部屋を片付けず放置すればどんどん散らかっていくのと同じように、物質の世界でも、特別な力が働かなければ、秩序(整った状態)は徐々に崩れていきます。
つまり、「原始のスープ」のような混沌とした環境から、秩序ある生命活動が偶然にも生まれるには、大きな壁(無秩序の壁)を乗り越える必要があるのです。
しかし、この壁を偶然だけの力で簡単に超えられるかどうかは、疑問が残ります。
無秩序な状態が秩序立った生命活動に変化するには、長い時間と、偶然を超えた何かしらの特別な仕組みが必要なのかもしれません。
そこで今回の研究者たちは、「そもそも偶然の力だけで生命は本当に生まれるのか?」という根本的な問いを数学的に調べようとしました。
偶然というランダムな出来事の中で、生命に必要な情報が蓄積される可能性を数学的に評価することで、科学的に許された時間(地球上で生命が誕生できると考えられる時間)に、本当に生命が自然に生まれるかどうかを調べたのです。
数学的に考えると地球で自然な生命誕生は難しい

偶然だけで、最初の生命は本当に生まれるのでしょうか?
この疑問を調べるため、研究チームはまず「生命誕生とは、どんなプロセスなのか?」という問いからスタートしました。
彼らは、生命が誕生する過程を「情報を積み上げる作業」と定義しました。
これは少し難しく聞こえるかもしれませんが、例を挙げて考えてみましょう。
たとえば、みなさんが何かを作るときは、材料だけを揃えても、それだけでは完成しませんよね。
プラモデルを組み立てるなら、正しい順番や設計図が必要になります。
同じように生命が誕生するためにも、単にアミノ酸や核酸といった「材料」があるだけでは足りません。
これらの材料を正しい順番で組み立てるための「設計図」や「手順」といった「情報」が必要なのです。