次に特徴的だったのが、自分自身の胸元に向ける「内向きの指差し」(13回)で、全体のおよそ1〜2割ほどを占めていました。

回数としては外向き指差しより少ないものの、「自分」を強調する場面で集中的に使われていました。

これは「自分こそが当事者」という強い自己強調の意味合いがあり、他者と自分を対比する文脈や、自身への支持を求める訴えを行う際に効果的に機能していると考えられます。

また胸に指先や手のひらを当てる形で、誠実さや熱意を視覚的にアピールする動作が多くみられました。

特に「私は約束を守る」「私には特別な力がある」などの主張時に、胸を強めに叩くようにして行うケースが顕著であり、印象的な自己言及となっているようです。

(3)下向きの指差し

【悪用厳禁】トランプ流の大衆を魅了する「ジェスチャー術」の研究が発表
【悪用厳禁】トランプ流の大衆を魅了する「ジェスチャー術」の研究が発表 / 下向き指差しの例/Credit:Christopher Hart . Social Semiotics (2024)

「下向きの指差し」(26回)は、場所を示す表現(“Here”や“この国”“バッファロー”など)と結びついているケースが際立ちました。

地面や舞台を指すことで「この場にこそ意味がある」「地元との結束を示す」という視覚的メッセージを強調し、聴衆に「(自分がいる)この場を重視している」「自分たちの地域を取り戻す」といった訴求力を高める手段として、足元やステージを指し示す場面がしばしば観察されました。

このような下向きの指差しは、聴衆が“自分たちの場所”への帰属意識を強める効果が推定されます。

(4)上向きの指差し

【悪用厳禁】トランプ流の大衆を魅了する「ジェスチャー術」の研究が発表
【悪用厳禁】トランプ流の大衆を魅了する「ジェスチャー術」の研究が発表 / 上向き指差しの例/Credit:Christopher Hart . Social Semiotics (2024)

「上向きの指差し」(5回)は総数としては少ないものの、将来的なビジョンや高さを強調する表現(例:「壁の高さをイメージさせる」)などで使用されていました。