債券投資はリスクを抑えた資産運用の手段である。特に投資初心者はリスクを取ることに抵抗を感じる人も多いため、債券投資から投資を始めてみるのも良いだろう。債券についての基本的な説明を行った上で、投資初心者が債券投資を始める際のおすすめ商品を紹介していこう。

目次
1,債券とは?債券の仕組みや種類
2,債券に投資する3つの方法
3,債券投資の3つの購入方法の使い分け
4,おすすめの国内債券ファンド5選
5,おすすめの先進国債券ファンド5選
6,おすすめの新興国債券ファンド5選
7,おすすめの債券ETF5選
8,債券に投資する際の注意点
9,債券投資でもリスク分散を意識して投資を行いたい

1,債券とは?債券の仕組みや種類

まずは債券の仕組みや種類について簡単に説明しよう。

債券の仕組み

債券投資とは国や企業、地方自治体などの「発行体」への資金の貸し付けである。債券は発行体が投資家から資金を借り入れる際に発行されるもので、あらかじめ利率や償還日などの条件が定められている。投資家は債券を保有していれば、金利を受け取ることができ、償還日には額面金額が返済されることとなる。

債券の特徴は「安全性」と「確実性」

債券は発行体が破綻しない限り、約束された金利収入が期待でき、満期日には額面金額が返済される。満期保有を前提に考えれば、株式のように価格動向に一喜一憂する必要はなく、発行体が破綻しないかどうかのみを気にすればよい。株式のように大きく利益を得ることは難しいが、安定した利益を高い確率で受け取れる。

なお、債券を満期前に売却する場合、売却価格は時価となる。そのため、中途売却を行う場合には、発行体が破綻していなくても損失が出る可能性もあるので、注意が必要だ。

債券にはどんなものがあるか

一口に債券といっても様々な種類が存在する。代表的な債券の区分けを紹介しよう。

・国債、公共債、社債など
まずは発行体による分類だ。発行体が国家であるものは「国債」、国債を含めた公的機関が発行する債券を「公共債」、企業が発行する債券は「社債」や「事業債」と呼ばれる。また、海外の発行体が発行する債券は「外国債券(外債)」と呼ばれる。

・利付債、ゼロクーポン債、ディスカウント債
債券の種類や特徴によっても分類できる。金利が定められており、定期的に利息が支払われる一般的な債券は「利付債」と呼ばれる。

一方で金利が定められておらず、その分額面金額よりも割り引かれて発行される債券は「ゼロクーポン債(割引債)」と呼ばれる。ゼロクーポン債は額面金額から割引されて発行される一方、満期時には額面金額で返済されるため、その差額が投資家の利益となる。

また、これらの中間の性質を持つ「ディスカウント債」もある。ディスカウント債は利付債よりも低い利率が設定される一方で、その分割引されて発行される。

債券の平均利回りは?

債券の利回りは様々な要素によって決定される。重要な要素は発行体、期間、市場の金利水準だ。

発行体によって、債券の利回りは異なる。信用度の高い発行体の債券の利回りは低くなり、反対に信用不安のある発行体の債券の利回りは高くなる。また、満期までの期間が長い債券は利回りが高くなり、反対に期間の短い債券の利回りは低くなる。

市場の金利水準も債券の利回りに大きな影響を与える。原則として、債券の利回りは市場の金利水準をベースに、発行体の信用度に応じた上乗せ幅を加味して決定される。市場の金利水準とは、債券が発行された地域の金利水準だ。つまり同じ企業の発行する債券でも、日本で発行された債券の利回りと海外で発行された債券の利回りは異なる。

参考までに日本と米国の10年国債利回りは足下で次のようになっている。

・日本国債(10年)……0.125%(2021年3月8日終値)
・米国債(10年)……1.566%(2021年3月5日終値)

なお、これらは国債の利回りであるため、同じ期間の社債であれば、信用度に応じて利回りは高くなる。

2,債券に投資する3つの方法……直接購入、投資信託・ETF購入

実際に債券を購入するには、次の3つの方法がある。

方法1,直接証券会社から購入する……最もコストを抑えた望ましい投資方法だが、個人では限界も

債券は証券会社から直接購入できる。メリットは余計なコストが掛からない点だ。投資信託やETF(上場投資信託)で債券を間接購入した場合は、運用会社などへのコストが発生する。証券会社から直接購入すれば、そうした余計なコストが掛からないため、最も合理的な債券投資の方法となる。

債券を直接購入するデメリットは、個人が直接購入できる債券は全体の一部であるため、選択肢が限られてしまう点だ。証券会社によってラインアップに違いはあるが、一般的に個人投資家向けに提示されている債券のラインアップは債券市場全体の一部に過ぎない。社債などは額面金額が1億円単位などで発行されるケースも多く、個人が直接購入するのは難しい銘柄も多い。

個人向け国債や通常の日本国債など、個人が購入しやすいように設定されている一部の債券を購入するのであれば、直接購入が望ましい。しかし、様々な種類の債券へ分散投資を行う場合などは、直接購入だと限界があるので次に紹介する投資信託やETFを活用するのがいいだろう。

方法2,投資信託を購入する……幅広く債券へ投資するには最適な投資方法

債券を間接的に購入する方法として、投資信託を通じて購入する方法がある。メリットは、投資対象となる債券の種類が格段に増える点である。個人では購入の難しい額面金額の大きな債券や海外市場の債券についても、投資信託であれば間接的に保有できる。

一方でデメリットは、信託報酬などの間接的なコストが発生する点だろう。直接投資では発生しないコストであるため、直接投資と比べるとパフォーマンスは悪化してしまう。

また、投資信託の場合には、債券は間接保有しているに過ぎないため、売買にあたっては、投資信託の時価を意識する必要がある。時価は日々変動する上、投資信託では満期時まで保有しても、額面金額が返済されるといったこともない。債券へ投資を行うという点では変わらないものの、投資信託の時価で売買を行う必要が生じるため元本割れのリスクもある。

方法3,ETFを購入する……市場での取引が可能で、投資信託よりコストが安い

債券を間接的に購入する方法に、ETF(上場投資信託)を通じて購入する方法もある。ETFは株式市場に上場している投資信託だ。債券を購入する上での基本的なメリットやデメリットは、投資信託を通じて債券を購入する場合と同様だ。

ETFと投資信託の違いは、ETFは市場に上場しているため、投資信託よりもよりリアルタイムでの取引が可能な点である。また、市場での売買となるため、証券会社への売買手数料が必要となる一方、一般的に信託報酬は投資信託と比較して安くなるケースが多い。

3,債券投資の3つの購入方法の使い分け

債券投資の3つの方法は、それぞれメリットやデメリットがあるため、投資したい債券の種類によって、購入方法を使い分ける必要がある。

個人向け国債や通常の日本国債だけに投資を行いたい場合は、直接購入を選択すべきである。これらは低い額面金額から購入できるため、わざわざ間接コストを払って投資を行うメリットが少ないためだ。

一方で社債などへの銘柄分散や国外債券への地域分散などの分散投資を行う場合には、投資信託やETFでの投資がおすすめだ。これは、投資できる債券の種類が大きく異なるためだ。また、債券は原則として相対取引となるため、株式のように時価情報を容易に得ることは難しいといった事情もある。債券へ幅広く投資を行う場合には、投資信託やETFの枠組みを活用すべきだ。

4,おすすめの国内債券ファンド5選

債券は直接購入がベストであるが、個人で全ての銘柄を直接購入することは限界があるため、現実的には間接購入を行うケースが多くなる。とくに投資初心者が手軽に債券投資を始めるのに適しているのは投資信託を購入する方法だ。

ここでは資産の種類別におすすめの商品を5つずつ紹介していこう。まずは国内債券を対象とする投資信託だ。選定にあたっては、信託報酬がインデックスファンドで0.5%以下、アクティブファンドで1.0%以下であり、毎月分配型でない商品からピックアップした。なお、数値情報は2021年3月8日時点のものである。

eMAXIS Slim国内債券インデックス……人気シリーズで低コスト投資

運用会社……三菱UFJ国際投信
純資産総額……121.45億円
信託報酬……年率0.132%(税込)

eMAXIS Slim国内債券インデックスは人気のeMAXIS Slimシリーズの1つで、国内債券の主要指数であるNOMURA-BPI総合指数をベンチマークとするインデックスファンドだ。

ポートフォリオの8割強を日本国債が占めているが、その他に地方債や政府保証債、社債への投資も一部行っている。国債だけでみても、償還期間の異なる国債を複数保有しており、このポートフォリオを個人で再現するのは非常に難しい。コストも0.132%(税込)と非常に低く、低コストで国内債券への分散投資が行える。

<購入・換金手数料なし>ニッセイ国内債券インデックスファンド……運用に定評のある国内債券インデックスファンド

運用会社……ニッセイアセットマネジメント
純資産総額……82.2億円
信託報酬……年率0.132%(税込)

<購入・換金手数料なし>ニッセイ国内債券インデックスファンドもNOMURA-BPI総合指数をベンチマークとするインデックスファンドである。

ポートフォリオを見ると、日本国債での運用比率が非常に高い点に特徴がある。日本国債を償還期間別に複数保有し、ポートフォリオの利回りを調整し、ベンチマークとの連動を図っている。ニッセイアセットマネジメントも運用には定評があり、コストも0.132%(税込)と非常に低い優秀なファンドだ。

たわらノーロード 国内債券……純資産総額の多い国内債券インデックスファンド

運用会社……アセットマネジメントOne
純資産総額……175.18億円
信託報酬……年率0.154%(税込)

たわらノーロード 国内債券もNOMURA-BPI総合指数をベンチマークとするインデックスファンドである。

先に紹介したインデックスファンド2銘柄と比較すると、純資産総額は最も多い。また、信託報酬は僅かに高いが、十分低コストであり、許容範囲の水準だろう。ポートフォリオの8割強を日本国債が占めているが、残りは地方債や政府保証債、社債などへの投資を行っている。

ニッセイ日本インカムオープン(年1回決算型)……国内社債へ幅広く投資するアクティブファンド

運用会社……ニッセイアセットマネジメント
純資産総額……190.94億円
信託報酬……0.1595%~0.935%(新発10年固定利付国債の利回りに応じて変動、税込)

ニッセイ日本インカムオープン(年1回決算型)は国内の社債などへ投資するアクティブファンドだ。残存期間が最長10年程度の債券へ投資を行い、各残存期間の投資金額がなるべく均等となるような、ラダー型運用と呼ばれる手法を用いて投資を行っている。これにより、金利変動リスクの分散を図っている。

構成銘柄はBBB格以上の投資適格債であり、社債がポートフォリオの9割以上を占める。社債の大部分は額面金額が大きく、個人が売買をするのに不向きであるが、このファンドを活用すれば、国内の社債にも分散投資が可能である。

信託報酬は新発10年固定利付国債の利回りに応じて変動する仕組みを採用しており、市場の金利水準に合わせて決定される。最低水準は同利回りが0.5%未満の場合に適用される0.1595%(税込)だ。

同ファンドは姉妹ファンドに毎月分配型のタイプもある。債券へ投資を行う投資信託は定期的なインカムゲインが期待できることもあり、毎月分配型との相性は比較的よいが、毎月利益確定し、課税されてしまう毎月分配型は複利効果で劣るため、特段の理由がない限りは年1回型を選択すべきだろう。

エス・ビー・日本債券ファンド……運用に定評のあるアクティブファンド

運用会社……三井住友DSアセットマネジメント
純資産総額……72.71億円
信託報酬……0.407%~0.902%(新発10年国債の利回りに応じて変動、税込)

エス・ビー・日本債券ファンドも国内債券へ投資するアクティブファンドである。

2021年1月29日時点の運用報告書によると、構成銘柄は日本国債が約30%、通常の社債が約70%となっている。同ファンドは運用に定評があり、モーニングスター社の「FOND OF THE YEAR 2018」の債券型部門で最優秀ファンド賞を獲得するなどの実績がある。信託報酬は新発10年国債の利回りに応じて変動する仕組みを採用しており、市場の金利水準に合わせて決定される。最低水準は同利回りが0.5%未満の場合に適用される0.407%(税込)だ。

5,おすすめの先進国債券ファンド5選

続いては、海外を含めた先進国債券を対象とする投資信託のおすすめを紹介しよう。信託報酬がインデックスファンドで1.0%以下、アクティブファンドで1.5%以下であり、毎月分配型でない商品からピックアップした。数値情報は2021年3月8日時点のものである。

eMAXIS Slim先進国債券インデックス……人気シリーズの王道の1本

運用会社……三菱UFJ国際投信
純資産総額……191.94億円
信託報酬……年率0.154%(税込)

eMAXIS Slim先進国債券インデックスは先進国債券インデックスファンドであり、ベンチマークはFTSE世界国債インデックス(除く日本)だ。

ポートフォリオの4割強が米国債となっており、以下欧州圏などの国債がバランスよく組み入れられている。米国債への投資は直接購入でも可能であるが、償還期間などを分散させた投資となると、個人には限界がある。さらに、他の先進国の国債となると投資信託の枠組みを活用しないと投資は難しい。

コストも0.154%(税込)と非常に低く、これだけのコストで海外と日本の金利差も享受できるという点は非常に魅力的である。為替ヘッジは掛けていないため、為替リスクには注意が必要である。

<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国債券インデックスファンド……低コストでシンプルに先進国債券へ投資

運用会社……ニッセイアセットマネジメント
純資産総額……158.03億円
信託報酬……年率0.154%(税込)

<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国債券インデックスファンドもFTSE世界国債インデックス(除く日本)をベンチマークとするインデックスファンドである。

ポートフォリオを見ると、米国債がポートフォリオの4割強を占めており、こちらも他に欧州などの国債で構成されている。コストも0.154%(税込)と先に紹介した「eMAXIS Slim先進国債券インデックス」と同水準であり、為替ヘッジを掛けていない点でも共通だ。

たわらノーロード 先進国債券<為替ヘッジあり>……為替リスクを抑えて先進国債券へ投資

運用会社……アセットマネジメントOne
純資産総額……91.45億円
信託報酬……年率0.22%(税込)

たわらノーロード 先進国債券<為替ヘッジあり>もFTSE世界国債インデックス(除く日本)をベンチマークとするインデックスファンドである。

ポートフォリオの組入国も先に紹介した2ファンドと大きな違いはない。異なる点は、為替ヘッジがついており、為替リスクを軽減した投資を行える点である。その分、コストは0.22%(税込)とやや高くなるが、先進国債券への分散投資においては十分低コストだろう。為替リスクを軽減し、なるべくリスクを取りたくない場合には、こうした為替ヘッジつきの商品を選択してもよいだろう。

三菱UFJグローバル・ボンド・オープン(年1回決算型)……海外国債へ投資するアクティブファンド

運用会社……三菱UFJ国際投信
純資産総額……143.45億円
信託報酬……年率1.21%(税込)

三菱UFJグローバル・ボンド・オープン(年1回決算型)は先進国債券を投資対象とするアクティブファンドである。投資対象は先進国の国債や政府保証債などの公的債券である。

同ファンドは各国の金利差を活用する投資手法を採用しており、2021年2月26日時点の運用報告書によると、同時点での組入国はオーストラリアとシンガポールの2カ国のみである。相対的に金利の高い市場の債券へ投資することにより、先進国債券全体よりも高いパフォーマンスを狙う商品だ。

信託報酬は1.21%(税込)とインデックスファンドと比べて割高であるが、シンプルな投資手法の分かりやすいアクティブファンドであり、投資する価値はあるだろう。

世界プレミア企業債券ファンド(為替ヘッジあり)……先進国社債を対象とするアクティブファンド

運用会社…三菱UFJ国際投信
純資産総額……122.24億円
信託報酬……年率0.814%(税込)

世界プレミア企業債券ファンド(為替ヘッジあり)は先進国の社債へ投資するアクティブファンドである。日本を含めた先進国企業の内、グローバルで活躍する優良企業をプレミア企業と定義し、その社債を中心に投資を行う。

投資対象は投資適格債券に限定し、組入上位銘柄は米アマゾンや米シティグループなどの有名企業が並ぶ。先進国の社債を選別し、分散投資ができる面白いアクティブファンドだ。信託報酬も0.814%(税込)とアクティブファンドとしては許容範囲の水準だろう。

6,おすすめの新興国債券ファンド5選

海外債券のうち、新興国債券を対象とする投資信託のおすすめを紹介しよう。信託報酬がインデックスファンドで1.0%以下、アクティブファンドで1.5%以下であり、毎月分配型でない商品からピックアップした。数値情報は2021年3月8日時点のものである。

iFree 新興国債券インデックス……低コストな新興国債券インデックスファンド

運用会社……大和アセットマネジメント
純資産総額……47.75億円
信託報酬……年率0.242%(税込)

iFree 新興国債券インデックスは新興国を投資対象とするインデックスファンドだ。ベンチマークはJPモルガン ガバメント・ボンド・インデックス―エマージング・マーケッツ グローバル ダイバーシファイドと呼ばれる指標である。

ポートフォリオはブラジルや南アフリカ、メキシコといった新興国の国債で構成されている。新興国の債券は情報も得づらく、個人での直接購入は非常にハードルが高い。高い成長期待と利回りが期待できる新興国債券へ投資を行うには、投資信託の枠組みを活用すべきだろう。

同ファンドは信託報酬も0.242%(税込)と新興国債券へ投資を行うインデックスファンドの中でも非常に低い。新興国債券へ投資をする際は真っ先に候補に入れたいファンドだ。

インデックスファンド海外新興国(エマージング)債券(1年決算型)……新興国債券インデックスファンドの老舗

運用会社……日興アセットマネジメント
純資産総額……63.80億円
信託報酬……年率0.374%(税込)

インデックスファンド海外新興国(エマージング)債券(1年決算型)も新興国を投資対象とするインデックスファンドであり、ベンチマークも同様だ。

2008年から運用を行っており、新興国債券インデックスファンドの中でも長い運用期間を誇る。信託報酬も十分低コストの水準であり、新興国債券インデックスファンドでは「iFree 新興国債券インデックス」と双璧をなすファンドだ。

SMT新興国債券インデックス・オープン……運用歴の長いインデックスファンド

運用会社……三井住友トラストアセットマネジメント
純資産総額……73.87億円
信託報酬……年率0.66%(税込)

SMT新興国債券インデックス・オープンも新興国債券を投資対象とするインデックスファンドであり、こちらも同じベンチマークを採用している。

純資産総額は先に紹介した2銘柄よりも大きく、2008年末から運用を開始しており、こちらも運用歴の長い人気のインデックスファンドである。信託報酬はやや高くなるが、新興国債券へ投資を行うインデックスファンドの中では許容範囲の水準だ。

eMAXIS 新興国債券インデックス(為替ヘッジあり)……為替リスクを抑えて新興国債券へ投資

運用会社……三菱UFJ国際投信
純資産総額……7.99億円
信託報酬……年率0.66%(税込)

eMAXIS 新興国債券インデックス(為替ヘッジあり)も新興国を投資対象とするインデックスファンドであり、こちらも同じベンチマークを採用している。

先に紹介したと銘柄との違いは為替ヘッジがついている点だ。新興国通貨は為替リスクも大きくなるが、そのリスクをある程度抑えることができる反面、為替ヘッジのコストが掛かる。また、米ドル建ての新興国債券への投資となるため、ヘッジを掛けないファンドとはポートフォリオが異なるといった特徴もある。為替リスクをなるべく避けたい場合などには選択肢としたいファンドである。

楽天・全世界債券インデックス(為替ヘッジ)ファンド……新興国を含めた全世界の債券へ投資

運用会社……楽天投信投資顧問
純資産総額……2.89億円
信託報酬……年率0.282%(税込)

楽天・全世界債券インデックス(為替ヘッジ)ファンドは新興国債券だけではなく、新興国を含めた全世界の債券に分散投資を行うインデックスファンドである。ブルームバーグ・バークレイズ・グローバル総合浮動調整インデックスと呼ばれる指数がベンチマークであり、世界中の債券に投資を行う。

同ファンドは米バンガード社が運用を行うインデックスファンドへ投資を行うが、その投資対象銘柄数は1万銘柄を超える。さらに、コストも0.282%(税込)と割安であり、低コストで全世界の債券へ分散投資が行える商品だ。債券投資を行いたいが、自身でポートフォリオを作るのが手間だという場合は、これ1本に投資をすることも選択肢の1つだ。

7,おすすめの債券ETF5選

最後に、債券を対象とするETFのおすすめ銘柄を紹介しよう。東京証券取引所に上場するETFを対象とし、信託報酬が0.5%以下のものをピックアップした。数値情報は2021年3月8日時点のものである。

NEXT FUNDS 国内債券・NOMURA-BPI総合連動型上場投信 <2510> ……国内債券のオーソドックスなETF

運用会社……野村アセットマネジメント
純資産総額……77.30億円
信託報酬……年率0.077% or 0.132%(新発10年国債の利回りに応じて変動、税込)

NEXT FUNDS 国内債券・NOMURA-BPI総合連動型上場投信は国内債券を対象とするオーソドックスなETFだ。ベンチマークはNOMURA-BPI総合指数である。

注目すべきはコストの低さであり、新発10年国債の利回りが1.0%未満の場合の信託報酬は0.077%(税込)となる。ETFであるため、売買手数料が別途かかるが、長期保有を前提とすればトータルでも非常に低コストで投資ができる。ポートフォリオは国債などの公共債が9割近くを占めるが、一部社債も組み入れられている。

iシェアーズ・コア 米国債7-10年 ETF <1656> ……米国の中期債に投資をするシンプルなETF

運用会社……ブラックロック・ジャパン
純資産総額……185.40億円
信託報酬……年率0.154%(税込)

iシェアーズ・コア 米国債7-10年 ETFは残存期間が7年以上10年未満の米国債を対象とするETFだ。ベンチマークはFTSE米国債7-10年セレクト・インデックスである。

中期の米国債のみを主要な投資対象とするシンプルな設計ではあるが、コストも低く、分かりやすく投資を行える商品だ。外国債券を始める際にリスクを最小限に抑えるにはこうした商品で投資を始めてみてもよいだろう。

NEXT FUNDS 外国債券・FTSE世界国債インデックス(除く日本・為替ヘッジなし)連動型上場投信 <2511> ……先進国国債へ分散投資を行うETF

運用会社……野村アセットマネジメント
純資産総額……112.00億円
信託報酬……年率0.132%(税込)

NEXT FUNDS 外国債券・FTSE世界国債インデックス(除く日本・為替ヘッジなし)連動型上場投信はベンチマークをFTSE世界国債インデックス(除く日本)とするETFだ。

投資対象は先進国の国債が中心となり、米国債が4割程度を占める。コストも低く、ポートフォリオの安定に貢献しうる商品だ。

iシェアーズ 米ドル建て投資適格社債 ETF(為替ヘッジあり) <1496> ……先進国の社債へ分散投資

運用会社……ブラックロック・ジャパン
純資産総額……214.34億円
信託報酬……年率0.308%(税込)

iシェアーズ 米ドル建て投資適格社債 ETF(為替ヘッジあり)は米ドル建ての投資適格社債を投資対象とするETFであり、ベンチマークはMarkit iBoxx 米ドル建てリキッド投資適格指数と呼ばれるものである。

先進国の社債へコストを低く抑えた分散投資が可能である。為替ヘッジがついているため、為替リスクも抑えられている。

NEXT FUNDS 新興国債券・J.P.モルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(為替ヘッジなし)連動型上場投信 <2519> ……低コストで新興国債券へ投資ができるETF

運用会社……野村アセットマネジメント
純資産総額……6.9億円
信託報酬……年率0.209%(税込)

NEXT FUNDS 新興国債券・J.P.モルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(為替ヘッジなし)連動型上場投信は新興国債券を対象としたETFであり、ベンチマークはJ.P.モルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラスと呼ばれる指数である。

投資銘柄は新興国の国債が中心であり、為替ヘッジをかけずに運用を行っている。信託報酬が0.209%(税込)と非常に低く、低コストで新興国債券に投資ができる点に強みがある。

8,債券に投資する際の注意点

債券に投資をする際の注意点を2つ紹介しよう。

発行体の信用リスクには要注意

債券は発行体が破綻してしまった場合、投資金額を回収できなくなってしまう。債券にとって発行体の信用リスクは非常に重要な要素であり、投資を行う際には十分に注意を払わなければならない。

発行体の信用リスクは自身で発行体の財務諸表などを見る方法もあるが、格付会社が出している信用格付も参考になる。格付が投資適格以下の債券や格付の引き下げがあった債券はその動向に十分注意する必要がある。

金利動向で債券価格は大きく変化する

債券は金利動向に大きな影響を受ける。債券の利回りは市場の金利水準が基準となって決められるが、その金利水準が変動すれば、債券は大きな影響を受ける。特に既に発行されている債券の場合、利率を変更することができないため、金利が上がればその分価格が下がることで利回りが調整されることとなる。

満期まで保有する場合には、いくら市場の金利が上昇しようが、満期になれば約束された金利が支払われ、額面金額は返済される。一方で、途中売却を行う場合には、金利水準により価格は大きな影響を受けるため、慎重な判断が必要となる。投資信託やETFを通じて購入する場合も、その基準価額は金利変動の影響を受けるため、注意が必要だ。

債券へ投資を行う場合、少なくとも市場の金利上昇は債券価格の下落、市場の金利下落は債券価格の上昇という仕組みは覚えておくべきだろう。

9,債券投資でもリスク分散を意識して投資を行いたい

債券は直接投資が最も理想的な形だが、個人が直接投資を行うには、銘柄が限られたり、多くの資金が必要となるなどの制約がある。投資信託やETFという枠組みを活用することで、債券でも小口分散投資が可能となる。

直接投資であれば、満期まで保有していれば損をすることはほとんどないという感覚で投資ができるが、投資信託だと時価の変動にも目を配らなければならない。もちろん債券はそもそもリスクの低い資産であるが、債券投資においても、極力銘柄や投資対象、地域の分散を行い、リスクをさらに低減させるように心掛けたい。また、債券は株式と逆の値動きを行うことも多いため、ポートフォリオを全て債券に固めるのではなく、一部を株式とするなどの対策も有効だ。

樋口壮一
執筆・樋口壮一
新卒で証券会社に入社後、10年間リテール営業、ホールセール営業を経験。現在は事業会社の営業企画部門に努める傍ら、個人として投資を行い、マーケットに携わる。AFP
新卒で証券会社に入社後、10年間リテール営業、ホールセール営業を経験。現在は事業会社の営業企画部門に努める傍ら、個人として投資を行い、マーケットに携わる。AFP

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