市場を切り拓いたパイオニアの現在地

抜け毛対策シャンプーからの脱却——安定を壊してでも挑む「スカルプD」のブランド革命 の画像2
(画像=『Business Journal』より引用)

——まずはじめに、改めてスカルプDについて教えてください。 

 私たちアンファーは、”予防医学”の啓発と普及を目的に大学病院や各分野の専門医とともに共同研究を行っており、医療×プロダクトの商品開発を強みとしています。実はスカルプDも、頭皮、頭髪の医師と共に頭皮環境を整えるシャンプーとしてクリニック専売品として販売したのがブランドのはじまりなんです。 

 2005年、一般市場への販売を開始。幾度かリニューアルを重ねつつも、“頭皮を洗う”というキーワードの軸はぶらさず、今年ブランド誕生20年目を迎えました。お陰様で多くのお客様にご愛顧いただき、今年でメンズシャンプー売上16年連続NO.1※を獲得しています。  ※富士経済「化粧品マーケティング要覧2025 No.3」 メンズシャンプー・リンス メーカーシェア(2024年実績) 

——今回、大きくブランドとしてのコミュニケーションを刷新したスカルプDですが、まずは現状の顧客層や市場でのポジションを教えてください。 

 大きな割合を占めている顧客層は、30代後半から40代の方々です。スカルプDがすでに20年続いているブランドで、長く継続している方も多いため、少し高い年齢層の方にも使っていただいていますね。   市場においても「薄毛や抜け毛という悩みにアプローチできる商品」と、年代問わずに認知していただいていると理解しています。 

——スカルプDが高い認知度を獲得し、発売から20年経っても安定した売り上げを保っている要因は、どこにあると考えていますか? 

 要因はおもに2つあると考えています。 

 まずは、当時まだ競合他社がほとんどいなかったことです。   我々がスカルプDを発売した2005年当時、メンズシャンプーは存在していたものの、頭皮環境に着目したスカルプシャンプーはまだジャンルとして確立されていませんでした。アンファーがスカルプDを発売することで、市場のパイオニアとしてジャンルを切り開くことができたことが、現在の認知度や売り上げの安定化に大きく寄与していると感じます。 

 そして、当時黎明期だったECとプロダクトの相性がよかったことです。   スカルプD発売時、ECモールは主流ではなく、シャンプー市場はドラッグストアやバラエティショップなどのリアル店舗が主戦場でした。   そんな中、アンファーはいち早く自社ECサイトへの誘導を行っています。その動きが当時の「髪の毛や頭皮の悩みを人に話しづらい」「なるべく人目に触れずに購入したい」というニーズに合致しました。   当時の価値観が、スカルプDの持つプロダクトの性質とうまくハマったのだと思います。   これが、自社ECサイトでの売り上げを大きく躍進させ、現在も自社定期継続率が7割と、強いファンづくりの基盤となっています。 

——一方で、現在のスカルプDの売り上げは一時期の伸び率よりもやや緩やかになっているようにも見えます。 

 その要因のひとつとして、他社の参入が増加し、消費者の選択肢が増えたことがあります。メンズシャンプー市場の拡張のみならず、近年はユニセックスシャンプー市場も急成長しています。それにともなって、市場に中価格帯のシャンプーも増えましたね。 

 また、AGAクリニックの台頭で、薄毛や抜け毛に対して「治療する」という考えが一般的になってきていることも、スカルプDの売り上げや市場の変化に大きく影響してます。 

 こうした消費者の価値観や意識の変化がある今、薄毛や抜け毛にアプローチするイメージがあるスカルプDが市場において、どうポジショニングしていくかを考えていくべき転換点にきていると考えています。