今後、この石盤の研究を進めるためには、いくつかの重要な取り組みが期待されています。

まず、同じ時代や地域にある他の遺跡を詳しく調査して、似たような星図や刻み跡がある石がないかを探し、それらを比較することで、この石盤の意味をよりはっきりさせることが望まれます。

また、発掘の記録や土壌の分析、放射性炭素年代測定など、さまざまな科学的手法を用いて石盤の正確な制作年代を絞り込むことも重要です。

さらに、現代のX線や電波望遠鏡を使った詳細な観測や、古い写真や記録との比較を通じて、「現在は見えない星」や「失われた星の刻み跡」の痕跡を探す研究も進められるでしょう。

また、この石盤が使われていた時代の地平線の見え方や気候、星の出入り(ヘリアカル・ライズ)といった季節を知るための実用性についても詳しく調べていくことで、石盤が単なる装飾ではなく、当時の人々が農作業や季節を知るための大切な道具として使っていた可能性も確認できるかもしれません。

研究を行った著者たち自身も、現時点ではまだ解釈に不確かさが残ることを認めており、「さらなる証拠を集めること、他の地域での同様の発見や、いろいろな学問分野からの検証や議論が必要だ」と述べています。

この発見が、私たちが考える「人類が天文観測を始めたきっかけ」を見直すきっかけになったことは確かですが、この石盤が本当にどのような意味を持つのかを明らかにするためには、まだまだ多くの検証と研究が必要なのです。

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元論文

Possible stellar asterisms carved on a protohistoric stone
https://doi.org/10.1002/asna.20220108

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。