ただし、データの住所が見つかった後、実際にDNAを取り出して情報を再生するための化学処理にはさらに数十分の時間が必要となります。
さらに研究チームは、このDNAテープのデータを管理するための専用の装置「DNAテープドライブ」も開発しました。
この装置は、見た目は昔のビデオテープレコーダーやカセットデッキに似ています。
カセットの形をしたDNAテープをセットすると、自動でテープを巻き取りながら指定したバーコード区画まで移動し、その場所で必要な化学処理を行い、DNAからデータを読み出す仕組みです。
逆に、新しいDNAファイルを書き込む操作も画面をタッチするだけで自動的に行われます。
DNAのデータ回収には約25分、さらに新しく書き込みを加えると全部で約50分ほどの時間がかかります。
研究チームは、この新しい技術を実際に試すために、1枚の画像データを4つのパズルのピースのように分割しました。
それぞれのピースを個別にDNAの情報に変換し、DNAテープ上の異なる4つの場所に保存したのです。
そして、DNAテープドライブに指示を与えて、この4つに分割した画像のピースデータを順番に取り出し、それらを再び元通りの1枚の画像に復元する実験を行いました。
結果は見事成功し、この一連の作業は約50分で終了しました。
この実験は、DNAテープとドライブ装置が正確かつ安定して動作し、実際にデータを保存して取り出せることを証明する重要な結果となりました。
さらに、研究チームはDNAに保存したデータを数百年以上という長期間にわたって安定して保つための工夫も行いました。
それが「ZIF(結晶性保護層)」という特殊な結晶コーティング(クリスタルアーマー)です。
DNAを塗布したテープ全体を特殊な溶液に浸すと、「金属有機構造体(ZIF)」と呼ばれるナノサイズの小さな結晶が、DNAの表面を鎧のように覆います。