元来‘de’は下降、反対、剥奪、分離、除去、否定、強意、悪化などを意味する接頭辞なのであり、「脱」という訳語にはならないと考えるからである。そこからのみ‘Giant Leap’への道筋が見えてくるのではないか。

第2節 「社会資本主義」提唱の意義

「社会資本主義」

このように、京大・日立製作所が発表した「地球社会の未来シナリオ」(図1)は、多方面からの賛否両論を含む建設的な議論を引き起こすものである。私もまた2023年に、「資本主義終焉のその先」を「社会資本主義」という用語に託して「未来シナリオ」を提唱したので、その観点から図1「地球社会の未来シナリオと分岐構造」への論点を提示してみたい。

「社会資本主義」とは、様々な領域で破綻が目立つようになった現在のグローバル資本主義の課題を克服し、より持続可能で公正な社会を目指す新しい経済社会システムを指す概念とした。

「社会資本主義」の三本柱

具体的には三本柱として、「治山治水」を含む「社会的共通資本」、人とのほどよい関係がもたらす「社会関係資本」、政府の「こども真ん中政策」に呼応した家庭と近隣での子育てから作り出される「人間文化資本」の3つの資本を融合させ、世代間の協力や社会移動が可能な開放型社会を目指すものである。

それにより、経済社会システムは使用可能な手持ちの社会資源を最大限活用して、機能面で「適応能力向上」(adaptive upgrading)を維持することができるとした。

歴史的背景

この「社会資本主義」は、従来の資本主義が抱える問題、例えば、格差の拡大や環境問題、将来不安などを解決するために、新しい資本主義のあり方を提示することが期待される。

そこに至る経緯は金子(2023:第5章)に詳しいが、マルクス、ウェーバー、高田保馬、パーソンズらの社会学古典に導かれながら、資本主義の終焉後の到達点として、「社会資本主義」を新しく造語したのである。なぜなら、「脱」や「後」の表現では目標地点が分からないからである。

「次」や「脱」ではイメージが収斂しない