さらに、お互いが相手の生成を助け合うような分子のグループ(自己触媒ネットワーク)が生まれれば、互いに助け合いながら情報を守ることができます。

2つ目は、十分に長い「情報の保持時間」があることです。

これは情報がランダムに消えてしまう前に、次の一歩を踏み出せる時間的余裕を意味します。

3つ目は、生まれた有用な分子を保護:再利用する仕組みです。

偶然できた有用な分子がすぐに分解されたり、消えたりせずに、繰り返し蓄積される仕組みがあれば、長期的に情報を貯めていくことができます。

これらの条件が揃うと、生命誕生を前進させる反応が1億回に1回しか起きなくても、5億年の間に生命誕生に必要な情報を十分に蓄えることができると研究チームは計算しています。

しかし、ここでも新たな疑問が生じます。

「そもそも、このような3つのお助けシステムは、どこから来たのでしょうか?」

研究者たちは、こうした仕組みは自然に偶然生まれたのかもしれないが、それでも純粋に偶然だけに頼るのは非常に難しいと考えています。

原始のスープでは、情報が短期間で拡散してしまうため、生命誕生を支援するお助けシステムを構築することがそもそも困難であり、たとえ構築されたとしても、それらが生命誕生の瞬間(同じ時間に同じ場所)にある可能性はさらに低くなります。

さらにこの研究では、生命誕生のボトルネック(最大の障害となる要因)は、実は「材料となる分子の量やエネルギーの不足ではない」ことも明らかになっています。

彼らが計算したところ、当時の地球の海水中に存在した微量な有機分子(生命を構成する材料となる分子)は、ランダムな動き(拡散)によって十分な量が供給されていたことがわかりました。

例えば、直径が約1マイクロメートル(0.001ミリ)の小さな「原始細胞」があったとします。

その原始細胞は、海の中に浮かんでいて、周りにはたくさんの有機分子(生命をつくる材料になる小さな分子)が漂っています。