大学でも、学生が授業の後にアンケートを記入して、授業の分かりやすさや先生の教え方を評価する制度があります。
これは「学生による授業評価(Student Evaluation of Teaching、SET)」と呼ばれていて、大学が先生の教え方を改善したり、先生自身の評価や昇進を考えるための大切な材料になっています。
ところが、以前から研究者たちの間では、この制度についてちょっとした疑問が囁かれていました。
それは、「学生が行う評価は、本当に公平で正しいものなのだろうか?」という疑問です。
学生も人間ですから、評価するときにはどうしても自分自身の無意識の考え方や偏見が入り込んでしまう可能性があるからです。
例えば、皆さんがある人物の書いた文章や作品を見るとき、その人の名前が「男性の名前」か「女性の名前」かによって、知らず知らずのうちに評価が変わってしまうことがあります。
実際に過去の研究では、まったく同じ内容の履歴書でも、名前を「男性名」にしたほうが、「女性名」のものより高く評価されるという結果が出ています。
つまり、性別が違うだけで「良い」「悪い」という判断の基準が微妙にズレてしまうことがあるのです。
こうした現象は「ダブルスタンダード(二重基準)」と呼ばれていて、実は社会のあちこちで見られる現象なのです。
大学教授という職業は、長い歴史の中で男性が中心的な役割を果たしてきました。
特に哲学という学問の世界は、その傾向が強い分野の一つです。
哲学は世界中で男性が圧倒的に多く、教授というと男性をイメージする人もまだまだ多いかもしれません。
実際にイタリアの大学では、哲学科の正教授のうち女性はたった約28%しかいないという調査結果もあります。
こうした男性中心の状況が、「哲学は男性に向いている」という固定観念をさらに強め、女性教授が正当に評価されにくい状況を作り出している可能性があるのです。