こうした背景を踏まえて、この研究グループはとても重要な疑問を投げかけました。
それは、「学生の授業評価にも、本当に性別による偏見(バイアス)が存在するのか?」という問いです。
もし教授の話す内容や授業が全く同じであれば、本来、評価は性別に関係なく同じになるはずですよね。
そこで研究チームは、ある実験を考えました。
具体的には、講義の内容や説明をまったく同じにした上で、教授の性別だけを変えて学生に評価をしてもらうという方法です。
こうすれば、評価に現れた差は教授の性別によるものだとはっきり分かります。
この実験の目的は、大学という教育現場にひそむ、性別による無意識の偏見を目に見える形で示すことでした。
またそれを通して、「学問の世界で女性が不当に低く評価されやすい」という問題を明らかにしようとしたのです。
先生の性別が違うと同じ内容でも評価に差が出る

研究チームは、イタリアの大学で哲学を専攻している学生約190人を対象に、二段階の実験を行いました(Study 1は95人、Study 2は92人)。
まず最初の実験(Study 1)では、「授業の評価に教授の性別は影響するのか?」という疑問を検証しました。
この疑問をはっきり確かめるためには、「性別以外の条件をすべて同じにすること」がとても大切です。
そこで研究者たちは、全く同じ内容の講義テキストを用意し、それに架空の教授名をつける方法を取りました。
ここで使った名前は、「男性教授の名前」と「女性教授の名前」の2つのタイプを準備しましたが、実際の講義内容はまったく同じです。
こうすることで、「学生がつける評価に差が生じた場合、その理由は教授の性別によるもの」とはっきり分かるわけです。