つまり、生命が生まれるとは、この「情報」が何億年という時間をかけて少しずつ蓄積されていくことを意味しています。

では、この最初の生命が誕生するのに必要な「情報」とは、いったいどれくらいの量なのでしょうか?

研究チームは、現在存在するもっともシンプルな生命をモデルとして、その情報量を計算してみました。

その結果、最初の生命(原始的な細胞)が生命活動を維持するのに最低限必要な情報量は、およそ「10億ビット」だと推定されました。

「10億ビット」と言われてもピンとこないかもしれませんが、これは生命という複雑な仕組みを作り出すために必要な、最低限の情報の量です。

この量を人間が使うコンピューターの情報に例えると、一般的なスマートフォンに入っている写真や音楽のデータを合わせたくらいの情報量に相当します。

生命という複雑な仕組みを作り出すためには、これほど膨大な情報が必要だということです。

しかしここで問題となるのは、「その情報を蓄積するのに、どれくらいの時間がかかるのか?」ということです。

地球が誕生してから、最初の生命が現れるまでに使える時間には限りがあります。

研究者たちは、地質学や生物学のさまざまな証拠から、この時間を約「5億年」と見積もりました。

地球が誕生したのは今から約45.1億年前のことです。

その直後、地球には「テイア」という火星サイズの天体が衝突し、その衝撃で月が形成されました。

この衝突によって地球表面はほぼ完全にリセットされたと考えられています。

さらに、その約4,000万年後には「モネタ」という別の大きな天体衝突が起き、再び地球の表面が大きく変化しました。

では、実際に生命はいつごろ地球に登場したのでしょうか?

現在の研究では、生命の最古の痕跡として、41億年前の炭素の同位体(少し性質が異なる炭素)や、約34.65億年前のオーストラリアの岩石に残された微生物の化石の証拠が知られています。