また刻み跡の深さや角度、刻みの方向性から、同種の工具で、少人数(同一人物を含む)の連続作業だった可能性が考えられます。
ノミ痕の配置は偶然とは考えにくいほど整合性が高く、統計分析で偶然の配置である可能性は非常に低いという結果が得られています。
この石は、星座や季節の変化を追う道具、つまり暦や農耕の時期を知るための観察記録として使われていた可能性も指摘されています。
オリオンのそばに刻まれた“何か”

古代の人類が「星空をどう認識し、どのように記録してきたか」は、考古学と天文学が交わる大きな問いです。
世界中で発見される刻みや線、象徴的な図形、神話化された星座絵などは、星や天体への興味が文明の初期からあったことを示しています。
けれども、それらの多くは装飾的だったり宗教的な意味を込められていたりして、本当に夜空での星の“正しい位置”を写そうという意図だったかを、科学的に証明できる例はめったにありません。
たとえば、世界最古級とされるドイツのネブラ・ディスク(紀元前1600年頃)は、青銅板に金で太陽・月・星団が描かれており、古代に天文的知識があったことを教えてくれます。
しかしこのネブラ・ディスクについても、描かれた星や図形と本物の星空の位置がどのくらい一致するかについては、研究者のあいだでまだ意見が分かれています。
加えて、多くの遺物では、星の数や位置が風化や損傷であいまいになっていたり、図柄に神話的・装飾的な意図が強く含まれていたりする点も指摘されています。