第4位 呉健雄(ご・けんゆう)「パリティの非保存」
第二次世界大戦中、中国系アメリカ人の物理学者であった呉健雄(1912-1997)は、原子爆弾の開発を目的とした極秘プロジェクト「マンハッタン計画」に参加していました。
そこで彼女は、ウラン燃料の濃縮手法を研究をし、戦争が終わってからも、コロンビア大学で、2人の男性の同僚と研究を続けました。
そして、「パリティ対称性の破れ」と呼ばれる物理現象を初めて実験的に実証したのです。
通常の物理現象は、空間反転(たとえば、鏡に映したとき)しても変わらないように見えます。
このように、空間反転した状態と元の状態で物理法則が変わらないことを「パリティ対称性がある、パリティが保存されている」と言います。
物体に働く力は、重力相互作用・電磁相互作用・強い相互作用・弱い相互作用の4つです。
彼女は、このうち弱い相互作用が働いた物理現象でのみ、パリティ対称性の破れが生じることを発見しました。
肉眼で見えるのは、重力相互作用・電磁相互作用のみなので、長い間、すべての物理法則でパリティ対称性が保存されていると考えられていたのです。
これは物理学の大きな功績でしたが、ノーベル物理学賞は、同僚の男性2人に送られています。
第3位 リーゼ・マイトナー「核分裂」
リーゼ・マイトナー(1878-1968)は、オーストリアの物理学者で、放射線・核物理学の研究を行いました。
彼女は化学者のオットー・ハーン(1879-1968)とタッグを組み、30年以上にわたって共同研究を続けています。
2人の手法は、まずハーンが実験を行い、彼女がその理論を証明するというものでした。
その中で、2人は「核分裂反応」を発見。20世紀半ばに原子爆弾を作るための基礎となりました。
ところが、彼女が生涯をかけて研究した成果は、ハーンだけが認められることになったのです。
ハーンは、原子核分裂を発見した功績で、1944年にノーベル化学賞を受賞しています。
彼女が認められなかった理由は2つあります。
1つは、彼女がユダヤ人であったこと(当時、ドイツではヒトラーが権力を握っていた時代)。
もう1つは、当時の核物理学の分野では、女性の存在が一般的でなかったことです。
そのため、ハーンは2人の研究成果を発表する際、必ず彼女の名前を論文から削除していました。