研究チームが注目したのが、液晶テレビやスマートフォンなどに使われている「液晶」の技術でした。
液晶は、液体のように流動的でありながら結晶のように分子がきれいに並ぶ特殊な性質をもっています。
この液晶の分子は、電気をかけると並び方が変わるため、これを利用してレンズの屈折力を電気信号で変えることができると考えました。
これが実現すれば、ボタン一つ押すだけで、遠くでも近くでも好きなときに焦点距離を調整できるメガネが可能になるかもしれません。
しかし、はたして液晶を本当に実用的なメガネのレンズとして利用することができるのでしょうか?
「電気で動くレンズ」――液晶レンズのしくみを解説

新型液晶レンズは、どのような仕組みでピントの調整をしているのでしょうか。
その鍵を握るのが、「液晶」という物質が持つユニークな性質です。
液晶は液体のように自由に流れる一方で、分子が一定の方向に規則的に並ぶという、固体の結晶のような特徴も持っています。
そして、この液晶分子の並び方は、電気をかけることで自由に変化させることが可能です。
通常のメガネレンズでは、表面の形状(凸レンズや凹レンズのような曲がった形)によって光を曲げ、ピントを合わせます。
しかし、液晶レンズの場合、レンズの表面形状は変えずに、内部の液晶分子の並び方だけを変化させることで、光を曲げる力(屈折力)を調整できるのです。
具体的には、透明なレンズ基板(レンズを形づくる土台)の内部に液晶を入れ、その液晶に電圧を加えると、液晶分子の並ぶ方向が揃ったり変わったりします。
この液晶分子の並ぶ方向によって、光がどれくらい強く曲がるかが変わるので、レンズの焦点位置(ピントが合う位置)も変えることができるという仕組みです。
この方式が画期的なのは、レンズの表面を物理的に動かさなくても、電気信号ひとつで自在にピント調整ができる点です。