とはいえ、実用化に向けて乗り越えるべき課題も残っています。

たとえば、レンズのさらなる大口径化(視野の拡大)や度数制御の高速化・高精度化は、引き続き研究開発が必要です。

ピント切替の速さについても、快適な使用感のためには重要なポイントです。

将来的に自動焦点検出センサーや目の動きの追跡と組み合わせて常時オートフォーカス化するには、より洗練された制御技術が求められます。

それでも液晶レンズを用いた遠近両用メガネは、メガネやレンズの歴史を書き換えるポテンシャルを秘めています。

もしオートフォーカスを備え、PCと連動した情報表示システムや通信システムと連動させることができれば、メガネは望遠鏡にも虫メガネにも、スマホにもなれる万能デバイスに進化するでしょう。

もしかしたら未来の人々は、今のメガネを見て「昔の人はオートフォーカスもない、ただのガラスやプラスチックだけで必死に板(スマホ)を覗き込んでいたんだなぁ」と感じるかもしれません。

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元論文

Polarization-independent electronically tunable liquid-crystal spectacles
https://doi.org/10.1103/3m2d-k24l

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部