この結晶の保護層は、DNAが壊れたり分解したりするのを防いでくれる役割を果たします。
この方法により、室温の環境では約345年間、さらに気温が低い寒冷地では約2万年という、非常に長い期間にわたりデータを安定して保てることが示されています。
しかも、この保護層は特殊な酸性の溶液を使えば約15秒という短い時間で簡単に溶かして除去でき、その後、再び約10分ほどで元の状態に戻すことも可能です。
まるで、大切な宝物を取り出すときだけ素早く開けられる、頑丈で便利な宝箱のようなイメージです。
最後に、このDNAテープが持つ驚異的なデータ容量について触れておきましょう。
研究チームは実験で、テープ上の1つの区画に約156キロバイトの画像データを実際に保存し、取り出すことに成功しました。
この実験結果から計算すると、DNAテープ1キロメートルあたりの実際のデータ容量を概算すると約74.7ギガバイト(GB)になることがわかりました。
これでもかなり大きな容量ですが、さらに理論的な最大限の能力を引き出すことができれば、1キロメートルあたり最大362ペタバイト(PB)もの情報を記録できる可能性があります。
この容量をもう少し具体的に言えば、100メートルのテープに換算すると約36ペタバイト(=36,000テラバイト)となります。
一般的なカセットテープが70~180mであることを考えると100mは中間的な長さになります。
また1曲を10メガバイト(MB)と仮定すると、36ペタバイトは約36億曲分に相当します。
全世界の録音された楽曲数が約1億~2億曲規模(最大級のストリーミングサービスで1億曲ほど)であると言われていることから、このDNAテープは理論上、たった100mで世界中で作られたすべての音楽を保存してもまだ十分余裕があるほどの容量を持っていると言えるでしょう。
DNAカセットテープが変える世界—巨大データ時代を支える新技術とは?
