多角的アプローチでプロダクトの価値を再定義

——実際に、今回刷新を行ったポイントを教えてください。
シャンプーは毎日の習慣だからこそ、できるだけストレスなく使っていただきたいですよね。そこで、詰め替えではなく外側のボトルから中身の容器を“付け替え”するだけのパッケージにしたり、使うたびに中の容器が収縮していくエアレスポンプを採用することで最後まで無駄なく使いきれたりと、パッケージの変更を行っています。
実はこのパッケージ変更は2022年に行ったものなのですが、今回のブランドコミュニケーションの刷新に合わせて、ボトルをよりスリムにし、スマートな印象に変えています。
しかし、やはり大きく変更したのは消費者に対するメッセージですね。 多くの方がデイリーケアに使っていることにも表れているように、スカルプDの機能は多岐に渡っています。 これまでは発毛・育毛という領域の機能を強くメッセージとしていたのですが、今回キャッチコピーを「髪と地肌をメンテナンスする。」と変更しました。髪や地肌の悩みや状態に広くアプローチし、理想の自己表現を可能にするプロダクトであることを消費者に伝えるコミュニケーションを目指しています。

ブランドコミュニケーションの刷新にともない、ホームページで発信するメッセージやデザインも変更しました。 これまではやはり、薄毛や抜け毛といった悩みへの訴求を前面に打ち出していましたが、消費者へのメッセージを「頭皮の健やかさ」や「薄毛や抜け毛以外のミドル男性の髪悩み」に訴求するものに変えています。 ページデザインも、これまではフォントや黒っぽいカラーで男性らしさを強調したものでしたが、今回からは洗練されスタイリッシュさを意識したカラーやトーンになっています。
——しかし、すでに「発毛や育毛に強い」というイメージが定着しているスカルプDにおいて、新たなメッセージや提供価値の浸透は難易度が高いことのように感じます。
そうですね。実は今回のリニューアルは、「顧客とギャップが生まれるのではないか」「消費者へのメッセージを変えることで売り上げに影響するのではないか」など、社内からもややマイナスな反応が多かったのです。 我々も前提として、提供する価値を広げていくことやそれにともなうメッセージの刷新などは時間がかかることだと理解しています。
スカルプDに対する固定イメージを変えていくためには、プロダクト単体ではなくシリーズ全体での消費者へのコミュニケーションが必要です。実は、今年3月に若年層をターゲットとしたシャンプーシリーズ「スカルプD ネクストプラス」が登場しています。「スカルプD ネクストプラス」は、「自分をデザインする」をコンセプトとし、シャンプーでスタイリングしやすい髪を作るヘアスタイリングシャンプーです。
ターゲットに合わせてアプローチを変え、幅広い層にスカルプDの持つ機能性や価値を提供することで、新規の消費者層にも、既存の消費者層にも「スカルプDとはどういうブランドなのか?」を再認識してもらう。 結果としてシリーズやプロダクト全体の価値を再定義し、さまざまな商品や接点を通じて再注目してもらうという戦略を考えています。
実際、スカルプD ネクストプラスの登場によって、20代の顧客も増えていますし、トレンドに沿った価値提供ができていると感じます。 そういった現状を目の当たりにして、最初はリニューアルに否定的な意見が多かった社内の雰囲気も、前向きなものに変化しています。