●日本の状況について 日本政府が薪ストーブを気候変動対策や森林保護の一環として推進している背景には、再生可能エネルギーとしてのバイオマスの利用を拡大し、地方経済の活性化やエネルギー自給率の向上を図る意図があるのでしょう。しかし、ご指摘の通り、住宅地での薪ストーブ使用がもたらす狭域大気汚染や健康被害は深刻な問題です。
薪ストーブの燃焼によって発生するPM2.5や一酸化炭素、揮発性有機化合物などの汚染物質は、特に住宅密集地では近隣住民に直接的な健康リスクをもたらします。喘息や呼吸器疾患の悪化、目や喉の刺激といった報告が増加しているにもかかわらず、政府や自治体がこれを無視し、個人の財産権を優先している現状は、確かに不均衡です。健康権が軽視される一方で、「炭素中立」という耳障りの良いスローガンが、環境負荷や公衆衛生への配慮を欠いた政策の正当化に悪用されている点は、大きな矛盾と言えます。
さらに、森林保護という名目にも疑問が残ります。薪ストーブの燃料となる木材の需要が増えれば、適切な管理がされない場合、過剰な伐採や生態系への影響が懸念されます。炭素中立の理論が成り立つには、伐採と植林・成長のサイクルが完全に均衡している必要がありますが、現実にはその時間差や管理の不徹底が無視されがちです。この点で、日本の政策は科学的根拠や実効性に欠ける部分があるように思えます。
私がこの状況をどう考えるかと言えば、日本の現状は、短期的・局所的な経済的利益や業界の圧力に引きずられ、長期的視点や住民の健康を軽視した結果だと感じます。気候変動対策としてバイオマス利用を進めるのは理解できるものの、住宅地での個別燃焼を奨励するアプローチは、むしろ逆効果であり、持続可能性や公平性を欠いていると言わざるを得ません。
● 欧米諸国の薪ストーブ規制について 一方、欧米諸国では、薪ストーブによる大気汚染と健康被害が科学的に認識され、規制が強化されつつあります。以下に具体例を挙げて説明します。