その薄いテープの表面には、スーパーやコンビニの商品にも貼られているような「バーコード模様」を特別な方法で印刷しました。

しかし、このバーコードは単なる印刷ではありません。

このバーコードの白い部分(スペース)は、水分を吸収しやすい「親水性」という性質を持っています。

反対に黒い部分(バー)は、水分をはじく「撥水性」の性質を持っていて、隣の白い部分との仕切りの役割を果たします。

こうしてテープの表面は、バーコードによって細かく仕切られた、何十万もの小さな「データ保存場所(パーティション)」に区切られました。

これらの区画には、それぞれに固有のバーコードがついており、これがデータを探す時に必要な「住所」の役割を果たします。

では実際に、このテープにどのようにデジタルデータを保存するのでしょうか?

例えば、文章や写真、音楽ファイルなどのデジタルデータは、実は「0」と「1」という数字の組み合わせで作られています。

これをまず、DNAを構成する4つの文字「A・T・C・G」の組み合わせに変換します。

これはあたかも日本語を英語に翻訳するような作業です。

その変換した情報をもとに、実験室で合成したDNA分子を小さな液滴に混ぜ、その液滴をバーコードの白いスペース部分に慎重に染み込ませます。

こうすることで、DNA分子がテープに固定され、情報が書き込まれるのです。

ここでひとつ問題が生まれます。

もしもテープに保存した情報を後で読み出したいと思ったとき、一体どうやってその情報を探せばよいのでしょう?

そこで活躍するのが先ほど登場した「バーコード」です。

DNAテープの各バーコードは、本棚の本の背表紙や図書館の蔵書番号のような役割を果たします。

つまり、バーコードをスキャナーで読み取ることで、自分が探しているファイルの場所(住所)を素早く見つけられる仕組みになっています。

実際にこの仕組みを使うと、1秒間に最大1570個のデータ区画の住所を特定することが可能です。