ウクライナ侵略戦争やイスラエルのガザ地区攻撃に見られるように、国連の安保理の無力が証明された世界情勢では、「国際的な協調性」は簡単には得られそうもない。「国際的なレベルでの協力行動が特に重要なカギとなる」(同上:5)ことは自明だが、AIおよび政策提言グローバル版そして広井はどのような「国際協調案」をまとめるのだろうか。

人口変動への対処

2点目の課題は先進国と途上国あるいはグローバルノースとグローバルサウスでもいいのだが、人口変動への積極的な着眼を行うことにより、「老化の波」(age wave)と低出生数による人口減少への具体的対応を描いておきたい。

確かにシナリオグループ解釈の際には、それらの社会指標を人口、財政、地域、環境・資源、格差、健康、幸福の8つの観点で評価したとある(嶺、前掲論文:4)。ただし、表1で人口データの何を使ったかはこの説明では不明であった。

表1 シナリオ解釈結果(出典)嶺、2019:4.

2052年における各シナリオグループの社会指標を人口,財政,地域,環境・資源,雇用,格差,健康,幸福の8つの観点で評価した。2018年と比較し,数値が向上・好転している指標を○,低下・悪化している指標を×,変化が少ないものを△で表現した。

出生率を下げるだけでは済まされない

地球的レベルでは、ワイズマンのいうような「死亡率を上げることには誰もが反対する以上、人口を減らしたければ、選択肢は一つしかない。出生率を下げることだ」(ワイズマン、2013=2017:270)かもしれないが、この総論だけでは済まされない。

なぜなら、G7に象徴される先進国で人口減少が進めば、途上国へのODAをはじめとした借款やさまざまな支援が廃止もしくは減額される可能性が予想できるからである。

世界全体のODA総額は2237億ドル(暫定値、約34兆2000億円)

その代表はODAであり、経済協力開発機構(OECD)は11日、2023年の世界の政府開発援助(ODA)実績が22年比2%増の計2237億ドル(暫定値、約34兆2000億円)だったと発表している(外務省ホームページ)。