投資信託は値動きのある金融商品であり、リスクがあるのは当然だ。しかし、気を付けるべきポイントを守っていれば、大損を出す可能性を低くできる。投資信託で大損を出してしまう共通のパターンを知り、同じ失敗をしないように気を付けたい。
目次
1.大損を出してしまう7つのパターン
2.大損を出してしまった場合の対処法
3.投資信託の売却ルールを明確に
1.投資信託で大損を出してしまう7つのケース
投資信託で大損を出してしまうケースとして、主に次の7つが考えられる。
⑴一つの投資信託だけに投資をしている
資金を一つの商品に投資するということは、その商品の値動きに自分の資産をすべて委ねることとなる。ギャンブルに近い投資とも言えるだろう。こうした投資をしている人は大損を出す可能性が高くなる。
投資の基本は分散投資だ。「卵は一つのカゴに盛るな」という投資格言もあるように、1つのカゴに盛った卵はそのカゴを落としたときに全て割れてしまう。しかし複数のカゴに分けて卵を盛れば、1つのカゴを落としても、他のカゴの卵は無事だ。
日本株の投資信託だけに投資をしていれば、日本株の下落局面では影響を受けてしまう。
一方で日本株の投資信託だけでなく、海外株などの投資信託にも投資をしていれば、保有資産が受ける影響は軽減される可能性がある。さらに債券やREITといった資産の分散も行っていれば、特定資産の下落が保有資産に与える影響もさらに小さくなる。
⑵短期での利益を追求した投資をしている
短期での利益を追求する人も大損を出してしまいやすい。
少し荒い表現であるが多くの投資信託は商品の性質上、短期では儲かりにくい仕組みになっている。
投資信託は複数の銘柄や資産に投資をしており、1つの商品で分散投資が行われている。例えば、日経平均株価に連動する投資信託は日経平均株価を構成する225銘柄全てに投資をしている。
1つの銘柄が大きく上昇しても、投資信託全体に与える影響は限られる。投資信託は商品の中での分散投資がなされているため、個別株を購入する場合と比べれば、値動きは多少緩やかになる。
投資信託はこのような特徴を持つ商品であり、長期投資が前提となっている商品が多い。投資信託で短期での利益を追求すると、短期での値上がりを重視するために過度なリスクを取ることになる。
投資信託で大損を出さないために、投資信託へ投資をする際は、長期投資を視野に入れて挑む必要がある。
⑶高値でまとめて投資をしてしまっている
投資の大原則は安い価格で購入し、高い価格で売却することだ。投資信託で大損をするパターンとして、高い価格でまとめて投資していることが原因の場合がある。
もちろん投資の世界は予測が難しいので、安い価格を狙って資金を投入するのは至難の業だ。
しかし、購入時期を分散させることにより、購入価格を平準化させ、高値掴みを避けられる。いわゆる「ドルコスト平均法」という手法であり、定期的かつ継続的に一定金額の購入により、購入価格の平準化を図る。このような買い方を実践すると、価格が高い時には少ない口数、低い時には多くの口数を購入し、購入価格は平準化される。
投資信託で大損を出してしまう人は、相場が上昇したことで慌てて資金を全額投入してしまい、結果的に高値掴みとなるケースも多い。
いきなり資金を全額投入するのではなく、焦らず分散して購入するように心掛ければ、大損を出してしまう可能性も下げられる。
⑷コストの高い投資信託を運用している
投資信託で大損を出してしまうパターンとして、コストの高い投資信託に投資をしてしまい、コスト倒れとなるパターンもある。
投資信託には主に以下の3つのコストが掛かる。
- 購入時の手数料
- 売却時の手数料(信託財産留保額など)
運用期間中に発生する「信託報酬」と呼ばれる運用管理費用
購入時と売却時の手数料もなるべくコストの低い投資信託を選択すべきだ。大損を出さないようにするには、特に信託報酬に気を付けたい。
信託報酬は投資信託の運用期間中に発生するコストである。資産が値下がりしている局面においても信託報酬は常に発生する。信託報酬の高い商品は、資産が値下がりして売却できない中で高い信託報酬を払い続けることとなり、結果として大損を出してしまう可能性がある。
信託報酬については、投資する資産クラスや商品の種類によって異なるが、インデックスファンドでは0.5%(海外資産が対象の場合は0.75%)、アクティブファンドでは1.0%(海外資産が対象の場合は1.5%)以内に抑えて商品選択することを目安としたい。
もちろん購入時と売却時の手数料についても、今は無料の商品が多いためなるべくそうした商品を選びたい。
投資信託で大損を出さないためには購入前に目論見書を確認し、コスト意識を持つことが重要だ。
⑸毎月分配型の投資信託に投資をしている
毎月分配型の投資信託も大損を出してしまう可能性があるので注意したい。毎月分配型には主に2つの問題点がある。
・損益計算が分かりにくい
投資信託の損益計算は投資資産の増減と受け取った分配金をトータルして計算する必要がある。毎月分配型も同じ計算方法だが、特別分配金という計算をややこしくしてしまう要素がある。
特別分配金とは利益が出ていない時に元本を取り崩して支払われる分配金のことだ。毎月分配型の投資信託は、毎月の分配金を一定にすることを重視するため特別分配金が支払われる場合がある。
特別分配金は投資元本の払い戻しに当たるため、利益ではないが受け取った分配金の全てが利益であると勘違いする人も多い。また、特別分配金が出た分だけ投資元本が取り崩され、損益計算も通常より複雑になる。
このように毎月分配型は損益計算が複雑であり、気付かぬ内に損失が広がってしまうことも多い。
・毎月分配型という仕組み自体が高コストにつながる
毎月分配型の投資信託は毎月決算を行う必要があり、その分コストが余計にかかる。
また毎月の分配金を担保するために、ハイリスクハイリターンの商品への投資や複雑な仕組みを組み入れた投資をしているケースもある。
毎月分配型という仕組み自体が、高コスト、ハイリスクハイリターンな投資を前提としており、大損を出す可能性も高くなる。
⑹値下がりしたらすぐに売却し別の投資信託に乗り換えている
運用している投資信託が値下がりしたらすぐに別の商品に乗り換えてしまう人も、大損を出す可能性が高い。
商品の乗り換えは、保有商品の売却と別の商品の購入をすることだ。保有商品の売却手数料(信託財産留保額など)や新しい購入商品の手数料がその都度発生し、コスト面で大きなデメリットとなる。
ただし今は購入時や売却時の手数料が無料の商品も多いため、その場合はコスト面でのデメリットはない。
投資信託をすぐに乗り換えてしまう人は値下がりした分を取り返そうと、よりハイリスクな投資信託へ乗り換えるケースも多い。そうした考えも大損につながってしまいかねない。大損を出さないために、投資信託の乗り換えは慎重に検討すべきだ。
⑺よく理解していない投資信託に投資をしている
「金融機関の担当者におすすめされた」「ネットで人気だった」などの理由で、自分でよく調べないまま投資信託を購入した人もいるだろう。
よく分からない投資信託に投資することは商品のリスクも分からず、また適切な売却タイミングの判断もできないということだ。保有し続けた結果、大損を出してしまうということになりかねない。
商品を購入する際は商品の全てを知る必要はないものの、目論見書などを読み次の点を理解した上で購入をしたい。
- インデックスファンドかアクティブファンドか
- 投資対象資産は何か
- コストはどの程度か
- 為替ヘッジの有無
- デリバティブなどの複雑な仕組みがないか
2.投資信託で大損を出してしまった場合の対処法
投資信託で大損を出してしまった場合は、大損の原因を考えた上で打つ手を選ぶ必要がある。
原因が自分自身や保有資産にある場合——投資信託の売却を検討
自分の身の丈に合わない過度なリスクを取ってしまったり、コストの高い商品に投資をしてしまったりした場合は、大損を覚悟で投資信託を売却したほうがいいかもしれない。
保有する投資信託が自身の投資目的と合致していないため、このまま保有を続けると損失が拡大する可能性もある。投資目的を明確にし、それに沿った投資信託を保有する必要がある。
原因が相場にある場合——状況をみて保有資産の保有か売却かを検討
大損の原因が相場にある場合は、非常に判断が難しい。いくらコストが低い投資信託へ投資をしたり、購入時期の分散を心掛けたりしても、投資資産の相場が崩れた場合は投資信託も影響を受けてしまう。
相場が崩れた場合は、相場が回復する可能性があるのかを冷静に分析する必要がある。相場の下落が一時的と判断できる場合には、投資信託の保有を続けていいだろう。
一方で先行きが読めない場合は、大損を一気に出してしまうことをためらう人も多いだろう。その場合、保有資産の半分だけを売却するなど、保有資産のリスクを下げつつ様子を見るという選択肢もある。
保有資産が特定の相場の影響を大きく受けない様に、事前に分散投資をしておくことも重要だ。もし1つの投資信託に投資をしていて大損を出してしまった場合には、そこから分散投資を始めてもいい。
今の投資信託を多少残しつつ、別の投資信託も保有することで、回復した場合にも一定の恩恵を受けられ、さらなる下落局面では影響を軽減できるはずだ。
3.投資信託で大損を出さないためには売却ルールを明確に
投資信託で大損を出さないために、大損を出す前に売却するルールを作る方法を簡単に紹介しよう。いわゆる「損切りライン」を自ら設定して、それに沿って運用する方法である。自身の決めた損切りライン以上の大損を出すことを強制的に防げる。
損切りラインは自身が許容できる損失最大額によって異なる。投資初心者なら2割から3割の下落を損切りラインの目安としてみるのがいいだろう。損切りラインが浅すぎると頻繁に売却するため、ある程度まで深めに設定する必要がある。
損切りラインを設定することで、予想外の損失を防げるだけでなく、損切りを行ったタイミングで投資の見直しや反省もできる。
「売りは芸術」という投資格言にもあるように、プロの投資家でも売却のタイミングは非常に難しい。売却ルールに基づいた投資によって、大損を機械的に回避させ、リバランスのきっかけにしたい。
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