集会の興奮が高まる中、聴衆の注意を“上へ”向けることで、壮大なイメージや大きな目標を示す意図が見られます。

他にも「大きな構想」「未来」「天を仰ぐようなモチーフ」など、やや抽象性の高い話題を扱う際に現れることが多くなっていました。

(5)複雑な指差し動作

【悪用厳禁】トランプ流の大衆を魅了する「ジェスチャー術」の研究が発表
【悪用厳禁】トランプ流の大衆を魅了する「ジェスチャー術」の研究が発表 / コイル指差しの例/Credit:Christopher Hart . Social Semiotics (2024)

前述のようなシンプルな方向指差しに加え、約22%を占める“複雑な指差し”も注目すべき要素として報告されています。

具体的には、ホッピング(指を連続的に移動させる動き)やコイル(円を描くように手を回転させつつ指差す動き)といったバリエーションがありました。

ホッピングは数字や時系列を強調したい場面で特に使われ、左から右への順序立った指差しによって、過去から未来へ、または小さい数から大きい数へと変化するイメージを明確に示唆していました。

またコイルは、繰り返しの強調や「私たち(We)」を包み込むような包括感を表す際に使用され、発話のダイナミックな盛り上がりとシンクロしていました。

(6)会場の反応

他にも映像を通して、会場での聴衆の反応や雰囲気との関連も、いくつか興味深いパターンが見受けられました。

もっとも興味深いのは拍手・歓声との同調です。

トランプ氏が「あなたたち」と呼びかけながら外向きに指を振りかざすとき、聴衆の歓声や拍手が一斉に高まる場面が多く観察されました。

これにより、演説者との一体感が形成され、会場全体が連帯する空気が作り出されると推定されます。

また時折、特定の聴衆をピンポイントに指差しながら微笑む、あるいはうなずくという動作が捉えられ、聴衆との“対面コミュニケーション”を強く演出する役割を果たしているようです。

こうした瞬間には拍手や笑い声が起こることもあり、軽快な“ショー的”な要素として機能している可能性があります。