3つある。

1,「ロスカット」――強制反対売買による決済

前述のように、相場環境の悪化によって、預け入れた証拠金に対して一定の割合まで損失額が拡大すると、強制的に反対売買を行う(=損失を確定させる)仕組みがロスカットだ。

ロスカットが発動されないと、証拠金を上回る損失が出てしまうおそれがある。

長谷川保

ロスカット率(ロスカットが発動する証拠金維持率)は、FX業者によってあらかじめ設定されている場合と、投資家本人が設定できる場合があります。

2,「低レバレッジコース」――レバレッジ倍率を下げる

FXの一般投資家向けレバレッジ倍率は、1~25倍。

為替変動によって、差し入れた証拠金を上回る損失が発生するのを避けるために、FX業者の中には、証拠金の割合を高めてレバレッジ倍率を低く抑えるコースが設けられている。

長谷川保

低レバレッジコースは、高レバレッジコースに比べて利益は小さくなるが、損失額も抑えられます。

3,「逆指値注文」――設定条件によって自動的に成行で決済する注文方法

買建玉(外貨を買って保有している)では「一定水準以下に下落したら外貨を売却する」、売建玉(外貨を売った場合)なら「一定水準以上に上昇したら買い戻す」という反対売買注文をあらかじめ出しておいて、損失を最小限に抑えることができる。

投資家の資産を保全する仕組み――「信託保全」

FX業者が倒産した場合に、投資家がFX業者に預けた資産を保全するための「信託保全」という制度がある。

国内のFX業者は投資家から預かった証拠金などを全額、FX業者自身の資産と区分して銀行に金銭信託することが義務付けられています。
長谷川保

これによって、万が一FX業者が倒産した場合でも、受益者代理人を通じて諸費用を控除した上で証拠金などが投資家に返還されます。

10,FX初心者が知っておきたい2つのこと――FX 相場の格言から

これからFX取引を始める初心者にとって、FXという金融商品の特性を十分に理解しておくことは、自分の資産を増やし、守ることにつながる。

FXの特徴を端的に表現した相場の格言を見ながら、FX取引に対する心構えを再確認してほしい。

損せぬ人に儲けなし
わずかなリスクまで排除していては、大きな利益を得ることは望めないという格言。

FXでも、レバレッジ効果による大きな利益を望むなら、多少のリスクがあっても恐れずチェレンジするべきだ。

数回多少の損失が出ても、それを大きく上回る利益を出せるようになることが重要。

ただし、損失を最小限に抑えるための配慮と手間を忘れないようにしよう。

まぐれ当たりで儲けた金は他人の金を預かったと同じ
勝負は、勝つも負けるも2分の1の確率。初心者がたまたま勝ったからといって、それを実力だと勘違いして、根拠もなく積極的に仕掛けてはならないという格言。

初心者がFXを始めたばかりの頃に、運良く為替相場が有利に変動し、利益を得るというビギナーズラックをつかむことは珍しくない。

その後、同じような偶然を期待して適切なテクニカル分析やファンダメンタル分析を行わず、多額の資金を投入したり、手持ち資金を鑑みずにレバレッジ倍率を25倍にして取引を行ったりしていると、大きな損失を被ることになるので十分注意すること。

FXで利益が出たときこそ、初心に帰って手堅く取引をし、経験を積むべきだ。

11,FX初心者の心構え メリット以上にデメリットや失敗事例に注意を

(画像=Jazz Blues/stock.adobe.com)

FXという金融商品は仕組みがシンプルなので、利益の出し方や少ない資金で大きな利益を得られるというメリットなどは、FX初心者でもすぐに理解できるだろう。

しかし、最初に学ぶべきはFXのデメリットや先人たちの失敗例だろう。

レバレッジをかけて取引するため、為替相場が反対方向に大きく動くと自己資金を失うだけでなく、借金を負うリスクもある。

長谷川保

FX初心者は、FXのデメリットを認識し、失敗事例から大いに学びましょう。いかにして損失を限定して資産を守るかを考えた上で、利益を出す方法に知恵を絞るといいでしょう。

長谷川保
執筆・長谷川保
中央大学卒業後、英国を本拠とするバークレイズの投資銀行部門に入社しロンドンにて勤務。債券や先物・オプションなどのデリバティブを担当。帰国後、外資系資産運用会社に転じ、ブラックロック・ジャパンなどでファンドマネージャーやプロダクトマネージャーとして様々な金融商品に携わる。現在はライターとして資産運用を中心に執筆。自己資金トレーダーとしても活動中。
中央大学卒業後、英国を本拠とするバークレイズの投資銀行部門に入社しロンドンにて勤務。債券や先物・オプションなどのデリバティブを担当。帰国後、外資系資産運用会社に転じ、ブラックロック・ジャパンなどでファンドマネージャーやプロダクトマネージャーとして様々な金融商品に携わる。現在はライターとして資産運用を中心に執筆。自己資金トレーダーとしても活動中。

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