この実験で、学生たちは教授がどのくらい「分かりやすく説明しているか(明瞭さ)」「内容が興味深いか」「教授が有能だと感じるか」「自信を持って説明しているか」「内容から得られる学びは多いか(便益)」「学生への思いやりや配慮があるか」、そして「自分がその先生の授業を実際に受けたいと思うか(受講意欲)」という7つの項目について評価しました。

評価は「1(全く当てはまらない)」から「7(非常によく当てはまる)」までの7段階評価です。

その結果、教授の性別を「名前」だけで示した条件では、男性学生に明らかな性別による偏り(バイアス)が現れました。

具体的には、男性学生たちは男性教授の名前が書かれた講義を、「わかりやすい」「興味深い」「有能である」「自信がある」「学びが多い」といった多くの重要項目で高く評価しました。

一方、女性教授名が書かれた講義に対する評価は、それらの項目で明らかに低くなりました。

ただし、「学生への配慮や思いやり」の項目だけは女性教授の方が高く評価されました。

女性の学生たちは、男性学生ほど性別による大きな偏りを示さず、ほとんどの項目で性別による評価は有意な差に達していませんでした。

しかし、「この教授の授業を本当に受けたいかどうか」という、自分自身の行動に関わる評価(受講意欲)の場合には、女性学生であっても男性教授を選ぶ傾向が見られました。

これはつまり、「頭では公平に評価しようとしても、自分自身の行動や選択に関しては無意識の偏見が影響を及ぼしてしまった」可能性を示しているのです。

次の実験(Study 2)では、より現実に近い条件で検証するため、講義内容を文章ではなく、音声で学生に聞かせました。

内容自体は先ほどと全く同じですが、今度は実際に男女の声を使って録音したものを学生に聞いてもらったのです。

声はその人が男性か女性かを強く印象付ける要素ですから、この方法を使えば性別による影響がよりはっきりと現れる可能性があります。