人があとから“有名な星座をこじつけて当てはめている”可能性や、点の並びが偶然そう見えるだけかもしれないという疑いも常につきまとってきました。
「世界最古の星図」に存在しない星が描かれていた可能性がある / 石板に刻まれた模様(ノミ痕)が本当に星座を表しているかを検証するために、実際の星空と重ね合わせて比べた図です。ここで描かれているのは「さそり座の尾」の部分です。水色で示された円が石板上の刻印を表し、その位置や並び方が実際の星座と一致するかを調べています。 この比較に使われた星空の画像は、天体シミュレーションソフト『Stellarium』によって作られています。実際に星座が見える位置や大きさに合うように、研究者が手作業で星図のサイズや角度を調整しています。こうした調整を行った結果、石板の刻印(特に1〜9番)が、さそり座の尾にあたる部分の星々と驚くほどよく一致しました。刻印の大きさは約7mmで、これは夜空の約1度分に相当します。 特に深く刻まれた1番の刻印は、さそり座で最も明るい星アンタレス(Antares)に対応しており、位置も非常に近くなっています。さらに、刻印の並び方はアンタレスから順番に星座の尾の方向に伸びており、全体のパターンが非常に自然であることが確認されました。 一方、右上の方に赤色で示された21〜23番の刻印は、この星座のどの星とも一致していません。これはさそり座とは別の星団(プレアデス星団)の一部として別の図で議論されています。
そんななか、今回のルピンピッコロ石板研究が特に注目されるのは、刻み跡の位置を実際の星座の位置と統計的に比較する手法が使われ、その結果、これまでの“象徴や神話的表現”だけと見る考えでは説明が難しいほど偶然ではない一致が確認されたことです。
具体的には、刻みの直径やスケールを調べた結果、相関係数がおよそ0.98〜0.99という高い数値が出ており、偶然の配置である可能性が非常に低いとされます。