iDeCoで人気のひふみ年金は、積極的にリターンを狙うアクティブ型投資信託でありながら、極端な値動きはなく順調に成長を続けている。しかし、それに頼りすぎると危険だ。ひふみ年金の特徴や注意点についてまとめた。
目次
1.ひふみ年金の特徴とは?
2.iDeCoでひふみ年金を運用した場合の節税額
3.ひふみ年金をiDeCoで運用する際の注意点
1.ひふみ年金の特徴とは?ひふみシリーズの違い、信託報酬、パフォーマンスなど
「ひふみ年金」はレオス・キャピタルワークスが展開する「ひふみシリーズ」の銘柄の一つ。ひふみシリーズにおける位置づけやコスト、パフォーマンスについて見ていこう。
ひふみ年金は「ひふみシリーズ」の中のiDeCo(イデコ)銘柄
ひふみシリーズは2008年の誕生以来順調に純資産総額を伸ばし、2019年末にはブランド全体で7,000億円以上の資金を投資家から集めている。ラインナップは以下のとおりだ。
商品名 | 投資対象 | 購入方法 | 純資産総額 (百万円) |
ひふみ投信 | 日本株 | 直販 | 135,853 |
ひふみプラス | 日本株 | 販売会社から購入 | 478,151 |
ひふみワールド | 海外株 | 直販 | 16,715 |
ひふみワールドプラス | 海外株 | 販売会社から購入 | 76,026 |
ひふみ年金 | 日本株 | iDeCoなどの確定拠出年金制度 を利用して購入 |
39,683 |
ひふみ投信は、2008年に運用が開始されたアクティブファンドだ。成長が見込める日本株に投資し、直販と販売会社経由を合わせて6,000億円以上の純資産残高を誇る。ひふみ年金は確定拠出年金専用のファンドで、2016年に運用を開始した。ひふみ年金の投資方針や組入銘柄は、ひふみ投信と変わらない。
ひふみ年金とひふみ投信の大きな違いは、購入方法だ。ひふみ年金は確定拠出年金専用であるため、iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DC(企業型確定拠出年金)でしか運用できない。NISAや通常の証券口座で購入したい場合は、ひふみ年金ではなく、ひふみ投信を選ぶしかない。
ひふみ年金をiDeCoや企業型DCで運用すれば、積立の掛金が全額所得税控除の対象になり、発生した運用益に税金がかからない。これは、確定拠出年金制度を利用してひふみ年金を運用する大きなメリットといえる。
ひふみ年金の投資スタイル
ひふみ年金のユニークさは、その投資方針にある。資金はすべて親ファンドであるひふみ投信マザーファンドに投資される。親ファンドの投資先は、レオス・キャピタルワークスが企業業績・株価水準・経営の質・競争力・現場の活気などを徹底的に調査・分析した国内企業だ。大企業だけでなく、中型・小型・超小型株まで投資対象にしている。つまり、日本株を対象としたアクティブファンドという位置付けだ。
アクティブファンドは、銘柄分析や市場調査、売買のタイミングなどを運用のプロが行うため、非常に手間がかかる。ひふみ年金は大中小株や現金の組み入れ比率をあらかじめ設定せず、状況を見て柔軟に入れ替えるので、運用会社の手腕が問われると同時に手間がかかるファンドといえる。
ひふみ年金の手数料(信託報酬)
ひふみ投信シリーズは、アクティブファンドにしては信託報酬が低く抑えられており、年率0.8360%(税込)と1%を切る。同カテゴリーの平均信託報酬1.57%と比較してもかなり低い。もちろん0.1%を切るようなインデックスファンドに比べると高く感じるが、ベンチマーク(指標)よりも高いパフォーマンスが期待できることがアクティブファンドの醍醐味だ。
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ひふみ年金のパフォーマンス
実際、ひふみ年金の実績は素晴らしい。分配金を再投資した1年間のファンド収益率は23.42%で、日本株全体の株価動向を示すTOPIX(配当込み)の4.87%を大きく上回る。もう少し長期で見てみよう。3年間の収益率を年率に換算すると7.30%だが、積み立てで購入した場合17.04%になる。毎月5,000円を拠出すれば、3年で3万677円の利益を得られる計算だ。
それでいて、リスクを表す標準偏差はTOPIXより少し高い程度だ。設定からまだ5年経っていないが、現時点ではローリスク・ローコスト・ミドルリターンを実現している。
2.iDeCo(イデコ)でひふみ年金を運用した場合の節税額
ひふみ年金をiDeCoで運用すると、どのくらい節税できるのだろうか。節税額は年収や投資額によって変わるが、一例を紹介しよう。
iDeCo(イデコ)の加入資格
iDeCoは、基本的に国民年金保険料を納付している20歳以上60歳未満の人なら誰でも加入できる。掛金を60歳まで拠出し、60歳以降に老齢給付金を受け取る。自分で運用商品を選んで運用するのがiDeCoの特徴なので、iDeCo口座のある証券会社がひふみ年金を取り扱っていれば購入が可能だ。
2020年10月時点では14の金融機関で取り扱っている。SBI証券、松井証券、マネックス証券、auカブコム証券、イオン銀行、ソニー銀行、住友生命保険、大和証券、野村証券などだ。
会社員・公務員がiDeCo(イデコ)を20年間運用した場合の節税額
確定給付年金のある企業の会社員もしくは公務員の場合、掛金の上限は月額1万2,000円(年額14万4, 000円)である。年収1,000万円の人が40歳から60歳まで上限額を「ひふみ年金」に拠出すると仮定し、節税額をシミュレーションした結果は以下のとおりだ。
<20年の運用結果>
- 投資額:288万円
- 年金総額:861万8,755円
- 運用益:573万8,755円
- 掛金控除による節税額: 126万円
- 運用益非課税による節税額: 116万5,828円
ひふみ年金は設定来年率13.27%の収益を上げているが、シミュレーションツールの上限である10%で試算した。それによると運用益は約574万円、本来発生したはずの運用益に対する課税がないことで、節税額は約117万円にもなった。
運用益がここまで高くなかったとしても、掛金の全額所得税控除による節税効果もある。毎月1万2,000円を20年間払い続けることで投資額は288万円になり、それが所得から控除されることで126万円(年間6万3,000円)を節税できるのだ。
iDeCo(イデコ)の節税効果が高くなる3つの要素
iDeCoの節税効果を高める要素は、以下の3つだ。
- 年収が高い
- 掛金が多い
- 運用益が高い
年収が高いほど所得税率が上がり、支払う所得税が増えるため、iDeCoの節税効果が如実に表れる。できるだけ多く掛金を設定したいところだが、残念ながら被保険者の種別によって上限が決められている。
シミュレーションで使用した、確定給付年金のある企業に勤務する会社員もしくは公務員の第2号被保険者は、掛金の上限が最も低い。同じ第2号被保険者でも、確定給付年金のない企業の場合は月に2万円まで拠出できる。個人事業主や自営業などの第1号被保険者は、月額6.8万円(年額81.6万円)と大幅に上限が上がる。収入が高い第1号被保険者なら、節税効果は絶大だ。
3.ひふみ年金をiDeCo(イデコ)で運用する場合の注意点
ここまでiDeCoで購入できるひふみ年金のメリットを説明してきたが、もちろん投資に絶対はない。ひふみ年金への投資を考える際は、以下の点に注意したい。
運用実績は将来の保証ではない
ひふみ投信シリーズは設定来プラスを維持しており、今後も好成績を期待できる。しかし、過去のリターンが将来のリターンを保証するわけではないことは、しっかり頭に入れておきたい。そもそもリターンは購入時と売却時の差額をもとに計算するので、期間の切り取り方によって結果は変わる。
ひふみ年金は2016年設定来、平均年率13.27%の収益率を見せているが、例えば2018年2月2日から2020年3月13日まで保有した場合、分配金込みの基準価額はマイナス29%になる。
短期的な下落に一喜一憂せず、じっくり長期で取り組むのが積立投資の基本だが、決して「ほったらかしでOK」というわけではない。いよいよ継続が難しいとなれば、掛金の配分割合の変更やスイッチングを検討したい。
ひふみ年金1本では幅広い分散投資ができない
ひふみ年金が投資する「ひふみ投信マザーファンド」は大型株から超小型株まで、さまざまな業種の株式を投資対象としているが、海外株式や債券などは対象外だ。地域や資産カテゴリーで分散投資をするには、ひふみ年金だけでは難しい。
1本で分散投資ができるものには、グローバル株式インデックスの「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス (ACWI)」や「FTSE全世界指数」に連動する投資信託や、債券やREITなどを含めた複数資産に投資するバランス型投資信託などがある。
iDeCoでひふみ年金を活用するのであれば、海外株式や株式以外の資産に投資するファンドなどと組み合わせるのが望ましい。市場環境を見てタイミングをずらしたり、掛金を振り分けたりしてポートフォリオのバランスを取ってほしい。
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