バンドン会議演説から1週間経った15年4月29日、米上下両院合同会議で行った「希望の同盟へ」演説で議員の拍手喝采を得た安倍氏は、「70年談話」に向けて2月に設けた「21世紀構想懇談会」について『回想録』にはこう記されている。

私を支持してくれる保守派の人たちは、常に100満点を求めてきますが、そんなことは政治の世界では無理なんですよ。だからある程度バランスをとるために、21世紀構想懇談会を設立して、有識者の意見を聞いたのです。

と述べて、座長代理に据えた北岡伸一氏の立ち位置をさらりと示唆する辺りも安倍氏らしい。つまり、何をするにも、また語るにも「実に巧み」なのである。だから、筆者のように「東京裁判の不法性」などとは軽々に口にしない代わりに、「戦後レジームからの脱却」とするのである。

他方、幻となった「80年談話」で石破氏は、全国戦没者追悼式で述べた「あの戦争の反省と教訓を、今改めて深く胸に刻まねばならない」との下りを使ったことだろう。とすると、80年前の「あの戦争」は石破氏にとって「国際法に悖る戦争犯罪」だったのか、と筆者は思うのである。