この技術が実用化されれば、「究極のタイムカプセル」としてデジタル社会のバックアップやアーカイブのあり方が大きく変わる可能性があります。

現時点ではDNAの合成や読み取りに時間と費用がかかりますが、将来的には大規模なDNAデータ保存が実現できると期待されています。

DNAカセットテープの利点は、エネルギーを使わず超長期間データを保管できる点です。

現在の巨大データセンターでは膨大な電力を消費していますが、DNAテープに書き込んで保管しておく場合、データを維持するための電力はほぼ必要ありません。

装置も小型のカセットとドライブだけで済むため、わずかなスペースで莫大な情報を保存できますが、読み取りには別途シーケンサー(DNAを読む装置)が必要です。

将来的には、音楽や映像などエンターテインメント業界の巨大なデータアーカイブや、図書館・文書館の資料保存にもDNAテープが活用されるかもしれません。

個人にとっても、自分たちの家族写真アルバムやお気に入りの音楽ライブラリを1本のDNAカセットに入れて、何百年先の子孫にまで受け継げる日が来るかもしれません。

まさに未来の「家族アルバム」が現れると考えると、想像するだけでロマンを感じます。

レトロなカセットテープの発想に最先端のDNA技術を融合させた今回の研究は、そのアプローチ自体も興味深いものです。

かつて音楽を記録したカセットは数十年で役目を終えましたが、DNAカセットテープは数世紀の時を超えてデータを伝える未来のメッセンジャーとなり得ます。

データ洪水の時代に生きる私たちにとって、こうした新たな技術は大切な情報を未来へ送り届ける頼もしい船がまた一つ増えたと言えるでしょう。

もしかしたら未来の世界では1980年代と同じようにラジカセ型のスピーカーが普及しているのかもしれません。

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元論文

A compact cassette tape for DNA-based data storage
https://doi.org/10.1126/sciadv.ady3406