その答えにつながる重要なヒントが今回の研究の結果から見えてきました。
薬をやめた患者さんのケースでは、血液に再び現れたウイルスが体中に広がる様子が確認されました。
これは裏を返せば、「血液の中でウイルスが再び増えないようにすれば、全身に広がるのを防げる可能性がある」ということを意味しています。
実際、過去には、特別なタイプの骨髄移植を受けてHIVが「治った」と考えられている患者さんが数人報告されています。
この特別な骨髄移植では、移植によって体内の免疫細胞(CD4 T細胞)が生まれ変わり、HIVに感染しにくい性質を持つようになります。
その結果、薬を飲まなくても血液中でウイルスが増えなくなり、体の他の部分へもウイルスが再拡散しないという状態が実現しました。
ただし、重要な注意点があります。
今回の研究チームが調べた患者さんは、こうした骨髄移植を受けたわけではありません。
そのため、この研究が証明できたのはあくまで、「血液中のウイルスが再び増えることが、全身への再拡散につながる」という仕組みが主なものとなります。
骨髄移植が効果的だった患者さんたちについては、今回の研究から直接的に確認されたわけではなく、あくまで間接的なヒントが示されたに過ぎません。
それでも今回の研究は、「迅速剖検」という画期的な方法を使って、患者さんが亡くなった直後の新鮮な組織サンプルを広く集め、HIVが潜んでいる場所や再拡散の経路を詳細に調べることに成功しました。
これは、従来の研究方法では非常に難しかったことであり、この研究に参加した患者さんたちが、人類のために自らの体を使って遺してくれた、まさに「最後の贈り物」と言える貴重なデータです。
さらに今年の1月に発表された研究でも迅速剖検の結果が発表されており、その結果、腸や肺など“外敵”が入りやすい臓器の細胞はとても「防御」している一方、リンパ節や脾臓の細胞は逆に“控えめ”な状態にあることがわかりました。